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『ふたりはMUNAキュア☆ゼロ Back to the MUNAGE』
la3453)&A・Rla3033)&紅迅 斬華la2548)&月居 愁也la2983)&吉野 煌奏la3037)& フィノシュトラla0927)&ルシオラla3496)&加倉 一臣la2985)&仮森 仰雨la3605)&路傍の毒la3693


●アバンタイトル

 A long long time ago
 In a galaxy of MUNAGE
 So far, far away....


●タイトルコール

「ふたりはMUNAキュア☆ゼロ Back to the MUNAGE!」

 劇場版!
 帰ってきたMUNAキュア!
 MUNAヤバ! 今こそ全ての秘密が明かされる!?


●オープニング

 ちゃらっちゃっちゃ〜♪

 MUNA MUNA♪
 FUWA FUWA♪
 ふわっふわで もっふもーーピーッガガッ、ガッ、ザーーー……ブツッ

 突然の電波妨害により、歌が中断された。
 妨害の表現が古いのは仕方ない。
 その発信源は百年前の過去だったのだ。

 二番の歌詞が思い付かなかったとか、そんなんじゃない。
 ないってば。

『助けて MUNE-ONE 毛ノービ あなただけが頼り』

 オープニングをぶっちぎって届いたメッセージ。
 しかしそれはーー握り潰された。
「間違い電波ですね、これ」
 美爛堂の店主、吉野 煌奏(la3037)によって。
「この世界にそんな人いませんし、百年前の事件なんてどのみち手遅れですし」
 ぐしゃ。


●本編

 悪の組織ヴィランドーはひとまず壊滅したーーMUNAキュアもろとも。
 バイト怪人カリカリモリモリは、仮森 仰雨(la3605)としての自分を取り戻していた。
 バイトをやめて、正社員としてタクシー運転手に採用されたのだ。
 何故やめたかって?
「だって時給アップが消えたどころか請求書までこっち回されるとか、ないないアリエナイ」
 そうして順調に堅気の道を歩み始めた仰雨は、もう二度と「あの人たち」と関わることはないと考えていた。
「さらば青春、さらば若さゆえの過ち、ワタシはもう二度と道を踏み外さない」
 だがこの時すでに、運命の歯車は回り始めていたのだ。
 仰雨を巻き込み、MUNAキュアを巻き込み、時空さえも超えて。

「大変なのです!」
 最初に気付いたのはフィノシュトラ(la0927)ーーMUNAGEの妖精フィノっぴぃだった。
 過酷な戦いを終えて、もう全て終わった気になっていたMUNAキュア達を集め、告げる。
「世界からMUNAGEが消えているのです!」
 せーかいじゅーをぼーくらのーむなーげーでうめつーく……す筈だったのに。
 増える前に消えていく、いや増えるそばから刈られていく。
 そんなことが出来るのは、この世にただひとり。
「まさか……現れたのか、最凶の敵ドクシンザンカーが」
 A・R(la3033)ーーMUNAキュアアスハの声が震える。
 ドクシンザンカー、それは「MUNAGEは首☆」と称して全世界のMUNAGEを手当たり次第に刈り尽くし、一時はMUNAGEを絶滅寸前に追いやった恐ろしい魔王。
「だが彼女は百年前、初代MUNAキュアに敗れて封印された筈……」
「その筈、だったのです。世界線が変わる前は!」
 フィノっぴぃは言った。
「百年前、世界は初代MUNAキュアによって救われたのです。でも何かのきっかけで歴史が変わってしまった……初代MUNAキュアを育てたMUNAGEの妖精、MUNE-ONE毛ノービのもとに届くはずだったメッセージが、何者かの手で握り潰されてしまったのです!」
 その結果、百年前の世界に初代MUNAキュアは現れず、MUNAGEは刈り尽くされた。
「じゃあ今ここにあるMUNAGEは?」
 MUNAGEを愛おしそうに撫でながら、月居 愁也(la2983)ーーMUNAキュアシュウヤが尋ねる。
「俺たちのMUNAGEはどこから? シープから。それなら白のMUNAGEブロック……じゃなくて」
 シープは何故ドクシンザンカーに毛を刈られることなく生き残ったのか。
「この世界に、シープは存在しないのです」
「え、なに、どういうこと?」
 加倉 一臣(la2985)ーーMUNAキュアオミーが自分のMUNAGEを見る。
 シープが存在しないなら、このMUNAGEもまた存在しない筈。
「それは、あなた達がMUNAキュアだから、なのです」
 MUNAキュアは原初のMUNAGEパワーで世界の改変から庇護されているのだ。
 だから世界からMUNAGEが消えてもMUNAキュアは影響を受けない、MUNAキュアが持つMUNAGEも消えない。
「でも、それも限度があるのです。全ての元凶ドクシンザンカーを倒さなければ、いずれあなたたちのMUNAGEも消えてしまうのです」
 彼らが持つ3つの変身アイテムが、この世界に残された最後のMUNAGE。
 それが全て失われた時、世界からMUNAGEの概念が消え、MUNAキュアも消える。
「いや……正直、MANAGE消えても良くね?」
 一臣がそう言った途端、愁也の瞳から滂沱の涙が迸った。
「あっ、ごめん! そうだね、MUNAGEはアイデンティティーだもんね!」
 MUNAGEの消失より世間体の消失の方が早いとおじさんは思うーーえ、とっくに蒸発してる?
「だったら残されたMUNAGEは何が何でも死守しないと!」
「打倒、ドクシンザンカー!」
 溢れる涙をMUNAGEに吸わせ、愁也は拳を振り上げる。
「僕らの存在意義を守るために!」
 アスハが唱和した、その時。

