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『女神の像より艶やかに、悪魔のより誘惑的な』
白鳥・瑞科8402

 カツカツ、と古びた石作りの廊下にロングブーツの足音を響かせながら白鳥・瑞科(8402)は歩く、ボロボロの窓枠から差し込む月光に照らされるその姿は女神の像の様な美しい姿をしている。
 歩く度に揺れる髪、身体を包む修道服は彼女の躯体を強調するかの様にピッタリとした作りであり、深く入れられたスリットから覗く白い太ももがニーソックとの間から見せている。
 金色の光を反射する素材で作られている故に、余計に豊満な身体は艶やかに見せている。
「まぁ、そんなに暴れてるなんて、躾がなっていないようですわね」
 古びた廊下を先にあった古びたドアを蹴破り、中に入るとブルーサファイヤの様な瞳で眼前に佇む獲物を見上げる。
 人の形をした上半身に双頭の狼の様な獣の下半身を持つ異形が何人挑んできたか分からない屍の上に座り、新たに来た瑞科を舐める様にじっくりと頭から足の先まで視線を向けた。
『上物でございますわねぇ』
 喉で低く笑い声を出しながら異形は、ゆっくりと立ち上がると獣の四肢が月光で照らされた廃墟を舞う。
「素晴らしい目をお持ちですわね。でも、わたしくから見たらアナタは――弱いですこと」
 肩の純白のケープと頭に付けているヴェールが揺らめいたかと思った瞬間、視界から消えると頭上から双頭の獣の頭を踏みつける。
『うぐっ! そんな、そんなハズでは……この様に恐怖も血肉も得たのに……っ!』
 双頭の頭をぶるぶると振るわせると、異形は顔を信じられないと言わんばかりの驚きの表情で呟く。
「何をおっしゃっているのかしら? わたくしの方が勝っているからですわ」
 修道服の下で付けられているコルセットが瑞科の腰からお尻に掛けてのラインを美しく魅せ、豊満な胸に手を添えながらむっちりとした太ももに付けられたベルトからぶら下がっている剣を引き抜いた。
 白刃が煌めく、修道服の材質により月光で身体は照り、美しいその四肢を宙に踊らせながらナイフを投擲した。
『ええい! 何を!』
 腕でナイフを受けてダッ、と屍と瓦礫の上を異形は駈け出す。
「浅はか、ですわよ?」
 黒いロンググローブを付けた指で朱に染められている唇に当てると、瑞科は口元を吊り上げて妖艶に微笑んだ。
 バチリ、と音が響く。
 視界が閃光で覆われ、何か轟音がしたかと思ったら異形の身体はまるで稲妻が走ったかの様な模様が刻まれていた。
『な、なにを……』
「ちょっと、雷を放ってみただけですわ」
 ガックリ、と獣の四肢は膝を折って地面に座り込みながら呟くと、瑞科はバチバチと帯電しているナイフを抜き取りながら甘い吐息を掛けながら言った。
「ほらぁ、わたくしは目の前ですわよ?」
 小さく笑い声を出しながら瑞科は、豊満な胸の谷間にナイフを挟みながら挑発する。
 “小道具無くとも倒せる”と受け取った異形は、ギリィと唇を噛みながら女神の様な姿の悪魔を鋭い視線を向けた。
『人の……分際でぇぇぇ!!』
 異形が吠える様に叫ぶと、指の爪を伸ばして力強く周囲の空気が唸るほどの音を立てながら振り下ろした。
「隙、だらけですことよ」
 そう瑞科が呟くと、異形の腕は宙に残されて身体は瓦礫だらけの床に放り出された。
『あ、あぁぁ……ああぁぁっ!!!』
 切断された両腕から溢れるのは赤い液体。
 勢いよく吹き出したソレは、瑞科の修道服を濡らし雫が身体のラインに沿って伝い床に吸い込まれる。
 ブルーダイアモンドの様に青い瞳は、蔑むかの様にただただ目の前で叫ぶ異形を見つめた。
 恐怖より、倒されて行く異形の表情、悲鳴、絶望していく姿は心に一つの“快楽”として満たされる。
「あぁ、良い……ッ!」
 瑞科は身体を抱きしめるとぬるり、と赤い液体で滑った手で身体を撫でながら悦に浸った様子で呟く。
 足りない、足りない、と感じながら叫ぶ異形の口に向けて重力弾を放った。
 異形は歪み、ポキポキと何かが折れる音と共にただの醜い塊となって、屍の上に鎮座された。
「まだ、まだ……わたくしを満足させてくれるモノは、いないのかしら? いるわけ、ないですわね。ふふふっ」
 倒して任務を終えた高揚感と共に瑞科の心を満たすモノは――優越感。
 未だに彼女に勝てる存在は居ないであろう。
 だが、その慢心で起こるかもしれない結末を考えてしまう。

 強大な力、純粋な殺意でソレは、瑞科を圧倒させる。
 闇から茨のツルが生まれ、何物にもその美しく艶やかな身体を傷付ける事は出来なかった否、瑞科が強いが故にさせなかったのだ。
「……くっ」
 瑞科は自身の力に慢心してしまい、相手の力を見誤ってしまったのだ。
 圧倒的な力で押さえつけられ、茨のツルの口の中は虚無に近い闇が広がりソレは純白のケープとヴェールに噛みついて引き千切る。
 そして、修道服をも噛みついて引き千切るものの瑞科は、その下にラバースーツを着用していた為に素肌は露わにされなかった。
『……ウウゥゥ』
 それでも表情を変えない瑞科に不服に思ったのだろう、ソレはギリギリと四肢を締め上げる。
「あっ!!」
 思わず声を洩らし、甘い吐息が瑞科の艶やかな唇から吐かれる。
 四肢からツルがしゅるしゅると伸び、胸や足などの強調していた部分が余計に強調される程に締めあげられていく。
「……ぐぅ……!」
 ミシミシと身体が悲鳴を上げ、息をしようと呼吸をする度に汗が頬を伝い豊満な胸が上下に揺れる。
 力を入れても、抗おうとして力を使おうとしても、魔力を吸われているのだろうか?
 静電気さえ出ない。
 瞬間、酷い痛みが左腕に走ったかと思えば、引き千切ろうと茨のツルは身体に小さな穴を開けながら引っ張る。
「ふぐっ!」
 ギリギリ、と喉も締め付けられる瑞科の唇から洩れるのは、言葉にならない呻き声に近いモノしか発せられなくなった。
 痛みにブルーダイヤモンドの様な青い瞳からは光が失われ、目尻から涙はぽろぽろととどめなく流れる。
「……あぁ……ぐぅ……」
 ぱくぱく、金魚などの魚の様に口を動かし瑞科は、助けを請う言葉以前に息を吸う事さえ赦されない。
 ただ、目の前の強敵にされるがままに、ただ子供が虫の足を引き千切る様な無慈悲な行為に身を委ねるしか出来ないのであった。

(そんな事、あるわけないですわね……)
 ふと、考えていた事を振り払うかの様に首を振ると、瑞科は所属している組織『教会』へ変えるべく踵を返して廃墟を後にした。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
この度はノミネート発注していただきありがとうございます。
キャラの圧倒的な強さに蹂躙される場面、楽しんで書かせていただきました。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
何か問題がありましたら、遠慮なく運営へお問い合わせください。
リンゴの種類ではなくルビーの和名である紅玉でした。
本当に発注ありがとうございました。
東京怪談ノベル(シングル) -
紅玉 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年09月30日

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