▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『知らないはずのモノがたり 』
クレール・ディンセルフka0586

 ――クレール・ディンセルフ(ka0586)さんの印象は?

 初めて相対した時から目に優しくなかった、と聞いています。
 メモ書きを見るにあの時の観察者は徹夜明けだったそうですから。活きが良過ぎるとまで添えられていました。どうもクレールさんのデータを取るのが面倒と思われたようで。
 研究における先達を敬う気持ちが全く見られない、なんて言葉まで……
「歪虚に堕ちて、ゾンビまで使って! これが正しい道であるもんか!!」
 クレールさんも否定から入るあたり、頑固……いえ、真直ぐな性根をお持ちだと思いますよ。
 資料によれば、集音マイクを優先しスピーカーなど切り捨てたリンドヴルムだったそうです。会話不可能な状況は良いことだったのでしょうか?
 映像資料……ああ、さっきの音声もこの資料からのピックアップなんですけどね。とにかく拝見していますが、カメラ越しに見た瞳はある意味で似ていらっしゃいましたね。
 クレールさんもずいぶんと観察者さん、つまりカメラの方を見ているようですし……なるほど、これは味方であれば頼もしく、敵であれば目障りと感じるというわけですか。
 メモ欄に二重線で消された添え書きが……ちょっと待ってください。目の付け所は悪くないが、手放しでほめるほどではない、と。
 カメラを壊したお話などを聞きますし、作戦がうまく効いていたみたいですね。
 それとこの資料には『眩しき高き鋼の声(トライアルトラベラー)』って書いてありますね。


 ――名付けの意味を教えてください。

 改めて確認しますと、とても元気過ぎる方なんですね。声量がいつも大きい印象をうけます。その……ちょっとだけ、映像資料の音量を下げさせていただいてます、すみません。
 更に小回りが利くと言いますか、動線が活発と言いますか。とても活発なかたで……なるおど、ですから『高き声』となっているのでしょう。
 鍛冶師の家でお生まれになったという話を聞いていますから、そちらが理由なのでしょうか。確かに工房なり人混みなり、騒々しい所で過ごすには利点ですものね。喉も丈夫そうです、咄嗟の合図によく通る声は美点ですよ!
 『眩しき鋼』についてもご職業関連だと思われます。覚醒者としては機導師のクラスをお持ちだと聞いていますから。印象の時にもお話しした光の件は機導師のスキルのお話なのでは。
 そうですね、他の映像記録もありますから、該当部分を確認していきましょうか。

『映像A』
 炎を背後に散らばろうとする何体ものゾンビ達。剣と盾、つまり近接戦闘を主とする彼等が遠方からの攻撃に対してとれる手段はそう多くない。
 クレールの構える純白の杖、その先端の歯車から大きな三角の光が浮かび上がった。
「ここで少しでも抑えないと……!」
 声を合図に、三本の光がそれぞれ別のゾンビへ向かって、迸る。

『映像B』
「高みの見物とか……っ!」
 映像外からの声を切欠に、映像が移り変わっていく。
 部分的に機械の身体を持つ巨人には既に別の光が向かっている。そこに重ねるように、クレールからも同じ光が撃ちだされていく。
 三体の巨人たちそれぞれに与えられたダメージを予測し、蓄積された数値を算出しているらしき数字が映像の端を流れていく。
 攻撃手であるハンター達を順に写し、クレールの順番となった時。熱い感情を秘めたと分かる瞳が、煌めいた。

『映像C』
 おびただしい数の空飛ぶ剣機達が、ハンター達の下へ集っていく。蝙蝠と鴉型であるためか、映像は暗幕で覆われたように黒に染まっていく。
 騒音とは別の要因か、一度、映像が大きく揺れた。
 二つの突風が吹いて黒の世界が薄れようとしていく。歌声が響く中、クレールが幕から文字通り飛び出してきた。
 舞台を滑るように空中を駆けあがる手にはやはりあの白い杖。しかし飛び出すのはただの光ではなく、三振りの刃。
 三日月を思わせる刃は、全て真直ぐに向かってきていた。
「くたばれぇぇぇぇっ!!」
 しかし映像は無慈悲にも、蜘蛛型の剣機達がつくりだした汚染結界へと移り変わっていく。