「なんか呼ばれた気がしたので来ちゃいました、無敵のお姉さんです♪」
 魔王として覚醒した紅迅 斬華(la2548)ーードクシンザンカーが現れた!
「あらあら、随分と良い毛並みのMUNAGEをお持ちでーー」
 じゃきん!
 ドクシンザンカーが大鉈を構える。
「自分から飛び込んでくるとは好都合!」
「みんな、MUNAキュアに変身だ!」
「MUNAGEプリズムパワービルドアップ!」
 なお尺の都合と諸々の事情によりムービーは割愛させていただきます。
「むなきゅあ? むなきゅあってなんでしょ?」
 首を傾げるドクシンザンカー、しかし相手が何であろうともMUNAGEは首。
「全て刈り尽くして差し上げます♪」
 唸る大鉈、飛び散るMUNAGE!
「なんか敵強くね? 攻撃効いてなくね?」
「ザンカーちゃんは普通に可愛いのに一体なにがどうなっているんだ」
 慄くMUNAキュアシュウヤと苦悩顔のMUNAキュアオミー!
「物理がダメなら精神攻撃!」
 MUNAキュアシュウヤは捨て身の攻撃に出た。
「ドクシンザンカー? 唯一神って意味じゃなく独身だろ俺は詳s」
 彼の記憶はそこで途切れた。
「MUNAキュアアスハ! MUNAキュアシュウヤがやられた!」
「慌てるな、彼はMUNAキュアの中でも最弱ーーとは言え、ここは僕らに分が悪すぎるね」
 何と言ってもドクシンザンカーは若い。
 それに比べてーー
「前の戦いで壊れた老眼鏡、まだ直ってないんだ」
「なん……だって……!?」
 それではパワーが出ないのも当然だ。
 しかしドクシンザンカーは修理が終わるまで待ってはくれないだろう。
 危うしMUNAキュア!
 このままでは大事なMUNAGEが消えてしまう!
「ーー今は逃げるのです!」
 フィノっぴぃが叫んだ。
「ドクシンザンカーを倒すには、初代MUNAキュアの力が必要なのです!」
「初代は……若いのか?」
「ぴっちぴちなのです!」
「そうか。やはり、未来を切り開くのは我々老人(予定)ではなく若者の力が必要だ!」
「や、でも百年前は若者でも……」
 今は老人どころか存在を終えているかもしれないというMUNAキュアオミーの言葉に、フィノっぴぃは首を振る。
「だから、私達が過去に飛ぶのです!」
 今がダメなら過去から連れて来ちゃえば良いじゃない作戦だ。
 ひとまずドクシンザンカーから逃げるため、フィノっぴぃは妖精パワーでMUNAキュアたちを物理的に飛ばす!
「無事に逃げ切ったら、過去への移動手段は各自で用意するのです!」
 なお現地集合でお願いします。


