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『ふたりはMUNAキュア☆MaxMUNAGE』
la3453)&仮森 仰雨la3605)&A・Rla3033)&点喰 縁la3038)&加倉 一臣la2985)&向野・A・黒子la0227)& フィノシュトラla0927)&月居 愁也la2983)&吉野 煌奏la3037)&ルシオラla3496

●アバンタイトル

 MUNAGE、それは希望
 MUNAGE、それは勇気のしるし

 古より伝わる伝説のMUNAGEを手にするとき
 少女は選ばれし戦士「MUNAキュア」となるであろう

 これは選ばれし戦士MUNAキュアの、愛と涙ともふもふのファンタジーである!


●タイトルコール

「ふたりはMUNAキュア☆MaxMUNAGE!」

 劇場版!
 さよならMUNAキュア、これが本当の最終回スペシャル!


●オープニング

 ちゃらっちゃっちゃ〜♪

 MUNA MUNA♪
 FUWA FUWA♪
 ふわっふわで もっふもふ♪
 ふたりは MUNAキュア♪
 マックスMUNAGE♪
 三人目もいるよ♪

 あらふぃふ男子が少女とか マジ意味わかんない♪
 MUNAGEを着てても冬場は 冷え性ツライし♪
 お互い更年期(ピンチ)を乗り越えるたび 腰が痛くなるね♪

 40 50 生きてるんだから 老眼難聴 当然♪
 亀の甲より年の功だよ 必殺技でギックリ♪

 MUNAGEに星 映して思いっきり♪
 もっとMUNA MUNA♪


●今までのお話

 MUNAGEの国から時空と常識と物理法則その他を超えてやってきたフィノシュトラ(la0927)ーーエージェント名フィノっぴぃは、その手に残ったMUNAGEをぎゅっと握り締めた。
 それは彼女の世界を守ってくれたMUNAキュアの形見。
 彼女は悪の組織ヴィランドーに滅ぼされたMUNAGEの国の、ただひとりの生き残りだった。
「私の国はもう滅びるしかないのです。でも、この世界にはまだ希望があるのです。MUNAキュアという希望が……!」
 そう、彼女が手にしたMUNAGEこそ、選ばれし者をMUNAキュアに変身させるキーアイテムなのだ!
 この世界の希望、それは今どこにーー

「さむっ!」
 玄関を開けると、キンと冷えた朝の空気が剥き出しの頬を刺す。
 加倉 一臣(la2985)はその冷たさに思わず怯みながらも、果敢に足を踏み出した。
 一人暮らしなIT関連のお仕事がんばる50歳は、今日も今日とて元気に朝のゴミ出しに向かう。
 昔は色々と無理や無茶をした……と過去形で言えるほど大人になれない少年ハート、しかし生活パターンだけは、健康的に早寝早起きを心がけていたーーと言うより、健康的にならざるを得ない事情があった。
 寝不足夜更かし飲酒喫煙、それらの不摂生が健康診断の数値にストレートに跳ね返るのがアラフィフなのだ。
 自然、IT関連と言えども勤務体系はホワイトになる。
 回収日の朝6時から8時までという地域のゴミ出しルールもきっちり守れる、ご近所でも評判の真面目で爽やかなナイスガイ、それが今の一臣だ。
 しかし、そんな彼にも敵はいた。
「カァ」
 ゴミを狙うカラスだ。
 今朝もまた、一臣とカラスの攻防が繰り返される。
 上空から急降下でゴミ袋を狙うカラス、しかし一臣はゴミ袋をしっかり抱えて走る!
「ライセンサー舐めんな!」
 華麗な走りでカラスの追撃をかわし、一足早く金網のダストボックスへシュート!
 かくして今日もゴミは守られた。
 しかし、カラスの行き場のない怒りが一臣を襲い、その頭髪が乱れる!
 危うし一臣、毛根の危機!
「いやいや俺が何をしたというのだ……こんな理不尽……」
 ぼくはわるいかつおぶしじゃないのに。
「そうだよ、こんな理不尽、間違ってるよ……!(カッ」
 一臣、覚醒。
「その通りなのです!」
 その目の前に、マスコットサイズの妖精がいた。
「世の中の理不尽と戦うために、私と契約してMUNAGE少女になるのです!」
 なってよ、ではなく。
 なりませんか、でもなく。
「なるのです……って、強制!?」
「今なら寒い冬の必需品、このウールのモフモフMUNAGEがもれなく付いてくるのです!」
「ラクダのももひき的なやつ? あれ良いよね、実は今もこっそり装備してるし」
「このMUNAGEはラクダの毛の100倍あったかいのです!」
「よし乗った!」
「まいどあり、なのです!」
 MUNAキュアオミー、爆誕!

