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『勝利の裏で』
V・V・Vla0555

 太平洋インソムニア『ルルイエ』攻略作戦。
 コードネーム『Promesa』にて海猫隊は、SALF版海兵隊として広く知られる事になった。
 隊長のニャートマン軍曹(lz0051)が率いる優秀なる隊員達は、危険な任務も恐れる事無く遂行。多くの任務を成し遂げ、ついにはルルイエ陥落まで実現した。
 この功績は非常に大きく、SALFと共同戦線を張っていたアメリカ国防軍にも大きな自信となった。これはナイトメアに対して無力感が支配していた各国の軍関係者に希望をもたらす結果となった。

 ――しかし。
 それは必ずしも良い事ばかりではなかった。

「なに? 我について参れと申すか?」
 軍曹に対してV・V・V(la0555)は聞き返した。
 海猫隊所属基地とされているカリフォルニアの基地へ戻ってきたV・V・Vであるが、帰還早々に軍曹から呼び止められたのだ。
 その内容はV・V・Vにとって驚嘆に値するものであった。
「そうにゃ〜。急にアメリカ国防軍の将官が是非会いたいと言ってきているにゃ〜」
 軍曹がV・V・Vへ言ってきた内容とは、アメリカ軍の将官が時間を取ってくれたので挨拶に行くからついて来いというものであった。
「何故、我が一緒に行かねばならぬのだ?」
「俺は海猫隊が功績を挙げられたのは、日々の苦しい訓練に耐え抜いた隊員達がいたからだにゃ〜。メディアのインタビューはまずいんにゃが、同じ敵と戦ったアメリカ国防軍には隊員達の事を教えてやるにゃ〜」
 V・V・Vの前で満面の笑みを浮かべる軍曹。
 軍曹自身、自分だけの手柄とは考えていなかった。軍曹は自慢の隊員達をアメリカ国防軍の将官に見せつけたかったのだろう。
 しかし、V・V・Vは『経験的に理解』している。
「軍曹、分かっておるのか? 相手が時間を取って会うという事は、何らかの意図があると考えるべきじだぞ」
 V・V・Vは明確な警告を発した。
 相手が軍人であっても、事務官や政治家寄りの軍人であれば、腹に一物を隠し持っている可能性はある。もし、そのような相手であれば海猫隊を利用しようとする事が考えられる。
「にゃ〜。確かにそうだにゃ〜」
「仕方あるまい。心配だから我がついて行ってやろう。下手な約束をされても堪らぬからな」
 V・V・Vはため息をつくと、軍曹の後を追って歩き出した。


