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『そして、それから……』
春月aa4200)&レイオンaa4200hero001

 その日、世界は平和になった。
 それから日々は穏やかに過ぎて――技術も進歩し――異世界に渡る手段も確立された。

 ――春月(aa4200)が30代前半の頃である。
 彼女の英雄レイオン(aa4200hero001)が、その技術を用いて元の世界に戻ったのは。

 英雄がいないということは、春月のH.O.P.E.エージェントとしての活動も終了することである。春月に第二英雄はおらず、レイオン以外の英雄と新しく誓約を結ぶこともなかった。
 
 それから、春月はかねてからの夢であったダンサーとして日々を過ごしていた。H.O.P.E.エージェントとして長く活動してきたことで貯蓄もある。重ねてきた努力も実を結んだ。世界的な……とまではいかないが、それなりに成功したダンサーとして春月は生活していた。

 ――今となっては、若い頃のことが夢のよう。
 異世界の存在と共鳴して、恐ろしい存在と戦っていただなんて。
 ……とか、春月は時折しんみり思う。視線を落とす先の写真立てには、英雄と二人でH.O.P.E.本部前で撮った写真が飾られている。

(アイツは元気でやってるのかなぁ……)

 写真の中のレイオンは穏やかに微笑みを浮かべている。「アイツのことだからきっと元気だよね」と春月は写真を撫でて含み笑った。彼女の胸元を飾るのは、この世ならざる美しい宝石――幻想蝶。それはレイオンと春月の誓約と絆が、未だ途絶えていないことを示していた。

「さて、と」

 今日は本職はお休みである。幼少期にお世話になった施設のお手伝いに赴くつもりだ。同時に子供達にダンスを教えて、運動がてら自己表現によるセラピーを行うのも今の春月の役目である。



 ●



 ――施設の光景は昔から変わらない。

 今、その施設には多くの子供達が入所している。それも幼い子が多い。つまりどういうことかというと、「チビっこギャング」というか、なんというか。

「たはー、元気いっぱいだねー……」

 さっきから散々遊びに付き合って、春月はヘトヘトになっていた。ダンサーなので体力がある方とはいえ……「そろそろ歳かなぁ」なんて苦笑してしまう。

「お疲れ様、春月」
「うん、ありがとー……」

 隣から労う声をかけられ、椅子に座り込んでいた春月は片手を上げた。声の主はお茶も同時に出してくれていて、春月はそれに手を伸ばそうとして――

「……え?」

 そういえば、聞き覚えのある声。春月は目を真ん丸にして『声の主』の方へと振り返った。
 そこにいたのは……レイオンだった。別れた時となんにも変わらない、穏やかな微笑みの男。

「――レイオン!? どうしてここに!」
「ここならきみに会えると思って」

 まるで悪びれない様子でレイオンはそう言った。なんだかイタズラに成功した子供のような顔をして。
 春月はポカーンとした顔でレイオンを凝視していた。が。

「あーっ、いいところに来てくれたよね! ちょっと遊んでやってて!!」

 彼女がビッと親指で示すのは、まだまだ元気いっぱいの子供達。今度はレイオンが「え?」という顔をする番で――その頃にはもう、チビっ子達がワーッと大挙してレイオンへと突撃をかましていた。レイオオンは「うわああー」とチビっ子の群れに飲み込まれていった……。

 ――これが、春月とレイオンの再会の日。

「いやーまさか帰って来たなんて。改めまして、おかえりレイオン!」

 子供達のお昼寝の時間、春月とレイオンはテーブルでお茶を飲みながら改めて向かい合っていた。

「ああ、……ただいま、春月」

 ティーカップを置いたレイオンの美貌は時が経っても何一つ褪せていない。目をぱちぱちする春月が「レイオンっていくつなの?」と聞いても「永遠の17歳です」と彼は冗談と共にそれとなくかわした。
 一方でレイオンもまた、春月に対して「変わっていない」と思うのだ――天真爛漫な笑み、そして久方振りの再会だというのにまるで半年かそこらぶりの再会のような気軽さ。根掘り葉掘りレイオンのことを聞いてこない距離感は昔と何も変わらなくて――かといって無関心というワケではないラフさがある――だからこそ、レイオンは心から安心感を覚えるのだ。まるで離れていた年月を感じない。

