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『悲しみと虚しみと慟哭と 』
Luxio A Ortegala3943


「……」

 大切なものを隠すかのように何十にも厳重にロックされた扉を開くと、それは少しだけ軋むような声を上げた。

 Alteraの寝室でLuxio A Ortega(la3943)を出迎えたのは、たくさんの大好きなぬいぐるみと化粧道具、服、白くてふわふわなクッション、……そして大量の白い羽毛。

「今日から……おまえたちも、大切な家族……だよ」

 今日この部屋にやってきたぬいぐるみたちに埋もれるように、部屋の隅にLuxioは座り込んだ。

 ふわりとしたぬいぐるみの手触りを感じながら彼は小さく微笑むと部屋を見渡す。

「ぬいぐるみは……幾ら買っても、足りない……よね……」

 くま、うさぎ、ねこ、いぬ……この部屋には様々なぬいぐるみが彼の手によって招かれ、テーブルランプ程度の細い光に照らされている。

 暗く重い遮光カーテンに遮られ、光はこの部屋に入ることを許されない。

 日の光に照らされない彼らは、この部屋に来た時の色を今でも保っている。

 汚れたものを嫌う彼にとってやってきたままの色を保つ彼らは心のよりどころであった。

 ふと、抱きしめていたぬいぐるみを見ると、その視線の先には、無残にバラバラになった同胞の姿が写っていた。

「大丈夫……壊れても……ちゃんと愛してあげるよ……」

 無機質なぬいぐるみの視線に気が付いて、Luxioはそう頭を撫でる。

「愛……」

 砂をかむようにぎりと歯が軋む。

 分かっている。

 こんなものをいくら買っても、増やしても、この心にぽっかりと穴が開いたような感情が埋められるものではないことを。

 Luxioは知っている。

 この感情の名を。

 この感情の名は『   』

  ***

 あの時、あの可愛らしいヴァルキュリアと触れ合ったあの時、確かに少し埋まったような気がした。

 でも、この部屋に戻れば、安らぎとともにその感情も消えた。

 あんなもの幻想だったんだと、Luxioは思う。

 僕はこんなにも僕を愛しているのに。

 僕はこんなに僕に愛されているのに。

 どうして……。

 どうして……。

 傍らに置いたミルクを一口喉に流し込む。

「母さんですら……愛してくれなかった……」

 体の中にミルクの温かさが虚しさを連れてじんわりと広がっていく。

「どうして……」

 生まれた瞬間に死んだオレを母さんはどう思ったのだろう。

 光と陰をその身に抱いて、光と陰を失って生まれてきたオレを。

 ただ、貴方だけに愛されたかったのに。

 そしたら、この感情を抱かずに済んだかもしれないのに。

「どうして……」

 答えを求めるように近くにあった古いくまのぬいぐるみを色素のない指がもっと白くなるまで強くかき抱く。

 だが、ぬいぐるみは何も答えてはくれない。

「なんで……!」

 その指が、ぬいぐるみの身体に食い込んでいく。

 柔らかいからだが、歪にひしゃげ、中に詰め込まれていた羽毛が姿を現しても、ぬいぐるみは答えを語ってはくれない。

「……!!」

 もういいとばかりに、Luxioはぬいぐるみを引きちぎる。

「…………!!」

 脳裏に浮かぶのは母の姿。

 彼女の言葉。

 そんな姿を見たかったわけじゃない。

 そんな言葉を聞きたかったわけじゃない。

 ただ、ただ……!

 温かいものが彼の頬を伝わり落ちていく。

 これは何の涙だろう。

 そんなことを考える余裕すらないままに、彼の心は真っ黒に塗りつぶされていく。

 悲鳴とも、慟哭ともとれる声を上げながらLuxioは近くにあった古いぬいぐるみへ感情をぶつけることしか出来なかった。

 彼の背にあるのと同じ白い羽が部屋の中に舞う。

 こんな風に綺麗に羽を舞わせることができたら母は愛してくれただろうか。

 その答えを彼は持たない。

 いや、この部屋の誰もがその答えを持っていなかった。

 誰かが、答えを教えてくれたなら、この感情は少しでも透明度を保てただろうか。

 でも、もう遅い。

 ここに母はいない。

 ここには彼一人。

 彼の頭をなでてくれる人も、抱きしめてくれる人も、誰もいない。

 彼の感情を受け止めてくれるのは物言わぬ『彼ら』しかいない。

  ***

 鳥の声が遠くから聞こえる。

 忌々しい朝を告げる声だ。

 その声に我に返ったLuxioは、今日招き入れたぬいぐるみの中で一等抱き心地のいいものを抱きしめる。

 涙はまだ止まらない。

「母さん……」

 ぬいぐるみの手を取り慰めるように自分の頭を撫でる。

 それだけでも少し安らげるような気がした。

 誰かに撫でてもらえたらもっと心地いいんだろうか。

 そんなことを考えながら体を丸める。

 夢の中でだけでも母が愛してくれるようにと祈りながら。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 la3943 / Luxio A Ortega / ??? / 23歳(外見) / 愛を乞うケモノ 】
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年03月16日

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