「くわっ! これは強敵の気配かも!」
 鴨(la3453)は野生の勘で全てを察した。
「MUNAキュアたちがピンチかも! 助けに行くかも!」
 鴨は飛ぶ、MUNAキュアの気配を追って一直線にーーだが、途中でその気配が三つに分かれ、更に変身が解かれた!
「分裂したかも! 変身解除かも!」
 分断→孤立→変身解除=どう考えても状況は悪化している。
「どうするかも、誰を追いかけるかも!?」
 出来れば全員を助けたい、だが鴨の体はひとつしかない。
 こんな時は、最も助けを必要としている仲間のところへ颯爽と駆け付けるのがイカした追加戦士、カモだけど。
「月居さんが一番危ないかも! 急ぐかも!」
 だがその時、愁也の体力が全快した!
 そして鴨は気付いた、もう戦闘が終わっていることに。
「間に合わなかったかも!」
 いや……まだだ。
 まだ戦いは終わっていないと、鴨の野生が叫び続けている。
「聞こえるかも、どこか遠くで助けを求めてるかも!」
 それは遥かな昔、遠くMUNAGE銀河の片隅ーー
「そこに全ての謎を解き明かす鍵があるかも!」
 鴨は駅に走った。
 知ってる、電車に乗れば過去に行けるって、テレビで見た。
 しかし。
「くわー……」
 見知らぬ駅のベンチに、ひとりぽつんと佇む鴨。
「普通の電車は過去に行かないかも? なんとかライナーじゃないとだめかも? ここはどこかも、どうすればいいかもー!」
 売店で買った冷凍ミカンをしゃくしゃくしながら、鴨は考える。
「はっ! 過去に行く電車には特別なパスが必要だったかも!」
 そんなアイテムを用意出来る場所と言えばーー

「はい、こちら今回も素敵に無敵な何でも屋の煌奏さんです毎度御贔屓に♪」
 美爛堂の奥、秘密の部屋で煌奏は愁也からの電話を受ける。
「はい、回復アイテムですね? ご指定の場所に転送しておきます。ーーえ? 過去に行きたい? お安い御用ですとも!」
 移動手段は「車」「徒歩」「電車」「バス」がありますが。
「電車ですね、はい……チケットを三人分。乗車駅は各自の現在位置からの最寄駅になります。はい、確かに承りました、毎度ありがとうございます♪」
 お気をつけていってらっしゃーい。
 帰りの手段? さあ?
「向こうの私が何とかしますよね、きっと」
 通話を切って暫く後、今度は鴨から連絡が入った。
「ええ、お安い御用……ですが、あ、すみません公共交通機関なんで、バスと電車に動物はちょっと……」
 行くならレンタカーか徒歩ーーあ、車の運転は物理的に無理?
「でしたら徒歩一択ですが……お待ちください、今ならスケートボードがお得ですよ♪」
 はい商談成立、すぐに転送しますね!

「これに乗れば過去に行けるかも!」
 鴨は転送されたスケボーに颯爽と飛び乗り、付属の解説書に目を通す。
「くわくわ、まずは出来るだけスピードを出しましょう、時間旅行には少なくとも秒速30万kmが必要です……光の速さを超えるかも!」
 出来るか!

「とりあえず我々はMUNAGE消失の危機を解き明かすべく過去の奥地へと向かった」
 一臣はセルフナレーション付きで行動を開始した。
 その手に転送される謎のチケット。
「なるほど……」
 おもむろに駅で電車に乗り込む、が。
「あ、これ多分、反対方向じゃない!?」
 まさかの未来行きーーいや違う、これ普通の電車だ。
「もしもし煌奏ちゃん? チケットの再発行……出来ない、うん、知ってた」
 あ、代替手段なら用意出来る?
「じゃあタクシーで……え、次の駅ってもうドア開いてるし! ここのタクシー乗り場ね、わかったありがとう煌奏ちゃん!」
 慌てて降りると愁也とアスハに「少し遅れます、てへっ☆」と連絡を入れ、一臣は三人分の駅弁を手にタクシー乗り場へと急いだ。

「あれ、オミは?」
 駅のホームで電車を待つアスハに一臣からの一報が入る。
「え、駅弁買いに行ったら乗り過ごした? じゃなくて、間に合ったけど普通の電車だった?」
 それ普通に乗り間違えたって言わない?
「えっ加倉さん遅刻?」
「タクシーで来るって」
 愁也に報告すると、アスハは再び電話の向こうの一臣へ。
「領収書忘れないでね?」
「待ってそれだと経費で落ちないから自腹じゃね?」
「あー……」
『え、なに?』
「いや、何でもない。じゃあ気を付けて」
 通話を切ったアスハは、その会話にふと違和感を覚えた。
「僕達はいつから、これが経費で落ちると勘違いしてたんだ……」
 多分これ、後から個人宛で請求来るやつだ知ってる。
 時間旅行っていくらになるんだろう。

