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『鬼塚夫妻の人生計画〜障害も正面から立ち向かう準備編〜』
鬼塚 小毬ka5959)&鬼塚 陸ka0038

「次は僕の家か……って、事はリアルブルーなんだよね」
「流石に緊張してしまいますわね」
「何言ってるの、マリなら大丈夫だよ?」
「そうはおっしゃられましても、リクさんがご立派に対応してくださいましたのに」
「そうかなあ、マリがそう感じてくれたならいいんだけど」
「あっ! 大切なことを忘れておりましたわ!」
「え、何か伝え忘れてた? 今から戻る?」
「申し訳ありませんわ、思い出しただけで、我が家のことではありませんの」
「ああ、よかった。不手際があったなら土下座するくらいわけもないからね?」
「ですからだいじょうぶでしたわ! ……その、私はリアルブルーに行ったこともありませんし」
「ごめんごめん。まあ、普通転移経験がある人なんてそう居ないでしょ」
「今日はリクさんが合わせて下さいましたけど……」
「うん、マリに教わって色々揃えたよね、流石僕のマリ」
「ですからからかわないでくださいまし、真面目なお話をしておりますのよ!」
「僕のマリを褒めるタイミングは逃さない主義だからね。この後はちゃんと聞くよ」
「まったく、もう……それで、私、いつもの格好で、こちらの正装で行って構いませんの?」
「いつもの」
「そうですわ。和装に似ている、とリクさんはおっしゃっていましたけど……同じではないのでしょう?」
「わそう」
「……リクさん?」
「そうだよ!? そうじゃんか! 僕の服はそう変わらなかったけど、マリの服……そうだよ、マリの服だよ!?」
「リクさん?」
「いつもの服は可愛いよ、正装も綺麗だよ?」
「リクさんっ?」
「でもそれじゃ駄目だ! 僕が色々な意味で困るから駄目だ!」
「リク、さん……?」
「そういうわけでマリ。リアルブルーに行ったらまず、服を買いに行こう。大至急だ」
「リクさん!」
「あれっ、喜んでる?」
「勿論ですわ、前にお洋服の選び合いをしよう、とお話していたではありませんか!」
「……あー、そういえば。うん、そうだったそうだった。これは確かにいい機会かもしれない……」
「街の案内も、是非お願いいたしますわね!」
「そこは勿論、任せてくれて大丈夫だからね?」


 やってきましたリアルブルー。此処で流行の服が揃わないなんて言わせないと評判の大手ショッピングモールへと鬼塚 小毬(ka5959)を案内した鬼塚 陸(ka0038)である。
「大きな建物ですわね!?」
 天井を高くすることになんの意味が、と考え込む小毬に陸が笑う。
「3階建て、いや屋上も入れると4階……地下駐車場もあるから、この場合何階建てなのかな?」
 ともかく高さが区切られている筈だと言えば首を傾げる。可愛い、流石僕のマリ。
「横に長いのも不思議ですわね、あれでは品物を取りに行くのに毎度手間がかかってしまいますわ」
「え、品物を運ぶのって新規入荷の時くらいしか……って、ああ」
 行こうか、と小毬の手を引いて一番近い出入り口へと向かっていく。
「見た方が早いしね、早速行こうか」

「こんなにありますの……!?」
 服にだって種類があるのは知っている。小毬の故郷とリゼリオの好む服が違うのだから、リアルブルー式の服もあるのはわかっている。転移者達のもたらした技術をクリムゾンウエストでも再現した服はあったから、予備知識としてはそれなりに持っている方だと思っていた。
 だが、それは間違いだったのだとあっさりと覆される。一つの服を取って見ても、サイズ、色違い、男性向けと女性向けのマイナーチェンジ、ワンポイント部分を変えただけ……間違い探しをするような商品展開が当たり前のようにされていたりする、寸分たがわず同じものが複数置いてあるという部分でも珍しいというのに、それがほぼ全ての服で行われているわけで。既製服という言葉そのものは知っていた小毬だけれど、ただ知っているだけと体験は全く別物なのだと改めて教えられる結果となった。
「いえ、でも逆に考えればいいのでは?」
 種類が多いなら、それだけ望身に近いものが見つかりやすい。必要な条件を上げれば絞り込める可能性だ。
「むしろそれが普通だね?」
「……恵まれた世界にいらっしゃいましたのね、リクさん」
「そういうことになるのかなあ」
「?」
 喜び、とは違う反応に小毬の中で疑問が浮かぶ。
「まあ、選びに行こうか。まずはマリの服一式が先でしょ」
 この後も過ごすうちに、答えを見つけることができるだろう、きっと。

