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『すべては国民の為だ』
レイヴ リンクスla2313

『アメリカ合衆国は、ナイトメアに対して強硬な姿勢で臨む。必要であれば武力による解決も厭わない。ナイトメアは、最優先で撃滅する。すべては国民の為だ』

 当時の合衆国大統領が、国民に対して宣言した事は今でも覚えている。
 異世界から現れたナイトメアが地球の各地で破壊を繰り返す。それに対して大統領は国民の命と資産を守る為に徹底抗戦を決意。ナイトメアとの戦争へと踏み切った。
 しかし、その結果は多くの者が知っている。
 如何に優秀なアメリカ軍でも、適合者でも無い一般人の兵士がナイトメアに勝てるはずもない。戦地へ赴いた多くの兵士はナイトメアの前に壊走。酷い者はナイトメアに捕縛され、二度と本国の地を踏む事はなかった。

 後に『アンカレッジ戦争』と呼ばれる一連の戦いでは、雪中での過酷な戦闘が兵士の命を奪っていった。悪夢として語り継がれる戦いは、国民の中にあった愛国心や自信を打ち砕く。

 ――あの時から、世界は変わってしまったのだ。


(敵、残り1)
 物陰に隠れながら、静かに息を整えるレイヴ リンクス(la2313)。
 任務を終えて廃墟と化した街に通りかかったのは、本当に偶然だった。本来であれば安易に勘などには頼らないのだが、この街に何かがあると感じ取ったレイヴ。静かに探索を始めた所、数体のナイトメアを発見した。
 人間のように二手二足を持ちながらも、玩具の兵士を彷彿とされる姿――全身が緑色に彩られている――は異様であった。
 廃墟の街をナイトメアが単に散歩しているとは思えない。普通に考えれば、何らかの作戦を遂行している最中だろう。応援を要請する事もできたが、今から打診しても到着する頃には敵に逃げられる。ならば、レイヴが取り得る行動は一つだけだ。
(敵は風下に回り込んだ……こちらの動きを伺っているのか)
 レイヴは状況を冷静に分析しながら、ゆっくりと敵がいるらしき箇所へ進んでいく。
 既に二体は排除。残りは一体のみ。
「残りはそう簡単に動かない、か」
 レイヴは足を止めて、壁に背中を預ける。
 そして、攻撃について――最初の動きを思い返してみる。
 敵がこちらに気付くよりも早く、高台よりスナイパーライフル『M2010-C』で一体の頭を撃ち抜いた。
 一体が倒され、響き渡る銃声。敵も襲撃を受けたと気付く。
 だが、そこでM2010-Cの弾薬は尽きた。無理もない。別依頼で準備していた装備だ。それに弾丸が尽きる事は織り込み済みである。
 素早くアサルトライフル『HK416-C』へ持ち替え、近くの家屋へ飛び込んだ。
 敵の数は二体。素早く制圧すれば敵の作戦の作戦を挫けるかもしれない。
(我ながら、無茶をしたものだ)
 自分を戒めるようにレイヴは心の中で呟いた。
 通常であれば残る二体が連携してレイヴを捜索するものだが、愚かな事にナイトメアは戦力を二分してレイヴを探し始めた。
 好都合だ。
 これで一度に二体を相手にしなくて済む。どうやら敵は姿だけの兵士らしい。
「行くか」
 倒せると判断したレイヴは、敵を待ち伏せ。
 目的の地点へ到達してから息を潜める。
 そして、敵が建物の角を曲がった瞬間、HK416-Cの弾丸を浴びせかける。
 抵抗する隙すら与えず、眉間と胸に弾丸が命中。ナイトメアは音無く地面へ倒れ込んだ。
 火薬の香りが漂う中、再び響く銃声。残る一体にもこちらの居場所を伝わったはずだ。
 ――だが。
 敵の襲来を待ち続けるレイヴに対して、敵も同じように動きを止めた。
 完全に、膠着状態へ陥っていた。
「やはり。また博打か」
 壁を乗り越えるレイヴ。
 あまり長い時間をかければ、敵の増援が来る恐れもある。
 膠着状態を打ち破るには――やはり無茶をする他無い。
 レイヴは、大胆な行動を取り始める。


 ナイトメアにとって、これは想定外の会敵だった。
 予定では戦力が集まった上で近くの街を襲撃。必要な人間の数を確保して後は全員始末する。
 アメリカといえども片田舎。SALFが到着する頃には、既に立ち去っている……。

 そういう考えだったのかは分からないが、ナイトメアが突如窮地に陥った事は理解しているようだ。敵の数は分からないが、何故かこちらの居場所が判明して倒されている。状況が把握できていないうちに味方が倒されていく。
 焦りの中、視線を泳がすナイトメア。
 ふいに視線が前方の壁に止まる。
 建物の脇から覗く銃口。うまい具合に上へ向いている。
 先程通った時にはあのライフルはなかった。つまり、何者かがあそこで潜んでいる可能性がある。こちらに気付いた様子はない。今ならば、背後から敵を襲う事も可能だ。
 ナイトメアは大回りしてライフルがあった場所の背後へ回り込む。
 そして、手にしていた銃を構える。
 ――しかし。
「!」
 そこにはライフルが壁に立てかけられているだけであった。
 敵は、何処に?
 そう考えた瞬間、背後に気配を察した。
 振り返るよりも早く何者かが腹部へ一撃。バランスを崩した後に、腕を取って地面へと叩き付ける。天井を見上げる形となったナイトメア。
 天井とナイトメアの間に一人の青年が顔を出す。
「単純で、助かった」
 そう呟いた青年は、ナイトメアの首に軍用アーミーナイフを突き立てた。


「敵影なし。クリア」
 地面に転がって消えていくレイヴは、周囲にナイトメアの存在が消えた事を感じ取った。
 我ながらリスクを犯したと考えている。友軍を待ってナイトメアの目的を突き止めるべきだったか。だが、それはレイヴに下された命令が許さない。

『ナイトメアは、最優先で撃滅する。すべては国民の為だ』

 合衆国大統領が下した命。
 それは適用者認定されてアメリカ情報軍を名誉除隊した今でも変わらない。レイヴは今でも大統領の命に従って行動している。
 すべては国民の為。そして、合衆国の為。
 レイヴは、SALFに身を置く今でもアメリカの軍人だ。
「応答願います……街で敵と交戦しました……はい、既に街は制圧しました」
 SALFへ報告を入れるレイヴ。
 戦闘時と異なり、口調は丁寧な物へ変わっていた。
 しかし、笑顔を湛えるその裏には、確かに軍人の顔が眠っている。


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近藤豊 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年05月19日

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