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『YAMINABE Wars 〜かもてくたん、地球に立つ〜』
てくたんla1065)&la3453)& 大慈la2023)& バハルヤムトla1742

 宇宙の向こうっかわに、数多の恒星と惑星が“土鍋”を描く土鍋型星雲――鍋銀河は在った。
 そこに生まれし生命はみな鍋を愛し、銀河でもっとも古き鍋惑星“D-ONABE”の彼方で愛の祈りを捧げたりしてる鍋女王(男の娘)の加護の下、鍋パーティーに勤しんでいたんだが。

 我輩はぁ、宇宙一悪ぅぃ、“すき鍋帝王”ぅ! 貴様らの守りしぃ、聖なる土鍋をぉ、打ち壊しぃ! 鉄鍋★銀河帝国をぉ、打ち立てるぅ!

 ある日、そんなアナウンスが鳴り響き……悪のミノタウロス型宇宙人どもが押し入ってきたのだ!
 対して、銀河と鍋の平和を愛する鳥たちは連合群を結成して迎え討つ。
「うちらでやるしかないんよ。行くで」
 小型機動土鍋に乗り込んだてくたん(la1065)が、仲間たちへ告げる。
 別宇宙からやってきたというゆるキャラ風うさぎキャラだが、うさぎもまた一羽と数えることから鍋銀河に受け入れられた義の戦士である。
「クワーっ! 突撃かもーっ!」
 群の先陣を務める鴨(la3453)が小型機動土鍋を駆り、ミノタウロスへ突撃した。
「しゃあないわぁ。フォローすんで」
 カセットコンロ型エンジンに点火、その後を追うてくたん。
「熱々かも!」
 鴨の鍋から発射されたバルカン豆腐が、ミノタウロスどもの剥き出しの顔面にびしゃり。熱々地獄へ叩き落とす。
「やるやん。ステキやん」
 シッポでサムズアップを作ったてくたんは、トマトミサイルとキャベツネットの熱々洋風具材で効率よく、鴨の撃ち漏らしたミノタウロスを倒していった。
「煮力――読み仮名は“にぇーす”。超能力っぽいやつ――の導くままにかも!」
「やね。煮力はうちらと共にあるんやで」
 二羽の活躍に意気を上げた連合群だったが――攻勢はすぐに覆された。
 すき鍋帝王が乗る超巨大戦鍋が戦場へと押し入り、圧倒的火力ならぬ具力で銀河を暗黒すき鍋に仕立てなおしたのだ。
 貴様らはぁ、鳥すきの具材になってぇ、おいしくっ! いただかれるのだぁ! ブモブモ高笑いするすき鍋帝王。
 連合群の誰もが具材にされる末路を覚悟したとき。
 聖なる土鍋を持って逃げるのです。できれば湿気の少ない場所へ。
 女王(自称)の裏声が群へと届き、洗った後に目止め――おかゆなどを煮て、でんぷん質を浸透させることで土鍋のひび割れを防ぐお手入れ法――をし、よく乾かした後に新聞紙へくるんだ土鍋がてくたんと鴨に託されたのだ。
 女王(自称)の意志を受け、鍋銀河からの離脱をはかった二羽だったが。
 超巨大戦鍋の放った甘辛いすき鍋出汁が、二羽を鍋ごとすき焼かんと押し寄せる。
「もうだめやーん!!」
「くわあああああ!!」
 唐突に二羽の姿は消えた。
 すき鍋帝王は見抜いていた。聖なる土鍋がその煮力を解き放ち、二羽をワープさせたのだと。
 逃がさぬぞぅ。かならずぅ、聖なる土鍋をぉ、うっかり落としてぇ、割り砕いてやるぅ。


「ここ、どこやん?」
 てくたんはきょろきょろ、辺りを見回した。
 鍋銀河ではない。それどころか宇宙ですらない。というか暑い、いや熱い! しかも青い星がぐんぐん近づいてくる!
 二羽は聖なる土鍋と共に落ちていく――地球と呼ばれる星のどこかへ。

