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『ハーレム王と鬼の疫病神』
時音 ざくろka1250

 交易に関する要件で東方から王都にやってきた時音 ざくろ(ka1250)の前に長身の女性が姿を現した。
 際どい服装に豊満な胸。そして、頭には尖った短い角が二本。それが鬼である事は、東方に自領を持つざくろは、すぐに理解できた。
「よォ。アタシはアカシラ。おまえが東方の一領主だって聞いて頼みがある」
 その名をざくろは聞いた事があった。
 鬼の疫病神アカシラ(kz0146)。東方を追われ、王国の庇護下に入った後、歪虚との戦いで活躍し、王国騎士団赤の隊の元隊長だ。
「確かにざくろは、東方で拝領を受けているけど……何か?」
「そんな警戒する事の程じゃねェ」
 ずんずんとパーソナルスペースに入ってくるアカシラ。無自覚なのだろうが、その豊満な胸の存在感はざくろにとっては脅威だ。
「……と、言うと?」
「アタシの仲間に東方に残っている集落がある。土地が痩せているからか生活が大変でさ、おまえの所に組み込んでやって欲しい」
 ざくろが治める領地は、新興領の中でも劇的に発展している。
 集落を受け入れる事自体は特に問題はない。
「大丈夫だけど……」
「無論、タダとは言わないぜェ。アタシに出来る事があれば何でも言いなァ!」
 ドンと力強く胸を張り、巨大な二つの頂が豪快に揺れる。
 何でも――という事は“そういう事”でも良いとも受け取れ、ざくろは思わず音を立てて生唾を飲み込んだ。
 いやいやいや! とざくろは首をブンブンと振った。
 これ以上、嫁を増やしてしまったら、それこそ、国に残してきた嫁達に怒られる。
「そ、それじゃ……討伐依頼をお願いしていいかな。なんでも、強力な憤怒歪虚の残党がいるって」
「あの地には戻らねェつもりだったが、依頼じゃ仕方ねェ。行ってやるよォ!」
 そんな訳で、ざくろはアカシラを伴って、東方の地に帰るのであった。


