▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『思いを力に変えて』
白野 飛鳥la3468

 両親が死んだ。

 葬式は親近者だけでつつましく行われたが、この時、白野 飛鳥(la3468)はまだ幼く、そのことを理解できずにいた。

「可哀そうに……」

「こんな小さな子を残して……」

 葬式の後、近所の大人たちがそんなことを言いながら飛鳥に同情的な視線を送るのを不思議に思いながら両親はどこだろうと思っていた。

 会場を探しても、家を探しても、近所を探してもどこにもいない。

 がらんとした家の中にいるのは母によく似た女性だけ。

「ねえ、叔母さん。お父さんとお母さんは?」

 その女性を飛鳥は叔母さんと呼んでいた。

 母と仲の良かった、その女性なら何か知っているだろうとそう尋ねると女性は優しく微笑み、

「2人にはもう会えないんですよ」

 そう抱きしめてくれた。

 その微笑みが、彼女から漂う香りが母とそっくりで、ひどく安心したと同時に寂しくなったのを覚えている。

「どうして?」

「そうですねぇ。とても遠いところへ行ってしまったんですよ」

「じゃあ、僕も行く!」

「そういうことを言っちゃいけません、ご両親が哀しみますので」

「どうして?」

 言葉の意味も分からず、そう言う飛鳥にひどく優しく頭をなでる。

「飛鳥さんはこれから私と一緒に住むんですよ」

「叔母さんと? うん、いいよ」

 叔母の家には、両親の留守中、よく遊びに行ったり泊まりに行ったりしていた飛鳥は、事情も分からないまま頷いた。

  ***

「……俺は、あんたのような人間を許せない」

「も、持ってる力を……じ、自分のために使って何が悪いって言うんだよぉ!」

 飛鳥に追い詰められたレヴェルが息も絶え絶えに吠えた。

『飛鳥さんの親は力を悪用する方々によって命を落としたのですよ』

 頭の中で叔母の声が聞こえる。

 親の死因を叔母から聞いたのはいつのころだったろうか。

(どうして……)

 どうして、そんなことをするのだろう。

 どうして、両親が死ななければいけなかったのだろう。

「どれだけの人間が不幸になるかしってるか? あんたのその身勝手で……」

 そんな答えの出ない問いはそういう類の者たちへの憎しみにも似た感情に姿を変え、彼の中にくすぶり続けていた。

「う、羨ましいんだろ! なら、あんただって……!!」

 その言葉に、黒帳を持つ飛鳥の手に力がこもる。

 そして、飛鳥の一刀のもと男は物言わぬ塊となった。

「…………バカを言うなよ」

 羨ましいわけがない。

 自分のような人を出さないために、手に入れた力を正しく使うためにSALFで活動している。

 一緒にされては困る。

 困るどころか、不快感で吐き気すらする。

(今の俺には力がある)

 元の世界にいたころ、飛鳥は一般人だった。

 その世界にも特別な力を持つ者はいた。

 多くはその力を平和のために使っていたが、そうでない者たちもいた。

 しかし、その頃の彼にはそういう事を見聞きしても何もできなかった。

 自分を襲う敵すら出来ることの少ない自分に何が出来るのかとずっと悔しい思いをしていた。

 どれだけ悔しく思っても力が手に入るわけではないと分かっていて、それでもなお、武術を学び、自分の身体を鍛えずにはいられなかった。

 それしか出来なかった。

 でも、今は違う。

(今なら、戦う力を得た今なら……)

 男だったものを一瞥して飛鳥は刀を振り血を落とす。

「こんな連中に俺は負けたりしない」

 幼かったあの時の自分にこの力があれば、両親を守れたのかといわれればそれは違うということを飛鳥は痛いほどわかっている。

 母も世の悪に立ち向かう力を持っていた。

 それでも、命を落としてしまった。

 今の自分がいたならいざ知らず、その場にその当時の自分がいても結果は変わらなかっただろう。

 だから、そのことをいろいろ考えても仕方がない。

 どんなに思い悩んでもそのことについて今できることは何もない。

 だからこそ、今、自分のような人が1人でも減るように、1人でも悲しい思いをしないように、この力をふるい続けるのだ。

「俺は、絶対に道を踏み外さない」

 そう決意を新たにして、飛鳥はその場を立ち去った。





━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【 la3468 / 白野 飛鳥 / 男性 / 21歳(外見) / 正しい力を 】
おまかせノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年05月07日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.