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『華倫と芽愛 』
華倫la0118

 グロリアスベース内に存在する、とある喫茶店。ライセンサーや職員達がゆったりと時間を過ごしている中、その隅っこにはサングラスをかけた少女と女がいた。片や白兎の耳がピンと跳ね、片や白衣の裾が揺れている。少女の名前は華倫(la0118)、女の名前は内藤 メア(lz0058)。二人はとある目的の下に集っていた。
「お初にお目にかかりますわ、芽愛様。姓は姫、名は白。字は華倫と申します。どうぞお見知り置きを」
「どうも。私がナイトメア生態科学研究室に所属する内藤メアだ。君の事は既に窺っている。同好の士に出会えて光栄であるぞ。宜しく頼む」
 2人は同時に頭を下げる。紅茶を啜る。一息ついて、華倫は早速鞄からタブレットを取り出した。
「さて、芽愛様にお目通りを願ったのは、数点の検体から得られた、ナイトメアに由来する成分の薬効について共有し、可能ならば助言などを頂く為ですわ」
「なるほど。この私の頭脳を借りようというわけか。実に賢明な判断だな」
 月の世界の仙女を名乗り、それに違わぬ浮世離れした儚さと艶やかさを併せ持つ華倫。そんな彼女を前にしても、メアは高慢な態度を一切変えない。ふむ、と溜め息ついて、華倫はタブレットの画面に指を走らせる。
「同意も得られたという事にしまして……では、まず資料をそちらにお送りしましたわ。まずはナンバリングの通りに拝見してくださいませ」
「うむ……」
 メアもタブレットを手に取って眺め始める。華倫はサングラスをそっと下ろし、タブレットに映したレポートへと目を通す。
「まず資料Aのナイトメアですが、このナイトメアは元々、ライセンサーによる知覚タイプの攻撃に耐性を有するなど、非常に防御的な性質を持つナイトメアでしたわ」
「上出来だな。私の観察結果とも一致している」
「このナイトメアの検体を一つ貰い受け、わたくしはその強固な耐性について、由来となっているのは何かについて、幾つかの細胞を取って検査しました」
 華倫の口から、レポートから彼女の調査結果を確かめ、メアは満足げに頷く。
「感心だ。個人で研究している割には、検体の管理などにも抜かりは無いようだな」
「わたくしも全く独力で研究しているというわけではありませんもの。さて、この耐性については、どうやらナイトメアの外骨格に含まれている成分が精神エネルギーによる影響を緩和している事によるものと明らかになりましたわ」
「その通りだ。……で、その成分をいかに応用できるか君は調べたということかな」
「ええ。様々な実験を行いましたが、その中で、特定の毒素に反応して変色する性質を発見しましたわ。この毒素に対する試薬はこれまで反応に時間がかかってしまうのが難点でしたが……この成分を用いた試薬を開発できれば、より簡便に検査が行えるようになるはずですわ」
「エクセレント。私の研究室に来ないか。君なら即助手として活躍できるぞ」
「申し訳ありませんが、今はお断りさせて頂きますわ。芽愛様の研究室は激務と伺っております。あまり身体は丈夫でないので……体調を見ながら、自分の出来る範囲で研究は続けたいのですわ」
「そうか。ならば無理にとは言わん。……では、次に資料Bのナイトメアについて報告を頼む」
 華倫はこくりと頷くと、タブレットの上にするりと指を滑らせて、新たなレポートを呼び出す。
「こちらは海上での戦闘によって確保された検体ですが、1ヶ月ほどかけて体組織から検出したあらゆる成分について検証を行いましたが、特筆すべき薬効は確認されませんでしたわ」
「ふむ。……まあ、ナイトメアも別に人間の役に立つために生まれているわけではない。そういうこともある」
「ですが、この検体を提供してくれた友人の助言に従って、これを少々食してみたところ……これが大変に美味でして」
 兎の耳をぴこぴこと動かし、華倫はうっすら頬を染める。一方のメアはあんぐりと口を開け、信じがたいという顔で華倫を見つめた。
「食べた? 食べたと言ったか?」
「ええ。検体を届けてくれた知人もその場でお食べになったそうで、何ともなかったと言いますから。ならば問題はありますまいと思いましたので。マグロに擬態していたようですが、見た目に違わず唐揚げが美味でしたわ」