 ざくろ領からほど近い場所に、小さな山があった。
 アカシラに場所を案内しながら、ざくろは状況を説明する。
「……そんな訳で、どうせ動けないのならって放置されていたんだけど、流石に、もう討伐した方が良いって話で」
「山と融合する歪虚とか、とんだ間抜けだァ。そいつをぶっ殺すれば、山一帯を領土にできるってのは魅力的だぜェ」
「温泉が出るからね。鉱石の類もあるって話だし」
 どうしても視線が胸に向いてしまいそうで、ざくろは誤魔化すように山を凝視しながら話をする。
 これはもう男としての宿命みたいなものだ。一方のアカシラはざくろの苦労など知る由はない。
「ところで、アカシラの言う“集落”って、やっぱり、鬼の集落なのかな?」
「あァ。ちょっと“特殊”だけど、まァ、おまえなら問題ないぜェ」
 どう特殊で問題ないのか、気になる所ではあるが、今更、改めて聞くのも躊躇う所だ。
 それに負のマテリアルの汚染が残る東方の地で、汚染に強い鬼が仲間になるのは心強い。多少の“特殊”は気になるレベルではないだろうとざくろは自分に言い聞かせた。
「あれか……確かに強大だなァ」
 アカシラはニヤリと笑うと長大な太刀を抜いた。
 山の頂上付近から先が巨大な半身の猪となっており、怒り狂ったように脚を振り回している。飛び散った唾は、溶岩のように熱く、一帯を灼熱地獄にさせていた。
「もしかして、知り合いとか?」
「知らん。憤怒にも色々あるからよォ」
「だったら、ざくろも遠慮なく行くよ!」
 覚醒状態に入るとマテリアルを集中させるざくろ。
 山のように巨大でも、相手が歪虚である以上、やるべき事は変わらない。
 攻撃を繰り返し、負のマテリアルを消滅させればいいだけの事だ。
 一足先に駆け出したアカシラを援護するように、魔導剣の先から、輝く三角形を形成すると、各頂点から光が迸った。
「懐に入り込むよ!」
「言われるまでもねェ!」
 ざくろの援護を受けたアカシラが太刀を振り回しつつ、歪虚の根元へと踏み込んでいく。
 流石、元赤の隊隊長というだけはある。アカシラの見事な動きを観察しながら、ざくろも後に続く。
「確かに凄いけど……」
 四方からの攻撃に対して全方位に太刀を振るって攻防を兼ねているアカシラだが、肝心となる歪虚本体への攻撃には、なかなか届かない。
 その時、歪虚が持ち上げた頭を狙い定めずに落とした。激しい衝撃で揺れる大地に二人とも足を取られ、アカシラがざくろに覆い被さるように倒れる。
「ッチ。すまん!」
「だ、大丈夫だからっ!」
 豊満な胸に埋もれながらざくろは返事をした。こんな時でも、ラキスケの神は容赦ない。腕を大地に突き出した反動で起き上がったアカシラのおかげで、なんとか柔らかい谷間から脱したざくろ。
 だが、おかげで、この窮地を脱するアイデアが閃いていた。
「ざくろがやるよ」
 踵からマテリアルを放出しながら一気に距離を詰めると、ざくろは意識を集中させる。
 歪虚から鋭い一撃が振り下ろされたが気にも留めない。ギリギリの所で避けると、機導術を発動させた。
「山と繋がる事で、山から無尽蔵にマテリアルを吸い続けているのだろうけど、これは防げないはず!」
 不可思議な力を持つマテリアルのオーラがざくろを中心に急速に広がっていく。
 絶対占有――ポゼッション――の効果は、敵を強制移動させる。歪虚は負のマテリアルで形成されており、自然のものと融合はできない。半分自然で半分歪虚はあり得ないのだ。
 つまり、明確な境界線が存在し、術の効果範囲よりも敵が小さければ……。
「流石、ハーレム王と呼ばれるだけはあるなァ!」
 そう褒めたアカシラの視界に、山の頂上から切り離された歪虚が映った。
 後は、歪虚を切り刻むだけだ。嬉々として跳ぶ鬼の戦士。
「あんまり嬉しくない言葉だよ」
 苦笑を浮かべながら、ざくろは魔導剣を最上段に構えて、高くジャンプした。
 手から柄を通して刀身にマテリアルを集わせる。
「必殺! 超重飛翔魔剣!」
 高い位置から機導術の力で巨大化した魔導剣を振り下ろすと、歪虚の体は真っ二つに割れるのであった。


 憤怒歪虚の残党を打ち倒した後、ざくろはアカシラの紹介で鬼の集落へとやって来た。
 アカシラ本人は東方の地に居たくないのか、さっさと西方へ帰ってしまったので、ざくろが一人で向かう。
「確かに、土地が痩せている……早く、ざくろ達がなんとかしないと」
 使命感に燃えてざくろは意気揚々と集落に入る。
 ハーレム王だの、出掛けては嫁を貰ってくるだの、今回ばかりは、もう言われないだろう。
 嫁達に誇らしく凱旋できると内心、ホッとしながら、ざくろは宣言した。
「新しい領主となった時音 ざくろ(ka1250)だよ! みんなの生活は、ざくろが絶対に守るから!」
 その声を聞いて、集落の家々から人々が出てきた。
 まずは鬼の幼い女の子、次に出てきたのは、鬼の若い女の子や鬼の娘、ざくろよりも年上な鬼の女性……。
 彼女らは目を輝かせてざくろを文字通り囲う。
「……え? これって、まさか……」
 その集落が、女性しか生まれない特殊な鬼の集落だったと知る事が出来たのは、朝廷から併合を正式に認める旨が彼の元に届いた後の事であった。
 なお、嫁達からは『ざくろだから仕方ない。国ごと貰って来なかった分、マシ』と前向きに認めてくれたそうな。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ざくろ様といえば、らきすけ。アカシラは設定上は扱いやすい(?)キャラでありますので、珍しい組み合わせだなと思いつつ、話の流れ的には適任だったのかなと思っています。
本編では直接の関わりは無かった二人だとは思いますが(調べきれてなかったらすみません!)、これはこれでアリだな〜と。
実はオチから構成練ったノベルですと宣言しておきますね!


この度は、ご依頼の程、ありがとうございました!
おまかせノベル -
赤山優牙 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2020年04月20日

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