「さあ今日はどんなお客さんが来るかなー」
 駅前で客待ちをしていた仰雨は、改札からまっすぐに歩いてくる男に目を留めた。
(お客さんかな? お客さんだね? よーしお客さんだ!)
 ってどこかで見たことあるようなおじさんだね?
 その後ろからスケボーで走って来るあれは……カモ?
 うん、あれも見覚えある気がするね?
「へい! タクシー! ってあーーー! どこかで見た人たちかも!」
「あれ、鴨くんも電車逃したクチ?」
「鴨は! 鴨は乗車拒否されたかも! ひどいかも!」
 鴨はタクシーに乗れますか?
 乗れる?
「鴨もー鴨ものせてー!」
「よし、じゃあ割り勘で」
「やったー!」
 割り勘って何だか知らないけど、とりあえず冷凍ミカンおひとつどうぞ。
「あー、で、お客さんどちらまで?」
「過去までお願いします」
「はい?」
「過去まで」
「過去?」
「多分、何か最高速度で走ると行けると思います」
 だって映画で見たもん!
「あー……いや、ワタシは見たことないけどね、若いから!」
 でもわかるよ、あのデロなんとやら的な事をやれって事だね。
「オッケー任せておきなさいお客さん、道交法も風も置き去りにして君を時間の向こう側に連れて行ってあげるよ」
 じゃあまず滑走路並の長さがあって対向車とか来ない直線道路を探すね!
 北海道がいいかな!
 え、ちょっと里帰りも良いかもしれないと思ったけどそんな遠くまで行ってられない?
「じゃあ多少のカーブや対向車は気にしないことにするね!」
 シートベルトをきっちり締めて、いざ!
「おーきーどーきー、Hold on to your potatoes!」
 踏み込むアクセル、唸るエンジン、強烈なGで背中がシートに押し付けられる!
「見よ、この華麗なるドラテク!」
 客とブレーキの存在をほぼ忘れ、前を走る車を華麗に抜き去り、対向車は車体を横倒しにする勢いで傾けてやり過ごし、或いは飛び越え、時には壁を走り、サイレン響かせて追っかけてくるパトカーとワイルドなスピード的カーチェイスを繰り広げたのも束の間、標準搭載のニトロブーストが火を噴き最高速度の向こう側へ!
「来たぁぁ1.21ジゴワットぱぅわー! 行けぇぇ無限の彼方へーーー!」
 良い子はマネしないでね!
 マネしたくても出来ないと思うけど!
「着いたよ! ……ってお客さん、生きてる?」

 一方の愁也とアスハは一足先に過去世界へと降り立っていた。
「「いらっしゃい、無事に来られて何よりなのです!」」
 迎えに出たフィノっぴぃの声がダブって聞こえると思ったら、その姿もダブって見えたーー違う、フィノっぴぃが二人いる!
「過去の私と未来の私なのです」
 タイムパラドックス? そんなものは発生しない。
「あらゆる物理法則に影響を受けない、それがMUNAGEの妖精なのです」
 なお時間旅行も自前でやっちゃいました。
「今回は二人の私でサポート力も二倍なのです!」
 やらかし度といたずらも二倍だけどね!
 そこに惨状した暴走タクシー!
 え、字が違う?
 いいえ、間違ってません。
 それは後部座席をご覧になればご理解いただけるかと。
「オミ……駅弁だけは死守したんだな……」
 一臣が胸に抱えた駅弁をそっと引き抜き、アスハは目尻の雫を指で拭った。
「この駅弁、無駄にはしない」
 ……で、何しに来たんだっけ?
 そうそう、初代MUNAキュアを探しに来たんだった。

