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『夢の狭間に』
ネムリアス=レスティングスla1966

 夢を見ていた。
 辺りは暗い青に包まれた、深い海に沈んでゆく夢。

 ネムリアス=レスティングス(la1966)は、体と同じように漂う意識の中で、自分は死んでいくのか、と思っていた。
 どこか他人事のような感じなのは、水の中なのに息苦しくないからだろうか。
 それとももう死にかけているから苦しさを感じないのか。
 どちらでも構わない。
 死ぬかもしれないと思っていても、不思議と恐怖はなかった。
 俺が死んでも誰も悲しまないさ……。
 自嘲気味に自分にそう言い聞かせ、どこまで沈んでいくのか分からない水の中に身を任せる。

 ネムリアスは目を閉じ、静かに沈んでいき――……。

 不意に穏やかな降下が中断され、ネムリアスはいきなり闇の中へ突き落されたかのように落下しだした。
「!?」
 何事かと思っているうち、やがて底と思われる床に着地する。
 闇の中でそこだけが仄かに光を放った、精緻な模様を描いたステンドグラスの上だった。
 顔を上げると、ネムリアスの目の前に誰かが立っていた。
 フード付きの黒いロングコートを羽織った人物。黒い手袋を着け、ズボンもブーツも黒い。顔もなぜか目深に被ったフードに隠れていて見えなかった。
 ネムリアス自身も黒いコートに仮面を着け、体を覆う黒い装備で、どこか似ていなくもない。
 しかし相手の黒い人物はあまり友好的ではない雰囲気を漂わせている。
 ネムリアスが警戒していると、その人物が口を開いた。

「今のお前のザマはなんだ?」
 真っ黒い外見と同じように、暗くて低い声だった。
 いきなり何を、と思うネムリアスに続けて問う。
「夢も希望も捨て去って、人を信じることを止め、色々なモノを犠牲にしてその程度なのか?」
 その声に込められているのは明確な怒り。
 ネムリアスを責める言葉は彼の心をざらついたものでなでたかのように刺激した。
 チリ、とネムリアスの怒りにも小さな火が灯る。
「所詮その程度ならば、此処で終わるべきだ」
 黒い人物はちらりと見えた白銀の両腕から光の刃を二本取り出し、それぞれの腕に持つ。
 そして有無を言わさずネムリアスに襲い掛かった。

「お前に俺の何が分かると言うんだ!?」
 ネムリアスの全身が瞬時に蒼い焔に包まれた。
 二丁の散弾銃を装備し二刀流の刃を迎え撃つ。
 素早く振り下ろされた光の刃を銃身で受け止め、勢いを殺しながら下に受け流す。
「俺が何を犠牲にしてきたかも知らないくせに、勝手なことを言うな!」
 そのまま流れるような動作で相手の懐に向けて引き金を引いた。
 が、黒い人物は始めからネムリアスがそう反撃してくると分かっていたかのように、すぐさま回転して照準から逃れ、今度は左右から斬り付けてきた。
「何っ!?」
 相手の反応が早すぎて避けきれない。
「しまった!」
 光の刃に脇腹を斬られる。
 咄嗟に距離を取ろうとするも、相手はその方向さえも読んでいたとばかりにネムリアスから離れず、次々と連続で斬り付けて来る。
 怒涛の猛攻撃だ。
 顔が見えず表情が分からない分、攻撃は一層冷酷で非情に感じられる。
 一体こいつはなぜこんなにも自分を倒そうと、いや、『殺そうと』してくるのか。しかしネムリアスにその疑問を考えている余裕はない。
「くっ……!」
 銃で受けようにも向こうの手数が多く、ネムリアスは腕を斬られ足を斬られ、じりじりと追い込まれてゆく。
 一瞬攻撃が止まりネムリアスが庇うように上げた己の腕越しに見ると、相手の光の刃がひときわ大きく輝いた。
 大技が来る。
 マズイ、と思ったが遅かった。
 黒い人物が力強い踏み込みと共に二本の刃を同時に鋭く薙ぎ払うと、光の衝撃がネムリアスを襲う。
「っ!!」
 ネムリアスは何メートルも吹っ飛ばされた。
「か、はっ……!」
 思った以上のダメージを受けてしまった。
 ざし……ざし……、と黒い人物がこちらに近づいて来る足音が聞こえる。
 止めを刺す気だろう。
「このままやられるわけにはいかない……!!」
 ネムリアスはFR『アウトローS』に持ち替え、横に転がりながら起き上がる。
 片膝を立てた体勢で銃を構えた。
 体に纏う蒼焔が一層激しく燃え上がり、憎悪と憤怒のエネルギーが武器に収束される。
 OCSを撃った。
 爆発のように解き放たれたエネルギー弾は見事黒い人物に命中し、その体を蒼い業火で焼き尽くす。
 黒い人物は炎を上げながら、両の刃を落とし、がくりと地に膝を付けたのだった。

「やったか?」
 荒い息をつきネムリアスは立ち上がる。
 まだ警戒を解かず銃を構えたまま黒い人影に近付いた。
 だがもう戦う気配は感じられなかったので、ネムリアスも銃を収める。
 すると黒い人物はおもむろに起き上がり、ネムリアスの方へ顔を上げ、そのフードを後ろに払い除けた。

「!!!」

 そこにあったのは、ネムリアス自身の素顔だった。
「お前は……!」
 そしてネムリアスは全てを悟る。
 彼はヒーローになりたかった頃の、救われたから誰かを救いたいと願った自分だ。
 こちらの世界に転移して来たばかりの、記憶喪失だった頃の自分。
「そうか……」
 茫然とつぶやくネムリアスに、もう一人の自分が言った。
「犠牲を無駄にするなよ」
 彼は苦笑して、その姿が段々と透けていき……、やがて消えた。

 彼は自分に思い出させようとしていたのだろうか。
 修羅のように戦う自分は、復讐を果たそうと力を求めることに固執して、犠牲にしてきたたくさんのモノのことを忘れているのではないかと。
 そういうものと一緒に、記憶喪失だった頃の自分も忘れようとしていた。
「まだ、残ってたんだな……」
 己の心の片隅に。

 ――悪かったな。
 ネムリアスはかつての自分に謝罪の気持ちを抱くと、ふっと体が浮かぶような感覚になって――、
 夢から覚めたのだった。

 ネムリアスに、復讐ではなく素直に力を正しく使おうとしていた心と、たくさんの犠牲の上に今の自分があるのだという改めての決意を残して――。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご注文ありがとうございました!

今回はネムリアスさんの気持ちを拾うことを意識して書かせていただきました。ご満足いただけたら嬉しいです。
どこか解釈が違うとかイメージとズレている所などありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

またご縁がありましたら幸いです。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年02月14日

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