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『ハロウィンらしい仕事?・3』
芳乃・綺花8870

 憑依能力者として目覚めるのが早く、また力を使いこなせるほど経験を積んだ、ただのポゼッショナーならば何の問題も無い。
 しかしこの世界や人々の害に成ろうとしているのであれば、芳乃・綺花(8870@TK01)は容赦なく斬り捨てる。
「キミの恰好はステキだね。それともいつもそういう姿なのかな?」
「今日はハロウィンなので、特別ですよ」
 綺花はできるだけ最小限の動きで吸血鬼になったポゼッショナーに斬りかかるも、彼が両手を伸ばした途端、異変が起きた。
 白い手袋は黒いモヤに包まれて消え去り、次の瞬間、現れたのは黒く大きな手と爪。爪は三十センチほど伸びており、綺花の刃をガキンっと火花を散らしながらも受け止める。
「随分と熱い攻撃だ。見かけによらず、攻めるタイプなんだね」
「ええ。一度この人だと決めたのならば、決して諦めず逃がさないんですよ」
 二人とも優雅な笑みを浮かべているので、周囲にいるギャラリー達はまさか生死をかけた戦闘だとは夢にも思わず、キラキラと眼を輝かせながら見ている。
 美男美女が戦う姿は、老若男女問わず熱い視線を集めるのだ。
(見せ物ではないんですけど……。今はそう思っていただいた方が、ありがたいですね)
 綺花と吸血鬼は、時に斬りかかり、時に攻撃を防ぎながらも、まるでダンスを踊るように動く。
 だがお互いに、決め手に欠けていた。
(吸血鬼の攻撃は近距離が多いんですけど、それはこちらも同じ。戦闘タイプが似ていると、長引くんですよね)
 できるだけ早く決着をつけたいと思う気持ちが、一瞬の隙を生む。
 吸血鬼が両手の爪で、綺花の刃を力づくで押し離したのだ。
「くっ……!」
 後ろにズサササッと下がった綺花は、顔を歪めながら衝撃に耐える。
 するとその間に、吸血鬼は近くにいた狼少女のコスプレをした若い女性に近付く。露出が激しい恰好をしており、しかも首筋は無防備にも空いている。
「きゃっ!」
 狼少女は美貌の吸血鬼に顔を寄せられたことに素直に喜ぶも、それが良い意味ではないことを綺花は知っていた。
「やめっ……」
 止める声が最後まで続かない内に、吸血鬼は狼少女の首筋に顔を埋める。
 すると狼少女はビクンッと身体を震わせたかと思うと、動きを一切止めてしまった。
「あっ、あああっ……!」
(くうっ! 完全に私のミスです!)
 苦い思いに駆られつつも綺花はマントの内側に手を入れて、銀でできた小瓶を取り出して蓋を開ける。
 それと同時に白目を剥いた狼少女が綺花に襲い掛かってきたので、できるだけ人のいない所へ移動した後、小瓶の中身を狼少女にふりかけた。
「ぎゃあああっ!?」
 シュウシュウ……と白い煙が狼少女の身体から立ち上がり、そのままバッタリと地面に倒れる。
「……念の為に、聖水を用意しておいて良かったです」
 ハロウィンは西洋のイベントなので、西洋の妖怪に退治効果がある銀製の小瓶の中に聖水を入れて持ってきていた。
「刀も今夜は銀製にしておけば良かったですかね」
 組織には銀でできた刀は無かったので愛刀を持ってきていたのだが、今夜はそれでも銀製の武器を持ってきた方が良かったかもしれないと思う。
 なにせ吸血鬼は次から次へと女性達の血を吸っては眷属にして、綺花に襲わせているのだから。
「聖水には限りがあるんですけどね!」
 避けられる攻撃は避けて、それでも危なければ聖水を振りかける。
 厄介なのは吸血鬼もそうだが、周囲にいる人々がこの戦闘シーンを見ても見せ物だと思って離れないことだ。
 超常能力者が見れば一目で真剣な戦いだと分かるのだが、今夜に限ってはその常識が一般人には通用しないのが面倒だった。
 ――しかし綺花は攻撃を避けつつも、確実に吸血鬼へ近付く。
 決着をつける為に。


<続く>




━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 このたびはご指名をしていただきまして、まことにありがとうございました(ぺこり)。
 ハロウィンが近いので、それらしいストーリーにしてみました。
 続きをお楽しみください。


東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2019年10月02日

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