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『お人形遊びって歳でも無い筈なんだけど。 』
シリューナ・リュクテイア3785)&ファルス・ティレイラ(3733)

 あーもー慌ててもしょうがないってわかってるんだけど、でも!
 こんな事になるなんて、思ってなかったんだってばっ。
 重いし嵩張ってしょうがないけど、放っとく訳にも行かないしっ。

 とにかく早く逃げないとっ!



 事の起こりはゴーストネットOFF管理人の瀬名雫(NPCA003)が、馴染みの竜族(何か凄い言い回しの気がするが単なる事実だ)の少女であるファルス・ティレイラ(3733)とちょっとした「調査」に赴いた事から始まる。
 何の「調査」かと言えば、勿論、怪奇事件――怪奇現象。

 ……そう、ゴーストネットOFFに寄せられた、とある怪しい噂の正体を解き明かす為の「調査」である。

 噂の現場はとある木製の工芸品が売られているお店。
 ぱっと見では、特に変わった事の無い普通の――クラフト的な手作り感溢れるお店。の割に何故か、この店で店員らしい姿を見た者が居ないと言うちょっと変な情報が付いている。

 その上、どういう訳か。

 店内に入ると、誰かに見られている様な感覚がずっと続く、らしい。
 まるで陳列されている工芸品全てから見つめられている様な――とか何とか。
 言ってしまえば、それだけの他愛無い話なのである。

 が、そこにちょっとした尾鰭が付いた事で、俄然噂になっていた。

 ――その店に行ったまま、行方不明になった人が居るらしい。噂を知って興味本位で行ってみたまま帰って来ないのだとか。ひょっとすると、店からすら出ていないのでは――?
 そんな話が、一件どころでは無く数件報告されている。勿論、この手の話の常ではっきり検証出来る類の報告で無い物も多いが――それにしても、偶然や便乗の賑やかし、創作で片付けるには少々引っ掛かる報告がそれなりの数あったのだ。

 結果。
 ――これはきっと、店の奥には「帰って来ない人と同じ姿をした木像」がひしめいているのだ――とか何とか。
 噂としてはそんな話に纏まっている。

 で、折角だから次の休みに調査に行ってみよう、と言う流れになった訳なのだ。



「えっと、こんにちはー……」
「おじゃましてもいいですかー……?」

 ……。

 噂の店に到着し、入口と思しき所から中に向かって声を掛けたが――案の定、返事は無い。

「って、やっぱり誰も居なさそうだね。そこについては本当っぽい、と」
「暫くお店の中うろうろして待っててみよっか」
「まずは、それでお店の人が来るかどうか、だね」
 そう、噂の内容一つ一つを検証する必要がある――まずは、店員が本当に居ないのかどうか。今の時点ではただの中座と言う可能性は捨て切れない。
 その可能性を頭の隅に置きつつ、ティレイラは何となく店内を見渡してみる。
「でも本当に何か誰かに見られてるみたいな感じ……するかも?」
「んー、あっ、この仏像の目線かも」
 でもこの程度じゃまだまだ良くある話。
 もっとこう、何か、反論の余地無く怪奇現象! って感じの物があったら面白いんだけどなぁ――そんな風にぼやきつつ、雫は調査がてらに店内の工芸品を堂々と見て回り始めた。更には時々、衒い無く手に取ったりもして――えっ、とティレイラはその様子に少し焦る。何と言うか、もっと警戒した方がいいのでは――思うが、大丈夫大丈夫何かあったとしてもこんな入口すぐの所にそんなヤバい物置いてあったりしないでしょ流石に、と雫からはあっさり返って来た。……そして事実、何も起きていない。

 そんな雫の様子を見、考え過ぎだったかな、とティレイラの方でも少し気が緩む。



 何だか、魅入られる様な感じがした。

 暫し店内の工芸品を見て回った後の事、ある一角を何となく見てのティレイラの感覚。一瞬、その感覚の源がわからず、あれ、と引っ掛かった。……魅入られる様な感覚がしたそこには、やっぱり木製の工芸品がたくさん――どれに感じたんだろう、と俄かに迷うが、つまりそこに並んでいる工芸品どれもに何故か魔力の流れを感じたのだと少し遅れて気が付いた。
 これまで何も無かった所からの、この感覚。ちょっと不思議である。あ、逸品って事なのかな、と思い、一つ手に取ってみた。手に馴染む木の感触にほっこりする。何となく撫でる――と。