 空き地の土管の上で大慈(la2023)は目覚めた。
 どこだよここ? なんにも思い出せない。なんで俺はここにいるんだ? いや、本当はわかってるが、そっちのほうがかっこいいからな。
 と、上空を横切る流れ星。
「鍋」
 ひどくなつかしい気持ちに突き上げられる。なんだこれは、頭が割れそうだ! ということにしておく!
 鍋がぁ、欲しいかぁ?
 どこからともなく響く声音。そこに含められた闇の煮力に大慈は吸い寄せられる。
 俺は……鍋を……しなくちゃ……

「あ、流れ星だね」
 同じころ。夜空を横切る光を見上げ、バハルヤムト(la1742)はほんわりと笑んだ。
 バイト帰り、夕食はちゃんこ鍋にしようかなぁと思い立って、そういえばちゃんこ鍋ってどうしたらちゃんこ鍋になるんだろうね? と悩み、どすこいっぽい感じにしたらいいんだよねと思い定めて買い物を済ませてきた彼であるが、とにかく。今は流れ星に願いをかけなければ。
 うーんと、えーっと。いきなりすぎて思いつかないな……あ、そうだ。
「ごっつぁんです」
 願いじゃありえない彼の言葉に応えたものは、流れ星じゃなかった。
「それは愛の祈り……鍋女王、なぜこんなところに?」
 投げかけられた声に、バハルヤムトは首を傾げる。
「女王? 俺、男だし。女王なら女の人じゃない?」
「女王は男だ」
 くわっと言い切った声の主は――黒編笠に黒着流し、ついでに黒鞘の刀を佩いた少年。ファッションセンスもさることながら、黒ずくめってあたりが実にアレである。
「あの、意味がわからないんだけど?」
 率直な感想を述べてみたバハルヤムトだったが、少年は答えずに「うっ」、膝をつく。
「ど、どうしたの? 具合悪い?」
「俺の、煮力……暴れる、な。もうじき解放してやるさそうとももうじきにな」
 前半の苦しそう感からの、後半のすらすら感。これはもうアレだね。アレなんだね。納得するバハルヤムトだったが。
「とにかくすき鍋帝王がお待ちだ。来い」
「え、すき鍋? 俺、ちゃんこ鍋の予定が」
 あーれー。
 絹を裂くにはちょっと野太い悲鳴を残し、バハルヤムトは哀れ、拐かされちゃったんだった。


