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『クリスマスイヴ・バトル!・1』
白鳥・瑞科8402

 12月24日、クリスマスイヴの夜。
 夕方から雪が降り始めて、色とりどりのイルミネーションの街を白い雪が幻想的な美しさで飾る。
 白鳥・瑞科(8402@TK01)は一般的なシスター服を着て、住宅地にある小さな教会にいた。
 今夜は特別な夜、家族連れや子供達、恋人達や夫婦、独身の老若男女など様々な人間が教会に訪れている。
 教会には在中している牧師とシスターがいるのだが、二人とも初老ゆえにクリスマスイヴのような特別な日に行われるイベントには人手が足りない。その為、瑞科のような人間に手伝いの話が回ってくるのだ。
 子供や若い人向けのイベントも行われるので、教会の中は楽しげな雰囲気で満ちていく。
 やがて夜も更け、訪問者達を見送る時間になる。
「メリークリスマス!」
「シスター、バイバーイ!」
「またねー!」
 白い息を吐きながらも笑顔で帰って行く子供達に、瑞科も微笑みながら手を振った。
「メリークリスマス。今夜は早く寝てくださいね。じゃないと、サンタさんがプレゼントを置いていけませんから」
「はーい!」
 地面を覆い尽くすほど白い雪は降り積もり、寒さが身に沁みるものの、人々の笑顔を見ると心の中がじんわりと温かくなるのを瑞科は感じる。
 そして訪問者達を全員見送った後は、今度は教会の中の掃除をはじめた。
「白鳥さん、今日は助かりました。我々だけでは手が回らなかったでしょう」
「今日は朝から大変でしたけど、明日の朝からもイベントがありますからね。掃除は私達だけで……」
 牧師とシスターが声をかけてくるも、瑞科は笑みを絶やさない。
「いいえ。わたくしのような未熟者ができるのは、このぐらいのことですから。お二人は戸締りのチェックをして、お休みください。後はわたくしが片付けておきますから」
「そうですか?」
「それではお言葉に甘えて、先に休ませていただきますね」
「はい、良きクリスマスの夜を」
 二人は申し訳なさそうな顔をしながらも、疲れが出たのかヨロヨロしながらその場から去る。
 二人の姿が見えなくなると、瑞科は笑顔を消してため息を吐いた。
「ふう……。23日から教会に泊まり込み、しかも二つの仕事を掛け持ちすることになるとは……。他に適任者がいないと言っていましたが、どことなく悪意を感じるのは何故でしょうか?」
 ホウキの柄をギュッと握り締めながら、瑞科はこの仕事内容を伝えてきた上司のどこか生暖かい眼差しで自分を見ていたことを思い出す。
 瑞科は仕事を伝えられた時、すぐに受け入れた。
 ――だがその直後に、上司の視線の意味に気付く。
 同じように仕事を頼まれた仲間達の一部から、悲鳴に似た声が上がったのだ。
 その仲間達は実は恋人がいて、クリスマスイヴかクリスマスのどちらかは一緒にいる約束をしていたとのこと。
 今回の仕事は家族持ちや結婚している人達には回さず、まず若い独り身達に話が回ってきたことを知ったのは数日後のことだった――。
「……要はクリスマスイヴもクリスマスも予定が入っていなさそうな人達を選んだんですね。失礼にも程があります」
 怒りながらも、内心ではちょっとほっとしている。
 日々仕事ばかりで特定の男性と懇意にしたり、女友達と遊ぶ機会がなかなか無いからだ。なのでこういうイベントに誘われることは、皆無と言って良い。
「まさか一般人と同じように合コンをしたり、女子会をするわけには職業上いきませんからね」
 気を取り直して掃除を続けるも、一部の仲間達はこの二日間の休みをもぎ取る為に必死に仕事をこなしているのを見た。
 あんなになるまで頑張ろうと思える予定が入っていないことに、思わず暗雲を背負う。
「はあ……。ですがクリスマスというイベントは、テロ組織も喜んで活動しますからね。幸せな人々にあえて不幸をプレゼントするなんて、まるでブラックサンタです」
 今日の日の為にクリスマスの意味をいろいろと調べてきた瑞科だが、実は二つめの仕事にも関係していた。
 一つめの仕事は今日と明日、この教会で行われるクリスマスイベントの手伝いをシスターとしてやること。
 そして二つめこそが、瑞科の本職に関わってくる。
 教会の中を掃除し終えた後、瑞科は更衣室へ移動した。
 一般的なシスターの衣装を脱ぎ、ロッカーに入れる。そして代わりに着るのは、組織から渡された戦闘服だ。
 豊満な肉体に密着する長袖の上着には瑞科が所属する【教会】の模様があり、その上から鉄製で小型の装飾がある肩当てを付ける。黒いミニプリーツスカートにも【教会】の模様があり、ガーターベルトとニーソックスに両足を入れた。そして白い編み上げのブーツを履き、太ももには他人からは見えないようにベルトを巻いてナイフを装着する。
「寒さ対応の戦闘服ですが、雪降る寒さにも対応してくれるんでしょうか?」
 ショートマントを羽織り、思わずブルっと身を震わせた。
 そして最後に細長い布に包まれた物を取り出して、中身をあらわにする。
「キャンディケイン型の武器――ですか。確かにクリスマス用ですね」
 見た目は一メートルほどの長さで、白と赤が混じったキャンディケインに見える――が、実はテロ組織に有効な攻撃を与える新型の武器である。


<続く>


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
このたびはご指名していただきまして、まことにありがとうございます。
クリスマスらしいストーリーを、お楽しみください。
東京怪談ノベル(シングル) -
hosimure クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年12月16日

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