「ゥ、ウーン……そのな、私、何でも食べようとする某健啖家のような振る舞いだけは感心しないのだが……いや、これは最早私個人の忌避感に過ぎないのかもしれないが……」
 いつもの得意げな顔を強張らせ、腕組みしながら悶絶するメア。狂科学者と自称する彼女からは中々想像できない一面を目の当たりにして、華倫は不思議そうに首を傾げる。
「ふむ。確かに芽愛様のこれまでの活動については幾つか確認させて頂きましたが、ナイトメアを食べる、ということは一つもなさっていないようですわね。わたくしの、いえ、多くのライセンサー様のイメージでは、むしろそういった挑戦は積極的に行われる方とばかり」
「私の日頃の振る舞いが良くないということかな? ……全部あの自称ナイトメア食専門家を名乗ってるあの馬鹿に任せる事にしているんだ、そういうのは。これからは君達にも任せようかな」
 大分取り乱している。華倫はしばらく目を瞬かせていたが、やがてタブレットにそっと書き込みを終えた。
「ふむ……ではこちらについては個人的に研究を進める事に致しますわ……」
 これ以上はメアも乗ってきそうにない。華倫は首を振ると、更にページを捲った。
「資料Bについてはこの辺りとして、次は資料Cに移りますわね。こちらは、表面の色素細胞に特異性があり、周囲の光景に融け込む能力を持つナイトメアでしたわ」
「ああ、ヤツか。……そういえばヤツの検体も渡したっけ」
「この色素細胞から抽出された成分の一部なのですが……その分子組成が現在流通している化粧品の成分と類似しておりまして。塗布してみましたら、既製品以上の美白効果を確認いたしましたわ。どうです?」
 確かに華倫の肌は艶めいている。竹取物語のかぐや姫も、きっとこんな肌をしていたのだろう。眼を見張っていたメアは、どこか歯切れの悪い口調で尋ねた。
「気になるんだけど……なんで身体に取り込む事を優先するの? 確かに、私はナイトメアの生態についての分析を重視していて、こうした方面での研究は門外漢だからとても新鮮で刺激的ではあるんだけどさ……」
「私、放浪者としてこの世界に渡ってきたのですけれど、上手くこの世界に適応出来なかったようなのです」
 タブレットを閉じると、華倫は淡々と語り始める。
「このままでは命を繋ぐ事もままならないので、あらゆる手を尽くしてこの世界に適応し命を繋ぎとめる方法を探し求めているのです。ナイトメアの体内に存在する特異な成分を薬として利用するのも、その一環なのですわ」
「悪かった。……そこまでの覚悟とは知らなくて」
 肩を落とすと、メアは小さく頭を下げる。華倫は微笑みながら応えた。
「いずれにしても、現時点では仮説にすぎず、更なる検証が必要なのは間違いありませんわ。これから、アドバイスなど頂ければ幸いなのですけれど……」
「わかった。さっきも言った通り、この方面は専門外だが……私もいつかは向き合わなければいけない領分でもある。最大限に協力しよう」
 二人は共にナイトメアを研究する同志として、静かに握手を交わしたのであった。



 おわり



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

●登場人物一覧
 華倫(la0058)
 内藤 メア(lz0058)

●ライター通信
お初ですかね? 影絵企我です。この度はご発注いただき誠にありがとうございました。
ある程度キャラ設定からイメージも膨らませつつ書かせて頂きましたが、この様な形で問題ありませんでしょうか。何かありましたらリテイクなどお願いします。
ちなみにメア博士はアンチナイトメア食なのです。まあ食ってたら他のNPCとキャラかぶりしちゃうからっていうのもあるんですが……それだけは真実を伝えたかったのです。

ではまた、ご縁がありましたら……
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グロリアスドライヴ
2019年07月26日

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