 フィノっぴぃは三人分のMUNAGEを用意していた。
 そのひとつは今、一臣の友、月居 愁也(la2983)の手にある。
 残るひとつも恐らく関係者の手に渡るものと思われていた。
「今から一緒に探しに行くのです!」
 しかし!

「ふははははー! 残念だったなMUNAキュア!」
 悪の組織ヴィランドーのバイト怪人、仮森 仰雨(la3605)が現れた!
「仮森仰雨とは世を偲ぶ仮の姿! ワタシの真名はカリカリモリモリである!」
 迂闊に真の名をバラしていくスタイルだが問題はない。
「何故なら、お前たちはここで敗れ去るからだ! この……天才カラクリ師、ヨスガンダーによって! 先生お願いします!」
「自分でやるんじゃねぇんですかぃ!」
「だって今日のお仕事、時給シブいんだもん!」
「へぃへぃ、ま、楽な仕事ですからねぇ」
 ヨスガンダーと呼ばれた点喰 縁(la3038)は、自作のヒミツカラクリ「洗脳装置キオクイレイザー」を取り出した。
「三人揃わねぇMUNAキュアなんざ敵じゃねぇんですよってね」
 そう、MUNAキュアは三人で力を合わせなければ変身出来ないのだ!
「キオクイレイザー、発動!」
 ぺかーーー!

 かくしてMUNAキュアは無力化された。
 記憶が失われたことにより、彼らの目にはフィノっぴぃの姿が見えなくなってしまったのだ!
 姿だけではない、声も気配も感じられず、MUNAGEのことさえ忘れてしまった。

 MUNAキュア、大ピンチ!


●ようやく本編

 MUNAキュアは消えた。
 この世界は悪の組織ヴィランドーの独壇場となった。
 しかし、世界は平和そのものだった。
「いやぁ皮肉なもんだよねぇ」
 コツコツ作りためた新兵器たちを眺めながら、ヨスガンダーは盛大に溜息を吐いた。
「せっかく邪魔者がいなくなったってぇのに、ちっとも出番がありゃしねぇ」
 今こそやりたい放題の暴れ放題、こんな世界はあっとも言わないうちに悪の手に落ちて然るべき、なのに。
 悪がいるから正義の味方が現れるのか、正義の味方が頑張るから悪が活気付くのか。
「うちのボスはどーにも後者っぽくて……MUNAキュアがいなくなった途端にヤル気なくすとか、実は仲良しさんですかぃっての」
 ここで改めて解説しよう。
 悪の組織ヴィランドーのメカニック担当・カラクリ師ヨスガンダーの表の顔は、善良で腕の良い妻子持ちの文化財修復師である。
 だが彼は、その仕事場を家族に見せることはない。
 何故なら彼が扱う「文化財」とは、悪の組織が使う凶悪な兵器「ヒミツカラクリ」のことなのだから!
 大切な家族に偽ってまで彼がこの仕事を続ける理由、それは。
 悪をなすことでしか正せない理不尽があるからーーだったらカッコいいのにね。
 組織に弱みを握られているからーーだったらいつかMUNAキュアと一緒に戦えたかもしれないのにね。
 だが彼の真実はひとつ!
 トラップ作りが大好きすぎたから、だッ!
 学生時代から密かに作り続けて幾星霜、だが彼は就活で悟ったのだ。
 どんなに優秀なトラップを作っても、社会生活には何の役にも立たないと!
 まさに宝の持ち腐れ。だがひとつ、たったひとつだけ、彼の才能を認めてくれた組織があったのだ。
 残念仕様とか言うな、人には己が最も輝く場所で咲く権利があるのだ、たとえそれが陽の当たらない社会の路地裏だったとしても。
 派遣戦闘員の向野・A・黒子(la0227)にも「子供に顔向けできねぇな」と言われたが、バレなければどうということもない。
 この秘密は墓場まで持って行く。
 かくして宝の持ち腐れは才能の無駄遣いへと進化を遂げた。
 しかし今、それは再び腐りかけている。
「はーまたイキのいい正義のミカタとかいうモニターさんこねぇかなぁ……」
 こうなったら自力で営業してみるか。
 例えばこの新型猫足マスコット型まきびし、表面がごく細密の針で抜けないし地味に痛いんですよ、とか。
 にゃーにゃー足に纏わり付いて離れない猫型追尾爆弾、一家にひとつ番犬代わりにいかがですか、とか。
 だがしかし、彼には営業の経験がない。
 営業どころか真っ当な社会人としての経験さえ怪しい気がする。
「こうなりゃもう、MUNAキュアに頑張ってもらうしかねぇ……」

 がんばえー! むなきゅぁー!

