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『「問答無用の解決手段」が採用された後の話。』
黒・冥月2778

 まぁ、あの博士の件は後回しでもいいだろう。
 興味があれば向こうから接触してくる筈だ。

 思いつつ、黒冥月(2778)は博士の作だろう「ノインの新しい体に使える木偶」を有難く目的通りに使わせて貰う事にする。
 完全を求めるならあのややこしい相手の「真意」が何処にあるかも事前に確かめておいた方がいい事はいいが、だからと言ってあの博士の「窓口」こと凛辺りに確かめるのは――正直面倒である。

 今はノインを「使える」様にする方が優先だ。



 まずは恒例の影内空間で、ノインの魂に当の「木偶」へと憑依して貰う――万が一の場合にも取り敢えず「体を保管」しておくのに楽な方法を考えた結果だ。
 これでそれなりに動けそうだったら、影の外に出る事も考える。
 さて、どうなるか――。





 ……。





 暫し待ってみても、「木偶」の横たわる棺の如き例の箱からは――起き上がって来る気配無し。どうした? と思い箱を覗き込んで見ると、取り敢えず目は開いている。ただ、何やら困っている風に見えるのは気のせいか。そもそも表情も動いていないかもしれない。

「どうした?」
「……ぁ、う」
「目は開いたか。もう少し確り喋れるか――」
 と言うかこちらの言う事は聞こえているか、認識出来ているか――と続けて確かめようとしたのだが。

 それを遮る様にして、割って入った声が二つ。

「ノイン! ちゃんと本当にノインなのよね!?」
「ノインさん、大丈夫ですか、動けないんですかっ」

 ……エヴァ・ペルマネント(NPCA017)と草間零(NPCA016)である。元を質せば今回の依頼主である以上、満願成就(?)のこの場面で同席しないと言う選択肢は無い。だから二人がこの場に居るのはいいのだが――声だけでは無く体の方でも箱にがばっと飛び付いて来るのは少々宜しくない。
 殆ど反射的に襟を掴んで止めておく。

「こら」
「ちょ、何するのよっ!!」
「って、ええ、冥月さんっ!?」
「体に入ったばかりで発じょ……もとい興奮したお前達の霊圧に影響されたらどうする。気持ちは解るが少しは自制しろ」
「っ……そ、そうでした」
「ってどさくさに紛れて何いいかげんな事言い掛けてんのよっ!?」
「特に間違った事を言ったとも思わんが。さておき、この面子では仕方あるまい」
 まずは私が、と横たわったままのノインの上体を、抱き寄せる様にして起こしてみる――自重の支えはか細いながらある事はあるか。確かめつつ、起こした上体に胸を押し付ける様にしてがっつりハグ。……ああ因みに服の方は適当に買い込んだスウェットを事前に着せてある。当たり前だが当初の全裸のままでは無い。

 それでも空間、一時停止。

「――!」
「な、な、な、何してるのよユーッ!!!」
 零は絶句、エヴァは文句の声も裏返っているが――まぁ無視でいい。動けるか動けないか。そんな動物的な事を確かめるなら、少々女の武器も使って本能を揺さ振ってみた方が色々手っ取り早いと見た。
「精神と感情と身体の繋がりはどうだ?」
「ぅ……っと、ど、どうなんでしょうこれ……!」
 どうも殆ど動けません。
「やっと喋れたか。となれば時間の問題か――確かに身体の方は今は完全に無抵抗だな。で、動けないなりに動かせそうな所はあるか? そもそも今何をされているかの感覚はあるか?」
 ぶっちゃけ男性機能は大丈夫か。
「……ってあのですね」
「――ってバカなのユー!!!」
「っ――あ、あ、あの冥月さん何を……!」
「大事だぞ、これからは」
「……えぇと、元々霊鬼兵なのでそういうのは……と言うか、解放して貰えませんか……っ!?」
「ふむ。まぁ追々と言った所か」
 今の間で喋りが加速度的にマシになり、喋りや表情にどんどん感情が籠って来たのも本能に訴え掛けた甲斐があったと言う事かもしれんしな。思いつつ、冥月は取り敢えずハグを緩め、ゆっくりと放す。と――そのまま倒れ込む事無くノインの方も体勢を保持出来た。こちらも進展ありか。
 が、これでは――すぐどうこうと言うのは少々難しかろう状態ではある。
「暫くそのまま慣らしておけ。だがまぁ時間が掛かりそうだからな。エヴァも零も一旦影から出て戻れ」
 仕切り直して後日呼ぶ。
「……。……せめてちゃんと動ける様になるまで御世話させて貰えませんか?」
「っ、だったらわたしもっ、て言うかこの黒女と二人っきりにしてたら何されるかっ!」
「……世話か。ノインにしてみればまともに動けない様な自分の姿は、部外者の私ならともかく本来お前達に見せたくないんじゃないかと思うがな?」
「……っ」
「……それは」
「それに、ここで甘やかすのもどうかと思うがなあ」
「って――あ ん な 事 し と い て ど の 口 が 言 う の よ !」
「ちょ、エヴァ抑えて……!」
「そうだな。抑えんとお前の操る悪霊だか怨霊がいつ勝手に暴れ出すか知れん」
「っ」
「……。……少し時間が貰えれば、何とかなると思います」
 何となく、僕の方で身体操作に当たって何か思い違いをしているだけの様な気がしてならないので――そこが何とかなれば。
「そうか? まぁ、何にしても暫くはお前の遣り方でやってみるといい」