 ーー中略ーー

「MUNAキュア……? 過去からやって来た……?」
 初代MUNAキュア、ルシオラ(la3496)は記憶をなくしていた。
 いや、そもそもこのルートでは彼女がMUNAキュアになることはないーーMUNAキュアを導くMUNAGEの妖精、MUNE-ONE毛ノービと出会うことがなかったのだから。
 ルシオラは嫌悪と恐怖に哀れみの混じったような眼差しを向けると、近くにあった電話ボックスに駆け込んだ。
「もしもし警察ですかここに不審者がいます」
 そう、この時代はまだ電話ボックスが健在だったのだ。
「いや待って、ちょっと待ってルシオラちゃん」
 愁也は懸命に食い下がる。
「確かにこの世界ではルシオラちゃんがMUNAキュアになる線はないかもしれない。でも、世界はMUNAGEで繋がってるんだ! ルシオラちゃんにもきっとあるはず、MUNAGEを愛する心が!」
「ないです」
 即答。
 ごめんちょっと何言ってるかわからない。
 警察より病院の管轄かな、この事案。
「きっと……ない? 無理? じゃあもう片方から攻めますね」
 ひとまず引いた愁也は、一緒にいた路傍の毒(la3693)ーー鈴蘭にターゲットを変えた。
「はい? 僕達に何か……」
「ほら鈴蘭くんふわふわMUNAGEかっこよくない?」
 鈴蘭の目の前で揺れる魅惑のMUNAGE。
「ちょっと鈴蘭さんに何をするんですか、妙な沼に引き込まないでください」
 ルシオラがそれを取り上げようとするが、愁也はそれをさらりとかわして続ける。
「ルシオラちゃんとお揃いでつけたいよね?」
 ゆらゆら揺れるその動きはまるで催眠術のようでーー
「はっ……そうだ、僕達は妖精に! 妖精……」
「はい! MUNAGEの妖精はここにいるのです!」
 すかさず差し出される契約書。
 いつの間に文書化してたんだとか、そもそも契約書なんてあったっけ、というツッコミは却下だ。
 欲すれば在る、それが宇宙の真理。
「契約書はこれですねサインします!」
 特に読まずに判子ぱしーん!
「まいどあり、なのです!」
 そして鈴蘭はMUNAキュアにーーいや、MUNAGEの妖精になった!
「MUNAGE! なんて蠱惑的な響き! なんだかとても素晴らしい!! ……そう、僕達はMUNAGEの若き妖精スズラン!」
 新人にして既に伝説の初代MUNAキュアを導いた始まりの妖精、ここに爆誕!
 なんと、彼こそが後のMUNE-ONE毛ノービだったのだ!
「そうだったんですね! 僕達も知りませんでした!」
 多分誰も知らなかったと思います。
 そして円環は閉ざされた。
 もはやルシオラが初代MUNAキュアとなることは自明、必然、不可抗力。
 だが本人はまだ、その事実に気付いていない。
「ってなんで鈴蘭さんノリノリなんですか???? どうあがいても不審者ですよこの方たち……待って?? 嘘でしょ??? なんでこんなことに???」
「ピンチと聞いて颯爽と駆けつけたのですよ!!」
 誰のピンチか、そんなの知らない。
 でも心が叫びたがってるんだ。
「ルシオラさん、僕達と契約してMUNAGE少女になってよ!」
 MUNAGE少女。
 未だかつて、これほどのパワーワードがあっただろうか。
 ルシオラは悩んだ。
 悩んだ時点で敗北は確定だが、本人は以下略。
「さあ、この純白のMUNAGEを受け取るのです!!」
「……、…………、………………嫌です!!! ペアルックとしても嫌です!!!!!」
「そんなこと言わないでさ、ね、頼むよルシオラちゃん」
 揉み手せんばかりの勢いで迫る愁也。
「ちょっと胸元につけて『MUNAキュアチェンジ!』って叫んでみて? はい、せーの!」
「嫌です! 鈴蘭さんのお願いならまだしも、そんなどこからどう見ても胡散臭いチャラオジサマの頼みなんて……はっ!」
「ルシオラさん、僕達のお願いなら聞いてくれるんですね!」
 わーいやったー!
「では改めて……こちらをどうぞ、麗しの御方」
 ルシオラの足元に跪き、恭しくMUNAGEを差し出す妖精スズラン。
 完璧に退路を断たれたルシオラは覚悟を決めた、決めるしかなかった。
「……わかりました……」
 抵抗虚しく(MUNAGEだけに)嘆きながらも(MUNAGEだけに)、純白のふわふわに手を伸ばす。
「む、MUNAキュア、チェンジ!」
 ぺかーーーっ!