 その声は妖精フィノっぴぃの心に届いた!
「子供たち(?)の応援がある限り、MUNAキュアは何度でも立ち上がるのです!」
 フィノっぴぃは最後のひとりを探すために飛び立つ。
 しかしたとえ見付かったとしても、彼女の存在が誰にも感知されない今、どうやってコンタクトを取るのか!

「ふふ、ふふふ……」
 闇の底から聞こえる、不気味な含み笑い。
「応援ありがとうございます。そのパワー、しかと受け取らせていただきました♪」
 その声と、ぼんやり浮かび上がるシルエット、そして闇に揺らめく桃色の炎。
 どうやらまだ若い、少女と言っていい年頃のようだが、その正体は一体……?

 ここは小中高大一貫のマンモス校ガハラ学園。
「混む前にさっさと済ませるか」
 定年まであと10年ない平凡な高等部教師、A・R(la3033)ーーアスハは、午前中の授業を生徒の自主性に委ねて食堂に向かっていた。
 つまりサボリである。
 四捨五入でぎりぎりアラフィフの彼に、教師の仕事はきつい。
 まず立ちっぱなしなのが腰に来る。
 教科書の文字も、老眼鏡なしでは腕をいっぱいに伸ばさないとよく見えないし、細かい文字はどうやっても見えない。
 その老眼鏡も買い換えたばかりだというのに、もう度が合わなくなっているのか、かけているとやたらと目が疲れる有様だ。
 下り階段で膝は笑うし上りは踊り場で休みたいし、ちょっと頭痛でもすれば「あ、もう死ぬのかな」という思いが脳裏をよぎる。
「まったく、歳はとるもんじゃない」
 ぼやきつつ、冬なのに今が旬と書かれていた夏野菜カレーをテーブルに運び、座る。
 そうそう、立ち座りの「どっこらせ」も自然に出るようになってしまった。
 そろそろ加齢臭も気になるお年頃ーー
「カレーの匂いで誤魔化すか、加齢臭だけに」
 などとオヤジギャグを平気で口に出してしまえるのも、前頭葉の老化が進んだ証拠らしい。
 その時だった。
 ドン!
 下から突き上げるような衝撃を感じた直後、派手な爆発音がアスハの鼓膜を突き抜けていく。
 手を離れて宙を舞うスプーン、飛び散るカレー、桃色の炎、そして舞い踊る羊毛ーー
「羊毛?」
 次の瞬間、アスハは走り出していた。その手に羊毛を握り締めて。
「見える、見えるぞ……MUNAGEの妖精の姿が!」
 刹那、彼は全てを悟った。
「そうか……僕が、僕たちが、(毛を)守りし者……MUNAキュアだったの、か……!」
「そうなのです! さあ、これを受け取るのです!」
 手渡されたのは黒い羊毛ーー
 今、新たな……そして最後の戦士がMUNAGEに目覚めた。

