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『氷の女王の末裔と雪姫の戯れ〜次の勝負はファッションショー』
アリア・ジェラーティ8537

 それはある夏の日の事。
 アイス屋さんにして氷の女王の末裔であったりもするアリア・ジェラーティ(8537)が、雪女郎である雪姫の住まう極寒の雪山に“お仕事抜き”で「遊び」に来た事から始まった。
 まずは――来るには来たが何で遊ぶかノープランだった所の思い付きから、アリアの持参したおみやげアイスを活用した大食い兼早食い競争が敢行される。次にはどちらが大きな雪だるまを作れるか勝負――更には完成した雪だるまの記念品化(氷漬け)までこなす事になった。それでいい汗かいたと言う事で――今度は休憩の為に一山越えた先の温泉目指して雪山の滑走勝負。着いた所で今度こそ本当に漸くの一休みに入り、まったり温泉……と、相方が「雪姫ならでは」のバラエティに富んだ「遊び」を重ね、氷雪の加護を受けし二人の乙女は思う存分素敵な時間を満喫していた所だったのだが。

 流石にそろそろ(遊びに来ている時間的に今日中に済ませる為には)集大成とも言える「遊び」に突入しようと言う段階になった。
 そう、どちらの方がスタイルがいいか。温泉に浸かりつつそんな話になってしまえば――氷雪の加護を受けし身であるなし拘らず、御年頃の女子としては絶対に負けられない戦い! になりもする。
 ……まぁ、雪姫の方は御年頃かどうかは微妙な所だが……取り敢えず雪女郎と言う時点で年齢は関係が無いとも言える。即ち何年経とうが姿通りの御年頃、それ以上でも以下でも無い訳だ。

 そんな訳で、それまでにもちらっと話に出ていたファッションショーを「最後の勝負」の舞台にと考える。やる場所については特に拘らない様な事を当初雪姫が言ってはいたが、こうなって来ると……もっと舞台も確りと考えたくもなってくる。……そう、モデルの綺麗さや可愛さがより映える場所が望ましい。

「さて、何処でやったものかのう」
「……あの氷像がいっぱいある氷の洞窟とか……どうかな……?」
「ん? ああ、そうだな。そもそも「あの」洞窟はそういう用途であった」
 そう。元を質せば雪姫も雪姫で、どうせ氷像を置いておくのならより美しく映える場所の方が良かろう、と「あの」洞窟を使っていたのである。うむ、と頷き、雪姫はアリアの進言を素直に受け入れる。……「あの」氷洞の最近の用途は殆ど「不要品の物置」に等しかったからそんな大切な事を不覚にも忘れていた。ならばここは再び活用するいい機会でもある。
 舞台は決まった。
 となれば――後は。

 最高の舞台を作り上げる為の準備をするだけである。

 アリアと雪姫はざばーんと(そんな気分で)温泉から上がり、次の「戦場」へと意気揚々と向かうのだ。



 そんな訳で、温泉から雪姫の住まいな雪山に戻って後。

 まずは当の氷洞内の整理に取り掛かる。
 雪姫の眷族足る雪妖や、さっき補充分のアイスの素を持って来て貰ったこちらはアリアの眷属と言える氷の精(仮)の手もがっつりと借りまくり、取り敢えずファッションショーの舞台に相応しい空間を作る。……わざわざ整理が必要な理由はと言えば、雪姫退治に来た不埒な輩や、何か噂を聞いて腕試し的に勝負を挑んで来た人間を雪姫が凍らせた結果の氷像が所狭しと並べられているからである。
 実の所、氷洞の奥の方については当初の思惑通りそれなりに見栄えがいい様に氷像を飾ってはいたのだが、入口に近い方になるにつれ、何かもう数が多くなり過ぎて適当な事になって来ていたのである。
 だから、殆ど不要品の物置。
 その物置のリニューアルからまず開始。眷族の皆さんにも力持ちさんや手数が多い方々がそれなりに居るので、音頭を取るべき雪姫がその気になったなら、早い。
 見る見る内に一角が片付けられ、ついでに壁や地面がきゅっきゅと磨かれ始めている――そう、そんな音が鳴る程に磨き上げられている場所があるのだ。滑らかさからして最早殆ど鏡。実際、はっきり姿も映る。舞台装置としては御誂え向きである――だからこそ、氷洞内でもこの場所を選んで片付けた訳だ。
 そして、脇に当たる別れた通路の入り口に氷で簡易的なカーテンを張りその奥にバックヤードを設置、そこの中でアリアと雪姫は――それぞれ、覚えている限りのファッションを自分達の能力で作り上げ、着替えてショーで披露してみちゃおうと言う訳だ。
 勿論、勝負と言う通りに、勝敗の鍵を握る審査員の方も考えてある――そう、舞台を整える御手伝いをしてくれた眷族の皆である。彼らにどちらが可愛かったか、綺麗だったかの票を入れて貰うのだ。
 若干不安が無いでも無いが(つまり滑走勝負の時のひたすら決まらなかったアレ)、公正かつはっきりした審査をとなると、結局これしか思い付かない。……実際、本当のファッションショーだって結局そういう事になるんだろうし。

