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『愛と龍 』
蜜鈴=カメーリア・ルージュka4009


 全ての戦いが終わった。
 邪神はいなくなり、クリムゾンウエストも、リアルブルーも元に戻った。
 一方で邪神がいなくなったからといって、歪虚までいなくなったわけでも無く、結局ハンター達はハンターとしての職を失う事無く、戦いに赴く日々を続けている。


 蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は1人、龍園へと続く転移門を潜った。
 途端にまるで巨大な冷凍庫に入ってしまったような肌を刺す冷気に晒されて、蜜鈴は思わず身震いをする。
 訪ねるのは龍園ハンターオフィス。扉一枚入ってしまえば驚くほど温かい。
 室内は様々な人々で存外賑わっている。
 その1番奥。カウンターには眉間にしわを寄せて分厚い本を読んでいる龍人が1人。

「サヴィ」

 声を掛けるが、無視。……いや、これは聞こえていないのだなと察した蜜鈴は、カウンター前まで行って再度声を掛ける。

「サヴィ、今度は一体何の本を読みよるのじゃ?」

 ここまで声を掛けて、ようやくサヴィトゥール(kz0228)は視線を文字から外さないまま言った。

「急ぎでなければ暫し待て。もう少しでキリが付く」

 そう言われては、確かに急ぎでは無い蜜鈴としては待たざるを得ない。
 何よりこの龍人、本の虫と有名で大した用でも無いのに中断させたとあれば後でどんな嫌味を言われるかわからない。
(……いや、その悪態を流し聞くのも一興か?)
 そんな意地の悪い事を考えている間にどうやら一区切りついたらしい、サヴィトゥールが顔を上げた。

「蜜鈴か。久しいな」

「あぁ、息災そうでなによりじゃ。……少し出られるか?」

 蜜鈴の申し出にサヴィトゥールはチラリと時計を見る。

「そういえば昼飯を食べていなかった。隣の食堂で良ければ付き合おう」

 昼飯……と言われ、蜜鈴は思わず時計を見る。もう16時過ぎている。
 むしろもうそろそろ夕飯になるのでは無いだろうか。

「……では、妾はお茶でも頂こうかの」

 呆れと共に笑みを浮かべ、先を行くサヴィトゥールの後を付いて行った。


「まずは、お疲れ様、と労わねばならなかったな」

「……いや、龍人の皆も、大変だったのだと聞き及んでおる。よく、シェオル型からここを護ってくれた」

「それが龍人の務めだからな」

 サヴィトゥールの前に茹でただけの何らかの肉が運ばれてくると同時に、蜜鈴の前にも暖かなハーブティが置かれた。

「のぅ、サヴィ。妾が奇跡と巡り逢うた、と言ったら信じるか?」

 肉にフォークを突き刺し、口に運び掛けたサヴィトゥールは怪訝そうに眉をしかめる。

「……お前が見たというのなら見たのだろう?」

 その言いように蜜鈴は小さく声を立てて笑う。

「心を……魂を救えずに、戦い滅ぼす以外の道を示せなんだ龍達に逢うたよ。
 星を護る為にと共に戦うたのじゃ。龍の守護者たる妾に、此程の褒美が有ろうかや。
 一時の夢じゃと……その瞬きの為に来たのじゃと……龍達は言うのじゃ……」

 蜜鈴が小さな笑みを漏らせば、サヴィトゥールは「それで?」と先を促す。

「我等が愚かで在ったが故に、心を、魂を穢してしもうたというに……我等の背を押してくれたのじゃ。
 サヴィ……おんしなれば、この想いをわかってくれるじゃろうか……
 喜びと、悲しみと……背負うた言葉の暖かさを……わかってくれるじゃろうか……」

 問えば、サヴィトゥールは表情を変えないまま、止めていた手を再び動かし、肉を頬張った。

「自分にとっては歪虚に落ちた龍は皆、敵だ。赤龍も、紫龍もな」

 容赦のない言葉に蜜鈴は柳眉を寄せる。
 だがその歴史を思えば仕方が無いのだ。
 青龍は赤龍を止める為その力の殆どを封印に割いてきた。
 何年も、何十年も、何百年も。
 同時に人間が住むには過酷なこの地で、強欲竜を始めとする歪虚と戦いながら、龍人達は青龍と共に滅ぶかも知れない日々の中をそれさえも良しとして生きていた。
 短命な彼らは一体それを何世代繰り返したのか。