「ソファーにかけていただいて結構だ」
 アメリカ国防軍所属のドーヴァー准将は、軍曹とV・V・Vへ腰掛けるように促した。
 礼儀を意識して挨拶をした二人に対してドーヴァーは、自室の椅子から立ち上がる事無く、手元の報告書に視線を落としていた。
 制服には確かに銀の星が輝いているが、軍人の割に脂肪が多い。首元は辛うじて止まっているが、いつ留め金が弾け飛んでも不思議ではない。明らかに現場を退いて長い。もしくは縁故で准将まで上り詰めた変わり者だろうか。
 ドーヴァーのその態度にV・V・Vは早くも警戒態勢を敷く。おそらく目の前の男は海猫隊にとってロクな事をしないはずだ。
「にゃ〜。今日は、ルルイエ攻略の報告と挨拶に伺ったにゃ〜」
「ああ、そうか。その猫が隊長だったな」
「にゃ〜! 猫じゃねぇにゃ〜!」
「そうだった。すまんすまん」
 軍曹とドーヴァーの会話を耳にしたV・V・Vは、明らかにこちらを見下している事を察した。呼び出した相手の素性すら把握しておらず、相手に無礼な態度を平気で取る。
 V・V・Vはこの挨拶をさっさと切り上げて部屋を立ち去る決意を固める。
「して、用件はなんじゃ?」
「報告と挨拶だ。そのね……いや、そこの隊長が言っていただろう」
「建前は不要じゃ。何か用件があったからこそ、時間を作って会う事にした。違うか?」
 V・V・Vは強気の姿勢を崩さない。
「物言いは気になるが、まあいい。こちらも本題に入れるのはありがたいからな」
「にゃ〜? 何かにゃ〜?」
「SALFと我が軍が連携してインソムニアを攻略した事は、我が軍にとって大きな自信となった。兵士達はナイトメアと戦えるという事を知ったのだ」
(この男……)
 ドーヴァーの言葉にV・V・Vは眉をひそめた。
 ドーヴァーは、今回のルルイエ攻略はSALFとアメリカ国防軍の功績と讃えているが、実際にはナイトメアに一般的な兵器は通用しない。SALFがライセンサーを中心にナイトメアと戦ったからこその功績だ。そういう意味では物資補給や救護活動がアメリカ国防軍の中心だった。
 確かに、アメリカ国防軍も絡んだ事で周辺国にもナイトメア討伐の機運は高まった。
 しかし、ドーヴァーの発言は明らかな行き過ぎだ。
 それでもV・V・Vは敢えて口を閉ざして、ドーヴァーの発言に耳を傾ける。
「我が軍としては、この勢いを各国へ広げながら更なる攻勢を強めたい」
「どうするというのじゃ?」
 V・V・Vは切り込んだ。
 ドーヴァーはV・V・Vの言葉を鼻息と共に吹き飛ばす。
「サンダー・ベイ。ここを奪還していただきたい」
「!」
 V・V・Vはドーヴァーが口にした地名で意図が読めた。
 サンダー・ベイはオンタリオ州北部第二の都市だ。重要なのはサンダー・ベイはセントローレンス海路を経由する中継基地となっている事だ。このサンダー・ベイを奪還する事は、北米戦線の今後に大きく関わる。
「どうだ? この作戦が成功すれば、貴隊の功績は更に高まる」
「聞いておこう。そこを攻略するのは海猫隊であろうが、准将殿の部隊は同行されるのか?」
 V・V・Vは敢えて直球を投げつけた。
 目の前の男は海猫隊単独でサンダー・ベイを奪還させたいのだ。可能な限りアメリカ国防軍の戦力を使わず、海猫隊にナイトメアを戦わせ、その功績を軍内で独り占めするつもりなのだろう。
「む? 無論、我が部隊も同行……」
「失礼だが、准将殿の部隊に適合者は在籍しておるのかの?」
 V・V・Vの言葉に旗色が悪いと察したドーヴァーは、言葉を濁らせる。
「う、ううむ。それは今編成中だ。それより私は軍曹に聞いているのだ。お前のような小娘には聞いておらん」
 不機嫌そうに話を打ち切るドーヴァー。
 しかし、その段階で軍曹は椅子から立ち上がる。
「ちょっと待つにゃ〜。うちの隊員を勝手に小娘扱いしたにゃ〜? うちの隊員は皆優秀だにゃ〜。勝手に戦力外扱いは許さないにゃ〜」
「な!?」
 突然、軍曹からのクレーム。
 思わずドーヴァーは驚嘆する。
「何を言っている? この作戦が成功すれば……」
「作戦の前にお互いの信頼関係だにゃ〜。もし、正式に打診するのであればSALF本隊へ直接行って欲しいにゃ〜。今日はこれで失礼するにゃ〜」
 軍曹は、そう言ってV・V・Vを伴って部屋を退出する。
 一人残されたドーヴァーは、顔を真っ赤にしながら二人の背中を睨み付けていた。


「良いのか? あの態度」
 軍曹を案じるV・V・V。
 しかし、当の軍曹は何処吹く風だ。
「関係ないにゃ〜。SALFは国防軍の指揮下に入った訳ではないにゃ〜。そもそもあの場で重要な作戦を口にする時点で上官失格だにゃ〜」
 颯爽と海猫隊の拠点へ戻る二人。
 V・V・Vは、軍曹の判断を心強く感じていた。


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近藤豊 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年05月13日

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