(やっぱ人目を惹くよなあ)
 すれ違う人の目線が新妻であり愛妻たる小毬に向かっているのを感じながら、陸は考えずにはいられない。
 こちらに移動する前に、なるべくシンプルな装いを、と指定したことは間違っていない、けれどやはり独自の流行を辿った服であることには違いなく、それが小毬の魅力と相まって目立つのだ。流石僕のマリと誇らしく思うと同時に、自然に身を寄せて歩いている彼女の無邪気さに優越感が募る。
(にしてもこっちの服でマリに合いそうなものかあ……)
 最近は小毬が入手している情報誌に目を通すことも増えた。意見を求められた時にうまく答えればそれを着てくれる、という下心もあるけれど、純粋にそうやっておしゃれに精を出してくれようとする小毬が可愛いのである。
(だって奥さんだよ? その奥さんが可愛いって言われたくて着飾ろうとするんだよ? 愛でるしかなくない?)
 つまり小毬を眺めるついでに情報が入ってくるのである。必然なのである。
(でもさっさと隠さないとなあ)
 女性の視線は悪くない。あの服はどこのものだろう、という興味が素直に服に向けられているので。小毬が着るだけで宣伝効果がありそうだな、とそんな事を考えてみたりする。
 問題は男どもの目だ。
(すぐ横でこんなにいちゃついてる、信頼されきった目を向けられてる僕と言う者が居るんだけど!?)
 確かに今日の服は肩の出るタイプのニットだ。だがなにより小毬が全く視線を向けていないというのに気にせず小毬を見ている。可愛い顔もそうだけれど、顔よりも違う場所を見ているので気にするも何もないのかもしれないが。
(わかるけどな! 羨ましいよな! 僕もそっち側だったら同じこと思った!)
 まあこの子僕のだから隠すことに全力を注ぐけど!
「マリ、薄手の上着持ってきてなかったっけ?」
「え? ありますけれど……ここ、屋内ですから暖かいですわよ?」
「そうなんだけど、僕がマリを見せびらかしたくないからさ?」
 着てくれるよね?
 耳元で囁けば真っ赤に染まる小毬。そのまま食みたい衝動にどうにか勝利して、陸は小毬の肌色面積を隠すことに成功するのだった。

 挨拶の時に、と選んだのはシンプルなワンピースとジャケットのコンビ。普段の鮮やかさを重視した服とは違う淡い薔薇色。飾りをつけるならやはりローズのブローチだろうかと、ついアクセサリーのことまで考えてしまう。
 冬用のワンピースはやはりニットで。模様が引き伸ばされないよう大きいサイズを選んでみたのだけれど、今度は首まわりが大きくあいて、動きによっては鎖骨が見える。試着した結果を見せた時に陸が真っ赤な顔でクリップタイプのブローチをつけてきたのでわかった次第だ。同じチャームのついたベルトもあるからと腰回り用にそれもあわせてもらうことに。ニットだけでも着られるけれど、それは部屋の中限定でと念を押された。外に着ていくとき用のジーンズはあとで見るからと妙なくらい繰り返されたので、とりあえず頷いておく。
 バルーン袖のゆったりしたシャツは首まわりにタックをよせてあるおかげか窮屈さもなく着心地がいい。なのにそう伝えた途端、和むような視線が真剣になったのは何故なのだろう。気に入らないのかと聞く前に購入が決まったので、何か予想とは違う認識なのだろうと思う。
 チェック柄のショートスカートはだぼっとしたフード付きのジャケットだとものすごくプッシュしてきたので間違いなく好みなのだろうと思う。着る前から買うことは決めていたけれど反応が見たいのはこちらも同じだ。試着室内の鏡でしっかりとポーズを考えてから出て見れば、予想以上の早さで褒め言葉の羅列が……
「……って、リクさん!? まだ買いますの!?」
 流石にこれで終わりにしようか、と言われると思っていた小毬である。しかし陸の手にはまだ服の下がったハンガーが握られているわけだ。
「私だってリクさん……だ、旦那様の服を選ぶ時間を楽しみたいのですけれど……!」
「……くぅっ!?」
 両手で顔を覆う夫に何か琴線に触れただろうことはわかるけれど、流石に時間をかけ過ぎていると思う小毬である。
「もう十分ですわよね、また来る機会だってありますし、次は男性用の」
「いや、あと一着はずせないものがあるから、それだけは行かせて」
「……では、次のお店で女性ものは最後にしてくださいませね?」

