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『錆び付いた四肢で未来を ただ描いていく』
鞍馬 真ka5819

「それじゃ、えーと、お互い20代最後の一年に、乾杯!」
「えー? あはは、乾杯」
 伊佐美 透(kz0243)の、わりとヒドい乾杯の音頭に、鞍馬 真(ka5819)は苦笑して、でも楽しそうな雰囲気を漂わせてそれにグラスを合わせる。
 チン、という小気味よい音が響くと、互いに「おめでとう」を言い合った。
 真の誕生日が、12月5日。透の誕生日が、12月16日。その真ん中辺りの今日。こうして、お互い祝い合う日。
 気心が知れ尽くした二人だから、逆にさほど気合を入れた計画でもない。この季節、イルミネーション輝く街を気楽に流し歩いて、良さそうと思った店で食事。
 去年は魚介系がメインの鍋だったからか、何となく今年は肉とチーズがメインの店になった。
 熱々の鉄板で肉が焼ける音。チーズがとろけ、焦げる匂い。サラダも削ったチーズと刻んだ干し柿が絶妙なアクセントになっている。
「これも美味しそうだなぁ」
「うん、良いんじゃない? 頼もうよ」
 ……真は。普段は食事には殆ど興味が無い。仕事に支障をきたさないように体力が保てればそれで良い、位にしか思わないのに。今日はしみじみと、ああ、美味しいご飯って幸せだなあ、と感じる。
 やはり真にとって、食事というのは何を食べるかよりも、誰とどんな状況で食べるか、なのだと思った。
 今は、自分でも驚く程にあれもこれも食べてみたい、と思ってしまう。
「これはどうかな」
「……っあー、ごめん、俺その香草のクセちょっと苦手だ。……あ、でも真が食べたいなら頼むのは良いぞ。えっと、その代わりこれ残ってるの貰っちゃって良いか?」
 何気なく指したメニューにはそう返される。不快は無い。我慢して付き合われるより、素直に言ってくれる方が。ただ、それなら良いかな……と、考える上で何気なく今テーブルにある料理を見回して。
「……。そうだね。それなら、お言葉に甘えて注文させてもらっていいかな」
 思い直した。
「代わりにさ。それも食べていいけど、これ。透好きでしょ? もっと食べなよ」
「え? ああ……。うん、そういうことなら」
 言われて透は、一瞬躊躇いを見せた後、素直に手を伸ばして笑みを一層綻ばせた。その透を見て、真は一層幸せな気持ちになる。
 美味しい食事と和やかな雰囲気に、酒だって当然進む。ワインに口を付けて。フワフワ、ほろ酔い心地を自覚して。友を見つめながらそうしていると。
「……透は相変わらずイケメンだなあ……」
 グラスから口が離れると同時に言葉が溢れた。
 すると、透は小さく苦笑して真を見つめ返してきて、そして、
「人の事イケメンって言う奴の方がイケメンだろー。やーいイケメンイケメン」
「……っ! ※■△〜〜!?」
 丁度再び赤ワインに口付けたところだったので悶絶しながらこらえる羽目になった。
「……大丈夫か?」
「だっ……いっ……!」
 何とか飲み込んで文句を言おうとしたら、呼吸と腹筋がまだ駄目だった。
「……じょうぶじゃないよ!? 何それ!?」
「いやあ、そろそろ君の褒め上戸にも咄嗟に言い返せるくらいには慣れてきたなあ」
「褒め上戸って何!? だからって何で小学生並の煽りなの!?」
「いや……ノリと勢いが勝負かと思って……」
「……もしかして、透も結構酔ってる?」
 ジト目で問いかけると、透は一旦ボトルに目をやって、少し考えてから、
「うー……ん? まだそんなに酔う程では無いかなあ、自覚としては」
 そう答えると、真は苦笑の後、微笑する。
「……うん、いつもは透、強いもんね。そういうところもやっぱり格好いい……」
「まあ、これについては生まれついた体質が割りと大きいと思うし……ああ、そうだ。酔ってるというか、いつもより浮かれてはいるかな。今夜は」
「……ああ」
 言われて真も、目の前がパアっと開けた気がした。
「そうだね。うん、浮かれてるや、私も」
 気付くと、胸の中に広がるじんわりと暖かいものがハッキリと感じ取れる。
 浮かれてる。
 浮かれるだろ。
 だって、こんなにも幸せなんだから。
 ──つまりは、そんな時間だった。

