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『ハネムーナーは情熱の国で愛を囁き合う』
荒木 拓海aa1049)&メリッサ インガルズaa1049hero001)&隠鬼 千aa1163hero002)&酉島 野乃aa1163hero001)&三ッ也 槻右aa1163

 新婚旅行ランキングでも3位に入る情熱の国スペイン。荒木 拓海(aa1049)と三ッ也 槻右(aa1163)こと荒木規佑は新婚旅行はスペインへと規佑の希望もあってそう決めた。
 地中海近辺には依頼で何度か訪れていたが、ゆっくりと腰を据えて観光など出来ていなかった。それゆえに拓海もうん、そうしようと即決定した。
「いつ頃にしようか」
「9月とかどうかな?」
「丁度、ブドウの収穫シーズンだな。ワインも旨かったし、そうしようか」
 知人のワイナリーもあるし、あとで連絡してみるかと拓海は旅行プランの端にメモをしておく。

「新婚旅行は二人で行くものでしょ?」
 なんで、私の分まであるのとメリッサ インガルズ(aa1049hero001)は呆れ顔。一緒に行ったとしても、幻想蝶の中で過ごそうと思案する。
「ほら、テロとかの危険性がないわけじゃないだろ? だから、いつでも共鳴できるようにいて欲しいんだ」
 確かにその可能性はある。頼むよという拓海にメリッサはしょうがないわねと折れた。けれど、正直なところ、仕事抜きの旅行を嬉しく思うメリッサ。
 後に規佑の英雄である酉島 野乃(aa1163hero001)や隠鬼 千(aa1163hero002)も同行すると言えば、甘味巡りにショッピングもいいわねと予定を組み始めるのだった。
 大まかなところは一緒でと全員で話し合い、観光名所巡りというのも勿論なところだが、ちょっと歩いて気になったお店に入ってみるというのも旅行の醍醐味だろうと多めに枠を取っておく。
「ワイナリーには連絡したし、行くところのチケットもとった」
 あれもこれも大丈夫と確認し、旅行中は格好良くクールにを目標に立てた。

 旅行初日。飛行機を乗り継ぎ、空の旅を経て、スペイン――マドリードへと一行は降り立った。
「移動だけでへとへとね」
 そうなることも見越して、1日目は移動で終了になるように組んだんだと凝り固まった体を解しながら拓海は告げる。予約してるレストランで食事をとったら、今日は休もうと規佑も頷く。
 それから、目的のレストランを目指しながら、街を観察する。
「あそこのお店、いいわね」
「こちらはスイーツ店か、明日は行かねばな」
「わぁ、色んなお店がありますね!」
「そんなに焦って行かなくてもいいんじゃないか?」
「お店も一期一会よ。覚えてるうちに行っておかなきゃ」
 もしかしたら、その頃に忘れてたら勿体ないじゃないと言うメリッサ。それにその通りじゃなとうんうんと野乃は頷く。その隣で千はあそこでは紅茶を取り扱ってるんですねなどと呟きながら周りをきょろきょろと見回している。
「なんだか、家族旅行みたいだね」
 拓海との新婚旅行ではあるが、こうして皆でワイワイと歩いていると家族旅行みたいでほっこりと心が温かくなる規佑。そうだなと微笑む拓海を見て、メリッサは全くと拓海の脇腹を小突く。
「こちらは気を遣わなくていいわ! 折角の新婚旅行よ? 拓海は規佑さんだけを見てなさい」
 目的地が偶々一緒なだけよと笑うメリッサに拓海と規佑は顔を見合わせ、照れ笑い。恥ずかしくなって顔を反らすも、メリッサの言葉にそうだ、新婚旅行なんだと思っているとぎゅっと手を握られる。驚いて手の持ち主を見上げた。
「新婚旅行だしね」
 それにと周りに目を向けた拓海。規佑もそれに合わせて周りに目を向ける。
 男女のカップルや夫婦も歩いているが、これも普通とばかりに同性のカップルの姿もあった。腕を組んだり、拓海や規佑のように手を繋いで、睦まじく言葉を交わしながら歩いている。
 そういえば、スペインは同性婚承認国だと聞いたなと思い出した規佑。2人で手を繋いで歩いていても、おかしいことではないのだと思うとちょっと勇気を出してみる。
 するりと繋いだ手を緩め、おずおずと指を絡ませてぎゅっと握る。
「!」
 それに驚いた拓海は一瞬目を大きく見開くもすぐに嬉しそうに顔を綻ばせたかと思うと規佑に体を寄せ、その手を握り返した。
 そんな拓海と規佑の姿を後ろから見ていた3人。
「大丈夫そうじゃの」
「そうね」
「拓海と主は新婚旅行でした。邪魔しないように気をつけます」
 難しく考えず、この旅行を楽しめばいいという野乃とメリッサの言葉に千はわかりました! と返事をするのだった。
 そして、到着したレストランはスペイン最古と呼ばれるところで、重圧な木の扉とガラス窓から見える店内はまるで中世からタイムスリップして来たかのよう。
 予約であることを告げ、指定しておいた地下の席へと向かう。拓海と規佑、メリッサと野乃、千と2組分かれて隣り合った席に座り、メニューを開く。
 注文を終え、飲み物、ワインや料理が運ばれてくるとそれぞれの席で、乾杯とグラスをカンと合わせ、料理に舌鼓を打つ。
「んー、美味しい!」
 子豚の丸焼きは石窯で焼き上げられていて、外はカリッと中はジューシー。味付け自体は最小限だが、とてもおいしいと食が進んだ。
 スープも味わい深く、デザートも疲れを癒すには最適だった。
 料理を堪能し、初日は終了。

