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『苦い記憶の先にあるものは』
ネムリアス=レスティングスla1966

 仮面を被った戦士が戦っている。その全身は蒼い炎を噴き上げているよう。
 機械的な両腕に二丁の散弾銃を持ち、蒼炎の弾丸を撃つ。

 ここはとある戦場。ナイトメアと攻防を繰り広げている前線。
 戦士の名はネムリアス=レスティングス(la1966)。

 ネムリアスは戦いに没頭していた。
 特に意識しなくても体が戦い方を覚えている。
 ネムリアスに向かって伸ばされた鉤爪を左手の銃身で跳ね上げて捌き、右手の銃を鉤爪の主の頭部に向け、引き金を引いた。
 淡々と、敵を殺す。リロード。
 まだ敵は全滅していない。
 全て倒すのだ。ナイトメアは全部。
 彼の通った後にはいくつもの敵の死体が無造作に倒れている。
 もうどれくらい敵を倒しただろう。
 どれだけの時間が経っただろう。
 そんな戦いの中、ネムリアスは復元した記憶を思い返していた。


 ネムリアスは放浪者で、こちらに来る前の世界では実験で生まれた複製人間だった。
 だけど造った側にとっては彼は欠陥品だったと知り、脱走する。
 そんなネムリアスを救ってくれた人がいた。感謝してもしきれない、恩人だ。
 その恩人は、ネムリアスと関わったばかりに殺されてしまった。
 あの時の悲しみと怒りはとても言葉では言い表せない。
 そしてネムリアスは己の創造主達への反逆――復讐を誓ったのだ。

 ネムリアスは飛んで来たエネルギー弾を横っ飛びで回避し、そのまま転がりながら物陰に隠れ標的を捉える。
 ツインラビットで二体同時に始末した。
 左の銃で牽制攻撃をしながらさらに敵陣奥へと走って行くネムリアスは、
(前にもこんなことがあったな……)
 と再び記憶を呼び起こす……。

 創造主への反逆は容易いことではなかった。
 死にかけてもボロボロになっても、ネムリアスは諦めなかった。
 何度も挑み何度も負けた。
 蹂躙される人々を救おうとした。結局救うことはできなかったが。
 傷付いた体を治すため、より強くなるために、ネムリアスは化け物や敵さえも喰らい続け、その結果自分が化け物に近付き。
 救うはずの人々に忌避され石を投げられたのだった。

 側面から現れた敵の攻撃を身を低くしてかわし、足払いを掛ける。
 バランスを崩した奴の後頭部に銃弾をお見舞いした後、反対方向から襲い掛かろうとした奴にすかさず蒼い散弾を撃ち込んだ。
 一旦呼吸を整えリロードしながら、ネムリアスの思いはまた記憶へと戻る。

 石を投げた人々を責める気はない。
 化け物になったのは自分が望んだことだから。復讐を果たすために必要なことは何だってやってやると決めたのだから。
 でも、その自分の苛烈なまでの思いがしたことは何だったのか。
 復讐という名の下、大勢を殺し、さらに大勢を見殺しにしたのだ。
 『そうするしかなかった』と言えば少しは救われる? いいや、それはただの言い訳に過ぎない。
 そんな自分に最悪の罰が待っていた。

 思い出すことを拒むかのように、ネムリアスは複数の敵の中へ突っ込んで行った。
 先手でまず一体を撃って虚をつく。
 足を止めないよう動きながら、突進して来た奴をかわしざま散弾を浴びせ、背後から攻撃しようとした奴に散弾銃を後ろに突き出し銃床で殴り、流れるような動きで反転、もう一方の銃で急所を撃ち砕いた。
(創造主達との戦いは俺の全てを変えた)
 ネムリアスは反射的に『攻撃をかわし、引き金を引き、リロード』を繰り返しながら、記憶の続きを再生する――。

 自分への最悪の罰――、それは、亡骸さえも改造され化け物と化した恩人の姿。
 創造主達は盾突くネムリアスを始末するために、彼の大事な恩人を利用したのだ。
 なんて悪趣味極まりない、なんて悪辣な仕打ち!
 ネムリアスは化け物になってしまったとはいえ、恩人をその手に掛けた。
 『化け物にされてしまったから、こうするしかなかった』
 『化け物にしたのは創造主達なのだから、全ての元凶は創造主達だ』
 そんなマニュアルのような言い訳では自分の心はこれっぽっちも誤魔化されなかった。
 自分と関わらなければ、恩人は化け物にされることも、いや、最初から死ぬことなんてなかったのだから。
 本当の元凶は自分自身。


(俺は俺を許すことはできないだろう)
 己を呪い続け恨み続けるだろう。
 心を最大限に傷め付けられたネムリアスの前に現れたのは、彼自身だった。
 彼を複製するためのオリジナルとなった男――を食らい、その姿に擬態したナイトメアだ。
 その姿はまさにネムリアスの悪夢から出て来たようで。
 最後に残った『自分』という復讐相手を殺すため、ネムリアスは戦い続ける。
 多くを犠牲にしてきたからこそ、何かのために、誰かのために死ぬべきだ、と。
 それがネムリアスの戦い続ける理由。

 こちらの世界に転移したばかりの頃は、それらの記憶がなかった。いや、本当ならば創造主達との戦いで死んだはずだった。
 しかしなぜか、記憶を失った状態でこちらの世界で目覚めたのだ。
 何も知らないままでいられたら、この世界で普通に生きられただろうか。
(――いや)
 とネムリアスは仮面の下の素顔を自嘲気味に歪め、小さく首を振る。
 復讐を忘れることなどできない。恩人の死を、それをした自分を忘れるなんてことは。
 自分だけが何もかも忘れて生きることなど許されない。
 ――異世界での記憶が戻ってからだろうか、仮面を被るようになったのは。
 戦う自分に感情や個人というものはいらないとでも言うように。
 あるいは――、悪夢の自分と対峙した時のために。

 いつの間にか雨が降っていた。
 蒼炎に包まれたネムリアスの姿が雨で揺らめく。
「俺は必ず、復讐を成し遂げる」
 もっともっと強くなって。
 力尽きるその日まで引き金を引き続ける。
 その先にあるものが本当の意味での眠りであるなら。

 ネムリアスの放つ銃声が、何度も何度も、雨音に混じって響いた――。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご注文ありがとうございました!
本部の依頼の方でも何度も参加してくださってありがとうございます!

今回はネムリアスさんの重い過去に絡んだ心情がメインでしたが、回想は丁寧に、回想の合間のアクションはカッコよくなるようにと意識して書かせていただきました。
ご希望に添えているでしょうか…?気に入っていただけたら嬉しいです。

どこかイメージと違っていたり、「ここはこうじゃない」と思われるところがありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

こちらでも本部の依頼の方でも、またご縁がありましたら嬉しく思います。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年10月02日

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