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『恋愛相談 』
フェリシテla3287

 グロリアスベースの一角、冬の弱い日差しに温められているカフェ『sino』にて。
 ヴァルキュリアの乙女、フェリシテ(la3287)は悩んでいる。
 自分は恋人の役に立てているのだろうかと。

 自分が恋人に支えられている自覚は多々あった。
 彼がいなければ自分はどうなっていたか分からないほどだ。
 自分の弱さを受け入れてくれ、なお微笑んでくれる恋人のことをフェリシテは心から愛している。

 だからこそ不安になる。
 彼に支えられてばかりではないかと。
 自分は何も返してあげられていないのではないかと。

 気分転換のために出かけてカフェに入ったのだが、コーヒーにもほとんど手を付けられていない有様だ。

「何か悩み事かな?」

 思いがけず声をかけられ、フェリシテは椅子から飛び上がらんばかりに驚いた。
 彼女が座っている席の側に、ギャルソンエプロンを着たこの店のマスター、東雲 忍(lz0010)が立っている。

「えっと……お気遣いなく」

「君こそ気を使わないでくれたまえ。今は他に客もいないから、僕も時間があるしね」

 このように言われるほど、自分は暗い顔をしていたのだろうか。
 それでは、このまま家に帰れば恋人に心配をかけてしまうかもしれない。

「……フェリシテの悩みを聞いてくださいますか?」

「僕でよければ喜んで」

 忍は彼女の対面の椅子に座る。
 フェリシテは手元のコーヒーカップに視線を落としたまま、ぽつりぽつりと自分の不安を話した。

「――支えてもらってばかりではいたくないのです。フェリシテも支えたいと思っています。でも、何をしてあげられるのか分かりません」

 フェリシテは俯いたまま黙りこむ。
 時折相づちを打ちながら静かに話を聴いていた忍は、「恋人君に何をしてあげられるのかが分からないのだね」と優しく言った。

「どうなのだろう。恋人君は、君は何もしてくれていないと言うのかい?」

「滅相もない! フェリシテも十二分に支えてくれていると仰ってくれます」

 反論する拍子に顔を上げたフェリシテは、忍がとても優しい微笑みを浮かべているのに気付いた。

「そうだろうね。なら、君がこれから何をしてあげられるのかではなく、君が既に何をしてあげられているのかを考えてみてはどうかな?」

「フェリシテが、既に何をしてあげられているか……」

「そうだとも」

 そんなものがあるのだろうか。フェリシテは不安になった。

「恋人君は嘘を言うような人ではないのだろう? それなら、恋人君の言葉を信じて、何ができているのかを考えてみたまえ」

「信じる……。はい。フェリシテは信じます! 信じて考えてみます」

 元気よく言いながら、フェリシテは首から提げているリングネックレスを握った。
 恋人からのクリスマスプレゼントだ。これを手に取ると恋人の愛を感じられる。
 表情に少し明るさが戻る。

「良い返事だね。おそらく、君が当たり前のように行っていることの中に、恋人君が感謝していることがあるはずさ」

 当たり前のように行っていること。
 フェリシテは恋人との日々の暮らしを思い返してみた。

 最近忙しい恋人は、それでもフェリシテと話す時間を作ってくれる。
 それが嬉しくて、一緒にいられる時間は愛と感謝をたくさん伝えるように心がけている。

 恋人はたくさんの長所を持っているので、恋人の素敵だと感じたところも口に出して伝えている。

「……もしかしたら、フェリシテがお伝えしている言葉が喜んでもらえているのかもしれません」

「思い当たることがあったようだね」

「はい、確証はありませんが……」

「他人が何を考えているかは、その本人にしか分からないものさ。気になるなら答え合わせしてみたまえ」

「はい。……あ、もうこんな時間ですね。フェリシテ、そろそろ帰らないと。ごちそうさまでした」

 フェリシテは残っていたコーヒーを飲み干す。
 まだ温かいそれは、マイルドで優しい味がした。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 ご発注ありがとうございました。
 NPC東雲忍を指定していただきましたので、話の聞き役として登場させました。
 どうか、フェリシテさんの不安が解消され、恋人とより仲睦まじく過ごせますように。
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錦織 理美 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年02月04日

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