 フィーリンぐっど ノリで 満たしたい♪
 キミと フィーリンぐっど MUNAキュア〜♪

 挿入歌に乗せて、ルシオラはMUNAキュアに変身する!
 弾ける衣装、溢れる光!
「あの、すみませんフィノっぴぃさん! 僕達まだ新人なので、衣装デザインとかどんなのが良いかよくわからなくて……」
「わかりました、今回は私達がお手伝いするのです!」
 スズランと二人のフィノっぴぃがルシオラを囲み、MUNAGEステッキを振る!
 光に溢れすぎて何も見えないルシオラの裸身を舞い散るMUNAGEが取り囲み、くるくると渦を巻いた。
 やがてその渦が形を変えて、MUNAGEコスのパーツに変化する。
 もふもふの胸当て、羊毛が層をなすフリルのミニスカ、メガネはなんか未来的なゴーグルに、あと色々キラキラでピカピカで豪華なおしゃれドレスが出来上がり、仕上げに髪の色がピンクプラチナに!
「え、瞳ではなく髪が、ですか? あ、瞳も同じ色になるんですね……」
 ピンクは主役の色ですから!
 そう、今回の主役はルシオラだったのだ!
「ではここで名乗りをどうぞなのです!」
「な、名乗り……ですか。……MUNAキュアの……ルシオラと申します……」
「ルシオラさん、MUNAキュアはノリの戦士ですよ! もっとこう、思い切りよく!」
「恥ずかしがってたら本来のMUNAキュアパワーが出せないのです!」
 妖精達に畳み掛けられ、ルシオラは半ばーーいや、もう完全にヤケクソで叫んだ。
「ノリで世界を未来に開く、愛の戦士MUNAキュアるっしー!」
 花火どーん!
「あ、今のはサービスですので♪」
 いつの間にかそこにいた美爛堂店主、煌奏さん。
「え、燃やしっ子がなんでここに?」
「なんで、と言われましても。私元々ここの人間ですし」
 愁也の問いに、煌奏はしれっと答える。
 つまりこれは、この時代の煌奏ということか。
「百年前から美爛堂やってるの!? って、え、じゃあ俺らの知ってる煌奏ちゃんって歳いくーー(ボッ」
 愁也の記憶は再び途切れた。
「女性に年齢の話題はタブーですよ、ね、ルシオラさん……いえ、MUNAキュアるっしー!」
「何故そこでわたしに振るんですか鈴蘭さん、と言うか結局何をしに来たのですか、あなた方は」
 自称未来から来た御一行様に向き直るMUNAキュアるっしー。
「いや自称じゃない。僕達は……」
 あれ、何しに来たんだっけ。
 アスハは「ほら、あれだ、ここ、ここまで出かかってるんだけど」と、喉のあたりに手をやって考える。
「そうだ! 僕達は初代MUNAキュアに助けを求めに来たんだ! どうか未来のMUNAキュアに力をーー」
「あぁ!」
 妖精スズランが声を上げる。
「そうなんですね、あなた方が……変身してないから気が付きませんでした! 伝説のむなきゅあの3人ですよね話は良く伺っております!!」
 すごいなMUNAキュア、過去の世界でも伝説になってるぞ!
「ダンディ人妻のシュウヤさんに未亡人み溢れるアスハさん……あれ、出汁香るような和風美人のかつおみさんはいずこへ?」
「ああ、あいつなら……」
 その時、タクシーのドアが開いた。
「ここに、いるよ……!」
「オミ!? 駅弁に全てを託してひとり旅立ったはずでは」
「生きてるよ、みんなと一緒に駅弁を食うまで、俺は死なない……何があっても!」
 一臣は倒れ伏した愁也に歩み寄り、その体に駅弁をかざした。
「ほら、駅弁だよ。一緒に食べよう?」
 迸るヒーリングオーラは鰹出汁の香り。
「加倉さんありがとう! 駅弁いただきます!」
 愁也、復活!
 そして三人のMUNAキュアは仲良く並んで腰掛けて、膝に置いた駅弁を広げる。
「寝てたから状況よくわかんないけど、がんばえー」
「負けるな初代がんばえー」
「がんばえーMUNAキュアーがんばえー」
 駅弁もぐもぐ。
 え、何を応援してるのかって?
 だってほら、そこにーー