『映像D』
 デバイスの画面が三つに増えた。その画面其々に、同じ大爪が向かって来ている。
 着弾と呼んでいいのだろうか。真直ぐに飛んできた爪との接触衝撃タイミングは揃っていない。カメラが向かうその先、射手であるクレールは僅かに首を傾げながら、周囲へ警戒の視線を巡らせているらしい。
「底意地の悪いあの男のことだから、監視役が居るはず! ……どこ?」

 こうして見返していますと、クレールさんってデルタレイがお好きなんでしょうか?
 使い勝手を考えて二方向のオリジナルスキル化……こだわりを感じます。これは職人故でしょうか。
 名付けについては初接触時の話だと聞いていますし、これは観察者の予測が大当たりだと言えるかもしれません。
 あとは……これですね、『トライアルトラベラー』。こちらはメモ書きが残っているので簡易に纏めさせていただきますと、思いつきが最初だそうですよ。
 ですが邂逅を繰り返しながらも色々と、思いついた策を行動に移していらっしゃったことはこちらも把握しています。そちらも纏めますと、道を模索しながらも進む者、という意味合いではないでしょうか。
 ですが全てを肯定するのではなく、皮肉も込められていたみたいです。走り書きが……実行前に可能性を算出し、効率化を図るべき……で合っていると思いますが、なにぶん読みにくい字でして。

『映像E』
 叫びながらクレールが振りかぶる得物が、三色の光に呼応するように閃く。しかし映像に溢れるのは炎で、今にも飛び出してきそうなほど。
 映像が目まぐるしく切り替わっていくのだが、何処も真っ赤なまま。時折真っ黒な、映像とも呼べない画面も挟まれている。注視して見れば、カメラの破損を示す文字が端に浮かんでいた。
「随分とボロボロになってるようで!」
 高々と声をあげるクレールの姿が見え始めたところで、映像は固定化された。
「……あれ?」
 首を傾げた瞬間、勢いよく顔へとズームイン!

 この映像は随分と悪質ですね。クレールさんを揶揄う気満々じゃないですか。これで未編集とか、撮影技術も非常に上等なもので惜しい技術です。
 部外者の私でもちょっと真顔は維持できそうにありませ……いえ、申し訳ないと……はい、耐えます、ごめんなさい!


 ――餞別にも意味があるんですか?

 完全なる私の推測なので、そこは予めご了承くださいね。
 最期の置き土産、と言うのは得てして受け取る側によって意味が変わるものだと思いますから。
 機導師という似た経歴は、相対性をより際立たせていたと思うのです。
 観察者は闇を好んでいたと聞きます。クレールさんは正しい道を求めていらっしゃいますから、きっと光のように相反する存在と認識されていたのでは?
 同じところがあるからこそ、正反対の部分が際立ったと思います。歩み寄るなんて考えが思い浮かぶことは皆無だったでしょうし。
 決して交わることのない平行線の道筋の中で、敵対関係とはいえ邂逅する、関わるというのは貴重な体験だったと思います。
 少なくとも観察者の方から見れば、正反対だからこそ、記憶から消しきれない何かがあったのではないかと。
 最期だからと向きあった結果ではないでしょうかね。『光の下、歪みなく』……なんて、随分と皮肉屋な方だと思いますよ。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【ka0586/クレール・ディンセルフ/女/22歳/鍛機導師/観察対象はデバイスを殴り隊】

虚空へと消えた、今ではもう手に入らない記憶媒体……の、中身。
研究に必要ならば、検体の観察もじっくりねっとり繰り返しているのです。
おまかせノベル -
石田まきば クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2019年07月02日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.