 この場所は貸す。



 流石に本人の希望で二人からの世話は断り、取り敢えず一人になったノインは暫く何事か考え込んでいる――まぁ、この影空間自体が私の能力である以上、一人にしておくと言っても私には筒抜けと言う事になるのだが。……ノインも承知である。

 上体を起こした所から、立ち上がろうとしている。何度かよろけて失敗、だが比較的すぐ立ち上がる事は出来た。次。足を踏み出し、歩き出す――ぎこちない。肩も腕も動かす。手指も一つ一つ。試す様に体を捻り、首を回す。視線を動かす。喋る。それらの複数を同時に出来るか。走れるか。跳べるか――。

「――そろそろ、いいか?」

 声を掛け、冥月は影内空間ノインの前に着地する。こちらの声を受けてか頷くノイン。その辺の反応速度はまぁ良さそうだ。

「一通り見させて貰ったが、鍛練の前にリハビリが必要なレベルだな。意思を以っての反応速度はいいが動きが力弱い。それと無意識下で動く様な動きは常人にも届いていない」
「ですよね。……何が違うのかな……」
「すぐには思い当たらんか。なら聞くが……昔きちんと鍛練していたか?」
「それなりには。曲がりなりとも戦闘要員の量産型霊鬼兵だった訳ですから」
「なら、霊鬼兵の性能に頼り切ってはなかったか」
「そんな事は……あ」
「何だ、図星か」
「いえ、どちらかと言うと……その逆、でしょうか」
「?」
「ちょっと試してみますね」

 言うと、ノインの動きがぱたっと止まる。ひょっとして一旦体から離れて何かしてるのか――と思ったら、ふっと目に力が戻って来た。のみならず、軽く体を沈めたかと思うと、力強く踏み切り跳躍、旋回気味に中空へと蹴打を二連、着地で急制動、今度は拳打と掌打を滑らかに織り交ぜ打ち出す形の、実用に足る演武を見せる。
 ちょっと驚いた。

「おい、何をした」
「僕の霊鬼兵だった頃の体、晩年は殆ど使い物にならなくなってたのは冥月さんも御存知ですよね。その頃と同じ身体駆動の遣り方をしてみました」
 要するに、隅から隅まで自分の意志で糸繰してる感じなんですが。
「それで「逆」と言う事か――ふむ。これなら及第点だ」

 エヴァと零にも伝えていいだろう――まぁ、伝えたらまたすぐここに飛んで来そうだが。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 黒冥月様にはいつも御世話になっております。
 今回も続きの発注有難う御座いました。

 お待たせしました。
 にも拘わらず。

 本文見て頂ければわかると思いますがと言うか大変申し訳無いのですが、今回、頂いた発注内容のほぼ前半分だけになってしまっております。なので今回の発注内容、前後編の様な形で後半分まるっと次回にやらせて頂きたいのですが如何でしょうか……っ。
 この面子でわいわいとハプニング込みでやるとなるとどうしても脱線重ねて文字数食ってしまう上に、「それがメインの内容」と見ていいとなれば、出来ましたらばもう少しじっくりやらせて頂きたいのです……!
 どうぞ御検討宜しくお願い致します(礼)

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2019年11月05日

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