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『薔薇は咲いたし、眠ってはいけない!?』
海原・みなも1252

●頭痛の種
 草間・武彦(NPCA001)は怪異に絡む仕事を拒むところだったが、ちょうどやってきた海原・みなも(1252)に説得され、解決をした。
 これで終わればめでたしめでたしだったのだけれども、現場を出ようとして事件が起った。
 みなもの足が止まる。
 脚や胴に異様な痛みのようなうずきのようなものを感じたからだった。
 強烈な痛みはない。ただ、じわじわとした妙なもの。
「草間さん……そういえば、種、ぶつかった気がしました……」
「……なんだってぇ!」
 武彦が嫌な予感と共に叫んだあと、狼狽することになる。
 怪事件は植物が絡むことだった。その名残がみなもについてしまったことになる。
 みなもは必死に対応して、どうにか半分で止めた。
 謎の種により、みなもは半分バラとなった。
 温室の入り口付近の土に脚が変わった根が沈む。脚や胴の下半分は蔦となり、葉を茂らせた。
 水である血液で浄化し、止めた。
「……心臓と脳が取り込まれていたらあたしは終わっていました……」
 みなもはほっとする。
「終わってないからな……」
「そうです、終わる所でした」
「違う違う。そのままだと危険だろう? 元に戻るまで終わらないからな!」
 みなもは自分ののんびりとした思考に気づき「あっ」と声が出る。
 武彦のこめかみがピクリと動くのをみなもは見た。
「……そ、そうですね」
 武彦が強くうなずくのを見て、みなもは現状の危険性を察知した。
「はっ、動けません」
「……今、気づいたのか!」
「それと、栄養を地面から摂れそうな気がしますが、若干肥料が足りない気がします」
「肥料……か……」
 武彦がまじな顔でつぶやく。みなもは一瞬笑いがこみ上げたが、武彦がスコップと外を見たため、本当に肥料を混ぜかねないと感じた。
「普通に食べる、でいいと思います」
 みなもが言うと、武彦はうなずいた。
「家主にはこの件を言ってくる。あと、食事……ん? 待て! つまり、お前が戻るまで、俺も帰れないということか」
「か、帰られると結構つらいかも知れません」
「……帰っていいか?」
「と、とりあえず、せめて、食事はほしいですし、あの……それと」
 さすがに心細い。それに動けないのは厳しい。
 武彦は天井を見上げ、元に首を戻しとき、大きく息を吐いた。
「おとなしくしてろよ」
 武彦は出かけた。
「……動けないのにおとなしくとは……」
 みなもは苦笑したところで、少し気持ちが落ち着いたのに気づいた。

●太陽のぬくもり
 武彦がいなくなると、何もすることがなくなる。
 タネの浄化はするけれども、みなもが能動的に何かすることではない。ただ、浄化することを意識するだけだし、栄養と取り命をつなぐことが重要だ。
「風邪を引いて学校を休むときのような気分です」
 温室は太陽の光が入り明るく、暖かい。
 周りにある植物たちは葉を広げ、一生懸命に光合成をしている。
「私も光合成中……」
 光合成はできないにもかかわらず、日向ぼっこをするときそう考えることはあった。
 ただし、今のみなもは植物になりかかっているため、本当にできているかもしれない。
「はっ! それはいけないです」
 慌ててみなもは動く範囲で動物であることを示した。
「動くのは胸から上だけですね……あ、きれいな薔薇です。それも、青い……」
 薔薇を見て少し和む。
 何輪も咲く、薔薇。
「間近で見る薔薇は色つやだけでなく、香りもいいです。いえ……それは、そもそもあたしです……。暖かいし、ちょっと眠くなってきました」
 うたた寝をするには非常に良い環境だ。
 みなもは自分が置かれている状況を思い出した。
「だ、駄目です! 睡魔に負けると……身体機能が確実に低下します」
 低下すれば、浄化する力も衰える。衰えると、呪いのほうが勝る状況となる。そうなると、みなもが元に戻るのが遅くなる。遅くなると武彦が帰る可能性が高くなる。ブツブツいいながらもつきあってはくれるだろうけれども、なんとなく居心地が悪い。みなものせいではないとはいえ。
 みなもはどうにか眠らないでいたいが、腕と首くらいしか稼働できない上、眠るには最高の場所であるため、難しい。
「ど、どうにかしないと……そ、そうです、頬をひっぱたいてみるのはどうでしょうか……」
 両手で頬をぴしゃりと挟むのがやっとだった。痛いと感じる範囲であるし、それ以上はできない。そもそも、それで眠気は飛ばない。
「う、歌でも歌えば……歌、歌……」
 何を歌うのか悩んでいるうちに、意識が遠のいていく。
「これで、ご飯なんて食べたら、恐ろしいです」
 うとうとしている。声に出してみるが、眠い自分が何を言っているかさっぱり分からない状況だ。
「……草間さん……た、助けて……」
「どうした?」
「く、草間さん……!」
 みなもの眠気が少し飛んだ。
「家主にはきちんと説明しておいた。食事も適宜運ばせる」
「あ、ありがとうございます」
「寒いといけないから毛布ももらってきたぞ」
「……あ、ありがとうございます、夜、使わせていただきます」
 みなもは断り切れない。
「あー、今は要らない、なぁ」
 武彦も気づいた、コートがいらないくらい暖かい。
「花、咲いたか……」
「はい」
「青い血……」
「違いますよ……」
「死体が埋まっているとサクラは……」
「……そ、それはっ! あたしの血が青いということですか!」
 武彦の言葉に恐怖を覚えみなもは目が覚めた。
「いや、思ったことを言っただけだ。青かったら、採血検査で大騒ぎだろう?」
「そういえばそうですね……」
 みなもはホッとした。
「おかげで眠気は飛びました」
「そりゃよかった。で、寝るとまずいのか?」
「なんとなく……」
 みなもは自分の考えを説明した。
「見張りがいるな……見張り……」
 ここにいるのは武彦一人。つまり、交代制どころか寝ずの番。家主にも手伝ってもらいたいところだが、無理だろうと二人は考える。
 なお、事件解決後で二人とも疲労気味だ。
「寝るなと言うのは大変酷な状況だ」
「草間さん! お願いです、頑張ってどうにかしますから!」
 みなもは泣きたい。
「はあ……まずは、飯だな……」
「ありがとうございます……。これを食べると眠くなりそうで怖いです」
「食べないとエネルギーも出ない……つきあうから、頑張れ」
「は、はい」
 武彦があきらめの境地を脱し、早く片付けるべしという方向に舵切った。
 みなもは武彦がつきあってくれることに安堵した。
「が、頑張ります」
 おむすびを頬ばり、みなもは決意を新たにするのだった。

 やはり、ぬくぬくな温室で眠らないでいることは難しく、無理だった。
 浄化は時間がかかっても、なんとか終わることは終わるのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 着替えとか心配するより、寝る・食べるが重要になりました。命、大事。
 ひなたぼっこしたときに「光合成できるといい」となぜか思ったことあります。
 いかがでしたでしょうか?
東京怪談ノベル(シングル) -
狐野径 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年12月25日

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