 一方、焼き肉になるのをまぬがれ、見知らぬ星へと不時着を決めたてくたんと鴨。
「暗黒の煮力が迫ってるで」
 話の都合により、てくたんはあっさりとすき鍋帝王の煮力を感知する。
 対して鴨もまた話の都合で強くうなずいた。
「鴨たちの鍋はもう動かないかも。でも、鴨たちには煮力の加護があるかもよ!」
 その煮力に応え、聖なる土鍋が輝きを放つ。まあ、新聞紙(なぜか燃え尽きていない)にくるまれているのでまったく二羽には見えてなかった。
 そして。
「その鍋、渡してもらおうか」
 闇の煮力沸き立たせる黒ずくめの少年が、二羽の前を塞いだのだ。
「あ、あんたはんは!」
「てくたん君、知ってるかも!?」
「知らんで」
 お約束の展開に、鴨と少年、ついでになぜかてくたんもズッコケた。
「せっかくやし、もうひとボケ欲しいとこやね」
「じゃあ鴨が天丼いくかも」
「話が進まないからやめろ!」
 わーっと少年が二羽の相談を遮って。
「俺の名は大慈! 鍋銀河で聖なる土鍋を守る――主に鍋の中へ詰まる――任を生業にしてきた猫族の戦士! しかし今の俺は記憶を喪ったところをすき鍋帝王に洗脳され、聖なる土鍋を奪いに来た闇鍋の騎士、もとい暗黒すき鍋卿だ!」
「えー、ほんとに洗脳されてるん?」
 てくたんの疑問は完全無視、大慈は思いきり右手を振りかぶり。
「女王は闇が捕らえた! さあ、女王の命が惜しければ聖なる土鍋を差し出せ!」
 後ろを示したわけなんだが。
「いえ、だからですね、これはちゃんこ鍋ですから」
 すき鍋とはぁ、鉄製の鍋を指す言葉ぁ。すき鍋を使えばぁ、すべてぇ、すき鍋となるのだぁ。
 見知らぬ獣人の美丈夫がカセットコンロの上で煮える鍋を挟み、あろうことかすき鍋帝王ご本牛と鍋論を戦わせていた。
「なんで帝王ご本牛がご登場なん?」
「鍋銀河からワープしてこれたのが帝王だけだからだ」
「帝王のとなりの人、誰かも?」
「鍋女王だ。男で、愛の祈りを捧げていたんだからまちがいない」
 胸を張る大慈にてくたんと鴨は疑わしげな目を向けたが、とりあえずノリ的にそうしておくべきところだと思うので。
「じょ、女王かもぉ!!」
「すぐお助けせんとあかんやん」
 心地よさげに目をすがめた大慈はうんうん。
「鍋を渡せ! それとも力尽くで奪われたいか!?」
 左に佩いた刀を抜き放った。闇の煮力が禍々しい赤光と化し、刀身を煮え立たせる。
「鍋そろそろできるけどどうする?」
「ネギはよけておいてくれ。猫はネギ食べると急性腎不全になるから」
 バハルヤムトに応えておいて、あらためて二羽へ向かったが。
「あ、ちょっとだけ待つかも」
 今度は鴨に止められた。
「これから盛り上がるところなのに」
 ちっ、舌打ちしながらもちゃんと待つ大慈。煮力の暗黒面に堕ちた設定の割にいいヤツなのだ。
 その間に、いそいそと鴨の後ろで準備していたてくたんがシッポでオーケーサインを出汁もとい出し、二羽で並んだ。
「かわいくてもっふもふな癒やし系鴨は世を忍ぶ仮の姿かも! その正体はかわいくてもっふもふなすぺーす系鴨かも!」
 ぷりっ。よくわからないアクションを決める鴨。
 すると、てくたんもぐにっと体をよじらせつつ。
「ゆるキャラな見た目に惑わされんといてや? いつかおっきい宇宙になるうちはダークマターの欠片やん」
 次いで二羽は声をそろえ。
「「愛と正義と鍋を愛する! かもてく戦隊!」」
 くわっと踏み出して。
「「かもてくたん!」」
 バシーっとポーズを決めたと同時、どぉん! その背後をど派手な爆発が飾ったんだった。
「あっつぅ! 火薬多過ぎやーん!」
「クワアアアアア高貴なる翼が燃えてるかもぉ!」
 引火して転げ回る二羽に、大慈はギリギリ、親指の爪を噛み締める。なんだあれ、ずるくないか? だってそんなかっこいいポーズとセリフ――
「ずっと思ってたんですけど、大慈さんって厨二です?」
 だなぁ。
 思わずうなずき合うバハルヤムトと帝王だった。
「……土鍋を忘れ、闇なる煮力に失せた記憶の影を幻(み)る哀戦士。暗黒すき鍋卿、大慈!」
 猛烈な勢いで斬り込んできた大慈の刀を、緑の煮力まといしブレイドで受け止めた鴨が「まねっこかも!」。
「俺はあんたたちよりもっと前に考えていた! 真似したのはそっちだ!」
 この子やばい子やでー。厨二かもねー。ひそひそぽそぽそ。
「うるさい! くっ、頭が割れそうだ! これは俺の失くした記憶がざわめいてやがるのか――左腕が、疼く」
「設定めんどくさいわー」
 と、青の煮力ブレイドを閃かせたてくたんを赤刃で払い退けた大慈。その体から濁った煮力がぐつぐつと噴き上がる。
「あっ。そんなに強く煮立てたら鍋がぁ」
 大慈の煮力で火力アップしたコンロの火を前に、はわわはわわ。バハルヤムトがうろたえた。
 一回ぃ、火ぃ、止めたらぁ、いいだろうがぁ。
 帝王も思わず助け船を出しちゃうくらいのぽんこつっぷりだが、邪魔にもならないのでよし。ある意味、古式ゆかしいヒロインの理想像ってやつなんだった。

