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『微睡むほどに穏やかな』
周太郎・A・ペンドラゴンla0062)&カペラla0637

「カペラ、今日時間あるか?」

 そう、周太郎・A・ペンドラゴン(la0062)にカペラ(la0637)が声をかけられたのは、日差しの温かくなってきたある日のことだった。

「今日? 空いてるよ?」

 自室の日向で読んでいた本をぱたんと閉じてカペラは頷く。

「じゃあ、この間お前が言ってた場所、行ってみないか?」

「この間……あぁ、うん。いいよ。すぐ準備する」

  ***

 2人がやってきたのは、彼女たちが拠点としているホテルからほど近い、海の見える小さな公園だった。

 数日前、ホテルの皆で花見をしようかという話が出た際にカペラが薦めたのがこの公園だったのだ。

「この間、散歩してた時に見つけてさ、ここなら人もそんなにいないしいいかなって」

 なるほど、と周太郎は辺りを見渡す。

 相当の穴場なのか人の姿はまばらで静かな場所だ。

 ここなら、大人数で多少騒いでも迷惑にはならないだろう。

 それに、

「桜も結構多いしいいんじゃないか」

「よかった」

 そんなことを話しつつ2人は大きな桜の木の下に腰を下ろす。

 見上げた木の枝には大きく膨らんだ蕾がまだ多く、3分咲きといったところだった。

「この感じなら次の週末には満開かな」

「だろうな」

「じゃあ、週末は空けておかないとだね。周太郎は大丈夫?」

「あぁ。この間大規模作戦あったばっかで、依頼も入ってないしな。お前、バイトは大丈夫か?」

 そう答える周太郎に、あ、という顔をしてカペラはスマホに目を落とす。

「……うん、土曜なら大丈夫そう」

「じゃあ、土曜にするか」

「あ、でも、みんなが日曜がいいなら私抜きでも全然いいよ?」

「気にするな。お前が見つけた場所だろ。俺が場所取りしたら誰が案内してくるんだ?」

「まあ、それはそうだけど……周太郎が場所取りするの?」

「他の連中にやらせるわけにもいかないしな。人がいないって言ったって場所はとっておいた方がいいだろうし」

 ホテルの中心人物が場所取りというのもどうかと思ったが、彼なりに気を使っているのだろうとカペラは口をつむぐ。

「……にしてもいい天気だな」

 風はほとんどなく、日差しは柔らかい。

 大きく伸びをする彼にクスリとカペラは笑って自分の膝をポンポンと叩く。

「今なら先着1名で膝空いてるよ」

「いいのか?」

「絶好のお昼寝日和だからね。それに、いつも周太郎頑張ってるから、特別」

「そうか? そんなに頑張ってないけどなぁ」

「じゃあ、いらない?」

「それとこれとは……」

 周太郎は首を振ってカペラの膝に頭をのせる。

「話が別だな」

 カペラの細い指がそっと周太郎の髪におりてきた。

「周太郎の髪ってサラサラだよね。なんか手入れとかしてるの?」

「いや、特にはしてないな」

「いいなぁ。うらやましい」

「カペラの髪だってそうだろ?」

 肩から下がる黒髪に触れながら周太郎は彼女を見上げる。

「私はそこそこに手入れしてるの。女の人にそういうのよくないよ?」

 少しむくれたように言うカペラ。

「そういうもんか?」

「そうだよ。みんな、なんやかんや努力してるんだろうからね」

 そう言われて周太郎はホテルの面々を思い浮かべる。

(努力……なぁ)

 そうは思えない相手や、彼女の言う方面とは別の方向に努力しているだろう相手の顔がすぐに思い浮かんでしまって、つい何とも言えない顔になってしまう。

「まあ、そういうんじゃない人もいるだろうけど……」

 カペラも同じことを思ったのか訂正の声がかかった。

  ***

 ゆっくりと交わされる雑談。

 温かい日差し。

 髪を撫でる手は時折静かに吹く風も相まって心地よく、いつの間にか周太郎はうつらうつらとし始めていた。

「眠い?」

「ん……いや……」

「いいよ。少し寝な? 暫くしたら起こすから」

「ん。悪いな……」

 それだけ答え、周太郎は眠りへと落ちていった。

  ***

「太郎……周太郎」

「ん……」

「おはよう」

 カペラの声に周太郎が目を覚ます。

「そろそろお昼の時間だよ。帰ろう」

「もうそんな時間か」

 ほんの少しだけ寝るつもりだったが、結構寝てしまったと周太郎は体を起こす。

「寝心地はどうだった?」

「ん、ちょうどよかった。ありがとな」

「どういたしまして」

「俺が寝てる間、暇じゃなかったか?」

「大丈夫。本、持ってきてたから」

 用意周到なことだと一瞬思ってから、この少女はいつも本を持ち歩いているんだったと思い直す。

「今日のお昼、なんだろうね」

「あー、なんだろうな」

 どんなメニューにせよ美味しいことは間違いないだろう昼食に思いをはせながら、立ち上がり歩き出す周太郎は、ふと後ろを振り返った。

 隣を歩くはずのカペラが付いてこないのだ。

「どうした?」

「ちょっと待って……足、痺れた……」

「大丈夫か? 無理しなくてよかったんだぞ?」

「こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。すぐよくなるから、ちょっと待って」

「今度2人で来た時は俺が膝枕してやるな」

「なんで?」

 痺れに耐えながらカペラが首をかしげる。

「俺、そういうの強いから」

「もぅ。私だって強い方なんだからね」

 からかうような口調で言われたカペラが口を尖らせむぅ、と声を上げる。

「冗談、冗談。もう大丈夫か?」

 笑いながら周太郎は手を差し伸べる。

「うん、ありがとう」

 その手を取ってカペラは立ち上がるとその手をぎゅっと繋いだまま歩き出した。

「このままか?」

 別に構わないけど。と続ける周太郎にカペラは笑顔で頷く。

「デートなんだからいいでしょ?」

(デート、なぁ)

 そう言われればデートのつもりで誘ったんだったと今更ながらに思いつつ、彼女の隣を歩いていくのだった。





━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【 la0062 / 周太郎・A・ペンドラゴン / 男性 / 26歳(外見) / 安らかな微睡 】

【 la0637 / カペラ / 女性 / 15歳(外見) / 穏やかなひととき 】
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年04月07日

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