 同じ頃、都内某所にあるガハラテレビのスタジオでは、通販番組「ガハラ・プレミアムチョイス」の収録が行われていた。
 ガハラテレビは通販番組のみを24時間流し続ける専門チャンネルだ。
 愁也はそんな番組でほんのりとした人気を誇る、そこそこベテランのコメンテーターだった。
 今回の商品は幻の逸品と言われる最高級ウールの掛け布団。
 羊毛は詰め物だと誰が決めた、最高級のウールにカバーなどいらない、この剥き出しの野性味溢れる姿こそがウールの魅力を1000%引き出すマストチョイス。
「うーん、この……まるで羽毛のようなフワフワ感、それでいてスッキリと櫛の目が通った、まるで誰かが夜なべで梳き上げたような光沢と眩しい白さ!」
 惜しむらくは、この見事なウールを作れる職人がもうどこにも存在しないということ……そう、これはこの世界に残された、たったひとつの、まさに超激レア!
 これを手に出来るのは限定一名様のみ、受付はこのあとすぐ!
「はいカーット! 休憩入りまーす」
 だが彼らには、のんびり休んでいる暇はなかった。
 なんと、この建物に悪党が侵入したというのだ!
 浮き足立つスタッフ、近付いて来る爆発音、その時スタジオの明かりが消えた!
「配電盤がやられたのか!?」
 あたりは真っ暗で何も見えない。
 ただ時折、爆発音と共に桃色の炎と閃光がほんの一瞬明かりを投げかけるのみ。
 だがその中に、何故かはっきりと姿が見える存在があった。
「あれは……何かのゆるキャラか? マスコット的な……」
 愁也は思わず立ち止まり、目を擦る。
 何か見覚えがあるような、ないような、記憶が血栓のように脳のどこかに詰まって今にも破裂しそうだやばいしぬ。
 だが血管が詰まる前に愁也は詰んだ。
 背後から、これまた聞き覚えがあるようなないような、少女の声が聞こえたのだ。
「思い出して! さもないと……全部燃やしますね?」
 いや問答無用で炎ぶっぱだし、なんでや。フランベか。
 生存本能の赴くままに愁也は跳んだ、あの最高級ウールの掛け布団に。
 しかし、それこそがーー
「思い出したぞ……このウールを夜なべで梳き上げたのは、何を隠そうこの俺! この俺こそが伝説のウール職人……いや、それさえも世を忍ぶ仮の姿!」
 愁也の手に燦然と輝く純白のMUNAGE!
「俺は己の使命を思い出した……俺は愛とファンブルに生きる、伝説の戦士MUNAキュア!」
「思い出したのですね!」
 これで三人のMUNAキュアが揃った。
「さあ、みんなと合流して悪の組織ヴィランドーを磨り潰すのです!」

 ワープ!

 解説しよう、ワープとは日曜朝のお約束、どんな場所からも時空を超えて移動が出来るツッコミ不要の超便利技だ!
 これを使えば同一人物が複数の場所に同時に存在することも不可能ではない、って言うか普通に出来る、フィノっぴぃのように!

 一瞬前まで平和そのものだった世界が、MUNAキュアの覚醒と共に悪意に目覚めた。
 何の変哲もない美と健康とスイーツの店「美爛堂(びらんどう)」の奥、秘密の隠し部屋で黒電話が鳴る。
「はい……え? MUNAキュア? 毎度ごひいきに♪ いつも街の平和を守っ……」
 守ってるんですかね、あの人たち。まあいいや、商売商売。
「おめでとうございます、無事に復活を果たされたのですね。それで今回はどのような品物がご入用でしょう」
 店主、吉野 煌奏(la3037)は慣れた手つきで手元の端末に依頼の内容を入力していく。
「MUNAキュアサポートセット一式に、攻撃アイテム福袋、それにMUNAGEのスペア……お客様、今なら特別仕様のMUNAGEもございますが……はい、そちらで承りました。お支払いは……はい、では特急ワープ便で♪」
 繰り返す、美爛堂は何の変哲もない美と健康とスイーツの店だ。
 店の名前に既視感がある?
 気のせいですよ、たまにヴィラン堂なんてカッコつけて呼ぶお客様もいらっしゃいますけど、ここは何の変哲もない美と健康とスイーツの店ですから(威圧
 え? 年齢的におかしい?
 おかしくありませんよね煌奏さんですから(威圧
「美爛堂は罪悪感なしに思う存分スイーツが楽しめる素敵なお店ですよ♪」
 摂りすぎたカロリーは消費すればいいじゃない、具体的には店内にずらりと並んだダイエット用品やサプリ、提携ジムのフィットネス教室etcで。
「スイーツとダイエットプログラムがセットになった、リピーター続出のお得な便利アイテムもありますよ♪」
 お客様は美味しいスイーツで大満足、店はボロ儲……商売繁盛で、まさにウィンウィンですね♪

