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『daily recipe 』
フィウメ・モンテクッコリla0452

●ほっこり生キャラメルと大満足バー

「材料3つで出来るって、すごいよね」
 ことことゆっくり、鍋の中を絶えずかき混ぜるフィウメ・モンテクッコリ(la0452)の視線は真剣なもの。
「集めるのが難しい材料じゃない、っていうのもポイントだと思うし」
 既に空になった牛乳パックに視線を向けてから、また鍋を見つめる。バターも砂糖もずいぶん前に溶けているから、今はじっくり焦がさないように気を付けるタイミングだ。
 飽きの来ない優しい甘さが気に入っている。パッと食べられる手軽さもあって、いつも、切らさない程度に作り貯めては持ち歩いている。

 最近では、ワックスペーパーの模様にも拘るようになった。初めて訪れたラッピングの専門店に溢れる色とりどりの、それこそ無数にあるだろうアイテムに魅せられてからは、より細やかな部分まで気にするようになったのだ。
 元の世界でもパティシエだったフィウメは、プレートの上にどれだけ美味しそうに、目を楽しませる盛付けが出来るか、なんて技術を勿論鍛えてきている。けれど、キャラメルのように素朴なスイーツをより魅力的に演出する方法をあまり知らなかったのだ。
 スイーツそのものを見せるための透明な包みならば馴染みがあった。むしろ、そうしなければ手に取ってもらえない、というのが当たり前だと思っていた。
 中身を覆い隠してしまう程のカラフルなペーパーは、カルチャーショックだったのだ。けれど一度手に取って、試しにキャラメルを包むのに使って。差し出した相手の反応を知って……すとん、と理解が落ちてきた。
「味に影響はないのはわかっているんだけど」
 美味しいのは当たり前なのだ。
 食べるよりも前から、そのものを見る前から。素敵だと思ってもらえる。そんな考え方は、地球に来て初めて知ったことだった。

 黄色味が強くなって、満足のいくとろみがついたところで火から離す。固さの確認を終えたら、型に流し込んでいく。
 けれど、鍋の中身が半分ほどになったところで、その手を止めた。
「ここからはもう一度、だね」
 鍋の中に放り込まれるのはマシュマロと、砂糖などの味がついていないコーンフレーク、砕いておいたミックスナッツ。
「どれくらいの割合がいいのかは、何度かやっていかないと駄目かもしれないね」
 後は、いつものキャラメルと同じ。
「答えは調べたら、見つかるんだろうけど。自分で見つけたいよね」
 背にある翼が、楽しげにはばたく。 

●具だくさんアクアパッツァとからっぽリゾット

 思った以上の収穫に、キッチンに向かう足取りも軽い。
「定番は鱈らしいけど。真鯛と、海老と、これは伊佐木……で、あってたかな」
 名前を確認しながら作業台に並べた後は、水を張ったボウルにざらざらとアサリを放り込む。魚も貝も全て、量は多くない。規格より小さく、けれどリリースするには惜しい。家庭で食べるなら問題ない品が、タイミングよくこれだけ集まったというわけだ。
「あたしひとりで食べるんだから、豪華すぎるけどね」
 作りすぎて食べきれない程になる、なんてことにならないのも良い。とはいえ地球は科学技術も十分に発達しているから、材料の段階で切り分けて保存するなり、対処方法はあるわけなのだけれど。
 その道で暮らしていた身としては、新鮮な素材を、最も美味しいうちに調理したいと思うのだ。だから暇を見つけては、新しい食材や調理法を探しに出歩くことが多いフィウメの暮らす部屋、その冷蔵庫の中はそれほどたくさんの食材は詰まっていない。
 これはスカスカだという意味ではない。日持ちのするソースや、そこから更に応用ができるように、シンプルな常備菜が多く保存されているだけだ。
 出来ることなら毎日調理の為に過ごしていたいフィウメだけれど、ライセンサーとしての立場というのもあるし、何よりサポートだけに頼らず充実した生活を送りたいとは考えているわけで。
 任務帰りで時間が足りなくなったときにも短時間で美味しく食事がとれる、そんな万全な状態にしておくのが、ある意味では自分に課した一つのルールなのだった。