 後はもう、出たとこ勝負。なる様になれ、である。



 一番手、雪姫。
 静々とバックヤードから出て来たその身を包んでいたのは――まずは十二単である。時が平安ならば超定番、重ねられている色の違いは雪の結晶の煌きで表現すると言う芸の細かさが見て取れる。
 それは確かに、美しい。
 美しいが――スタイルの良さとかあんまり関係無い。雪姫はこれまた雪の結晶で作った扇で口元を隠して「らしい」ポーズを決める。艶やかなステージである。……とまぁ確かにそれもそれでありだろうが、如何せんこの時代の――この服装の時代の美人さんはそもそも顔もスタイルも碌に表に出て来ないと言う、今回の勝負としてはある意味致命的な所がある。……審査に悩まれる気しかしない。

 雪姫が戻り、次はアリア。
 こちらは雪姫の十二単に対抗してか、西洋風のイブニングドレスを選んでいる。肩を出した形で、ウエストは絞られていて、膨らんでいる長いスカート――全て氷で丁寧に作られている。……こちらの方がさっきの十二単より確実にスタイルの良さを見るには向いている。が、これら全てが氷の色となると――何となくウエディングドレスっぽい様にも見えて、見る方はちょっとどきっとするかもしれない。
 ……とか審査の方でこそこそ呟かれていたら、アリアはちょっと考える様に小首を傾げて、自分の頭にこれまた「らしい」ケープとブーケを作成、サプライズ的にそれらも纏って、見せ付ける様にステージでくるり。
 おおお、と絶賛の嵐。……但し、バックヤードで全て用意して来た訳で無く、審査員の様子を見てからの行動もあったので、ちょっと反則気味だったかもしれない面はある。

 次の雪姫はアリアに対抗してか白無垢と角隠し。次のアリアも雪姫の着物連発に対抗してか「はいからさん」の様な大正女学生スタイル。次の雪姫はセーラー服で、アリアはブレザーと制服モード。その次は二人とも水着、その次は……とまぁ、手を変え品を変え、交互に次々と雪と氷のファッションが展開されていく。
 後半は雑誌で見たとか通りすがりに見て綺麗だと思ったとか、それはもうごった煮状態で――どれもこれも審査員に称賛はされたが、案の定と言うか何と言うか、肝心の勝負が決まらない。

「うぬらはっきりせんかー!!!」

 わいわいがやがやわさわさわさ。

「……やっぱり……」

 審査員の反応がまるっきり滑走勝負の時と同じである。……アリア側の御連れさんな眷族も混じってる割に変化が無い。つまりその位に拮抗していると言う事なのだろうが……。

 どうしたら勝負が決まるんだ、これ。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 氷の女王の末裔様にはいつも御世話になっております&いつも御手紙まで有難う御座います。
 今回も発注有難う御座いました。
 そして今回もまた大変お待たせしております。

 内容ですが、何だか準備部分に結構文字数を割いてしまった上に、本題の方でも勝敗決まりませんでした。色々考えてみたんですがどうしても甲乙付け難いと思うんですよ……最終決戦、どうしましょう(苦笑)

 さておき、如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、次はおまけノベルの方で。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年11月08日

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