 撫でたその指先から、何かが身体に流れ込んで来る様な気がした。えっ、と思い、撫でる手を止める――が、その感覚は変わらない。流れ込んで来る何か――そもそも、「流れ込んで来る」なんて言う感覚をこんな場面で感じるとしたなら、それは先程「流れを感じた」魔力でしか有り得ない。ティレイラは慌てて集中、こういう場合の対処法――魔法的な防御の形で抵抗を試みる。
 が、試みる側から指先が、ぱき、みしりと乾いた音を立てて木の如き材質に変化していくのが実感としてわかり、うわうわうわとパニックになりかかる。見ればまるっきり、自分の手なのに木製のお人形の手にしか見えない。これはいつもの――お姉さまの「趣味」とかで封印されたりするのと同じパターン。だが今ここにお姉さまと言う安全弁は無く、と言うか流れ込んで来る魔力の流れがどんどん強くなって来て、自分の魔力では抵抗し切れないのが肌感覚でわかる。
 どどどどうしよう、何とかしなくちゃ、雫さんだっているんだし、私だけじゃないんだし、こういう不測の事態への対処は今は私の役目で、でも今のままじゃどうしようもなくて――ええいままよとばかりにティレイラは魔力の出力を力尽くで上げる。自然、角と紫の翼、尻尾だけが生えた半人半竜の姿に変化し、更なる抵抗を試みる事になる――が、それでもやっぱり手応えが無い。見える範囲の自分の服も、肌の感覚も木製らしき材質になっている範囲がどんどん広くなっている。そしてどれ程力を籠めて頑張っても、状況が変わらない――!

 どうしよう、どうしたら、せめて雫さんに知らせないとっ――思ったその瞬間、ティレイラの思考がぷつりと途切れる。
 それは、ティレイラの全身が服や靴ごと完全に木像と化したのと、全く同じタイミングだった。



「んー、結局何にも無さそうだよね――ってうわ、何か唐突におっきい木像が置いてあるなあ……等身大の木像か、これもなかなか……って、ええっ!?」

 ティレイラちゃんじゃん、これ。
 それも良く見れば、何かの工芸品を持ってたもしくは手に取ろうとしたっぽい感じの瞬間……? そこで何かがあって、こうなった……? 例えば呪いの人形に呪われちゃったとか……?

 雫としては詳細はわからないが、取り敢えずヤバいと言う事だけはわかる。殆ど反射的に携帯を取り出し、その時点で一旦停止、慌てながらもなるべく冷静にと努めつつ思案。こういう場合に助けを求めるべき相手は――そうだ、ティレイラちゃんの師匠!
 その答えに辿り着くなり、雫は凄まじい速さで簡潔に状況を纏めたメールを作成、ティレイラちゃんの師匠ことシリューナ・リュクテイア(3785)のアドレスへと送信する。



 携帯にメールの着信音。

 あら、何かしら? と思いつつ、シリューナは着信メールを確かめる――と、その内容は、瀬名雫からのSOSだった。ティレイラが木製の工芸品の呪いか何かで木像にされちゃったと思しき事態、ゴーストネットに寄せられた噂の調査でとある店を訪れていた事の次第が簡潔に書かれている。そして当の店の住所と周辺地図も添付。あと木像状態のティレイラの写真も添付されていた。

 ……その写真を見た時点で、シリューナの目の色が変わる。

 あらあら、こんな珍しい姿になっちゃって。
 これは是非とも愛でに行かないと……じゃなかった、助けに行かないと、よね。

 小さく笑みを浮かべつつ、シリューナは自分が次に取るべき行動を決める。
 元々あった他の予定は、キャンセルで。



 メールで連絡は入れておいたが、だからってここでこのまま何もしないで待っている訳にも行かない。
 と言うか元々の噂からして早く逃げないと色々マズい事になりそうな気がしてならない。

 思いつつ、雫は頭をフル回転。まずは逃げるのが先決――勿論、ティレイラも連れて。と言っても、今の等身大木像状態なティレイラは自力で逃げてくれないのでどうするべきかと俄かに迷う。取り敢えず引き摺ってでも持って行かなければならないと言う事だけは確定事項。でもこのサイズに竜の翼も広がっていると言う移動に困るバランスなのを小柄な女子中学生一人でどうやって?
 ……あああもうどうでもいいや、と雫は取り敢えず力を籠めて確り握れそうな角をおもむろに掴み、殆ど横倒し状態になっているティレイラをずりずりと引き摺り歩き出した。何と言うか、竜の尊厳もへったくれも無い。そして重い。……木像ってこんなに重い物だったっけと恨めしく思いつつ、雫は必死で店の入口を目指す。邪魔が入りません様に無事逃げ切れます様にと祈りつつ。



