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『『部屋探し』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 紫陽花が美しく咲き誇る時期に、アレスディア・ヴォルフリート(8879)はディラ・ビラジス(NPC5500)と共に2人で暮らす部屋探しをしていた。
 幾つかの部屋を内見したあと、2人は喫茶店に入り、不動産屋で紹介された物件データーを見ていた。
 都心に向かいやすい場所で、買い物などが不便ではなければ2人とも特にこだわりはなかった。
「そういえば、指輪は要らないんだったか?」
 この国でも、プロポーズの際に男性から女性に婚約指輪を贈る習慣があるみたいだけれどと、ディラは続けた。
「ディラがいれば、物はなくても良い。大切なものが増えすぎたら、護りきれぬ。それに……」
 少し考えて、珍しくアレスディアは悪戯っぽく言う。
「私が、ディラ以外の誰かと共に歩むことなどないのは、わかっているだろう」
「……んー……」
 ディラは眉を寄せて軽く唸り声を上げる。
 なんだか少し恥ずかしげというか、困ったような顔だ。
「婚約指輪はともかく……結婚指輪はするだろ?」
 ペアリングはしているものの、2人で注文して作った刻印入りの指輪はしたいというのが、ディラの意思らしい。
「うむ……であれば……いつか、ディラに一緒に来てほしいところがある。そこで互いに交し合う指輪を見てみるのも、良いかもしれぬ」
 将来的に、いつかこの地を――東京を旅立つときに、故郷に立ち寄りたいとアレスディアは思っていた。
 そこで結婚の指輪を交わし合うことが出来れば、と。
「いつかっていつだよ。それまでお預け?」
 ディラが不満そうに言う。
 婚約指輪は不要でも、プロポーズは受けてくれた、のではなかったのだろうか。
 当然2人はこの国の国籍などなく、互いが互いの伴侶であることを表す手段が他にない。
「ううむ……」
 アレスディアは言い淀んでしまう。まだしばらくこの地を離れることはないだろう、し。
「アレスが俺以外選ぶはずはないと――解っていたとしても、他の男にアンタは俺のものだと証明できるものがほしい」
「貰ったばかりのペアリングがある」
 そうアレスディアが答えると、まだ少し残念そうながらもディラは頷いた。
「……とにかく、早く部屋決めて一緒に住もう」
 ディラはテーブルに置かれた物件データーのうち、一つのマンションを指差した。
「俺はここが一番良いと思う。駅から近いし、十分な広さのリビングがある。トレーニングに適した公園も近くにあるしな」
 1LDKの比較的新しいマンションだった。
 部屋の数は少ないが、十分な広さがある。
「リビングの他、一緒に使う部屋が一つか」
 子ども達に勉強を教える望みを明かした今、自身の勉強を隠す必要はもうなく、個人の部屋を必要としていない。
 物を多く持ちたくないこともあり、多くの部屋や収納スペースもなくて構わないと思っていた。
 そうだな、ここにしようと頷きかけたアレスディア……。
「一緒に使う部屋というか、ここは寝室だ」
 ディラの言葉に、アレスディアははっとする。
 部屋で共に勉強をしたり、筋トレをしたり、作戦を練ったりする自分達をイメージしていたけれど。
 それはリビングですることで。一つだけ分けられているこの部屋の用途は、寝室、なのだ。
「一つで、いいよな?」
 ディラが問いかけた途端、アレスディアの顔が真っ赤に染まる。
「う、む……それ、は……いや……そう、だな……」
 彷徨わせていた視線を、おずおずとディラに目を向ける。
 ディラは不思議そうな顔で、アレスディアを見ていた。
「私達……そういう、関係……なんだよな……?」
「……じゃないのか?」
 今更何を言っているんだと、言いだしそうな口調だった。
 アレスディア自身も、そう、思う。
「い、いや……」
「この部屋なら、体に合ったダブルベッド置けそうだし」
「ダブ……」
 ディラのさも当然というような言葉に、アレスディアの顔はますます赤くなる。
(なんだ、この反応は……)
 と、ディラの方もアレスディアの予想外の反応に、鼓動を高鳴らせていた。
 野宿をするときも、仕事で泊りになるときも、意識されることなく傍で熟睡していた彼女の反応とは思えない。
 異性として、唯一の愛し合う対象として、意識されていることがたまらなく嬉しく……そして、そんな彼女を、悶えそうなほど可愛く思った。
(人目がなけりゃ、押し倒してる)
 2人だけの部屋で過ごす数々の甘い妄想が、ディラの脳裏を駆け巡っていく。
 そんなディラの欲望など知らず、アレスディアはちらりとディラを見た。
(私は、この人と――ディラと共に歩んでいくんだ)
 テーブルの上に置かれたディラの手に、アレスディアは手を重ねて、握りしめた。
「ディラ……今まで、共に歩んでくれて、ありがとう。これからも……よろしく」
「こっちこそ。感謝してる。これからも……ずっと、アレスの傍に」
 ディラがアレスディアの手を握り返す。
 2人は指と指を絡めて手を繋ぎ合って、見つめ合った。
「熱いぞ、風邪でもひいたか?」
「アレスが俺を熱くしてるんだ。……アレスと共に、寝て起きれば治まる熱だ」
 くすっとディラが笑い、アレスディアの鼓動が高鳴っていく。
 これまでとは違う2人で過ごす時間は、どのようなものになるのだろう。
 繋がれたディラの手の熱さを感じながら、アレスディアはため息を一つ、漏らした。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

ライターの川岸満里亜です。
イベントの方は、同シーンの中で視点を切り替える、こんな書き方でお許しください。
今までのアレスディアさんからは考えられないような反応に、ディラはキュン死寸前です……!
この度もご依頼ありがとうございました。
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東京怪談
2019年07月25日

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