 凄まじい煮力をもって、大慈は二羽を圧倒する。
 鴨の突進を回し蹴りで蹴り退け、横合いから斬り込んだてくたんのブレイドを鍔元で受けておいて、そのまま柄頭を突き下ろして眉間を打ち据えた。
「これが闇の力か……土鍋を捨て、闇なる煮力にこの身を投げた、哀と悲しみの暗黒すき鍋卿たるこの俺の」
「さっきとちょっとセリフちがってるかも!」
「哀と悲しみって、おんなじやん?」
 ころんと転がって体勢を立てなおした鴨とてくたんはすかさずツッコむが、闇の煮力に魂を侵された大慈には届かない。
「こうなったらアレしかないかも!」
 決意をまん丸の目に込めて、鴨がてくたんを見やる。
「了解やで」
 強くうなずいたてくたんは、迷わず自らのブレイドを鴨のブレイドに合わせた。すると。
 二本のブレイドが煮力を縒り合せて変型し、メカメカしいバズーカを顕現させたのだ! 理由は訊くな! そういうのは野暮だからね!
「くっ、いったいなにを!」
 お約束を守って立ち尽くし、バズーカを構える鴨とてくたんの様子を見守る大慈。
「煮力フルチャージかも!」
「照準セット完了やん」
 バズーカの砲口に青緑の煮力が吹きこぼれ――
「「すべてを討ち滅ぼせ、ウサカモネギバズーカ!!」」
 煮力の光線が噴き、大慈を凄絶なネギ臭で撃ち据えた。
「ぐああああああ! ネギは、腎臓に、悪、い」
 どさーっと倒れた大慈がどーん! 大爆発して。
 バズーカをブレイドに戻した二羽もまた、がっくり膝をついた。
「そういえば、ネギって兎さんにも毒なんですよね。でも鴨さんは……?」
 バハルヤムトの疑問に荒い息をついて応える鴨。
「こ、心に、超ダメージくるかも」
 ネギはいろいろな意味で鴨の天敵だから。必殺技は誰にとっても諸刃の剣なんである。
 おぉ 大慈ぃ! しんでしまうとはぁ なにごとだぁ!
 すき鍋帝王が妙に王様っぽいことを言い放ち、闇の煮力を煮立たせた。
 我が闇の煮力をもってぇ! 仕立てなおせぇ! 暗黒すき鍋へとぉ!
 帝王の体が解けたかと思いきや、大慈の欠片をひとつにまとめあげ、巨大化させたのだ!
『巨大暗黒すき鍋卿、お待ちどう!』
 巨大大慈は高笑い、二羽を踏み潰さんと右足を上げたが。
「お鍋は踏まないでねー!」
 カセットコンロごと退避するバハルヤムトにお願いされて、『気をつける!』とお返事、そっと二羽へ踏み出した。
「よかったやん。じゃ、続きいくで」
 てくたんのキューで物語は再開する。
「巨大化したかも!」
「このままじゃ聖なる土鍋がピンチやで!」
『ふはははは! うっかり踏み潰してやるぜ!』
 帝王もそうだったが、うっかりというところにこだわりがあるらしい。
 そのときだ。
 存在を忘れられかけていた聖なる土鍋が新聞紙をていねいに押し開いて宙へ飛び出し、バハルヤムトの手の内へふわりと収まったのだ。
 かくて聖なる輝きに包まれたバハルヤムトは、ケモミミをぴんと立てて語り出す。
「――勇者たち。今こそ聖なる土鍋の煮力を解放し、悪を討つのです」
 この裏声には聞き覚えがある。そうだ、まちがいない。
「「『女王(自称)!!」」』
 一同のおののきの中、バハルヤムトが高く土鍋を掲げれば、それは巨大化し、人型を成して仁王立つ。
「土鍋ロボット“かもてくたんロボ”、一丁上がりです!」
 誇らしげに言ってくれたが、どう見てもこれは……
「遮光器土偶やん」
「そのとおりですけどなにか?」
「土鍋製ってことは、もしかしてかも」
「すぐ割れますけどなにか?」
 てくたんと鴨は顔を見合わせた。全身弱点な土鍋ロボで、いったいどうしろと?
「煮力を信じなさい! 煮力はあなたたちと共にありますしー!」
 キレ気味に言いきった女王の裏声は輝きと共に失せ、バハルヤムトはすとんと崩れ落ちる。
『そろそろいいか?』
 ずっと待ってくれている大慈も訊いてくるし――とにかくやるしかなかった。

