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『Forward 』
東海林聖aa0203)&リオン クロフォードaa3237hero001)&Le..aa0203hero001)&藤咲 仁菜aa3237

「居酒屋の飯ってうまいよなー」
 創作居酒屋の一席。シャルトリュージュモヒートをやりつつ海老と茸のアヒージョなどつまむ東海林聖(aa0203)。
 歳は27になったのだったか。が、年齢以上に飲み慣れた様子である。
 自分ももう22なのに、大違いだ。向かいに座すリオン クロフォード(aa3237hero001)は感心し、そして胸中でかぶりを振った。
 いや、聖さんの場合は慣れてるってより、コミュ力高いんだよな。どこにでもすぐ馴染むっていうか。
 酒の弱さは自覚しているから、ルジェカシスオレンジを慎重になめつつ、リオンはあらためて聖の様子を窺った。
 テンション高く、しかしはしゃぐような無粋も見せず、ごく自然に「楽しげ」な空気感を演出する聖。ムードメーカーとはこういう人を指すのだろう。
 俺もこんな感じだったら、あいつとも――
「余計なこと考えてる顔してるぜ?」
 指摘されて、思わず肩が跳ね上がる。
 やばい、空気読める人は他人の気持ち読める人なんだって忘れてた!
「いやいや! いやいや、いやいや……」
 焦るほど言葉が詰まって、怪しさばかりが増していく。
 こうやってぐだぐだしてるからだめなんだって! もっとこう、うまくやらなくちゃ!
 なんとか自然を演じようと悪戦苦闘するリオン。
 そんな様から目線を外し。
「考えるのはいいけど悩むのはダメだぜ。もっといいやりかたがあんだろって思ってる内に、結局わけわかんなくなっちまうからよ」
 怖いくらいに見透かされている。しかも、自分を追い詰めないよう気づかわれている。
 リオンは大きなため息をつき、「わかってるんだけど」、それだけを絞り出した。
「大人って歳になれたらなんだってうまくやれる気でいたのに、歳なんて勝手に取ってくだけのもんなんだって、最近思い知ってばっかりで……」
「そんなのオレだって同じだよ。結婚したら自動的に夫になるんだって思ってたけど、そうじゃねェ。まずその立場んなったら鍛錬開始して、いろいろやらかしながらレベル上げてってやっと少しまともな夫になれるって感じ」
 多分、30過ぎるときも同じこと言ってそうだけどな。言い添えた聖は苦笑し、グラスを干した。リオンが飲めない分、自分が飲んで店に貢献しようという心配りである。
 かくて注文を済ませた聖は、黙り込んだリオンに向きなおり。
「で。『こんなガキのまんまの俺じゃ、ニーナに釣り合わない』とか思ってんのか?」


 こちらは夜に酒も出すタイプのカフェ。
 テラス席の片隅でマンゴーパフェを前にしたLe..(aa0203hero001)は、その向こうで突っ伏す藤咲 仁菜(aa3237)の後頭部と対峙していた。
 今日のLe..は大人バージョンである。おかげで食欲のほうも抑えられているから、聖の財布からかすめ取ってきたクレジットカードも比較的軽傷で済むはずだ。
 無傷、ってわけには……いかなそうだけど、ね。
「いつものもう一杯お願いしますー」
 突っ伏したまま店員を呼び、注文する仁菜。ちなみに「いつもの」とは、ライムシロップで甘々味つけしたウォッカをスパークリングワインで割るという、そこそこでは済まされないアルコール度数と少々の乙女心を両立させたなかなかの代物である。
 そんな注文が通ってしまうほど、ここは仁菜とLe..の馴染みの店であり、そして。仁菜の愚痴をそれだけの回数、Le..が聞いてきた――ただの女子会もしてきたわけだが――ということでもあった。
「飲み過ぎ……」
「飲んでるときだけが生きてるときだもん」
 うーん……どこぞの、社畜?
 まあ、仁菜も22歳。10代からエージェントとして働いてきた社会人ではあるが、世間でもようやくその立場を認められる歳になった。社畜根性くらいは芽生えるころなのかもしれない。
「リオンはね、すぐ潰れちゃうから。ルゥさんもお酒弱いからあれだけど、女子同士の安心感あるし。リオンはね、すぐ潰れちゃうし頼りないし」
 ようやく顔を上げた仁菜は、うだうだと7杯めの“いつもの”をすすり、もだもだ言い募る。結構飲める口のはずだが、さすがにこれだけの酒精を数十分で突っ込むのは飲み過ぎだ。完全にできあがっている。
 ……愚痴も、湿っぽくなった……よね。
 オフショルのトップスから突き出した肩をすくめてみせるLe..。
 ちなみにオフショルは普段から着ていたりするのだが、今日のそれは胸の下までしかない丈の短いものなので、腹も背中もほぼ見せだ。
 気合、入れてきた……から、ね。
 なにせ今日は女子会でも愚痴会でもない、戦会(たたかい)なのだから。
「今日の、Le..は……大胆、不敵」
 早速しかけたLe..に、仁菜が素早く視線をはしらせ。
「ルゥさんのおへそ、綺麗だよね」
 それだ。そういう不用心な言葉を待っていたのだ。
 不用意に……斬り込んで、きた迂闊……呪うんだ、ね。
 まわりから吸い寄せられてくる男たちの視線を横目で確かめつつ、Le..はくいっと背を反らしてみせる。
「男子、釘づけ」
 ……さて、と。ルゥもあんまり、得意ってわけじゃ……ないけど。
「リオンも、釘づけ……られる、かな?」
 もしかしたら、この程度の斬り込みでは、恋愛に対して酷く鈍感な仁菜には届かないかもしれない。
 ううん。鈍いって、いうより……仁菜は、考えないように、してるから。
 ふたりがいわば共依存の状態であることは、見ていればわかる。その距離はすでにゼロ――重なっているからこそ、わずかにでも離れてしまいたくなくて、互いが互いにしがみついているのだと。
 でも、ね……それじゃ、前に進めない……から。ルゥは、仁菜のお尻……叩くよ。
 ここから少し離れた店では、聖がリオンにしかけているはず。
 仁菜とリオンが過ごした8年、そこにひとつのピリオドを打たせるため、そして次の段落へと進ませるために。
 果たして、仁菜の反応は。
「ん。釘づけられるかも」
 平らかに応える仁菜。
 しかしそのロップイヤーはびくびく跳ねて、隠しきれない動揺を映していて。
 初撃は、入った……ね。
 Le..は心の中でよしとうなずいて、言葉の大剣を構えなおした。


