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『唐突に完全解決の材料が揃った後の話。 』
黒・冥月2778

 急な話ではあるが、まぁ、悪い話では無いだろう。

 黒冥月(2778)は思いつつ、ひとまずは必要な関係者を揃える事にする。草間興信所に届いた「中身の入った棺めいた箱」――の中身。恐らくは件の博士が造って送り付けて来た木偶と思われ、今回の依頼に於ける一番の懸案事項であった「ノインの体」として柵無く使えるだろう代物ではある。
 勿論、現時点では自分や草間興信所の面子で見て確かめたレベルの話だが――冥月の方でこんな酔狂をしてくる相手の心当たりがあってしまった以上、それ以外の由来な可能性はまず無いと思う。そもそもわかりやすく冥月自体の遺伝要素が載っている時点で、他と考える余地が無い。
 そんなこんなでいきなり「問答無用の解決手段」に至れる材料が出て来てしまった訳だが、それを採用していい物かどうかは、流石に当事者含め関係者間で相談の必要があるだろう。

「……とまぁ、そんな訳なんだが」
「……」

 最早恒例の影内空間。虚無の境界の広告塔やら構成員、元量産型霊鬼兵な人造魂やらも交えて密談をするには冥月的に一番手っ取り早いので――関係者を揃えた今日もまたそうなっている。因みに霊魂状態なノイン当人と話す媒体には某国の軍用無線機を用意した。少し古い型だが盗聴防止機能が付いている。……必要無いかとは思うが念の為。
 無線用に外向きの小さな穴を影内空間に開けた状態で、示し合わせておいた周波数に合わせる。拍子抜けな位にあっさりと合って、以前あれ程苦労したのが嘘の様に、ノインの声も普通に届く。
 の、だが。
 これまでの経緯を聞いたエヴァ――エヴァ・ペルマネント(NPCA017)のこめかみは、やはりと言うか何と言うか、ぴきりとひくついていた。

「そう。また黙って勝手な事してた訳なのね」
「打てる手は全部打っておく主義でな。今回のこれも駄目元で終わったと思ってたんだが今頃になってこんな結果が出ただけだ」
「だから! 勝手にするなって言ってるの!」
「済まんな。私が元になった体では色々と遣り難いだろうが」
「〜〜〜! そこ強調しないでよっ」

 ちょっとからかってみれば、憤りつつも反論までは出て来ない。ひとまず流してその筋の専門家――と言うか関係者の中で一番この手の事に詳しそうな、陰陽師の師匠で一応虚無構成員でもある仙人の方の見解を待ってみる。……こっちも何だかんだで結構あっさり捉まった上に木偶の確認も快諾してくれたのだ。

「どうだ、この木偶で大丈夫か?」
「うん。特に問題無いと思うよ。モノとしては冥月さんの遺伝情報使われてるけど厳密には複製でも無い感じの生き人形ってとこか。これはホントに造った人と冥月さん以外に柵無いと思うけどその辺どお?」
「私なら気にならんが……造った奴もそういう意味では気にしないんじゃないか、あれは」
 単に様子を窺われている可能性なら無きにしもあらずだが。
 取り敢えず確認はしておく必要があるか。となるとまたあの小娘に当たる事になるだろうが……無難に済ますには元IO2のバーテンダーに頼むのが適任か。あのややこしい腹芸は私には無理そうだ。

「魂は定着させられるか?」
 訊けば、今度は当のノインの声が無線から返って来る。
(それは……大丈夫だと思います)
 御弟子さんに依り憑かせて貰った時に話した通り、周波数合わせの問題になりますから。
「そうか。と言うかな。順番が前後したが……お前は私が元になった体で構わないか?」
(冥月さんが構わないなら)
「即答か」
(一人の犠牲も作らず戻れる手段があるのなら、その手段がいいです)
「なら後は……後々何か悪い影響は出ないか、が気になる所だな」
 それが無いなら、準備を進めて欲しいが――と。そこまで言った所で、その前にちょっと注釈があるんだけど、と仙人の方から話を止められた。
「今「定着」って言い方が出て来たから念の為に言っとくと、この体を「専用車」にするのは可能だけど「根を張る」のは根本的に無理だからね?」
 それこそ根を張って完全に自分の体に出来る体は生来のワンオフだけだから。霊鬼兵時代の素体の血縁者の遺伝情報付きなら、か細い可能性としてワンチャンあるかってとこ。何処かの画廊経営者さんみたいなのは特例中の特例。
「だから「この体」を使うなら基本的には此間うちの子でやった奴をずっと続ける感じになるんだけど」

