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『ハロウィンらしい仕事?・2』
芳乃・綺花8870

「ハロウィンイベントで仮装するのを、少し楽しみにしていたんですけど……。結局、いつもの戦闘服になってしまいました」
 ハロウィンの夜、芳乃・綺花(8870@TK01)は自分の姿を見て軽くため息を吐く。
 綺花のいつもの戦闘服である黒いセーラー服のスカートは短く、黒の光沢があるストッキングはランガードとバックラインがある。いつもは布袋に入れて持ち歩いている愛刀は、「今日はハロウィンの小道具に見えるから」と仕事仲間に言われたので、布袋に入れずに鞘のままにしていた。
 しかし仕事仲間は「それだけでは寂しいから」と、何故か黒いマントを身に着けることになる。
「『ライトノベルの主人公みたい!』と喜ばれたので、悪い恰好ではないみたいですけど……」
 そういう世界には少々疎い綺花だが、ハロウィンの仮装をしている若者達の視線を集めていた。
 若者達は綺花を見ては「――の主人公みたい♪」と熱視線を送りながら呟いているので、何かの作品の主人公に似ているらしい。
(少々複雑な気分ですが、不審者扱いされないだけマシですね。普通の日にこんな格好で夜に歩いていたら、お巡りさんに職務質問されそうです)
 街は夜になっても今日はハロウィンイベントが行われているので人が多く、コスプレをしている人も多い。
 ハロウィンらしい飲み物や食べ物、小物を売っている屋台が数多く並んでいる。
 今夜の為に作られたステージ会場ではジャズの演奏会が行われていて、明るく楽しい空気に飲まれそうになるのを綺花は必死に堪えた。
(ううっ……! こんな日にまで仕事だというのが、少しだけ寂しい身に思えてきました)
 だが仕事は仕事、気分を切り替えて歩き進む。
 周囲には奇妙な恰好をしている人が多いので、ターゲットもまたコスプレのような恰好をしていても今夜ばかりは目立たないだろう。
(今回の依頼は他の仕事仲間も散らばってやっていますし、ポゼッショナーは何人ぐらい参加しているんでしょうか?)
 ポゼッショナーにとっては今日と言う日は、一年に一度、力を大きく発揮できる日だ。
 ゆえに毎年、こういう仕事を引き受けるのはしょうがないとも言える。
(できればターゲットを人のいない所まで連れて行き、戦闘を行いたいんですけど……)
 周囲をキョロキョロと見回しながら歩いていると、ふと、違和感がある人物を見つけた。
 その人物は非常に整った顔立ちをした若い青年で吸血鬼の恰好をしており、魔女のコスプレをしている若い女性達と楽しげに話をしている。
 普通の服装をすれば、モデルや俳優でもやっていそうなイケメンだ。
 ――だが綺花の眼には、彼のもう一つの姿が浮かび見える。
(ターゲット発見、と……)
 スッと眼を細めて、ターゲットへ近付いて行く。
 そして歩きながらも腰にさしている刀の柄を握り締めて、一般人の眼には映らないほどのスピードで彼に斬りかかった。
「おっと……。随分と情熱的なお誘いだね」
 しかし刃は白銀の閃光を放ちながら、空を切ったのみ。
「こういったお誘いの方が、お好みかと思いまして」
 だが綺花は動揺を見せず、笑みを浮かべて見せる。
 魔女の女性達はビックリして眼を丸くしているものの、彼に傷一つつかなかったことから何かのイベントがはじまったと思ったらしく、二人から距離を取る。
 彼がニヤっと笑うと、鋭い二本の犬歯が見えた。
 その歯が作り物などではなく、本物であることを綺花はすぐに察する。
 だが次の瞬間、吸血鬼が羽織っているマントを大きく両手で開くと中から複数のコウモリが出てきたことに、綺花は素直に驚いた。
「吸血鬼の眷属はコウモリですか! なりきっていますね!」
 しかしすぐに我に返り、素早く刀でコウモリを斬り裂く。
 コウモリは斬られると黒い煙となって、消失する。
「やるねぇ」
 吸血鬼は楽しそうに、白い手袋をつけた両手で拍手をした。
 すると周囲にいる人々まで、拍手を綺花に送る。
(……何ともやりにくいですね)
「ここではなく、二人っきりになれるもっと静かな場所へ移動しませんか?」
 なので魅力的な作り笑みで誘いかけるも、吸血鬼は表情一つ動かさない。
「いや、ここが良いね。ギャラリーが多いと、燃えないかい?」
「そういう癖は持っていませんので」
 注目を集めるのは、ハッキリ言って居心地が悪い。
 下手をすると、一般人を人質にされる可能性もあるからだ。
(……少々早計でしたかね)
 一撃で仕留められれば良しと思っての行動だったものの、どうやらこのポゼッショナーはかなりの手練れのようだ。


<続く>



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 このたびはご指名をしていただきまして、まことにありがとうございました(ぺこり)。
 ハロウィンが近いので、それらしいストーリーにしてみました。
 続きをお楽しみください。


東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2019年10月02日

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