 言われてしまえばもう、逃げられない。
 と、思い。リオンは自分の本音を理解した。
 俺、考えたくなかったってことだよな。ニーナとちゃんと向き合わないとってこと。
 正直、考えていなかったわけではないのだ。14歳で出逢ってからもう8年。互いを知り尽くすには充分な時間を重ねてきた。
 だって俺たち、ずっとお互いのそばにいたんだから。
 楽しかったことも苦しかったことも、事件もなんでもないことも、いろいろあったけれど……しかし。どれだけ思い出を重ねても、リオンの内で仁菜の笑顔が褪せることはなかった。
 この世界に在る誰よりも大切な仁菜。
 互いにもう子どもではなくなった今、それを空気ではなく言葉で伝えなければならないのだということを、彼は理解していた……理解は、しているのだ。
「仁菜も次の春で大学卒業だろ。そしたらまた新しい道ってやつに進んで、ほんとの大人になっちまうんだぜ。置いてかせる気か?」
 置いていかれるではなく、置いていかせる。それは裏を返せば仁菜の側にはリオンを連れて行きたい意志があるということか。いや、そんなものはリオンの思い上がりだろう。だって、そんなことはなにも言われていないのだから。
「……ニーナは、俺なんかいてもいなくても行きたい先に行くよ。むしろ俺がお荷物になるんだったら」
「本気で言ってんなら、オレにもう言うことはないぜ」
 言葉では突き放しながら、限りなくやさしい音を差し挟む聖。
 その二律背反にリオンはとまどい、迷い、悩み、ついには細い声音で聖へ問うた。
「聖さんは、アタッカーだからってまっすぐ突っ込めた?」
「おう! って言えたらカッコつくんだけどなァ」
 聖は苦笑し、頭を掻いた。自然と飲むペースが速くなるのは、それなり以上に思うところがあってのことなのだろう。
「そりゃもう悩みまくったぜ。オレみてェなまっすぐバカが、アイツの人生抱えさせてらった責任とれんのかって。正直、今でも思ってるとこある。嫁さんになってくれたアイツに、オレはどんだけいい夫でいてやれてんのかなって」
 聖は新たに運ばれてきたドライテイストなジントニックを呷り、威勢を高めて。
「でもさ、そりゃオレが勝手に思ってるだけのことなんだよ」
 強く言い切った。
「オレの価値を決めんのはオレじゃねェんだよ。毎日いっしょにいてくれる嫁さんだ。だからオレもアイツに、いちばん大事だって伝え続けるんだ」
 聖が結婚前、かなりの期間恋人に逢えない時間を過ごしていたことをリオンは知っている。どうすればいいのかを悩み、足踏みして、気後れの内に留まっていたこともだ。
 しかし。相手を想い続けるだけの時間を越えて、彼は踏み出した。いちばん大事だからこそ伝えることをためらってきた言葉を、いちばん大事だからこそ伝えなければと思い切って。
「言わなくちゃわかんねェことって、やっぱあるんだぜ?」
 重い寸止めを決められた気分だ。
 リオンは自分を打ちのめさなかった聖を半ば恨んでしまう。こんなに弱くて迷ってばっかの俺を気づかってくれる必要なんてないのに。
「……俺、ニーナにちゃんと言わなくちゃって、思ってるんだ」
 それでも、聖の手心に応えなければいけないと思うから、必死で言葉を紡ぎ出す。
「俺を俺でいさせてくれるのはニーナだけだから。でも俺は、ニーナをニーナでいさせられてやってるのかなって」
 腰も心も据わらない、弱々しい言の葉の剣。それを聖は真っ向から撥ね除け、問いという切っ先をリオンの喉元へ突きつけた。
「だからほかの誰かに任せんのか?」