「MUNAGE刈るべし!」
 ドクシンザンカーが現れた!
「燃やしっ子に加えて魔王来てるけどおかしくね?」
 もぐもぐ。
「しかも魔王がダブって見えるよ、時間酔いかな?」
 もぐもぐ。
 いいえ、ドクシンザンカーは二人いるのです。
「私はこの世界のお姉さんです♪」
「私は未来で覚醒したお姉さんです♪ 同じ電車に乗ってたの、気が付きませんでしたか?」
 なんてこったい、連れて来ちゃったよ。
「二人同時に存在してもタイムパラドックスが起きないなんて、さすが魔王なのです」
 フィノっぴぃがちょっと悔しそうに呟いた。
 妖精だけの特権だと思っていたのに、ずるいーーいや、でも彼女達には自力で時間を渡ることは出来ない。
「私達の勝ちなのです」
 ここで二人を倒して封印すれば、未来に禍根は残らない。
「この時代で魔王を終わらせるのです! さあ、変身をーー」
「初代だけでよくない?」
「お弁当がまだ」
「老眼鏡壊れてるし」
 だが問答無用!
 三人はMUNAキュアに変身した!(強制
「香る鰹のフォルテッシモ、MUNAキュアオミー!」
「減らぬ! 萎まぬ! 爆発したって何度でも蘇るさ! 不滅のMUNAGE、MUNAキュアシュウヤ!」
「老眼鏡が本体です、MUNAキュアアスハ!」
 はい、花火どーー……え、これマジもんの爆発じゃない?
「MUNAキュアさんもザンカーさんも、毎度ありがとうございます。こちらほんのサービスです♪」
 MUNAGE燃えてない?
「大丈夫なのです!」
 過去と未来、二人のフィノっぴぃが力を合わせた結果、MUNAキュアはスーパーMUNAキュア2になった!
 ふりっふりもふもふな衣装は露出が当社比二倍!
 元々露出は少ないからどこが増えたのかわかりにくいけど、とにかく二倍!
 MUNAGEも二倍、燃えにくさも二倍、パワーも二倍、痛さ(精神)も二倍!
「さらなるパワーアップを得て、若い力も合わせて、強大な敵に打ち勝つのです!」
 だが二倍に増えたMUNAGEはドクシンザンカーの首刈りスピリットに火を点け、おまけにガソリン注いで燃え上がらせた!
「ふふふ、MUNAGEの刈り放題ですね♪」
「どっちの私が多く刈れるか競争です♪」
 なんか迷惑な勝負が始まった!
 二人のドクシンザンカーは大鉈を振り回し、MUNAGEを刈って刈って刈りまくる。
 怒涛の勢いに、MUNAキュア達は防戦一方ーーいや、防戦さえ出来ていない!
 出来ていないが、スーパーMUNAキュア2のMUNAGEは刈っても刈っても勝手に生えてくる無限MUNAGEだった。
「伊達にスーパーを名乗ってはいないのです!」
 刈っても枯れない無限MUNAGEは、ドクシンザンカーズの首刈り意欲を削ぐかと思われた。
 しかし!
「なんか飽きて来ましたね」
 達成感がないし、これ別にMUNAGEに限定しなくても良くないですか?
「面倒ですしもういいですよね?♪」
 よし、全部刈ろう。
 元から絶てば無限MUNAGEもただのMUNAGEだし。
「……ふんっ!」
 ドクシンザンカーズは全ての力を開放し、ありとあらゆるものを首と認識した!
「むなきゅあ覚悟、です♪」
 もう敵も味方もない、目に映るもの全てが首ーー自分自身さえ。
「あ、鴨さんにもらった冷凍ミカン食べる?」
「じゃあみんなで分けようか」
「いや、僕はお茶で……懐かしいよね、このポリ茶瓶」
 三人のMUNAキュアは現実逃避している!
「いくらMUNAキュアるっしーでも、一人では無理です……ここは僕達が!」
 妖精スズランは荒れ狂う大鉈×2の前に立ちはだかった!
「お美しい首刈りの方……達!! これから僕達とデートでもどうでしょうか」
 だが色気より首のドクシンザンカーズに効果はなかった。
 それよりもーー
「……鈴蘭さん、今……何と?」
「え?」
 MUNAキュアるっしーの背後に、どす黒いオーラが滲み出る!
「ふわあああルシオラさん! なぜ怒っているのですかルシオラさん!!」
「怒ってなど……いません!!!」
 渾身の一撃!
 拗らせた複雑な乙女心(無自覚)が全てを薙ぎ払う!
 三人のMUNAキュアも、二人のドクシンザンカーも、妖精スズランまでも。
「やはり新人研修なしでいきなり実戦投入は無謀だったのです」
 新人妖精は、フィノっぴぃのように咄嗟に飛んで逃げるという判断が出来なかったのだ。
「鈴蘭さん!? 大丈夫ですか! ……ああ、誰がこんな酷いことを……」
 あなたです。
 だがMUNAキュアるっしーに自覚はない、さすが拗らせた乙女。
 MUNAキュアるっしーは激怒した。
 必ずこの邪知暴虐のMUNAGEを除かなければならぬと決意した。
 そう、全てはMUNAGEのせいだ、全部MUNAGEが悪いんだ。
「え? ここでさらにドンと派手にいきたい? じゃあ燃やします? 燃やしましょうか?」
 安全地帯で眺めていた煌奏さんの、お伺いを立てる優しさ。
 だが燃やさないとは言ってない。
 煌奏さんの(数少ない良心の)半分は優しさで出来てます♪
 もう半分は何かって?
「それは冥土の土産をご所望ということでよろしいすね?」
 いいえ違います間違えました。
「では……着火♪」