「流石に多いかな」
 下処理を終えた海の幸の量を見る。確かにひとつひとつは小ぶりだけれど、全て合わせたら二人分は余裕のようで。
 今なら確かに保存に回せるタイミング。しかしだ。まるごと使う全て使うと決めてしまっていたわけだから、切り分けるのはなんだか勿体ないような?
 大きめのフライパンをコンロに置きながら首を傾げている時点で、答えはもう出ているのだが。
「このまま作って、残りは明日の朝、手を加えて食べるのが正解だよね」
 声に出して頷けば、後はもう迷わない。旨味を吸わせるための名脇役、春キャベツと新玉葱も追加で取り出したフィウメの脳内では、アクアパッツァの豪華な出来上がりが見えているのだ。

 一晩寝かせたアクアパッツァは、野菜に染みこんだ旨味が段違い。昨晩のディナーのお供はバゲットだったけれど、今度はライスと一緒に煮込む。
 一度は加熱されたものばかり、少し沸騰させる程度でも十分全体がまとまるはずだ。
「でも、ひと手間くわえると、もっと美味しい」
 少しの牛乳は、煮詰まった汁をまろやかな口当たりに変えてくれる。火から離して少し蒸らす。食べる直前に粉チーズを振りかければ、完成!
「今日もいいことありそうだね」

●思いつき宝石箱

 今日のお茶は少しだけ豪華にするのもいいかもしれない、そんなことをフィウメが考えた理由は、視線の先にあるジャガイモ達。
 どんな調理法でも美味しく食べられる万能食材なのだけれど、ちょっと多めに買いすぎてしまって、そろそろ芽が出てしまいそう……というのが理由であったりもする。
 常温でも日持ちする食材というのは、つい大量に買ってしまいがちだ。その結果がついに目の前に迫ってきていた。
「あくまでもお茶、だから簡単にしないとね」
 取り出すのは市販されているスライサー。自身の包丁技術が未熟だなんて思ってはいないけれど、結果が同じで手軽に出来るなら道具だって使う。そこの線引きはしっかりできているフィウメである。
 皮を剥いて水にさらした芋を、薄切りと千切りに変えていく。途中で少し考えたのは配分の都合。薄切りの方が多くなる結果になったようだ。
「……うん、選択は間違いじゃなかったね」
 もう一度水にさらして、水を切る。その工程上、千切りはとても手間がかかるのである。ジャガイモの数がそれなりなので、いくら手馴れているフィウメも少しだけ後悔していた。幾ら何でも、芽が出そうだからって……全部をつかおうとするのは間違いだったと、今ならわかる。
「夕食のサラダにするべきよね」
 薄切りの大半を別に出した片手鍋に放り込んで茹でることにした。薄切りだから、潰すのも楽になるだろうし。

 水気を切ったジャガイモ達はバットに広げ、薄力粉をまぶす。茶こしの形に合わせて敷き詰めて、上からもう一つの茶こしを重ねて。あたためておいた油で揚げれば小さな器が出来上がる。仕込んだジャガイモがなくなるまで繰り返して、可愛らしい器がいくつも完成していた。
 油をきった器に軽く塩を振って、今日のお茶のメイン、ドラジェを見栄えよく積み上げる。そこで興がのってきたフィウメは、とっておきのスイーツプレートを持ち出して、どれだけ可愛らしい仕上がりになるかの試行錯誤を始めるのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【la0452/フィウメ・モンテクッコリ/女/22歳/放浪者/グラップラー×セイント/手際、鮮やかに】

フットワークが軽く、気紛れに見えても清浄な場所を本能で選び取る。
けれど内面は、願望に忠実なのかもしれません。
おまかせノベル -
石田まきば クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年06月27日

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