「そっか……じゃあ、そうする」
 Le..はパフェに続けて頼んだメロンサワー――ごく少量のメロンリキュールを混ぜた、ほぼほぼメロンソーダだが――を傾け、反らした背を悠然と背もたれへ預けて見せた。これは彼女がここへ来るまでに考えてきた、大人の女の演出。
 動揺もあって、仁菜はすっかり釣られてしまっていた。
 え!? Le..さん、本気!? それって、え!? 本気でリオンのこと!?
 それを見て取ったLe..はさらにひと口“酒”を喉の奥へと流し入れ、ほうと息をついて。
「リオンは……剣の、稽古も、一生懸命……だし。見れるレベルに、なってる。……頼もしく、なった……よね」
 ほろ酔いを装いつつ、唇を引き結んで押し黙る仁菜の心をさらに揺する。
「ヒジリーが、いなくても……リオンがいたら……背中は、大丈夫かなって、思ってる……」
 正直、Le..が期待する以上に仁菜は揺れていた。
 あのルゥさんが背中預けてもいいって……リオンがルゥさんに剣技教えてもらって前より強くなってるのは私だって知ってるし、最近肩とかしっかりしてきてて、服とか買い換えなくちゃいけなくなってるのもわかってるけど、でも。
「リオンは! 東海林さんみたいなアタッカーじゃないし! それにちょっと強くなったかもだけどルゥさんについてくとか無理!」
「戦いは……攻めるだけじゃ、ない」
 仁菜の否定をばっさり斬り捨て、Le..は小首を傾げてみせる。
「守る戦いも、大事……。リオンには、守り抜く、強さがある……から」
 そうして斬り下ろした切っ先を、手首の返しで一気に斬り上げた。
「仁菜は、そう思わない……?」
 思うどころか! ――リオンが誰かを守るために、どれだけの思いを心へ押し詰め、ここまで進んできたのか。仁菜は知り尽くしている。それを見守るばかりでなく、同じ思いを抱いて共に来たのだから。
 私、ずっとリオンのとなりにいて、いっしょに歩いてきたんだよね。
 しかし。となりに並んで同じ方向を見て進んできたということは、つまり。
 私、リオンのことちゃんと見てなかったんじゃないかな。だって、よりかかるのもよりかかられるのも、となりにいるのが当たり前すぎて確かめる必要、なかったんだもん。
 子どものころなら、それでよかった。
 互いになにを含むこともなく、自分を預けられたし預かれた。
「大人になるって重たすぎるよ」
 思わずつぶやいた仁菜へ、Le..はさらに突きつける。
「……覚悟が、ないなら……ルゥが、スイッチ、するよ。ルゥが、リオンのこと……もらってく」
 大人になってしまった現実が耐えきれないほど重いなら、立ち止まってうずくまって頭を抱え込んでいればいい。
 斬り刻まれた心をかき集める気力も失くして、仁菜はただ激しくかぶりを振った。
 ああ、もう! ああもうああもうあーっ、もーっ!!
「ルゥさん!!」
“いつもの”を一気に飲み干してグラスをテーブルにどん! 仁菜は勢いをつけてセクシーポーズ調整中のLe..に鼻先を突き出した。
「ちょ……においで……酔う」
「ごめん! あと10秒がんばって!」
「うん……」
 気合でLe..を押し込んでおいて、引き下げていた眉根をほろりと解いて。
「絶対だめ! ルゥさんにリオンはあげない! ううん、私があげるとかあげないなんて言えないけど――やっぱりあげないから!」
 Le..は見開かれた仁菜の両目をのぞき上げる。それ、どういう意味? 言葉にしない問いを、まっすぐに突き上げてくる。
 仁菜に真っ向から受け止められるだけの覚悟はない。ないと思う。でも、Le..の攻めを遮る盾がなくても、逃げられない……逃げたくない。逃げたりなんか、しない!
 がっしと掴んだメロンサワーをLe..の口にあてがい、ごぶごぶ飲ませておいて、仁菜は店員に同じものを彼女へ出してくれるよう頼み。
「それ飲み終わるまでお店出るの禁止だからね!」
 ちょっとおぼつかない足で駆け出していったのだった。
 そして。いきなりの暴挙に目を白黒させていたLe..は、遠ざかっていく仁菜の背に薄笑みを漏らす。
「素直、じゃ……ないけど、素直だね」
 普段の仁菜ならけしてするはずのない理不尽はすべて、リオンを渡したくないという子どもじみた我儘のせい。
 いや、仁菜はまだ子どもなのだ。リオンと出逢ったときのまま、時間を止めてしまった兎姫。
 仁菜が……ほんとの、大人になるのは……これから、だよ。……現実の、重たさも、冷たさも、これから……向き合わなくちゃ、いけないこと。でも……今、向き合うのは、それじゃ……ないよね。
 息をついて、スマホを取り出したLe..は聖へ連絡を入れる。
「ヒジリー? 仁菜、そっちに、行くよ。ルゥは……告る前に、ガードされたから……やけ食い、するね」
 しゅるしゅる子どもバージョンに戻ったLe..の手には、聖のクレカがしっかり握り締められていた。