「やっと出番かよ、待ちくたびれたぜ、ったく……」
 向野・A・黒子(la0227)は日当1万、危険/通勤手当別途支給という条件で雇われた悪の戦闘員その1である。
 ヨスガンダーの紹介で戦闘員になったはいいが、このところ平和な日々が続きすぎていた。
 一人暮らしゆえに月々の出費はそう多くはないが、このまま出動がなければ最後の虎の子を崩す羽目になっていただろう。
「他を探すっつってもこのご時世、派遣とはいえ仕事があるだけマシなんだろうが……」
 安定が欲しい。
 正社員になりたい。
 正式に所属したとして、それを社員と呼べるかどうかは置いといて。
 だが、この組織にはひとつ、重大な問題があった。
「幹部になったらボンテージ制服くさいんだよな」
 今も「女性枠なら可愛さかお色気を出せ」という時代錯誤な指令を守り、ゴスロリを身に着けているわけだが。
「そろそろ誤魔化しキツいんじゃねぇかな、四捨五入で三十路だぞ俺」
 うん、他に職探そ。
 そのためにも、まずはこの仕事でアピールしておく必要がある。
 バスターライフルを背負い、ごつい拳銃とPDWの2丁拳銃、そして回復用の長杖。
 なお武器を日傘に仕込んだりはしない。
「さて、どっかのスカウトが見ててくれりゃ良いんだが」

「世間のカップルがイチャイチャしているこの夜にワタシはせっせとMUNAキュアたちの毛を刈る! すべてはワタシの時給の為! 寂しくなんてないんだからね!」
 カリカリモリモリは、ただ時給の為だけに悪役をやっている、何の主義主張もポリシーもない蝙蝠の化身のような性別不明者である。
 いや、ポリシーはある。
「時給アップのためなら何でもする、それがワタシ!」
 というわけで、ミニスカサンタコスである。時給五割増しって言われたから。
 なお言い忘れたが本日はクリスマスイブ、人生の明暗が真っ二つに分かれる、ある意味究極の審判の日であると言えよう。
 しかし今日の敵はイルミネーションで飾られた街をそぞろ歩く、幸せいっぱいのリア充ではない。
「さあ始まるよ! サブタイトルはMUNAキュア最後の日!」
 まあ大抵は敵側の妄想だし自爆フラグなんですけどね、こういう場合。

 どうしてこうなった。
 ルシオラ(la3496)はMUNAGEの精ーー
「MUNAGEの精ってなんですか?? わたし嫌ですよ???」
 拒否権はないとか言われても意味わかりません。
 絶望的にネーミングセンスかわいくないじゃないですか? いやかわいくなりたいわけじゃないですけど???
「とにかく嫌です」
 名前からしてMUNAキュアの仲間感満載ですよね、なのに敵ってどういうことです???
 え、MUNAGEの妖精闇落ちバージョン?
「妖精が闇落ちするほどの過去とは???」
 それほどの大事、そのエピソードだけで一本の映画が出来そうなものです。
 むしろわたしが主役なのでは???
 はい? 何も……考えていない? ノリで決めた?
「帰らせていただきます」
 え、もうカメラが回っている?
「仕方がありません、敵前逃亡も寝覚めが悪くなりそうですし」
 ところでこの部分、編集でいい感じにカットされるんですよね?
 されない? ノーカット?
「……何故ですか……わたしは真面目に生きているのに、ただそれだけなのに、何故このような状況に! 仕打ちに! なっているのですか!」
 つらい。
 つらすぎる。
 色々つらくてもうメンタル限界突破Noサバイバー。
「いいでしょう、MUNAキュアは敵です。そのMUNAGEを刈って焼きます! けれど!」
 敵の敵は味方と言うし、MUNAキュアと敵対している立場上、悪の組織ヴィランドーの戦闘員は味方であるはずだ。
 しかし。
「ふざけている人は同罪ですね」
 何がふざけていると言って、この状況そのものがもう悪ふざけの極致。
 まともな人には何もせず、その分ふざけている人に仕置きをと思ったけれど、この場にまともな人などいるはずもなかった。だってすしやだもの。
 つまり全員敵ですね。
「刈ります、焼きます」
 まさかの第三勢力、参戦!

 そうこうしているうちに、MUNAキュアの三人が揃った。
 唐突だが尺の都合だ、あと状況説明とか辻褄合わせとか細かい描写とかめんどくs(げふん)……わかるよな! 何となくこう、ノリで!
「アスハさん、加倉さん! 変身だ!」
「「おう!」」
 その胸元に燦然と輝く羊毛ーーMUNAGEこそが、愛と正義と勇気の証!
 三人の手がひとつに重なり、今! その輝きが奇跡を起こす!
 アスハは黒いツヤツヤMUNAGEを胸に、老眼鏡を眼に、高らかに叫んだ!
「MUNAGEプリズムパワービルドアップ!」
 現れる謎のキラキラ空間、弾け飛ぶ衣服ーーいや、脱げない!
「MUNAキュアは本人の希望を最大限に考慮する超ホワイトなシステムなのです!」
 三人の衣服はそのままの状態でMUNAGE素材のミニスカとノースリーブに変形、露出部にもMUNAGEたっぷりで、もはや一分の隙もなくもっふもふーー