 雫とティレイラ(木像)が店の入口に無事辿り着いたのと、シリューナが店を無事見付けたのはほぼ同時だった。合流した所で、雫は盛大に安堵。シリューナはそんな雫に、頑張ったわねと労いを掛けている。

「ティレもちゃんと連れて来てくれて有難う。重かったでしょう?」
「それはまぁ放っておけないし……ティレイラちゃんの師匠なら何とかしてくれるかもって」
「ええ。これなら……まぁ、大丈夫ね。元に戻す事は可能よ」
「っ良かったぁ」
「でも。折角だからもう暫くこのままにしておきたい……とは思わない?」
「えっ……あ、ああ……確かにちょっと可愛いかも……?」
 じっくり見ていると、まるで可愛いお人形である。
 まぁ、お人形遊びって歳でも無い筈なんだけど、こういうのは女の子回路と言うか、ある意味年齢は関係ないかもしれない。
「ふふ。じゃあ、ティレで遊ぶのは先に譲ってあげる。二人共先にうちまで送っておくわ」
「ってティレイラちゃんの師匠はどうするの?」
「ああ、私は……」

 原因の方を確認して来るわ。



 シリューナの魔法薬屋、バックヤード。

 シリューナの能力で空間転移させられこの場に出た雫(とティレイラの木像)。うわあこんな事出来るんだー、と感嘆しつつ、安全な所(多分)に出られたと言う実感が込み上げ、緊張が一気に解けた。
 となると、気になるのは木像状態のティレイラ……である。
 恐らくこの手の事に慣れているティレイラの師匠による「大丈夫」との御墨付き。なら心配は要らないだろうから、単純に目の前の状況を認識する余裕も出てくる。

 つまり、木のお人形。
 そーっと触れてみると、完全に木の感触である。うわー、と思いつつ、何となく頭を撫で撫で。反応が無いにも拘わらず、さっきは引き摺っちゃってごめんねーとか話し掛け、完全にお人形遊び方面の弄り方になって来てしまう。

 と、程無くシリューナもまた戻って来た。

 木像化の原因についてはすぐに判明したらしく、やはりと言うか何と言うか「紛れ込んでいた魔法道具」の仕業だったらしい――不在の店員も店の奥で木像になっていたらしい、とどうも話の流れが完全にシリューナの領分で、取り敢えず店員さんを助けた後に交渉、当たり前の様に当の魔法道具も回収して来たとの事。
 即ち、ゴーストネットに纏めて掲載しておく怪奇話としてはちょっと相応しくないかもなーと言う調査結果が出てしまった訳で(解決してしまった訳だし)、雫としては今回の件、このままシリューナに丸投げしておく事にした。
 つまり、ちょこっと「お人形遊び」をさせて貰った段階で、ティレイラが元に戻るより前に、シリューナの魔法薬屋から辞する事にした訳である。

 いや、折角助けて貰ったティレイラの師匠の「邪魔」になるのも悪いから。



 そしてやっと、木像化したティレイラと「二人きり」になり。

 シリューナは自分への御褒美とばかりにそんなティレイラの鑑賞を始めた。元々、ティレイラを様々な材質のオブジェの形に封印して鑑賞させて貰う事は多いけれど、それでも木製にとなると少々珍しい部類に入る。触れてみれば手触りは確かに木。金属や石などのひんやりした感じとは違い、温かみのある曲線と材質の素朴さがまた新鮮である。これもこれで、悪くない――ううん、とっても素敵。
 これこそ、元々あった予定をキャンセルしてまで助けに出向いた甲斐があったと言う物。

 ふふ。いつもと違うあなたの姿、じっくり愉しませて貰うわね、ティレ?



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 紫の翼を持つ竜族な御二人にはいつもお世話になっております。
 今回も発注有難う御座いました。
 そして今回もまた連休絡みで大変お待たせしてしまっております。諸事情でお客様向けの納期も過ぎてしまっているかもしれません、申し訳なく。

 内容ですが、今回はピンナップから起こす形でお任せ頂きまして……結果、店の方について妙にややこしい設定になってしまった様な気がしています。発端をゴーストネットらしい怪奇事件にしようと「一見普通の店が巻き込まれた」的に見える形を試みただけなんですが何故こうなったのか……。
 あと肝心の後半が駆け足になってしまった気もしているのですが……如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、またの機会が頂ける時がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
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東京怪談
2019年07月17日

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