▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『一つの考えとして』
ファラーシャla3300

「お疲れさまでした」

「お疲れさまでした。すみません、私また前に出てしまって……」

 ナイトメアを無事倒し終わってファラーシャ(la3300)は参加者に頭を下げる。

「あぁ、全然。むしろ前で戦ってもらえて助かりました」

「でも、私、セイントなのに……」

 そういう参加者にファラーシャは眉を下げる。

 両親が前衛系の戦い方をしていたためか、気を抜くと前衛に出てしまう癖を彼女は気にしていた。

 後衛として補助や回復に専念しようと思っても体が前に出て行ってしまう。

「そんなに気にしなくてもいいと思いますよ」

「そうですか……?」

「はい、別に1人で突っ走ってたわけじゃないですし、ファラーシャさんが隙を作ってくれたおかげでだいぶ楽に倒せましたし」

「それならいいんですが……」

 参加者の女性の言葉にもファラーシャの下がった眉は上がらない。

「……そうだ、ちょっとお茶しません?」

 その様子に女性は彼女を本部近くのカフェへ誘うのだった。

  ***

「ファラーシャさんはセイントだから後衛にいた方がいいと思ってるんですか?」

 注文したものを持ち、席に着くと女性がそう切り出した。

「そう、いうわけではないんですが……」

 ファラーシャは少し考えてから口を開いた。

「両親が戦闘で傷ついて帰ってきても私には何もできなくて……。だから、この世界に来た時癒しの力があるとわかって嬉しかったんです。戦いで誰かが傷ついてもを癒せるんだって……」

 だが、前に出てしまってはそれもままならない。

「そっかぁ。私、思うんですけど」

 話を聞いていた女性が首をかしげる。

「前衛には前衛なりの回復とか支援ってできると思うんですよね」

「どういうことですか?」

「えっと、例えば、攻撃力の高い近接系の味方が敵に狙われてるとするじゃないですか。勿論、そういう人は前にいますよね」

「そう、ですね」

「でも、セイントのヒールとかが範囲的に使えない場合もあるじゃないですか」

「はい、でもそういう時のためにセイントにはロングヒールが……」

「そうなんですけど、ロングヒールって回数が多いわけじゃないじゃないですか。それに、そういう人が何人もいると手が回らないし。だから、前衛で回復できるっていうのは強みだと思うんですよね」

「確かに」

 各スキルには俗にいう回数制限というものがある。

 でも、攻撃と回復は同時には行えない。

「ファラーシャさんには戦況を冷静に見れる目があると私は思うんですよね」

「そうでしょうか」

「ファラーシャさんの戦い方って相手の死角をついたり、移動手段を狙ったりする、なんていうか搦め手系じゃないですか」

「はい」

 それは、両親の戦い方を見て彼女の中に自然に身についた戦い方だ。

「それって、誰にでもできる戦い方じゃないと思うんですよね。私は敵を見つけたらとりあえず殴ってこっちが動けなくなる前に相手が倒れればいいって感じですし」

 確かに、先の戦闘で彼女はそのような戦い方をしていたなとファラーシャは思い出す。

「搦め手系って戦況とか敵をよく観察してないとできないことだと思うんですよ。だから、敵の立場で考えることもできると思うんですよね」

「敵の立場で考える?」

 その考えはあまりファラーシャの中になかった考え方だった。

「うーんと、さっきの攻撃力の高い味方を狙ってくるってことはその人がいると邪魔ってことになるじゃないですか。その人が回復されてなかなか倒れないのって敵からしたら凄く嫌なことだと思うんです。そしたら敵はどうすると思いますか?」

「その回復者を攻撃するんじゃないでしょうか」

「その人が後衛だと、後衛にも被害がいっちゃうんで、そのヒーラーにファラーシャさんがなればなればいいんじゃないかなって……伝わるかな?」

 言葉を選びながら一生懸命伝えようとする相手を、ファラーシャ好ましく思いながら彼女の意見を整理する。

(彼女のいう通り、回復者に攻撃が集中すれば攻撃力の高い味方から注意もそれてそこに隙もできるかもしれない。それが後衛の味方になってしまうと、前衛の味方の動きは1呼吸遅れてしまうし、後衛にも被害が出る。前衛に回復者がいれば、そのまま他の味方は攻撃が出来るし、回復者はそのまま自分を回復することもできる。それに、後衛のヒールを温存することができる。その方が戦闘継続力は高いまま維持できる)

 少し強引かもしれないが、理にはかなっているように思った。

  ***

「今日はありがとうございました」

「いえ、いろいろ言っちゃったんですけど、セイントだから後衛、っていう考え方も私はありだと思うし、最終的にはファラーシャさんがやりたいようにやればいいと思ってるんで。そこは誤解しないでくださいね」

 帰り際、女性はそう頭を下げて帰っていった。

 色々な考え方や戦術があるんだな、と彼女を見送りながらファラーシャは思う。

(もっと柔軟に考えてもいいかもしれない)

「もっといろんな人の戦い方を勉強してみよう」

 ファラーシャはそう呟いて、戦闘の記録を見るために、本部へと戻っていくのだった。




━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【 la3300 / ファラーシャ / 女性 / 17歳(外見) / 様々な戦い方を 】
おまかせノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年04月22日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.