 2日目はマドリードで自由行動。メリッサと野乃、千の3人はショッピングへと向かい、拓海と規佑は美術館を巡る。
 歴代のスペイン王家のコレクションが展示されているプラド美術館は勿論、近現代美術を取り扱うソフィア王妃芸術センターとピカソ、ダリ、ゴヤの作品を堪能する。
 教科書に載ってる絵だとしげしげと眺めたり、互いに絵の感想を零し合う。その間、拓海の腕はずっと規佑の肩に回っていた。はじめは恥ずかしそうにしていた規佑だが、周りは特に気にした様子もなく、同じようにしたカップルがいることもあって、恥ずかしさは残るものの、拓海にその身を寄せていた。
 そして、マドリード王宮も訪れた。その中にある、絵画の数々もさることながら、豪華絢爛な部屋も見学。そこで、どんな感じだったのだろうと王族の暮らしを想像して、拓海が想像で王様の真似をしてみる。
「そうじゃないんじゃないかな」
「じゃあ、規佑はどんな感じだと思う」
「え、うーん」
 戸惑いながらも、こんな感じかなと恥ずかしさ交じりで小さく真似をしてみる。そして、最後は2人で何やってるんだろと顔を見合わせて笑った。
 また精巧に描かれた天井画には2人揃って見上げ、口が開く。互いにそれを指摘して、これはしょうないねと顔を見合わせた。

 一方、メリッサたちは初日に見つけたお店覗いたあと、エル・ラストロを訪れていた。日曜日と祝日にだけ、開かれている青空市場。日用品や雑貨は勿論、楽器などを取り扱ったお店まで様々なお店が並んでいる。その中を、手を取り合い、はぐれないように3人は進む。気になれば、お店を覗き込む。中には観光客だろうとわかったのだろう、有益な情報をくれる店員もいた。
「リサ殿! 千行くぞ! スイーツが待っておるのじゃ」
 それを聞いて一番に反応したのは野乃。場所を聞き、早速行こうと提案する。丁度、小腹のすくお八つ時。それもいいわねとメリッサも賛成し、千も楽しみですと3人で創業100年も経つという老舗のチュロス店へと向かった。
「チュロスに、ポラスとな」
 本場のチュロスも是非とも食べたい。しかし、こちらのポラスというのも気になると野乃は悩む。
「セットだと6本つくのね。単品でも頼めるみたいだし、チョコラテを1つ単品であとはそれぞれチュロスのとポラスのセットでいいんじゃない?」
「それはよいな。そうしよう」
「チョコラテ、とっても美味しそうです! もう、ここまで美味しそうな匂いが」
 千の言葉に確かにと頷き、メリッサはセット2つとチョコラテ単品のレシート、隣にいたサーバーの人に手渡す。その間に千と野乃は場所を取りに行き、いいタイミングでその場所を手を振ってメリッサに知らせた。
 そして、席で待っていると揚げたばかりのチュロスとポラス、3つのチョコラテが運ばれてきた。
「チョコラテにつけて食べるようだの」
「そうね。でも、一口目はそのまま食べてみるのいいわね」
「ポラスはチュロスを大きくした感じなんだ。どう違うんでしょう?」
 そう話しながら、まずは一口チュロスをそのまま口に。カリカリとした食感にほんのりとした塩味。これはこれで美味しいと。それからポラスも食べてみる。こちらは外がカリッと中はもっちしりとした食感で、チュロスとは違う食感に笑みが零れる。チョコラテに浸して食べれば、塩がいいアクセントになり、チョコの甘さを引き立てた。そうして、3人は本場のチュロスを堪能。夕方に合流した拓海にその旨を話し、帰る前にも寄ろうと話を持ち掛けるのだった。

