▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『クリスマスイヴ・バトル!・2』
白鳥・瑞科8402

 白鳥・瑞科(8402@TK01)は新しい武器・キャンディケインを手に持ち、等身大の鏡の前に立つ。
「……あまり緊張感の無いデザインですが、クリスマスイヴの夜に本物の武器を持って街中を歩くわけにもいきませんからね」
 深くため息を吐き、瑞科は更衣室を出て夜の住宅地を歩き出す。本当の仕事は、これからはじまるのだ。
 実は12月になった頃から、この地域の子供達の間で妙な噂が流れていた。

「小さな黒いサンタさんが、枕元にいっぱいいる」――と。

 親達はクリスマスが近いからということで、夢でも見たのだろうと思っていた。
 しかし子供があまりに言うものだから、寝ている時にコッソリと部屋を覗くと……。
「『本当に黒いサンタクロースの服を着た小さな存在が、子供の枕元にいた』とのことでしたね」
 しかも一体だけではなく、ベッドや布団を埋め尽くすほどいたらしい。親が悲鳴を上げると、黒いサンタ達は消え去った。
 それでも子供を一人で寝させていると現れるらしいことから、不安になった親達は子供が恥ずかしがっても一緒に寝るようになる。
 瑞科が所属する組織は、報告を受けて早速調査をはじめた。
 赤いサンタクロースは良い子供の所に行き、欲しい物をプレゼントする。
 だが黒いサンタクロースは、悪いことをした子供の所へ現れる存在だ。
 ブラックサンタは悪い子供には嫌がる石炭やじゃがいもを置いていき、とても悪い子供の部屋には豚の臓物をぶちまける。そしてもっと悪い子供はサンタクロースが持っている袋に入れられて、連れ去られるのだ。
 しかし現代日本に、ブラックサンタが現れたという事例は今までに無い。
「ということは、結論から言うと邪妖精が幻覚を見せたということですね。……狙いは子供達でしょうか?」
 端麗な顔を険しく歪ませて、瑞科はギリッと歯噛みをする。
 わざわざミニブラックサンタの幻覚を見せたというのは、邪妖精召喚師が自分の正体を隠す為だろう。
 一部の話では召喚師はより強いモノを召喚する為に、純粋で無垢な存在である子供の生け贄を準備するそうだ。
「クリスマス前から誘拐の準備をしておくなんて、マメな方ですね。ぜひともお会いして、その面に一発かまさなければ」
 ザクザクと雪を踏みしめながら、瑞科は夜のパトロールを続ける。
 目的地は、ミニブラックサンタが現れたと言う子供のいる家。時刻は子供が眠り始める頃。
 住宅地から少し離れた所には、瑞科がお手伝いに行っている教会よりも大きな教会が建っていて、そこには時を告げる鐘がある。
 本来なら朝と夜の決まった時間にしか鳴らさないのだが、今夜は協力を得て特別に時間指定をしていた。
「もうすぐですね。上手くいくと良いんですけど……」
 妖精が嫌がることの一つに、教会の鐘の音がある。
 ミニブラックサンタが現れた時刻は教会の鐘の音が鳴った後であることから、その時間帯を避けていることに気付いた。
 なので今夜はそれを逆手に取り、あえてミニブラックサンタが部屋に現れそうな時刻に鳴らすように組織が教会の人に頼んだのだ。
 そして夜九時。静かな住宅地に、大きくも清らかな教会の鐘の音が響く。
 人間にとってはただの鐘の音も、邪妖精にとってはたまらなく嫌な音となる。
 その証拠に、子供部屋から次々にミニブラックサンタに扮した邪妖精が険しい顔で飛び出てきた。
「作戦成功です! こちらも優秀な策士がいるんですよ!」
 飛び出てきたミニブラックサンタに駆け寄り、瑞科はキャンディケインを振りかぶる。
「はあっ!」
 そして数体のミニブラックサンタを殴ると、黒いモヤとなって消滅した。
「流石は聖水と塩水、そして鉄でできているだけはありますね」
 妖精が嫌う3つを材料に、特製キャンディケインは作られたと聞く。威力は上々、あっと言う間に邪妖精を消滅させることができた。
「幻覚を子供に見せて誘拐するつもりだったんでしょうけど、そうはいきませんよ。何せわたくしはシスターですから」
 恐ろしく冷たい微笑みを浮かべる瑞科を見て、ミニブラックサンタ達はビクッと震える。
「クリスマスに家族団欒を脅かすモノには、一切の慈悲も与えません。純粋にクリスマスを楽しむ家族に不安をプレゼントするサンタさんには、速やかに無に帰っていただきましょう」
 こうして次々に、邪妖精ことミニブラックサンタを倒していく。
 全てのブラックサンタを無に帰しても、瑞科の表情は晴れない。
(しかしこれでは消耗戦ですね。邪妖精自体はそれほど強くありませんが、本来なら100単位で行動するもの。できれば召喚師を見つけたいところですが、こればかりは運次第ですね)
 キャンディケインを両手でグッと握り締めて、次の目的地へ急ぐ。
 召喚師の方は組織にいる探索が得意な者達が、今頃必死で探しているだろう。
 残念ながら瑞科は戦闘能力自体は高いものの、そういった探索能力は皆無に等しい。
 なのでミニブラックサンタが現れたという情報を元に、戦いに行くしかないのが今の状況だ。
(子供の誘拐事件を未遂にするのも重要な仕事です! 考えている間に、体を動かしましょう!)


<続く>



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
クリスマスストーリー、中編となります。
いよいよはじまったサンタクロースとの戦い(!?)を、お楽しみいただければと思います。
東京怪談ノベル(シングル) -
hosimure クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年12月16日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.