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『晴れたり曇ったりの日々を一緒に! 』
パトリシア=K=ポラリスka5996)&天王寺茜ka4080

 ホイップクリームを絞り出し、くるっと小さな輪を描いては平らに均した円形のケーキ、その縁をなぞるように一つずつ増やしていく。大衆食堂で働いていたのでケーキ作りは本職ではないが、滑らかな手つきで鼻歌交じりに手順を進める。中央を除いた全体に苺やブルーベリー、オレンジまでふんだんに使い彩って、最後にホワイトチョコレートで出来たプレートを載せた。チョコペンを取り装飾を施したまではいいが、肝心のメッセージを書く段階で詰まる。
「……自分の名前を書くっていうのは流石にないわよね……?」
 照れ臭さに頬を掻きつつ呟く。作る分にはあまり気にならなかったが、この段階に至ってそわそわと落ち着かない気分になった。自分で自分の誕生日を祝う為のケーキを作る、それが少し気恥ずかしい。大切な友達の為に美味しい物を作りたい、そんな気持ちでいたのが不意に現実へと引き戻されたようで。しかし照れ以上に祝ってくれる友達がいる嬉しさの方が大きかった。一分程悩んだ末に筆記体でさらさらと“Happy Birthday!!”とだけ書いて一旦しまう。
「それじゃあ次は、うちの子たちのご飯を用意しないとね」
 と言って視線を落とせば、大型小型問わず沢山いる犬猫たちが足元で目を輝かせる。仕事で帰るのが遅くなってしまった時を除き、ペットフードもなるべく手作りのものを用意するのだが、今日は特別な日なので普段より奮発している。みんなあまり好き嫌いしないとはいえ、数が数だけにその量も膨大だ。改めて気合を入れ直していると太腿に重みがのしかかってきて、前につんのめりそうになるのを何とか踏み留まる。振り返れば千切れそうな勢いで尻尾を振る犬たちと、興味無さげな素振りでこちらの様子を窺っている猫たちの姿がある。人の言葉が解るんじゃないかと思うのはしょっちゅうだ。だから笑いながら振り返って言い含めてみる。
「ご飯は後で、みんな一緒に食べること! それまではお出迎えの準備をしててね?」
 元気な数匹の犬がワンと答え、宜しいと満面の笑みを浮かべてみせた。部屋の片付けはもう済ませてあるので段取りはバッチリである。
 今日は七月二十四日。異世界で迎える天王寺茜(ka4080)の誕生日だ。