「なんだこの相手……まあなんでもいい、お仕事するかー」
 パァン!
 黒子のバスターライフルが火を噴いた!
 だが、変身と名乗りは魔法少女や戦隊物における侵すべからざる絶対神聖領域!
「無駄だよ、今のMUNAキュアは宇宙が消滅しても倒せない」
 カリカリモリモリが首を振る。
「そういうお約束なんだ」
「ほう。悪役ってやつはなんでこの隙に攻撃しねぇのかずっと疑問だったんだが、なるほどそういうわけか」 ※諸説あります
 得心を得た黒子は面倒くさそうに銃を下ろした。
「で、この妙にキラキラしいおっさんたちの歌と踊りを黙って眺めてろってか」
 拷問か。

 そんなギャラリーの嘆きをよそに、MUNAキュアの変身シーンは続く。
「ウールの雨で全てを包む! MUNAキュアアスハ!!」
「寒い冬には必需品。ウールのMUNAGEで冷えを解消! MUNAキュアオミー!」
「俺のMUNAGEが火を吹くぜ!(ボボボボボ 実際燃えてるが気にするな! ウールの盾で平和を守る! MUNAキュアシュウヤ!」

「「「輝くMUNAGEは勇気のしるし! 歌って踊れるアラフィフ戦士、おっさんずMUNAキュア!」」」

「仲間と共に……え、待ってこのメンバー平均年齢高めじゃない? スタミナもスピードもおぼつかないよ!?」
 ふと我に返ったMUNAキュアオミーが気付いてしまった事実。
 だが今更後戻りは出来ない。