 3日目には旧市街が世界遺産に登録されているトレドを訪れていた。自然の要塞都市とも称されるトレドを歩き、そこでトレドの銘菓だというマサパン。1つどうですかと声をかけられ、5人で頂く。中は蜂蜜の餡のようでとても甘い。日持ちもすると聞き、お土産と後でまた食べる用で購入。そのついでに、他に見どころはあるかと聞けば、コンスエグラに行くといいと告げられた。時間は十分あるということもあって、バスに乗って向かう。景色はずっと青い空と緑の大地。時折、ブドウ畑などもあって、それを通り抜けていくと丘の上二ぽつりぽつりと白い風車が立っていた。
「これは、絵になるね」
「ああ、青い空に緑の大地、それから白い風車か。いいな」
 村から距離は少々あったが、風車のある丘から見える光景もまた素晴らしいものだった。風車の向こうにコンスエグラの村が見えるのもまたいいもので、パシャリと写真を撮った。拓海と規佑、メリッサと野乃に千と風車をバックに写真を撮り、最後に5人で並んだ写真も近くにいた人に撮ってもらった。
「こんなにいい写真を撮れたのは幸運の愛妻がいてくれたからかな」
 そう呟いた拓海の脇腹をもうっと言わんばかりに規佑は耳を赤く染めて小突くのだった。