 かもてくたんロボは関節をごりごりすり減らしつつ、大慈の攻撃から逃げ惑う。
 攻撃を当てられても、多分攻撃を当てても、割れる。小さなヒビなら後で目止めすればなんとかなるが、割れ砕けた土鍋はもう、どんな名匠にも修復できないのだ。
「「あ」」
 かもてくたんロボがこけた。なんとかバランスを保とうとじたばたするが、元が遮光器土偶なだけにどうにもならなくて。
『できれば俺に追い詰められてピンチになってほしかった……』
 大慈の実にもっともな嘆きを聞きながら、かもてくたんロボはゆっくり倒れていく。
 と、思いきや。
 聖なる土鍋を包んでいた新聞紙が巨大化しながら舞い上がり、かもてくたんロボを受け止めた。
「助かったやん!」
「それだけじゃないかも!」
 ロボを立ちなおらせた新聞紙が、自らをぱたぱた山折り谷折り、折り重ねていく。そうしてできあがったのは、兜。
 なにやら堂々と胸を張るかもてくたんロボに、大慈は思わずツッコんだ。
『ただの新聞紙だし、頭以外がら空きだろうが!』
 しかしだ。大慈の煮力ブレイドはなぜか、かもてくたんロボのどこに当たっても跳ね返される。
「ふふふ、これが思い込みの力やで!」
『せめて煮力の守りとか言えよ』
 そんな指摘は届かない。
 新聞紙兜を脱いだかもてくたんロボは、大慈の攻撃をもりもり受けながらも平気な顔で、くるくると棒状に巻き上げた新聞紙を天へと掲げてみせた。
『なんだそれは!?』
「かもてくたんブレイドかも!」
 鴨とてくたんの煮力がハリセンに神秘なる青緑を灯し、そして。
『おま、それ、ネギぃ!』
 今や一本の太葱と化したブレイドを、かもてくたんロボは大きく振りかぶって。
「「愛を信じて正義を貫き、鍋を護るがため己を賭して敵を断つ――AONEGI斜め斬り!!」」
 鍋用の葱をこしらえるかのごとく、大慈を斜めに断ち斬ったのだった。
『だからネギは――腎臓、に、悪い』
 大慈、そして彼と一体化していたすき鍋帝王は爆散し。同様に腎臓へダメージを受けたてくたんと心にダメージを負った鴨の尊い犠牲はありながらも、聖なる土鍋と鍋銀河の平和は守られたんだった。

 ――沈黙押し詰まる戦場へ、「みなさん、お鍋できてるよー」。端っこで鍋の面倒を見ていたバハルヤムトがにっこり声をかけると。
「ネギは退けてくれよ」
「うちもネギ抜きにしてやー」
「鴨もかも」
 果てたはずの大慈、てくたん、鴨がむっくり起き上がり、わらわらやってきた。
 字数の関係でさっくり説明してしまうが、これも煮力のおかげさまである。
「んー。すき鍋でちゃんこだと、ひと味足りないかもねー」
「聖なる土鍋に移したらどうだ? 鍋から味が染み出すだろ」
「じゃ、土鍋火ぃかけるで。移したってー」
「待って、空焚きしちゃうと土鍋が」
 鴨が首を傾げ、大慈が提案し、てくたんが実行して、バハルヤムトが注意した直後。
 ぱりびきっ!
 かくて新たな戦いが幕を開けたり開けなかったりするのだが、それはまた、別のお話。


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2019年12月05日

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