 ◆◇◆

『アカネのお部屋デ、パーティーしましょ♪』
 そうメールを送信したのは約一週間前のことだ。本当なら直接会って提案して、何なら前倒しで祝いたいくらいの気持ちでいたのだが、そんなささやかな日常すらままならないのが実情だ。クリムゾンウェストの各地で起きている始祖たる七との戦いや邪神ファナティックブラッドを巡る決断。ハンターオフィスに舞い込む仕事にも危険な内容が増えて、世界の命運をかけた死と隣り合わせの決戦が迫る最中にある。だからといって悲嘆に暮れていても何か良くなるわけでもない。休める時は休んでやりたいことをして、万全の状態でいるのが一番いい。
 容赦なく照りつける陽射しを諸共せず、アパートへと続く道をずんずん突き進む。途中で興味を惹かれる何かがあっても一瞥を向けるに留めて、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は茜が暮らす部屋の前までやってきた。と、そこで少し静止する。首を傾げ数秒考えてから、えいっとおでこでインターホンを押した。すぐに「はーい」とよく通る声で返事が聞こえ、近付いてくる足音は辿々しい。待って待ってという声はきっと、大切な家族に対してのものだ。
「パティ、お待たせ――」
「アカネ、お誕生日オメデトなのヨー!」
 それ程勢いはついていないものの、半ば体当たりするように開いた扉の先、茜にダイブすると彼女は驚きつつもしっかり受け止めてくれた。玄関と廊下を仕切るペット用の柵の向こうでは、可愛い犬猫がこちらを見て大きな目を煌めかせている。もうお昼を過ぎている為いの一番ではないかもしれないが顔を合わせてすぐ言えたので満足だ。
「こんなに一杯用意してくれたの?」
「ダッテ、どれもアカネに食べてほしいカラ」
「あはは、パティらしいわね。今日はわざわざ来てくれてありがと」
 言って両手で抱え持ったプレゼントの幾つかを茜が取ってくれた。挨拶して中に入ると、彼女の後ろをついていきつつ空いた手で人懐っこい子を撫でる。座っててもいいわよと席を勧められたものの今日の主役は茜だ。お客様という立場に甘えることはせず、自分が持ち込んだお菓子をお皿に入れて並べたりジュースを用意したりとパーティーの準備を手伝った。そして無事に場が整うと、
「ハッピバースデー、アカネ♪」
 と改めて歌を歌う。歌うのも歌われるのも慣れたメロディを手拍子をつけて口ずさむと、正面に座っている茜も少し恥ずかしそうながら一緒に歌ってくれた。一応カーテンを閉めて暗くした中、蝋燭の火が吹き消える。クラッカーは犬猫たちが怖がるといけないので拍手で祝った。
「ホントありがとね。パティが言ってくれなかったら私、自分の誕生日も忘れてたかも?」
「んん〜。みんな忙しーだカラ、難しいのネ」
「仕事を入れてなくてよかったわ」
 勿体無いもんねと茜が笑い、それに釣られてパトリシアも笑い返した。世の中の大変なあれこれを持ち込むのではなく、今日一緒にいられる幸せを思いっきり満喫したい。カーテンを開けて戻ってくると茜がケーキを取り分けたところだった。本人は謙遜するが、お店で売っているものと遜色ない綺麗なケーキにフォークを通し、食べてみたら予想以上に美味しくて、はっと目を開き勢いよく茜を見る。口一杯頬張った状態でモゴモゴと喋っても伝わらずしっかり咀嚼し、ジュースも飲んでから口を開いた。
「アカネは料理ダケじゃなくテ、お菓子モすごーくジョーズ!」
「そ、そう? 少し甘かったかなって思ってたからよかったわ」
 まだまだあるわよ、と大皿にある残りのケーキを示して茜が笑う。その頬が少し赤くなっているのが見えて、更に幸せな気持ちになった。しっかり者で真面目で優しくて、ネコさんとわんこのことが大好き。そして褒めると照れ笑いする、大好きな親友。同じリアルブルー出身で、それもLH044で暮らしていた者同士だが歪虚の襲撃前も襲撃後に保護された戦艦内でも面識はなく、ハンターになって間もない頃に同じ依頼を受けたのが最初だった。同い年で同性、波長が合うのか依頼でもよく一緒になって。だから仲良くなったのはごく自然なことだ。
 一切れケーキを食べた後で、二人で分担しペットフードを配った。満足して昼寝する子もいれば遊んで遊んでと懐いてくる子もいる。噛まないから平気よという茜の言葉通り、どの子も行儀が良くて感心しきりだ。遊んでいたらまたお腹が空き始め、ケーキは楽しみに置いておいて自分が持ってきた物のどちらを食べようか指差し考える。一つはこの街リゼリオで人気のお菓子屋さんのアイシングクッキー、後もう一つは――。
「あ、これバチャーレのよね?」
「ういっ。アカネと食べるナラ、必須カナと思いまして♪」
「嬉しい。また今度一緒に行きましょ?」
「モチロンだよー」
 バチャーレは茜とよく行く移民の村で、お祭りに参加したり畑荒らしを追い払ったりと、依頼でも縁の深い所だ。名産のヒスイトウモロコシで作ったポップコーンは粒の状態ほど濃くはないが、全体的に翡翠色の面影が見て取れる色合いをしている。茜の誘いにぐっと親指を立ててみせた。数個手のひらの上に転がして口に放り込むと、さっくりとした歯応えの後に控えめな塩味が広がる。アイシングクッキーのお皿にも手を伸ばして、ハート型の物は茜に食べて欲しいので星型の方を選んだ。そんな思惑を察してくれたのか否か、彼女の手はピンクのハート型クッキーに伸びる。美味しいと頬が緩むのを見てこちらまで嬉しくなった。横座りの膝の上に乗ってきたロシアンブルーの子の背中を喜びに任せて撫でまくったら身体がこちら側に倒れて、胴体と手足がピンとなる。気持ちよさそうに目を閉じるので茜と話しつつ食べつつずっと撫でていたが、もふもふしたお腹の気持ちよさが病みつきになりそうだ。
 悔いがないように楽しいと可愛いと美味しいを目一杯詰め込んで。そしてまたこんな日を一緒に過ごせたら、来年も茜の誕生日を祝えたら。そんな願いを込めて、共通の思い出も知らない話も、沢山話そうと思う。