 4日目は「カルメン」の舞台ともなったセビリア。フラメンコや闘牛も有名で、本場を間近で見られるかもしれないと楽しみにしていた。フラメンコは事前に食事付きのタブラオを探して、予約しておいた。まずは時間まで観光。代表的な観光地ともいえるスペイン広場。映画などの撮影に使用されたともあって、ココが歩くシーンに使われたんだななどと感想を零す。
「拓海さん、馬車がありますよ」
「お、ホントだ。あれって、観光用か?」
 広場の前を見れば、馬とそれに繋がれた黒い馬車。
「乗れるなら乗ってみたいわね。こういう機会なんてそうそうないし」
「確かによさそうだの」
「……馬車、2台空いてるかな」
 ぽつりと零した規佑の言葉に野乃は言うようになったのと口角をあげる。それにハッとした規佑はいや、そのと言葉にならない声を上げた。
「馬車、2台取ってきたぞー。折角だから、それぞれ右回りと左回りになるように頼んできた」
 野乃が規佑に構ってるうちに交渉して来たらしく、白馬と黒馬の馬車を抑えてきた拓海。考えることは一緒だったと嬉しく思うと同時に恥ずかしくなって顔を覆う規佑。あれ、オレなんか変なことやった? と首を傾げた拓海にいい仕事をしたわとメリッサはその肩を叩く。そして、野乃と千と言葉を交わすと黒馬の馬車へと乗り込んだ。
「じゃあ、先に行くわね」
「いってきまーす!」
「拓海、規佑のことよろしく頼んだの」
「え、あ、あぁ、勿論」
 2人ぽつんと残され、白馬は行かないの?とつぶらな目で見ていた。
「規佑、大丈夫か? ダメだった」
「ダメじゃないよ。大丈夫」
 ちょっと恥ずかしかっただけだからと俯きながら、行こうと拓海のジャケットの裾を引っ張る。そんな可愛い行為にギュッと抱きしめたくなる気持ちを抑え、そうだなと返事して白馬の馬車にまずは拓海が乗り込む。そして、規佑に手を差し出す。それにちょっと戸惑うもその手を取り、拓海の手を借りて馬車に乗り込んだ。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「お願いします」
 御者にそう声をかければ、ぺこりと頭を下げられ、馬に合図を送れば、ゆっくりと馬車が動き出す。カポカポと蹄の音が響き、広場に併設されている公園を抜け、観光地を巡る。時折、御者が軽い説明をしてくれ、ふと思ったことを尋ねれば、そちらの説明も怠らない。
「風が気持ちいいな」
「こうやって、風を受けるのもいいね」
 御者の説明をBGMに2人は映る景色を堪能する。その間、規佑は手を拓海の腕にまわしていたのだが、自然とやってしまったようで規佑自身気づいていなかった。ただ、手をまわされた拓海は嬉しさに顔がにやけそうになるのを必死にクールにやるって決めてただろと叱咤する。
「幸せだなぁ」
「どうしたの?」
「いや、こうして、規佑が傍に居てくれて、一緒に旅行出来て、オレは幸せ者だなって思ってさ」
 のんびりとした馬車での観光。隣にいてくれるのは愛しい人。これが幸せじゃないはずがないという拓海に規佑はそれは僕もだよと拓海の肩に頭を寄せる。穏やかなひと時が終われば、御者が最後にお幸せにと笑顔を2人に投げかけた。
 そして、メリッサたちと合流するもまだ時間は余っている。
「なら、ショッピングね」
「マドリードやトレドでやったんじゃないのか?」
「あそこはあそこ、ここはここよ」
 さあ行くわよと拓海たちを連れてショップを巡る。
「これ、可愛いわね」
「リサ姉、とっても可愛いです」
「あら、千ちゃんも可愛いわ」
「2人とも、よく似合っておるの」
 フラメンコ用の小物も販売しているショップでメリッサと千はそれぞれこれと思った髪飾りを試着している。それをみて、互いにいいねと言っているとその2人の近くでアクセサリーを見ていた野乃が感想を零す。そして、うむと頷くと丁度見ていたイヤリングを手に取ると購入。試着していた髪飾りを戻している頃に戻ってきて、まずはメリッサに、次に千にその購入したイヤリングをつけてあげる。
「うむ、これもよく似合っておるの」
 それぞれ色違いのバラのイヤリング。メリッサと千ははにかみ礼を告げる。そして、次にちょっとした記念にと3人でお揃いのヘアピンをメリッサから野乃と千に送られるのだった。
 ショッピングでは他にもプチプライズになっているものを見て、目を輝かせ、目の保養だけでなく、購入しようかどうか考え、拓海にねだるシーンもあった。
 そして、闘牛も運よく観戦することができた上にフラメンコもいい席で見ることができたのだった。
「「「「「オレ!」」」」」

 5日目はグラナダに立ち寄った。アルハンブラ宮殿の3つの宮を散策し、アルバイシン地区でアラブ料理を堪能した。そして、その足でバルセロナへと飛んだ。バルセロナでは勿論、ガウディのサクラダ・ファミリアは外せない。建設中の様子も眺め、某怪盗三世でも同じように登場したガウディが手掛けたグエル公園を散策する。翌日にはカタルーニャ美術館を見学し、ログローニョへと電車で移動。
 丁度、サン・マテオに当たったようで、観光客も多く訪れいていた。
 知人に連絡を取れば、ワイナリーの中にあるホテルに紹介された。
「レストランからもブドウ畑に町が見えるんだ」
「これは部屋も楽しみだな」
 ちらりと覗いたレストランからも町が見ることができた。期待して取っていた部屋から眺めると眼下にはブドウ畑が広がり、目の前には町と山が並んでいた。時間も時間で薄暗くなっていたこともあって、町にぽつりぽつりと淡い明かりが灯り始めていた。
「なんだか、幻想的だな」
「うん」
 灯っていく明かりを眺めつつ、2人は自然と指を絡め、ぎゅっと握っていた。
 その翌日は広場の中央で行われているジュースを作るモストを皆で眺めた。そこからは自由行動になり、拓海と規佑は近くで開かれていたワインの試飲に参加。あれもいいな、これもいいねと言葉を交わす。そして、あまりの規佑たちの飲みっぷりが良かったのか祭りということもあって地元の人が秘蔵だと言って、とっておきのワインを出してもくれた。2人は顔を見合わせ、頂こうと笑うとありがたく味わった。