 絶対に防御力が高く、なおかつ防寒性能も高いコートは今後リアルブルーの冬における必須アイテムだ。悩みに悩んだ挙句決めた一着を受け取り、ついでに先ほど買ったばかりのジャケットを小毬に着てもらう。
「服の組み合わせなんてもう知ったことか、僕のマリは何を着ていても可愛いしそもそもマリが可愛い。他の男の視線を集めるのにもう耐えられない」
「……口に、出てますわ」
 あっやべ、と思ったが、説明の手間が省けたのでよしとする。そっと手を引けば赤くなった顔を隠すようにうつむきがちに付いてくる。可愛い。
「でも戦う時は綺麗で頼りになるんだもんな、僕の奥さん最高」
「っ!」
「あ、また出てた?」
 事実だしいいよね、と笑えば空いた方の手でぽかりとされる。
「マリの選んでくれる服も、楽しみだね?」
「……期待するほどのものでは」
 そう言った小毬が選んだ服はネイビーのPコートをメインにした組み合わせ。
「なるほどねー?」
 普段の困りがよく身に纏う色にそっくりなブラッドオレンジの畦編みニットをその下に着るわけなのだけれど。
「……な、なんですのっ?」
「そっかー、流石僕のマリだなって思って?」
 ニヤニヤと、ワザとらしく笑いかければどんどんと顔の赤みが強くなっていく。それこそブラッドオレンジみたいに。
「それと、さっき持ってたシャツも買うからね?」
 棚に戻していた奴、と伝えれば、話が逸れたことに安堵したのかよろこんで食いつく小毬。
「似合うと思ったものですし、いいと思いますけれど?」
「たまに着てくれるんでしょ?」
 身体にあててたもんね?
「!? ……み、見てましたの……っ!?」
「彼シャツもいいよね、いや、今はもう夫シャツか」
「〜〜!?!?」
「ちゃんと見せてもらうからねー?」


「兄がご迷惑をお掛けしましたわ……」
「家の前でいきなり襲ってくるお兄さんとか流石にやべーとは思ったけど」
「ビシッと切って捨てて下さって構いませんでしたのよ?」
「大事にされてた証拠だろ。マリになんかあったら僕も超覚醒乱用するから気持ちはわからなくないんだよ」
「リクさんってば」
「あの面と向かって“マリを僕に下さい”は……緊張した!」
「ふふ、それは言い過ぎではありませんの?」
「黙示騎士とやりあう時よりだった! それだけ、マリが大事なんだよ」
「……」
「かっこつけすぎた?」
「あ……あんな、兄ですけれど。リクさんだってもう家族の一員だと、そう思ってああも好き放題に振る舞っているのですわ」
「認めてもらってたってことでいいのかな、あれ?」
「ええ、家族の私が言うのですから」
「そっか……次、かあ」
「前も不安そうにしておられましたわね?」
「そりゃまあ……五年なんだ。この負債って、結構でかいよね?」
「大丈夫、私がおりますわ」
「……一緒に、向き合ってくれる?」
「珍しく弱気ですのね? 私の知るリクさんがどんなに素敵な人かを語る準備も、クリムゾンウエストで過ごした5年がどんなに得難いものだったお話する心構えも。全て出来ていましてよ」
「……うん。精一杯生きた事も、考えたことも、進んできたことも。後悔はしてない。自分の為だけじゃなくて、大事な人の為にやってこれた」
「そんなご子息に見向きもしなかったことを後悔するまで、貴方のご家族に興味を向けていただけるまで、私は徹底抗戦の構えですわ」
「気が重いって言っても、マリなら背を押してくれるんだろ?」
「私の性格はよくご存じでしょう? 負けず嫌いですの」
「ははっ! そうだよね。とにかく頑張ろう、マリとの明日の為に!」

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【鬼塚 小毬/女/19歳/玉符術師/これが家電製品……え、ビデオカメラも買うんですの?】
【鬼塚 陸/男/21歳/守護機師/ほーらマリ、このデジタルフォトフレーム可愛いよ?】
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石田まきば クリエイターズルームへ
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2020年01月21日

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