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『犬耳学生風クリスマスパーティ、サプライズ付き』
高柳京四郎la0389)&テディ・ロジャーズla3698

 12月は日没も早い。
 テディ・ロジャーズ(la3698)はとっぷりと日が暮れた夜道を歩いていた。

 彼女に普段と違う点が2つ。

 1つは、料理を入れた大きな箱を持っている点。
 今夜は高柳京四郎(la0389)とのクリスマスパーティ。
 お互いに料理を持ち寄る約束をしたため、腕によりをかけて調理した。

「Bow-wow♪ Dog.KEIも喜んでくれるといいのデスガ♪」

 もう1つは、どこかの学校の女子制服を着ている点。
 青い三角帽子やマントはまるで魔法使いのよう。マントの内側は可愛らしいスカートの学生服だ。
 そして、三角帽子の下には犬耳が、スカートの下には犬尻尾が覗いている。
 今夜は仮装パーティでもあるのだ。

 上機嫌で犬の鳴き真似を呟きながら、軽い足取りでテディは喫茶店『MOON』へ向かう。
 歩く度、マントやコートでも隠しきれない大きな胸と犬尻尾が揺れた。

 なお、この格好は最近ライセンサーの間で流行っているようで、道行く人はテディの姿を見ても特に何も思わないようだ。

 今回は気を付けて歩いたため箱を落としてしまうようなこともなく、喫茶店『MOON』に無事到着。
 珍しく閉店の札が出ているのも気にせず、テディは扉を押し開けた。

「I'm coming!」

「お、いらっしゃい。ふふ、制服も犬の仮装も似合っているね。
 ……では、俺も着替えてくるとしよう」

 元気に入店したテディを迎えたのは、いつも通りの服装の京四郎。
 『MOON』の調理場でのパーティ料理作りもちょうど終わったところ。
 テディに温かい紅茶を出して、店内で座って待っているように言い、京四郎は店の奥に消えた。



「お待たせ」

 テディが紅茶を半分飲み終えた頃に京四郎は戻ってきた。
 京四郎の仮装も、テディと同じ学校の男子制服に犬耳・犬尻尾のオプションが付いたものだ。
 少し傾けて被った青い三角帽子から、ぴょこんと犬の耳が覗いている。
 冬服なので、マントとコートは見るからに暖かそうだが、同時にかさばってもいる。確かにこの格好で料理をするのは骨が折れるだろう。
 そんなマントでも隠しきれない犬の尻尾がしゅっと垂れていた。

「Dog.KEIも似合ってマスヨ♪」

「ありがとう。お腹は空いているかな? 早速食事にしよう」

「私、お腹ぺこぺこデス」

 答えるのと同時に、ぐぅとお腹が鳴る。
 テディは少し恥ずかしく思いながら、手際良く持参した料理を並べ始めた。

 クスクスと微笑んだ京四郎も、調理場から自作した料理を運びこむ。

「私のふるさとAmericaのChristmasで食べるのデスヨ♪」

 明るく言いながらテディが取り出したのは、大皿に盛られたターキーの丸焼きとチェリーパイ。そして人型の可愛いジンジャーマンクッキー。
 ターキーとパイは温め直すと、美味しそうな匂いが喫茶店に満ちた。

「おお、食欲をそそるね。俺は、寒かっただろうし、温まる物を用意しておいたよ。作りたてのサラダも」

 京四郎が並べたのは、寒い日にぴったりのスープとシチュー、瑞々しいサラダ。

「食後にはアイスもあるからね」

「Wow! 美味しそうデス!」

 素敵な料理を前にして、テディは待ちきれない様子。
 犬尻尾が本物であれば、ぶんぶんと勢いよく振られていたことだろう。

「じゃ、いただこうか」

「はい、いただきマス♪」

 両手を合わせて食べ物と作り手に感謝を捧げてから、2人のディナーが始まる。

 テディはどの料理も美味しそうに、ぱくぱくと夢中になって食べた。
 京四郎は微笑を浮かべてテディの食べっぷりを見ながら、行儀良く箸を進める。

 美味しい食事とクリスマスの定番スパークリングワインがあれば、話にも花が咲く。
 2059年も終わろうとする時期なので、今年1年の楽しい思い出話で盛り上がった。



「ふぅ、お腹いっぱいデス♪」

 デザートのアイスも食べ終わり、テディは満足げに笑っている。
 いくらかワインも飲んだので、頬がほんのり赤い。

 京四郎もワインをたしなんだが、お酒に強いため外見上も何も変わっていないようだ。

 一緒に軽く皿を片付けてから、再度テーブルを挟んで向き合った。

「それじゃ、お待ちかねのPresent交換デスネ♪」

「うん、そうしようか」

 テディの提案に京四郎も頷く。
 テディはクリスマスカラーの紙袋に入れたプレゼントを手元に用意した。
 京四郎も、カウンターの隅に置いておいた、ラッピングされた箱を手に取る。
 それぞれ見ただけでは中身は分からない。