「お、奴さんたち来たねぇ来たねぇ」
 名乗りの最後を飾るポーズが華麗に決まったのを見届け、ヨスガンダーは手塩にかけた猫たちを嬉々として放流した。
「そーらお前たちいっておいでー」
「にゃー!」
 尻尾を立ててMUNAキュアに駆け寄る猫たち、そのあざと可愛さにMUNAキュアは手も足もーー
 ぐわしゃっ!
「アラフィフ装備の性能を甘く見ていたようだなヨスガンダー!」
 老眼鏡をくいっと上げて、MUNAキュアアスハが黒ツヤMUNAGEの胸を張る。
 そう、老眼鏡はすぐ目の前を見ることに特化している。それゆえ足元はぼんやりとしか見えないのだ!
 つまり! 可愛い猫もただの毛玉!
「毛玉を叩き潰すのに躊躇も逡巡も無用!」
 まあ可愛い猫でも容赦なく叩き潰すんですけどね。
「くっ、だがこのサイズなら小さすぎてよく見えねぇはず! 新型猫足マスコット型まきびしー!」
 見えないものは避けようもなかろう!
 だがそれをぶちまけようとしたヨスガンダーの手を黒子が抑えた。
「待て点喰、撒菱撒くなら落とし穴の周辺にするんだ、避けたところにハマるからな」
「お、おぅ……」
 正論だ。まったくもって正論なのだが。
「この状況でシリアス保てるって、どんだけ強メンタルなんだろねぇこの人は」
 なお落とし穴はいつの間にか出来てました、ふしぎ!
 しかし足の裏までもっふもふのMUNAGEに守られたMUNAキュアは平気でそれを踏んで来る!
「この胸元で存在感を放つMUNAGE、これこそが世界を救うのだ! 覚悟しろ悪の組織ヴィランドー!」
「下校時間はとっくに過ぎている、とっととお家に帰るんだな!」
 MUNAキュアシュウヤとMUNAキュアアスハの合体攻撃!
 しかし黒子が放った雑魚怪人が全面的にダメージを肩代わりした!
 カリカリモリモリの攻撃!
「これでもくらえーっッ!」
 必殺の蝙蝠ドロップキックで二人まとめて落とし穴に!
 だが!
「老眼鏡がなければ即死だった……」
 MUNAキュアアスハは身代わりに散った老眼鏡をそっと外し、胸のMUNAGEポケットにしまった。
 ありがとう君のことは忘れない、多分あと5分くらいは。
 しかし攻撃は凌いだが、身体中の関節が悲鳴を上げ、息もすっかり上がっている。
「たんま、一時休戦だ! おじさんたち暫く休ませて!」
 だがカリカリモリモリは聞く耳を持たなかった。
「なに言ってんの絶好のチャンスじゃないですかー♪」
 迫るバリカン、しかしその前にMUNAキュアオミーが立ちはだかる!
「やめるんだカリカリモリモリ!」
「無駄無駄、キミにワタシは止められないよ!」
「違う! 止めはしない、だが一言だけ言わせてくれ……そのミニスカは命取りだ!」
「は? なに? まさか似合わないとか? いやいやMUNAキュアより遥かにイケてるでしょこれ」
「馬鹿野郎、そんなことじゃない! 若い頃の無茶は年くってから出るんだぞ! 冷えは怖いんだから、暖かい格好しなさい!」
 お母さんか。
「年くってからって、そんな遥か先のこと今から心配してどうするのさ」
「遥か先……そう、僕もついこの間までそう思っていたよ」
 ようやく息を整えたMUNAキュアアスハは、痛む腰をさすりながら言った。
「だがその『ついこの間』はもう、30年以上も前のことだったんだ!」
 過ぎ去る時の、この異常なまでの速さよ。
「かもしれない……でもそんな心配ワタシには無用さ! だって悪役だよ? 悪役に未来とかあると思う?」
 よってこの刹那に全てを賭ける!
 そこに黒子の援護射撃、足元を狙った攻撃でMUNAキュアオミーを追い詰め、落とし穴へと追い落とした!
「今のうちにやっちまいな」
「ありがと、恩に着るよ♪ ふふふ、大丈夫大丈夫痛くしないから♪ ただそのMUNAGEを一本も残さず刈るだけだから♪」
「では、わたしも便乗させてもらいましょう」
 カリカリモリモリのバリカンとルシオラの草刈り鎌がMUNAキュアに迫る!
 なすすべもなく根元からバッサリ刈り取られ、燃やされるMUNAGE!
 だがルシオラの勢いは止まらない、全ての敵を刈り尽くすまで。
「え、ちょ、なんでその鎌こっち向けるの!?」
「わたし敵ですから」
 ルシオラはハイライトの消えた目でカリカリモリモリに斬りかかる!
「……早く終わりませんかねこれ」
「ねえ、悪役のワタシよりヤバいの多くない? 気のせい? ワタシの気のせい? というか悪役なのにワタシの印象薄くない? みんなキャラ濃すぎだよね、こんなのに勝てるかー!!!!」
 誰かタスケテ!

「……はっ!」
 のんびりと散策を楽しむカップルや家族連れで賑わう日曜日の公園。
 その真ん中に作られた池で、鴨(la3453)は天啓を受けた。
 鴨は一見すると何の変哲もないごく一般的なただのカモかも、だがこのカモは異世界より舞い降りし可愛いカモだったかも。
 しかし能あるカモはネギを隠す、今日も普通のカモにカモフラージュした鴨は、池でぷかぷか泳いでいた。
 しかし。
「これは……!? 鴨はMUNAGE(羽毛)の力に目覚めてしまったかも! これが噂のMUNAギュラリティかも!」
 見える、見えるぞ仲間の危機が!
「たいへーん! MUNAキュア達を助けないと!! かも!!」
 なんかすごいフィールド展開!
「クワァァァァァァ長ネギパワー全開!」
 隠されていたネギが今、その姿を現す!
「KAMOアクセス! KAMOン・ スピリット・オブ・ザ・MUNAGE!」
 なんかすごいキラキラエフェクト!
 もっこもこに膨らむ羽毛、よりカラフルに彩られる風切り羽根、頭上に燦然と輝くネオンカラーの冠毛!
 説明しよう! 長ネギパワーを引き出すことにより、もこもこ最高級ダウン100%MUNAGEの力が促され、鴨はKAMOキュアに変身できるのだ!!
 1グラムあたりの戦闘力はウールの百万倍、しかしその密度とサイズ的な総量においてKAMOキュアはMUNAキュアに及ばない。
 仕方ないよね、だってカモだし。
 だがこれは、あまりに強大なパワーを持つがゆえの宿命、ここまでサイズダウンしなければ宇宙が崩壊する、ダウンMUNAGEはそれほどまでに危険なシロモノなのだ!
 そんなわけで、KAMOキュアはMUNAキュアとほぼ同等の力を持つ。
 池を飛び立った鴨は例のワープで戦場の上空へ!
「助けに来たかも! くらえ、必殺ゴッドKAMOックスかも!」
 鴨の体が炎に包まれ、焼ネギの香ばしい香りが辺りを包む!
 火の玉となった鴨は一直前に地上へダイブ、これは無差別の範囲自爆攻撃である!
 ズドーーーン!