「拓海、主! さっきお菓子をいっぱい買ったんです! あとでお部屋にお邪魔しますから一緒に食べましょ!」
 両手にお菓子を抱えた千が部屋の前で規佑の腰を抱き歩く拓海と寄り添う規佑に声をかける。それに、規佑は言葉にならない声を漏らし、拓海は流石に断れないかなと目が泳ぐ。それに気づいた野乃はちょいちょいと千を呼ぶ。
「え? 何ですか兄」
「千、2人は新婚旅行なのじゃ。きっと今夜は仲良しなのじゃ」
「はわわ! そうでした、楽しくて新婚旅行なの忘れてました」
 トトトと野乃に近づいた千に野乃がそっと耳打ちをすれば、頬を染めて新婚旅行なのを思い出す。そして、やっぱり大丈夫ですと2人に伝える。
「えっと、その、ごゆっくり?」
 頬を赤く染めたままそう言った千に今度は規佑が赤くなる。
「ちょ! 千に何言ったの?!」
「何を言ったかの?」
 そうとぼけると千を連れて野乃は自分たちの部屋へと向かうのだった。それに祝福してくれてるのは感じ、嬉しく思うも恥ずかしい気持ちにもなる。
「規佑、千にもごゆっくりって言われたし、ごゆっくりしようか」
「もう」
 部屋へと入ると後ろ手で鍵をかけてどちらともなく唇を交わす。そして、拓海は軽々と規佑を抱き上げる。
「ふぁっ!」
「美しい風景を更に美しく輝かせてくるのはやっぱり規佑だな」
 大きく見開いた槻右の目に映った反転した夜景を見つめ、拓海がそう囁く。そっと窓の傍のベッドに下ろし、そのまま規佑の体をベッドに縫い付ける。
「愛してる」
「僕も愛してる。一緒になってくれてありがとう」
 上半身を浮かし、上に乗る拓海に軽く口づける。それに拓海は目を細め、愛おしそうに規佑の頬を撫でる。そして、2人の影は深く重なっていった。

 翌日の昼時、先に起きていた拓海は規佑の寝顔を堪能していた。そして、震えた瞼におはようと声をかければ、おはようと声。
 2人で遅めの朝食をとっていると民族衣装を着たメリッサと千に野乃がやってきた。
「これから、ブドウ踏みの体験に行くんだけど、拓海たちも行く?」
「ああ」
「うん」
「私、頑張って踏みますね!」
 グッと拳を握る千に頑張れと拓海は頭を撫でた。
 知人のワイナリーに着くと既に準備してくれていたようで樽の中に沢山のブドウが入ってた。
「ほぉ、ワイン用のブドウとな。美味しそうじゃな」
 食べてみますかと言われ、5人それぞれ1粒口に放り込む。皮が厚く、中々、食べづらいが甘みも十分にあり、美味しかった。
「すっぱいかと思ったのじゃが」
 勿論、酸味もあるがそれ以上に糖度も大事だと主人は語る。それにそうなんだと全員が納得する。そして、ちょっとしたブドウ講義が終わると、早速、足を洗ったメリッサと千、野乃が樽に足を踏み入れ、フミフミ。千やメリッサは裾が汚れてしまわないように持ち上げ、足を動かす。
「ちょっと、変な感覚ね」
「あはは、足が紫になってます」
「これはこれは面白いの」
 フミフミ。フミフミ。ある程度、潰して、体験は終了した。始終楽しかったらしく、終わってからももうちょっとと言っていたほどだ。
 そして、拓海は今回潰した分と今年同時期に作っている分を合わせて、そのワインの予約を大量入れる。開けるの日はもう決めていて、毎年の結婚記念日。最初は深みのない味だろうが、ワインが年を追うごと熟成されるように、二人の関係も深まり続く歴史とし、熟成していくように願いを込めた。
 その後は収穫の体験もさせてもらい、翌々日にはマドリードに戻り、スペインを飛び立った。



 後日届いたワインに一枚のメッセージカード。
「Que seais felices y comais perdices!!」


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2019年11月01日

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