 ドォン!

 あ、火薬も特盛サービスしておきましたので♪

 MUNAキュアは燃えた。
 ドクシンザンカーズも燃えた。
 妖精スズランは最後の力を振り絞ったMUNAキュアるっしーに守られた。
 妖精フィノっぴぃ達は例によって上空へ逃げた。

「……はっ! MUNAキュアのみんながまたしてもピンチかも!」
 鴨は目覚めた。
 後部座席のシート下から立ち上がり、荒廃した大地に立つ。
「鴨もかもきゅあにへんしんよー!」
 ネギスティックを振りかざし、謎のフィールドを展開!
「KAMOアクセス! KAMOン・ スピリット・オブ・ザ・MUNAGE!」
 鴨は自前のUMOUパワーで華麗に変身!
「胸に輝くもふもふダウン! 輝く尾羽は勇気のしるし! お鍋に入れてパワー百倍、KAMOキュアカモかも!」
 ーーで、敵はどこ?
「え? もう倒したかも?」
 倒したと言うか自滅したと言うか、なんかよくわかんないけど解決したよ、多分。
「もしかして遅刻かも?」
 その時、安全地帯から朗らかな声がした。
「おめでとうございます、あなたが今回の勝者です♪」
「かも?」
 ラストカモ・スタンディング。
 過程は問わない、最後までフィールドに立ち続けた者が勝者だ。
 何の? さあ?

 戦いは終わった。
「燃やしっ子に燃やされ魔王に刈られ、だが俺のMUNAGEエナジーは無限大!」
 何事もなかったように立ち上がる、こんがり焼けた愁也。
「悪は去った、MUNAGEも去った、だが生え変わるさ、何度でもな」
 とうとうフレームまで逝った老眼鏡を手に微笑むアスハ。
「よし、帰ったらみんなで鴨鍋しよう」
 鴨に熱い視線を送る一臣。
「鴨鍋! 良いですね鴨鍋!」
 鈴蘭もしれっと復活している。
「調理はお姉さんにお任せあれ♪」
 斬華はなんやかんやで改心したっぽい?

 めでたしめでたし。

「じゃ、そろそろ帰ります?」
「あっ、運転手さん待っててくれたんだ!」
 なんというサービス精神。
 え、なんか面白そうだから見てたら帰り損ねた?
 そういうことは黙ってようね。
 座席はもちろんトランクから屋根の上まで使って、乗せられるだけ乗せて元の時代に出発進行!
 乗せちゃいけない人達まで乗せちゃった気もするけど気にしない。

 かくして、世界は救われた。
 流れでうっかり現代に来ちゃった初代MUNAキュアはその力を使い果たし、属性反転してMUNAGEを滅ぼす存在となった。
 MUNAキュアオルタの誕生である。

 あれ、これ世界救われてなくない?
「いいえ、これで良いんですよ」
 美爛堂の奥で煌奏が微笑んだ。
「もうしばらく泳がしてあげましょう」
 争いがなくなったら商売になりませんから、ね♪


●エンドロール&特報

 現代に戻ったタクシー運転手、仰雨を待っていたのは違反切符だった。
 免停を食らった仰雨は再び悪に染まる。
 そして起こった悲劇とは!?

 映画MUNAキュア第三弾、鋭意製作中!?
 続報をお楽しみに!



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グロリアスドライヴ
2020年03月19日

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