 店を出て、膨れたお腹を沈めるように、再びゆっくり街を歩く。酔った顔を撫でる夜風が心地良い。
「聖輝節、だねえ」
 ボンヤリする頭に街の輝きは少し滲んで見える。それがまた美しくて真はポツリと言った。
「うん。聖輝節──聖輝節、かあ」
「……?」
 言い直した透の声は何かを含んでいて、真は促すような視線を向ける。
「……いつの間にか、この季節にはその名前が出てくる事が当たり前になってたけど……今度はまた、『クリスマス』って言うようになるのかな」
「……ああ」
 街で流れる言葉は、そちらが当たり前になるだろう──リアルブルーでは。
 ほんの些細な、言葉の違い一つ。
 でも、その事に、違う世界で生きていく事は何を変えていくだろうか、と気付かされる。
 一年。来年また会えたら──その時お互いはどうなっているだろうか。
 真は、一年後の自分が何か変わってるだろうかというと、上手く想像は出来なかった。クリムゾンウェストに残り続けることもあるが……空虚な自分にこれから何があるのか、なんて。
 自分はただせめて、このままハンターとして人の役に立ち続けている事が出来たら良いなと思うだけ。
 ……だから。
「……透はそのうち、私に構ってる場合じゃ無くなるくらい、人気者で忙しくなっちゃうかもね?」
 茶化すような口調で、期待と願望を向けてみる。
 透は「ええ……?」と、少し戸惑った顔で笑ってから、
「まあ、正直……忙しくはなりたいかな。一生役者を続けられるなら、そうしたいから」
 決して簡単なことではない。分かっていて、それでも真っ直ぐ前を見ながら透は答えて、それから、
「……でも、そうなっても君のことは忘れないよ。……忘れたくない」
 はっきり、そう真に告げてきた。
「……」
 ゆっくり、その言葉を噛み締める。重荷なんじゃないかと思いながらも、彼のその言葉にはやはり期待してしまう。
 彼には……。
「鎌倉で一緒に戦った時は、普通の同行者としか思わなかったんだけど」
 振り返る。一番初めから。今こうして居るようになったその道程を。
「戦勝パーティーの時にさ。色々悩んでいることを聞いたり、私の戦い方を諌めてくれたりしたよね。……気になり始めたのは、きっとあの時。自分に無いものを持っている人だと感じたんだよ」
「……あの時……か」
 呟き返す透もまた。ただ相槌というわけではなく、同じようにその時の事を、それからのこれまでを振り返っているようだった。
 話しながら進む道はいつの間にか賑やかな界隈を抜けて。イルミネーションに導かれて散歩道を進んでいた。そうして、あちこちに煌めきを灯す街を見下ろせる高台で、その道も行き止まる。
 丁度いいと思って、真は立ち止まるとともに荷物から包を取り出した。
 そうして出てきたのはペンダントだ。トップには涙滴型の石。キアーラ石と言うもので、「自分で見つけた石を贈ると相手が幸せになる」という謂れがあるという。
「蒼と紅。2つの世界が一緒になった色。見付けた時に、今のきみにぴったりだと感じたんだ」
 真の白い手のひらの上でそれは、淡く紫色に透きとおった色を見せていた。
 そして。
「私はきっと、長生きはできないけれど。──私が居なくなっても、私の代わりに、きみの未来を見届けてくれますように」
 差し出す真の笑顔も。どこか透明で、綺麗で、曇りなく……そして儚さを感じるものだった。

 透は、しっかりと真を見つめ返す。
 どうして……とは、言うまいと思った。
「君はいつの間にかそういう風に、俺にも見せてくれるようになったよな。君の……脆い部分も」
 透もまた、振り返る。鎌倉の時。本当に気になりだしたのは、透はもう少し先だったのだろう。あの時はまだ、真のことを……もっと、超越した存在だと思っていた。何も恐れず、迷わず、必要な事を成し遂げてみせる熟練のハンター。声をかけたのは、それでも余り怪我はしてほしくない、その程度の気持ちだった。だから……。
「俺が君のことが本当に気になったのは、あの時だ……。君を庇って、酷く傷付いている君を目の当たりにしたとき」
 その姿を見て、とんでもない思い違いだったと気が付いた。
 彼は……思っていたよりずっとずっと、普通の奴だった。
 どれ程ハンターとしての力を得ても。果ては守護者という一つの究極に辿り着いても。同時に彼は、普通の人である事を、その心を保ち続けていた。
 ……普通の人の、普通の心で、あの戦いの全てを、受け止め続けたのだ。
 だから。
「真……改めて、だけどさ。これまでの戦い、お疲れ様」
 その全てを、自分は認めて、受け止めたい。
「君が今空虚を抱えてるその事まで、君が全てに逃げずに向き合って、戦って、出来ることをやり尽くしてきた結果なんだろ」
 ──だから君は、自分が幸せになれなくても、そんな風に笑っていられるんだろう?
「誰もが認める最高の結果じゃなくたって。君が一生懸命足掻き続けて、そうして辿り着いた結果が、ここなんだよな」
 分かっている。
 途方も無いような戦いだったのだ。
 どんなに頑張ったって、皆が幸せになれて、夢を叶えられる──世界はそんな御伽話じゃ無い。
 言ってしまえば、真も透も、今生きているのはただの幸運だ。「全力で頑張ったから」? 「最後まで諦めなかったから」? そう言ってしまったら……「じゃあ死んだ人たちはそうじゃなかったのか」となってしまうじゃないか。
 違う。誰だって、生きられるならそうしたかった。それでも、自分の力でそうは出来ないと分かっていて、その上で戦った。「自分に出来るところまで」を成し遂げる為に。
 だから真も。死ぬと思っても邪神と戦うことを選んだ人と同じように。「自分を幸せにするところまでは出来なくても邪神と戦う」ことを選んで──そうなった。
 誰よりも本人がここまで、と分かっていて、その上で挑んで、成し遂げた結果に。どうして「それじゃ駄目だ」なんて言える?
 頑張ったよ。
 君は頑張ったんだ。
 俺はそれを、分かってるよ。
 今の君でいいんだって。
 例えずっと空虚を抱えたままだったとしても。
 それから、そうして、いつか……──
「って、分かってるん、だけど、さ……」
 透の声は、そこから震えていた。
「駄目なんだ。こうやって、君との今までの事、思い出して。そしたら……そしたら、さ、やっぱり……」
 そっと、透は、プレゼントを差し出したままの真の腕を取って、引き寄せる。
 項垂れて、埋めるように真の肩、耳元に唇を寄せて、
「いやだ、よ。……いなく、ならないでくれ……」
 掠れる声で、言った。
 その空虚が、ずっと埋まらないままだとしても。君が、大好きだから。
 真の肩が、びくりと震える。手にしたままのネックレスを取り落としそうになって、透がその手を支えながら顔を上げる。
「……いや、分かってる。君にこれ以上無理させたい訳じゃないんだ」
 永く生きろというのは、ずっと苦しみ続けろという事にもなると、その事も、分かっていて。
「……ただ、悔いの無いように。……だろ?」
 それでも、ほんの少しでも何かを変えられないかと思うから。……言っておけばと、その時に思う羽目にならないよう。
 そうして透は、重ねた手からプレゼントを手に取った。
「これ。有り難く貰っておくよ。いつも君を感じて、夢に向かって進んでいけるように」
 親友が選んで贈ってくれたプレゼントだ。勿論受け取らない線は無い。
 けど。これがどんな意味を持つかは……。
 それを今決めるかは、今、真がどんな顔をしているかで決めようと思った。
 大丈夫。
 君が選んだ全て。歩いてきた全て。受け止める覚悟では、いるから……──