「あーこりゃ全滅だな、あっけない幕切れだったぜ」
 後方支援に徹していた黒子を除き、悪の組織ヴィランドーは滅びた。
 MUNAキュアもKAMOキュアも、闇落ち妖精も平等に滅びた。
『でもそれじゃ盛り上がりに欠けますよね』
 どこからともなく聞こえる謎の声。
『というわけで第2ラウンド行きますね♪』
 声の主は誰なのか、全然さっぱり見当も付かないぞ!
 気が付いても黙ってるのがお約束だ!
 そしていつのまにか、黒子の手には美爛堂印の復活キットが!
「死者に鞭打つようで気は進まないが、ま、あっちも復活しそうだしな」
 視線の先ではフィノっぴぃが、倒れたMUNAキュアたちに新しいMUNAGE(火薬入り)を継ぎ足していた。
 植毛という外科手術は終えた、後は回復アイテムという点滴を打つのみ!
「MUNAキュアオミー、これを使うのです!」
「わかった、サポートタイプの俺ならきっと回復量も倍になるはず! MUNAキュアスプラッシュ!」
 熱々の特製鰹出汁が三人の頭上に降り注ぐ!
「回復! って、あっつ! 熱いよこれ!? ……ねぇ、何か回復された? 俺はされてないと思う」
 むしろ余計にダメージ負ってませんか負ってますよね。
 だがその刺激が彼らの眠れる闘志を呼び覚ました!
 幽鬼の如く立ち上がるMUNAキュア!
「もう変身できなくたって構わない……! 全ての力と想いと冬のボーナスをMUNAGEに集め、今必殺の! MUNAGEバンカー!!」
「MUNAGEは裏切らない……! 必殺、MUNAGEダイナミックダイスクラッーーあっ待ってダイスがMUNAGEに絡んd」
「これが最後の、そして最大の攻撃かも! 必殺ゴッドKAMOックスβかも!」

 大 爆 発

「なんか勝手に爆発したので帰りま……(ジュッ」
 巻き込まれるルシオラ。
「やはりアラフィフに魔法少女は無理だったんだ……(がくり」
 吹っ飛ぶMUNAキュアアスハ。

 全 滅

 まあ生きてますけどね、コメディだし。
「仮森ー、安い金で死ぬんじゃないぞー」
「あー(ぼへっ 生きてる、けど……(げほっ)せっかくのサンタコスが……(ごふっ」
 黒子に助け起こされたチリチリアフロのガングロと化したカリカリモリモリは、性別が確定されない程度にボロボロになった衣装を見下ろす。
「あれ、ポケットに何か……美爛堂の請求書? ってこれ自腹!? あと高くない!?」
 かくして時給アップは見事にチャラとなり、その悲劇がまた新たな物語を生むことになる、かもしれないが……それはまた別のお話。

「ま、世は並べて事も無し、ですよ。『平和』が一番です」
 美爛堂の奥、秘密の部屋で、煌奏はモニターに向かってほくそ笑む。
 え? お前が黒幕なんじゃないかって?
 失礼な、こんな可愛い煌奏さんがそんな悪どいことするはずありません。
 ただまあ……ほら、悪者じゃないけど引っ掻き回すジョーカーのひとりやふたり、いた方がよい子も楽しめるでしょう?
 戦闘中に顔を出さないのは何故かって?
 それは敵もキュアも燃やs(げふん)爆h(げふん)……世界は無事に守られました、良かったですね♪
 また次回もご贔屓に♪

(もしかしなくても:裏ボス)

「ふう、良い仕事をしたのです!」
 ちゃっかり上空に逃れていたフィノっぴぃは、清々しい面持ちで下界を見下ろした。
 だがまだ悪の根が断たれたわけではない。

 MUNAキュアの戦いは続くーー


●エンドロール&特報

 続編製作決定!
 この春、MUNAキュアの新しい冒険が始まる!
 みんな、応援してね!




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グロリアスドライヴ
2020年01月27日

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