 つまり、本体はあくまで霊魂のままで、体には憑依し続ける感じ。転生にはならない。

「それで何か不都合があるのか?」
 特に違いがある様な気がしないが。
「霊的に超無防備。そっち方面で何かあればすぐ体から弾き飛ばされる。まぁ弾き飛ばされても彼の霊魂単独の場合チューニングの問題でまず余人には手が出せないだろうから危険は無いと思うし、その気になればいつでも体に戻れるだろうけど」
「……」
 どうでもいい様な気もするし、結構重要な気もする。……待ち人の方が悪霊やら怨霊とは縁深い。その辺りの絡みが無防備となると、どうなのか。
「私達次第、になりますか」
 零――草間零(NPCA016)の方がぽつりと確かめる。
 仙人は、うん、といつもの調子で軽く頷いた。
「そうだね。気を付けてあげられるといいと思うよ。色々うっかり巻き込まない様に」
「巻き込まない様にって何よ」
「感情に伴う能力の発現にって事ですね。エヴァだとありがちな気がします。どうか気を付けて」
「っ――そんな事する訳っ」
「言ってる側から少し喚んでます。無線用の穴から」
「――! き、気を付ければいいんでしょっ」



 体の方の見解に戻る。特に何か仕込まれている様子は無いとの事。後々の悪影響については――先程話題に上った「根が張れない」事や真っ当な転生からは遠退くと言う事位らしい。
 憑依自体の準備については――準備を進めて欲しいも何も、特別に用意の必要は無いらしい。つまり、その気なら今すぐにでも可能と言う訳で――……

「いや待て。流石に此間の今でこちらの準備がそこまで整ってない」
 それに、体に入ってすぐ普通に動けるのかと言う点もある。私が元である以上木偶の身体能力は悪くないと思うが、仕事が出来る様になるまでに時間やリハビリが必要ならその為のカリキュラムも考えねば。
「あー、その辺については出たとこ勝負としか言えないと思うけど」
 うちの子の時だと結構すぐに馴染んだけど、あれは元々の魂があるからこそ体の方が覚えてて動けたって面もあるし。
「最悪、本当に一から体の動かし方覚えなきゃならないかもしれないよ?」
「そうか」
 なら、その通りに一から体の動かし方を教えてやればいい。
「私が手取り足取りじっくりとその体に教えてやろう――……」
 多少の悪戯心がまた疼き、わざと意味深な口調で言い切ってみた。ノインの為にも「気を付ける」んだろう? と含んで何か言いたげなエヴァを見返す――零もまた同じ様な貌をしている事に気が付いた。
 ふむ。仕方無い。
「これで増々私とノインの関係が深まってしまうな」

 お前達より繋がりが深いかもしれん……繋がりと言うと意味深だが、まぁ、許せよ?

 そう続けてから、ニヤリ、と笑みも付け加える。瞬間的に沸騰するエヴァに、それを抑えようとする零の姿。……ちょうどいい予行演習だろう。
 暫くそうやって努めるといい。

 私ならいつでも遊んでやる。……面白いしな、とは取り敢えず言わぬが花だ。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 いつも御世話になっております。
 今回も続きの発注有難う御座いました。
 そして今回もまた毎度の如くお渡しをお待たせしてしまっております。

 内容ですが、一任された結果……素直に進んでいる様でもあり何かいちゃもんついた様でもあり新たなる脱線の布石が置かれた様でもある成り行きになった様な気がしております。
 あと「必要な面子」には含まれますが具体的に名前出されなかったのでぼやかす感じになっている某仙人がそこはかとなく出張ってる感があったりも(諸々確認事項にまともに答えられるのが奴だけなので)
 博士への確認を取る脱線?か、素直に諸々予行演習がてら三人をからかうか……何か別の突付き所があればそれでも、ひっそり色々話が転ばせられそうな気がします。御自由にどうぞ。

 と、今回はこんなところになりましたが、如何だったでしょうか。

 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。
 では、次の機会を頂ける事がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2019年08月14日

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