 ――それは、エルフとは違う意味で気の遠くなるような長い時間だっただろう。

「……そうか」

 価値観、文化、根ざした歴史。
 その違いの壁を感じ、蜜鈴は肩を落とす。

「だが」

 肉を頬張り、水を飲み、サヴィトゥールは至極つまらなさそうに、さして大したことのないように言った。

「どのような罪を犯したものであってもその過ちに気付いたなら贖罪の機会はあって然るべきだ。
 人であっても、それが、龍であっても」

「……あぁ」

「そしてその機会にお前が立ち会えた。僥倖だったな」

「……あぁ、本当に」

 これは恐らくサヴィトゥールの神官としてのスタンスでもあるのだろう。
 咎人を諭し導き、罪に気付き贖罪を経たなら、赦す。
 たとえば、その考えがサヴィトゥール個人の物ではなく、龍園全体なのだとしたら、この国の秩序が保たれ続けたのも理解できよう。

「だが……龍達の身を救う事は、やはり叶わなんだ……
 なれど……心は……魂は……救うことが叶った様な気がしおるのじゃ。
 自己満足やもしれぬ……それでも……
 此度の最期に……後悔は……絶望は無かったと……信じたいのじゃ……」

「お前がそう思い、信じるならそうなんじゃないか?」

 迷い無く、戸惑い無く、間髪入れずに入る肯定に、蜜鈴は呆れを通り越えて笑ってしまう。

「サヴィはあまりこういうことに悩まぬのかの?」

「そうだな。考えても仕方が無い事に時間を掛けるのは有意義では無い。
 だが、そうだな『青龍様が赤龍の立場だったなら』と考えた事がないわけではない」

「ほぉ」

「邪神により強制的な書き換えが行われ、人を滅ぼす側になったのならば、自分は自らの意思で青龍様に付いて行く」

「……これは、意外じゃ」

「そうか? 龍園は青龍様がいて下さるからこそ龍園であったのだ。
 これまで我々を護り導いて下さった、その青龍様が歪虚となり、その上でまだ自分の力を欲して下さるのなら、自分は全力で青龍様をお護りするだろう」

「その間違いを正そうとはしないのか?」

「何が間違いか正しいかなど、どうせ他人、総じて大局の視点からの判断だろう。
 この場合勝った方が正義というのもまた一つの正しさだ。
 ならば自分は自分が信じるもののために戦うだろう」

「……その結果、他の龍園のものを……親友を敵に回してもか?」

「無論だ。……恐らく、赤龍に付いた龍達にもそういうものはいただろう」

 サヴィトゥールの指摘に蜜鈴はハッと息を呑んだ。

「……だが、そんな『もしも』は起こらなかった。
 だからこそ、アレらに贖罪の機会があったことは素直に喜ばしい事だと思う。
 そして、その立ち会いに蜜鈴、お前がいた事も」

 蜜鈴は喉の奥がキュゥと鳴るのを感じた。
 言いたい事を言って食事を終えたサヴィトゥールは口元を拭い、食器を片付け始める。
 時計を見ればもう1時間を経過していた。

「すまぬ……忙しゅうして居るというに、時間を取らせてしもうたのう。
 愛しき龍達の話なれば、サヴィが一番理解してくれるであろうと思うてな」

「いや、自分も久しぶりに息抜きになった。今日は?」

「帰るよ。向こうに待つ者も居るでな」

「そうか、では自分は仕事に戻る。またな」

 神官服を翻し去って行くその後ろ姿を見送り、蜜鈴はほぅ、と息を吐いた。
 龍を愛している。蜜鈴の想いは本物で彼らの愚直なまでの言動は護るに値する程に愛おしい。
 ……だが、サヴィトゥールが話した『もしも』は、蜜鈴には選べない。
 互いが抱く愛の違いを目の当たりにして、蜜鈴は顔を上げた。

 寒風吹きすさぶ龍園の空には星が瞬き始めていた。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【ka4009/蜜鈴=カメーリア・ルージュ/女/外見年齢22歳/魔術師】
【kz0228/サヴィトゥール/男/外見年齢28歳/魔術師(NPC)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 この度はご依頼いただき、ありがとうございます。葉槻です。
 サヴィをこうやってノベルで描写するのは始めてでした……
 こんな仏頂面に構って頂きまして誠に有り難うございます。

 口調、内容等気になる点がございましたら遠慮無くリテイクをお申し付け下さい。

 またファナティックブラッドの世界で、もしくはOMCでお逢いできる日を楽しみにしております。
 この度は素敵なご縁を有り難うございました。
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葉槻 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2019年08月14日

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