「……結婚はしていないんだね?」

 レイオンはテーブル上の春月の左手にそれとなく視線をやった。その薬指には婚約を示すものはない。「ああ」と春月はなんてことない様子で手をヒラヒラさせた。

「んー結婚とかそういうのねー、なーんかよく分かんなくって。わざわざ結婚なんかしなくってもさ、一緒にいたい人とは一緒にいればよくない?」

 春月は首を傾げてそう言った。彼女はあまり血縁や結婚にこだわりがない。家族同然の友人がいるので、特に孤独感も感じていない。レイオンは「そうですか」とだけ答えて、言葉を続けた。

「ダンスはまだ続けているんだね。施設の人から聞いたよ」
「うん! まあね、やりたいことで生きていけてる。結構いい人生、送ってると思うよ」
「……そう」
「見る? 久々に」

 春月はニコニコしながら席を立った。かつて結んでいた二人の誓約は「春月の踊りをレイオンが観ること」だ。施設の中は子供達が寝ているから――携帯音楽再生機を持って庭に出る。芝生の上、お日様の下、春月は音楽に乗って踊り始める。
 もう少女ではない春月の動作は、少女だった頃と比べて随分と洗練されていた。同時に少女の時よりも瑞々しい――その動きは再会の喜びを表していた。
 老いてなお美しい。『特等席』で眺めるレイオンは、眩しいものを眺めるように目を細めた。

 ――レイオンは、昔も今も春月のダンスに惚れている。春月自身に惚れていると言ってももいいのかもしれない。春月に対して恋愛感情があったかどうかは、永遠の謎だけれど……いつだって愛はあった。愛していた。それは本当だ。……きっと、恋とか友情とか、もうそういうものでは測れないような感情なのだ。

「ねえ、レイオンも一緒に踊ろうよ!」

 呼吸と体を弾ませながら、春月が微笑んで誘う。けれどレイオンは「ここで見ていたいから」と笑みを返すのだ。春月は「そう」とだけ返してまた踊り続ける――レイオンは昔からこうだった、と思い出しながら。
 春月としてはレイオンと一緒に踊りたいのだが、彼は滅多に踊ってくれなかった。――その理由はレイオンだけが知っている。彼はこう考えていたのだ……「一緒に踊ったら春月の踊りが観られない」。それほど、レイオンは春月の踊りを愛していた。



 ●



 月日は過ぎていく。
 日常は変わらない。
 他愛のない、けれどかけがえのない。

 時が経つにつれて春月は老いていく。
 やがて彼女はダンサーを引退し、年金と貯金でのんびりと暮らすようになっていた。とはいえダンサー稼業はすっぱりやめたわけではなく、近所の子供に簡単なダンスを無償で教えているけれど。

 そんなある日のことだった。

「何でレイオン若いまんまなの!? ずるい……! しょうがないから、うちの代わりに踊ってよ」

 三つ子の魂百までというか、シワだらけのおばあちゃんになっても、春月は春月のまま、少女の頃からそのお転婆具合に変わりはない。
 一方のレイオンはというと、春月が老いると共にその振る舞いは保護者というよりも孫のようになっていた。ベッドに横たわったままの彼女の変わらぬ笑みを見て――「しょうがないな」とレイオンは苦笑した。

 ――思い出の音楽をかける。ボロボロの携帯音楽再生機。

 レイオンは踊る。彼女の為に。
 風が吹いた。カーテンが翻る。
 男は手を差し伸べる。恭しく、唯一のひとに。

 ――きみをさらいに来たんだよ。

 唇の動きは、そよ風の中。

「どこにつれてってくれるの?」

 シワだらけの手がそこに重ねられた。

「さあ、どこだろうね」

 レイオンはその手を引いて、春月を大切に抱き上げる。




 ――その日、春月とレイオンは『行方不明』になったという。

 二人はどこへ消えたのか?

 噂によると……二人はレイオンの世界で、今も楽しく踊り明かしているんだとか。




『了』

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご発注ありがとうございました!
リンブレでもお世話になりました。
二人にはずっとずっと幸せでいて欲しいものです……
そして私事ではありますが、こちらのノベルが私のリンブレに関連した最後の作品となります。
なんだか感慨深いものですね!
改めまして、ありがとうございました!
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2019年11月25日

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