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『明日を掴む弾丸』
レオーネ・ティラトーレka7249


 巨大歪虚発生の知らせを受けて、猟撃士のレオーネ・ティラトーレ(ka7249)を始めとしたハンターたちはオフィスに集合した。二足歩行のドラゴン型をしたそれは火を吹いて辺りを焼き払うと言う。
「陽動が必要ですね」
 と、言ったのは機導師のマシュー・アーミテイジだった。職員のC.J.(kz0273)に、
「CJ、ユニットの持ち込みは」
「オッケー。CAMでも幻獣でも連れて行ってくれ。早々にぶちのめしてほしい」
「では自分はヘリで出ます」
 レオーネはそれを聞くと、縁のあるハンターを見た。
「この前みたいなのはごめんだぜ?」
「自分だってごめんですよ」
 先日、自由都市同盟の平原に出た、同じような巨大歪虚と相対したとき、マシューはヘリを落とされた。脱出の時によりによってプロペラで背中を切るという悪夢みたいな事故まで起きている。戦闘が終わってから、レオーネが慌てて駆け寄ったのをマシューはちゃんと覚えていた。
「距離取ってね」
 C.J.も控え目に忠告する。
「今回は戦力に余裕がありますから。行きましょう」
「信じる」
 レオーネはヘルメットを持ってマシューと一緒にオフィスを出た。


 レオーネとマシュー合わせて総勢二十五名のハンターがかり出された。今回のレオーネはヴィルジーリオ(kz0278)が運転するバイクのサイドカーに乗ってライフルを構えている。
「ヴィオ、出してくれ」
「了解、発進します」
 ヴィルジーリオは魔術師だが、発動媒体は指輪にしているので大きな杖を担ぐ必要もない。
「私は皆さんが思ってるより器用なんですよ」
「器用なのは指輪じゃないの?」
 というやりとりがC.J.とされていたが、レオーネは聞こえないフリをしていた。