 そうして。

 ……。


 ゆっくり、来た道を戻っていく。
 ゆっくり。ゆっくり。
 別れるところまで辿り着いて、この時間が終わってしまわないように。
 ずっとこのままでいられると思っているわけじゃない。
 それでも。もう少し。もう少しだけ。そんな気持ちで。
 また会えると思っていても、迫る別れはどうしても寂しい。
 それでも、しんみりとしたその中にお互い、暖かさを探していた。
 この日。12/10。きっとこの先、何があっても忘れない日付。
 その日を二人で過ごせるこの時間は、かけがえの無い物として残るように過ごしたいから。
 色んな事はさておいて、吹っ切るように思い出話をして。それから、お互いの話をして。
「ふふふー。やっぱり撫でられるの好きだなあ。透の手は大きくて気持ちいい……」
「……いや、本当に君に気持ち良さそうな顔するよな……。だんだん違和感無くなってきたけど良いんだろうか……」
「良いんじゃない? あ、透も撫でてあげよっか?」
「それは流石にまだなんかちょっと違う。そう思う自分でいたい。待って」
 とか、そんなしょうもないやりとりも時折挟んだりして。
 そうやって、語る言葉が思い浮かばなくなったら、どちらからともなく歌い始めた。
 鳴り止まない、この歌を。
 ……何を一番に望むかといえば──ありのままのキミでいてほしいということ。
 そのキミを、自分はこれからも出来うる限り、取りこぼす事なく見つめていきたいと言うこと。
 深く、刻んで、残していってほしい。なるべく、本当のキミに近いままのキミを。
 会えないときも、ずっと心は共にあるように。
 歌う。
 願う。
 そっと、静かに。
 やがて、辿り着く。
「……今日はここまで、だな」
 自らに言い聞かせるように、透が言った。
「うん……。でも、出発の日には、絶対に見送りに行くから」
 やっぱり、自分を納得させるように、真が言った。
 分かれ道。
 見つめ合う。
 名残惜しい。だけど、それはつまり。
「「楽しかったね」な」
 そういうことだから。
 上手く行くばかりではない道程だけど、それでもまだ、きっとこんな日はあるから。
 今はまた、それを楽しみに。

 戦い果てて、軋んだ四肢でも、まだ歩いていく。
 この体と心が動いてくれる限りは、まだ。









━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご発注ありがとうございます。
あ、いえ、お気になさらず。勿論、最終的にはそちらのお心のままにして下さい。
私自身が下してきた結果を思えば、自分のNPCの大切な人にはどうしても助かってほしいと言えた筋では無いでしょう。
それでも、言わないのは違うなと思ったから言わせただけです。

……ゆうてまあ辛いって言われると辛いんですけどねそれも分かりますけどね!
しゃーないやんこれまで書いてきたこと全部ぶん投げて「うんうん☆だよねー」で全部受け入れたり、あそこまで言っといて実は楽勝でしたー☆って訳にもいかんじゃないですかこっちにも背景とか積み重ねとかゲームってもんが!
すいませんやめます。
改めてご発注有難うございました
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2019年12月10日

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