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『陽だまりの下で 』
cloverla0874

 clover(la0874)の肌を撫でるような温もり。
 セミダブルのベッド脇にある窓から差し込まれる太陽の光。cloverに触れる光が、心地良く感じる。
「休暇かー」
 誰もいない部屋でcloverは一人呟く。
 ライセンサーとしての活動はcloverが予想していた以上に忙しかった。
 同時にそれはcloverの毎日が充実していた事を意味していた。
 そこに舞い込んだ休暇。
 ライセンサーが激務であり、cloverもこの休暇でしっかり体を休める事が大切なのも分かっている。
 そうだとしても――。
「暇だ」
 枕を抱きしめ、大きく寝返りを打つclover。
 先日までは命を賭けてナイトメアと渡り合っていた。cloverにはギリギリの戦いの中にあった記憶が染み付いている。
 その記憶が、休暇を退屈なものへと変貌させていた。
「これだけ暇だと……何すればいいんだ?」

 次の戦いに備えて訓練?
 否、疲労を回復することも大切だ。

 では何か美味しい物でも食べに行くか?
 否、一人で食べてもつまらない。

 そこまで考えたcloverの脳裏に浮かぶ、ある一人の男の影。
「……あ、おっさんがいないんだ」
 考えてみれば、最近は依頼でもおっさんと一緒に行動を共にしていた。
 偶然の再会でよく行動に出入りしていたが、気付けばおっさんの鍵を貰って出入りするような仲になっていた。
 共に居る時間の長さが、おっさんの存在を『当たり前』にしていた。
 だが、だからこそcloverの口から溢れる言葉があった。
「なんでオレを置いてくかなー。誘ってくれてもいいじゃん」
 正直、おっさんが何処へ何の依頼へ行ったのかも知らない。
 ただ、cloverにとってはおっさんが自分を連れて行ってくれなかった事に不満を抱えていた。
 自分を連れて行けない理由でもあるのか。
「俺の責任者なんだから、責任とれーっ」
 抱きしめてきた枕を放り投げるように、cloverは両手足をセミダブルのベッドへ投げ出した。
 誰も聞いていない言葉なのは分かっている。
 それでも不平不満を言わずにはいられなかった。
「クロ君が寂しがってますよ? 気付いてくれたっていいじゃん!」
 語気を強めるclover。
 一度溢れた言葉は、堰を切ったように止まらない。
 おっさんにとって、自分はその程度の存在なのか。
 責任者だったら、ずっと傍に置くべきじゃないのか。
 もしかして、今日は他の奴らと楽しく過ごしているのではないか。
 cloverの心に渦巻く不安と心配。

 ――だが。
 ここでcloverは、重大な事に気付く。
「……って、これなんか面倒臭い系の彼女じゃね!?」
 思わずセミダブルのベッドから起き上がるclover。
 面倒臭い系の、彼女?
 それはおかしい。
 だって、おっさんは男で。cloverも男だ。
 なのに、つい先程までベッドでおっさんへの愚痴と一緒に気持ちを吐き出していた気がする。誰にも聞かれていない事は良かったが……。
「いや、良くねぇ。ち、違うからっ!
 そもそもクロ君は男の子だしーっ! 可愛い子も大好きだし。おっさんなんか、朝起きた時に髭も生えてて、全っっっ然可愛くないしっ!」
 誰もいない部屋で矢継ぎ早に言い訳を披露するclover。
 そう、そんなはずはない。あるはずがない。あってはならない。
 つい先程まで繰り返していた愚痴を記憶から掻き消すように必死で言葉を並べる。
「大体、おっさんなんかロマンチックな所も皆無だしっ! 七夕の時だって、全然ムードを大切にしてくれないし……。
 あ、でも蛍の時はちょっとロマンチックだったな。俺が女だったらとか……」
 ここでcloverの脳裏に先日の思い出がリフレイン。
 浮かび上がる情景が、一瞬にしてcloverの顔を紅潮させる。
「い、いやいやいや! 違うから。絶対に。何もかも。
 だって、おっさんは男で。俺も男で。だからそういう感じじゃなくて」
 心と頭がバラバラに機能し、それらが一斉に暴走したかのような感覚。
 何をどうすればいいのか。
 自分は何をしたかったのか。
 そう考えて悶えるclover。反射的に近くにあった枕を再びぎゅっと抱きしめる。
 ここで――cloverは、根本的な事に気付く。
「……あ、これ。おっさんの枕……」
 実はcloverがいる部屋はおっさんの部屋であり、cloverが乗っているセミダブルのベッドもおっさんのベッドである。
 つまり、今cloverが抱きしめている枕は、おっさんが愛用している枕であり――。
「うわわわぁぁぁ!」
 脳裏に浮かんだ光景を掻き消すように枕を遠ざけるclover。
 その反動でcloverの体はセミダブルのベッドから外れ、重力へ引かれる。
 cloverの体は部屋の床へ落下。床板が揺れて衝撃が走る。
 だが、cloverは自分の体を起こそうとせず、俯せのままで叫んだ。
「なんでだよー……もーっ!」
 恥ずかしさと、少しばかりの悔しさを胸に顔を隠すclover。
 しかし、真っ赤になった顔を隠している物が――先程まで抱きしめてきたおっさんの枕だった事に気付いていなかった。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
近藤豊です。
この度は発注ありがとうございました。イメージ的にこちらで表現を膨らませてみましたが、如何だったでしょうか。イメージと異なる部分がございましたらその旨いただければ幸いです。
それではまだご縁がございましたら宜しくお願い致します。
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グロリアスドライヴ
2019年07月23日

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