「え!? ちょまっ、ルゥさん!? やめて再来月にお嫁さんが泣いちゃうからー!!」
 容赦なくぶつ切られた通話。
 聖は呆然とスマホをしまい込み、たまらない顔を左右に振った。
「オレの命、再来月の26日に潰えるのが確定したぜ……」
「それはもう、なんて言ったらいいかわかんないけど――なんかニーナがどうとか言ってなかった!?」
 食らいついてきたリオンに、なんとか心を落ち着かせた聖はまっすぐ視線を向けなおした。
「今、そいつを気にしていいだけ据わってんのかリオン」
 据わっているかと問われて、もちろんだと応えられるはずはない。
 今だって激しく揺らいでいるし、仁菜に誰よりふさわしいのは自分だなんて思えない。
 でも。
 ふさわしいとかふさわしくないとか悩む時点でもう、心は定まっているのだ。
 仁菜と肩を寄せるだけでなく、ふたりでもっと先まで行きたいから。
 そんな身勝手な思いで仁菜を縛っていいのかと、ためらってしまうから。
 ちがう。そうじゃないんだよな。聖さんの言うとおりだ。それを決めるのは俺じゃない。ニーナだ。俺はほんとの意味で、俺をニーナに預けなくちゃいけないんだ。
「行ってこいよ、リオン」
 踏み出すチャンスはいつだって「今このとき」なんだぜ。わかってんだろ?


「ニーナ、今どこにいる!?」
『えっと、ビルがいっぱいあって、人がたくさんで、車が渋滞してる大通りのとこ!』
 スマホから返ってきた頼りない仁菜の説明に、リオンはなかなかの絶望を味わう。説明ヘタすぎだろ!
 しかし、なぜだろう。確信があった。
 ここじゃない世界の向こうから、俺はたったひとりしかいないニーナを見つけたんだ。
 だったら同じ世界の同じ街にいるニーナが見つからないはずない!

 自分の説明下手にこちらも絶望を味わう仁菜だったが、心の奥から「大丈夫」が沸き上がってきて、だから迷わずに前へ進んでいく。
 うん、私とリオンは大丈夫。だって、ちがう世界で生きてた私たちが見つけ合えたんだから。
 今夜だって絶対――出逢える。

 人波をかきわけすり抜けやり過ごし、リオンは、仁菜は、前へと踏み出していく。
 そして。
「ニーナ!」
「リオン!」
 駆け寄ることなく、互いに近づいていく。互いに引かれる星のように、ゆっくり着実に。
「俺、ニーナに言わなくちゃいけないこと、あるんだ」
「私、リオンに言わなくちゃいけないこと、あるの」
 となりに並んで肩をもたせかけるのではなく、互いを前にして、息を整える。
 もう相手をごまかしたりしない。もう、自分をごまかしたりしない。削ぎ落とした弱気と狡さの奥に在る純然な心を差し出して、告げた。
「俺、ニーナが好きだ」
「私、リオンが好き」

 聖とLe..のやさしい手で背を押されたふたりは、ここまで積み上げるばかりだった8年を越えて、新しい1日を積んでいく。
 となりに並んで通わせるばかりでなく、互いを前にして思いを伝え合い、同じ道を先へ、先へ、先へ。
 
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2019年06月26日

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