 魔導ヘリコプターが回転翼の音を轟かせながら上空を飛んでいる。機銃は装填数が多いものを積んでおり、装甲よりも機動力を優先している。それを聞いた時、レオーネは一瞬だけ顔をしかめた。君、また落ちるぞ。縁起が悪いので言わなかったが、代わりに、
「マシュー、射程が不明だ。陽動も良いが、あまり先走って近寄らないでくれ」
『了解しました。各員に伝達。機銃で陽動します。射程が判明次第接近、攻撃行動を行なってください』
「了解」
 機銃が火を吹いた。命中する。歪虚は当然反撃したが、マシューは先を読んで操縦桿を引いていた。炎がヘリの下を舐めるように炙っていく。
「マシュー、射程は?」
『足ります! 引き続き陽動しますので攻撃をお願いします!』
 ヘリコプターは後退して銃撃を続けた。
「ヴィオ、接近してくれ」
「お任せを」
 ヴィルジーリオがバイクを加速させる。レオーネはライフルのスコープを覗いた。竜の頭を狙う。着弾と同時に燃え上がる特殊な弾丸を装填していた。ヒットするとよく目立った。着弾点と反応から、どこに当たれば有効かがわかりやすい。
『巻き込みスキル使用者は二十秒後に一斉攻撃!』
 接近攻撃するチームからの連絡が入った。言うまでもなく、ヴィルジーリオもその内の一人である。
「飛ばしますよ」
「お手柔らかに」
 そして二十秒後、一斉攻撃が行なわれた。敵と味方を区別して攻撃できないスキルを使用するのだ。ほとんどが爆破に似た攻撃で、サイドカーから見上げたヴィルジーリオはどこか張り切っているように見える。大人しそうな顔をしておきながら、派手な攻撃を好むのだ、この友人は。
『反撃くるぞ! 退避!』
『機銃試します!』
 空から銃撃。歪虚がそれに気を取られている間に、ヴィルジーリオを含めたハンターたちは一斉に離れた。接近攻撃チームとすれ違う。レオーネは歪虚の反応と、ヘリとの距離を目視で測っていた。
「陽動の効果あり! 戦略的に後方を維持してくれ」
『了解』
 無線から聞こえるマシューの声はどこか笑っているように聞こえる。
「あの人、そんな無茶するようには見えなかったんですけど……」
 ヴィルジーリオがぼそりと言った。レオーネは弾丸を装填しながら、
「本人はな」
 それ以上は言わなかった。言う暇がなかったのもあるが。
 レオーネは、ヴィルジーリオもマシューも、いざと言う時に無茶をするタイプだと思っている。けれど理由が違う。ヴィルジーリオは性格だ。ここと言う時に「殴りたい」と思って殴りに行く。
 マシューは「やらねば」と思って殴りに行く。それは、レオーネにはよくわかった。自分が状況の一部になる。感情的にやりたくてもやりたくなくても、状況に応じて行動する。
(少し長くなるかな)
 けれど、周囲に人家もない。ヘリコプター一機とハンター一人を犠牲にしてまで短期決戦にする必要はない。だいたい、陽動のマシューがいなくなったら今の陣形を維持できる保証もない。
『ヘリ! 気を付けて! 尻尾が来るぞ』
『了解! 退避します』
 尻尾が大きく振るわれた。ヘリコプターの速度はレオーネからしたもどかしくも見える。けれど、頭の中にいる冷静な自分はやることをわかっている。
「ヴィオ!」
 合図と同時にライフルを向けて、それに向かって妨害射撃を試みる。彼が発砲してから、ヴィルジーリオが大袈裟にハンドルを切って加速した。歪虚の視線がこちらに向く。
「注意は惹きました。接近チーム、お願いします。レオ、もう一発お見舞いできます?」
「ああ」
 言われるまでもなく、レオーネは既に狙いを付けていた。祈りを込めた白い弾丸が、ライフルの中で出番を待っている。
 スコープの中で、竜の瞳と視線が合った。金色の瞳。
 レオーネの明るい青の瞳が細められた。
 引き金を絞る。弾丸の軌跡が白い尾を引いている。長いようで一瞬だった。歪虚の目を貫く。
 雄叫びが上がった。めちゃくちゃに振り回される腕を、尾を、接近チームはかいくぐって攻撃を加える。マシューが機銃から、威力の高い砲に変えた。
『もう陽動は良いですよね』
「マシュー……」
 レオーネは思わず笑った。
「ああ、良いと思う」
『追撃します』
 全員が了解を伝えると、マシューは躊躇わずに至近距離から銃撃した。
 頭部に炸裂する。決着が見え始めた。
「ヴィオ、畳み掛けるぞ」
「よーし、ぶっ飛ばします」
 ヴィルジーリオの手元から火球が飛んだ。レオーネも手持ちの弾丸を装填して発砲する。着弾と同時に電撃が走った。


 決着はほどなくしてついた。ヘリコプターが着地する。ヴィルジーリオがバイクで傍に寄った。マシューは降りて来ると、レオーネに歯を見せて笑い、
「おかげ様で、今回は無事に済みましたよ」
「ひやりとはしたけどな」
 点呼を取って、無事を確認し、オフィスへの帰還準備を始める。ほとんどが軽傷だった。酷くて中傷。レオーネもマシューもほぼ無傷だ。
「ヘリで戻るよな」
「ええ、そのつもりです。また後ほど」
「ああ、また後で」
 挨拶をして、レオーネはヴィルジーリオのサイドカーに乗り込んだ。魔導ヘリコプターの回転翼が動き出す。
「ヘルメット良いですか? 発進しますね」
 ヴィルジーリオの言葉に頷くと、バイクはエンジン音を立てて出発した。戦闘中と違う、のんびりした走り方。ヘリコプターのプロペラ音も、心なしか穏やかだ。
 終わったのだ。
 そう思って、レオーネはサイドカーで深い息を吐いた。ライフルを抱える。
 弾丸で掴んだ、少し先の未来。そこに帰り着くまで、少しだけ休むとしよう。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
おまかせなのを良いことにゴリゴリ書いて、気が付いたら戦闘シナリオのリプレイもどきになってました。戦闘ショート1名です。
呼び方については悩んだんですが、今回は呼び捨てで書かせていただきました。
ヴィル司とはプライベートな部分で親しくて、マシューとはビジネス的な部分で親しいと勝手に思っています。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
おまかせノベル -
三田村 薫 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2020年04月14日

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