「For you Dog.KEI。私からのPresentデス♪」

「ありがとう。これは俺から。
 ……気に入ってくれると良いんだが」

 お互い同時にプレゼントを渡し合う。

「早速開けさせてもらいマスネ♪ Dog.KEIもどうぞ」

 了解を取ってから、テディは包装をなるべく壊さないように箱を開けた。
 中から、可愛い猫がたくさん描かれたマフラーが顔を出す。

「Oh……! Cuteデス♪」

 そっとマフラーを取り出し、頬ずりしてみる。
 ふわふわとした触感が心地良い。

「Thank you Dog.KEI!」

 テディが京四郎に笑顔を向けると、彼もプレゼントを開封したところだった。
 テディからの贈り物は、黒いエプロンと茶色のミトン。

「こちらこそありがとう。マフラーは気に入ってくれたかな」

「もちろん! So cuteな猫がいっぱいで、これから毎日使いたいデス」

「よかった。ハロウィンの仮装が似合ってたから、これかなー……と、ね」

 黒猫怪盗のロニャーズとなっていたテディのことを思い出し、京四郎はふふふと小さく微笑む。
 はにかんだテディは、自分もそのプレゼントを選んだ動機を語る。

「Dog.KEIがここで料理をするときにも使えるよう、シンプルなデザインにしてみマシタ」

「ああ、エプロンも鍋掴みも使わせてもらう」

 プレゼントが相手に喜んでもらえたことで、両者ともほっとした様子。
 和やかな雰囲気が2人だけの喫茶店に満ちた。



「Mm……少し風に当たりまショウカ……Alcoholが効いたようデス……♪」

 時間経過により酔いが回ったテディの目はとろんとしている。
 上機嫌に笑い声を漏らしながら窓を開ける。
 どうして寒いのに窓をと思った京四郎を残し、テディはその窓から外に出た。
 地面に足を着けることなく、器用にMOONの屋根へ登る。
 仮装は犬だが、まるで猫のような身のこなしだ。

「おやおや」

 京四郎は後を追おうとして、ふと足を止める。
 この仮装の冬制服は温かいが、それでも今夜の寒さは身にしみるだろう。
 テディが風邪を引いてはいけない。温かいものを用意していこう。

 屋根の上に座り、テディは空を見上げていた。
 今夜は満月。
 冬の凜とした空気に、くっきりとした丸い月。
 もしもサンタクロースがトナカイの曳くソリで空を飛んでいるのなら、煌々とした月光ではっきりと見えるだろう。
 テディは目をこらしてみたが、サンタクロースの影は見えなかった。

「こらこら、あんなところから出たら危ないよ」

 はしごをかけ、京四郎が屋根に登ってくる。
 彼の声音からは怒りは感じない。ただ、テディにもしものことがあったらいけないので、軽くたしなめたいだけだ。

 だが酔っ払ったテディは悪びれることなく、笑って京四郎を迎えた。

 追ってきた彼の手には水筒とコップが2つ。
 首を傾げたテディに、水筒から湯気の立つ飲み物をコップに注いで渡す。

 冷気にさらされた体が冷えてきていたので、テディは喜んでそれを飲んだ。
 爽やかなホットレモンティーだ。
 内側から暖まっていく感覚がする。

 京四郎はもう1つのコップにホットレモンティーを入れ、ゆっくりと飲む。

 2人ともしばらく無言のまま満月を眺めた。


「Mr.Santaは本当にいるのデショウカ……私は信じてるし弟妹たちも信じてるけど」

 目は月に向けられたまま、テディがぽつりと漏らす。

「サンタか。居るかもしれないねぇ、世界にはまだまだ知らない事だらけだし……居ると信じたほうが、面白いしね」

 テディは驚いて京四郎を見た。
 てっきりサンタクロースなんていないと言われると思っていた。
 しかし、京四郎はサンタクロースの存在を否定しなかった。
 それどころか、いると信じることを認めてくれた。

 テディの口角が上がる。

「では、今夜のクリスマスパーティのFinaleはMr.Santa探しデス!」

「いいとも。ただし、体が冷え切ってしまう前に室内へ戻るんだよ?」

 クスクスと小さく笑いながら、京四郎はテディの提案に賛同した。

 喫茶店『MOON』の屋根の上。
 青い学生服を着て犬耳と犬尻尾で仮装した2人は、並んで座って空を見上げる。
 捜し物は見つからなくても、満月は優しく彼らを照らしていた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 ノベルのご発注、誠にありがとうございました。
 2059年のクリスマスパーティのお話です。
 素敵なクリスマスプレゼントに負けないくらい、このノベルが楽しいクリスマスの思い出になりますように。
イベントノベル(パーティ) -
錦織 理美 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年01月22日

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