 ◆◇◆

「何だかすごく懐いてるわね?」
「アカネ、おかえり!」
 濡れた髪を拭きながら部屋に戻ってくると、パトリシアが顔をあげ笑顔で迎えてくれる。先にお風呂に入った彼女もパジャマに着替えていてその膝の上にはまた茜の愛猫、ミールの姿があった。仰向けの状態でされるがままになっているのは心を許している証拠。
 床に敷いた布団の上、二枚をぴったりとくっつけているので距離はあまり離れていない。座って、枕に顎を乗せて寝ているチワワの子が上目遣いにこちらを見るので撫で摩るとまた目を閉じた。
「そだそだ! これネ、お祝いのアイテムだヨっ」
 枕元に置いてあった物を両手で掬うように持って差し出してくる。
「いいの?」
「思い出もダイジ、だけど、形に残るモノも欲しくテ。……ダメ?」
「勿論嬉しいわよ、ありがと! ……今すぐ開けてみてもいい?」
 不安げな顔が一転し、ウンウンと頷いてくれたので綺麗に包装されたそれをリボンを解いて開く。そうして出てきたのは真っ白な花の髪飾りだった。花びらが三枚あって、耳よりは小さめ程度のサイズ。園芸に使う植物ではないのであまり自信はないが、形状的には延齢草のような気がする。花びらと合わせれば六芒星に似た形状をしている葉は黄緑に近く、変色した自身の瞳とパトリシアの瞳の中間の色に見えた。
「可愛いから勿体無い気がするけど、でも使わない方がもっと勿体無いわよね。ここぞって時につけたらもっと頑張れる気がするわ」
 かけがえのない友達からのプレゼントに傷をつけまいとして奮闘出来そうだ。タオルの端で口元を隠していても嬉しさは隠しきれずに、ますます幸せな気持ちになりながらお返しをするにはどうすればいいかと考える。
「そうだ、パティの誕生日って確か十一月だったわよね? その時は私も一杯プレゼントを用意するから四ヶ月も先だけど予約してもいいかな?」
 なにせクッキーとポップコーンにジェオルジのお祭りで買ったという季節の果実を使った新鮮なジュースとお花の髪飾り、これだけの物を貰ったら負けず嫌いとはまた違うが是非お返しをしたいと思うのが普通だ。多分髪飾りもヴァリオスで作られた物だろうし、手間がかかっていることは疑いようもない。同時にこんなにもこの世界の地理に馴染む程、長く暮らしているのだと思い出した。パトリシアの目に一瞬困惑の色が浮かんで、笑みの形へと変わる。
「ヨヤク、りょーかいダヨ! パティ、お楽しみすぎテ眠れないカモー」
 ふふふ、と溢れる笑い声は抱えた枕に吸い込まれた。彼女が戸惑ったのはきっと、その頃世界がどうなっているか判らないからだ。パトリシアとはこちらに転移してくる前は赤の他人で、共に戦って遊んで、楽しいことも悲しいことも様々な出来事を通して友達になれた。最後の戦いの結果、世界がどう変わるか誰も知らない。誰もが死力を尽くそうが報われるとは限らない――それが現実だと茜は知っている。ただ一ついえるのは自分たちの友情は決して変わらないということ。
 ミールが急に顔を上げるとパトリシアの膝から降り、布団の上についた茜の腕へと身体を擦り付ける。もしかしてほんの少しだけある、しかし絶対に消すことの出来ない不安を感じ取り、そして大丈夫だとそう言ってくれているのだろうか。自分より高い体温が心地いい。指切りをせがまれ、繋いだパトリシアの手もとても温かかった。
 動物たちもみな定位置に落ち着いて明かりについた紐を引き、薄暗くなった部屋の中でそれぞれ布団へ潜り込む。昼間からずっと話していても会話は尽きることなく、ゴロゴロしながら語るのは未来の話だ。どこに腰を落ち着けるべきか考え続けて、それでも未だに答えは見つからないから。だからとりあえず、この無邪気な友達に何を贈ろうか考える。好きな味のケーキを手作りして似合う贈り物を用意して後はどうしよう。楽しかった今日を噛み締めて明るい未来を思い描く。いつしか会話は途切れ二人と犬猫たちの寝息だけが響いていた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ここまで目を通して下さり、ありがとうございます。
フライングですが、お誕生日おめでとうございます!
24日に合わせるか迷いつつ、大規模作戦の方もその頃には
大きな進展がありそうな気がしたので予定通りにしました。
お花の髪飾りは完全に独断と偏見というかドストレートに
誕生日花にしています。センスがなくて申し訳ないですが
祝いたいという気持ちは目一杯込めました。
今回は本当にありがとうございました!
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2019年07月12日

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