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『Next Stage』
ネムリアス=レスティングスla1966

 宇宙空間で因縁の相手との死闘を繰り広げ、爆発した衛星が残骸となって大気圏から落下したあれから数ヶ月後。
 自分も軽くない傷を負ったネムリアス=レスティングス(la1966)は、身体が回復するなり戦いの場へと戻った。
 あの時逃げた宿敵をそのままにしておく気はない。
 戦場を渡り歩いては宿敵を追うための情報を探し、休む間もなくまた別の戦場へ……、そんな日々を送っていた。

 どこに姿を消したのか未だ宿敵の情報は得られず、愛用の得物たち――いくつもの銃器――が壁に掛かった、まさに秘密基地と言った体のアジトで、銃の手入れをしていたある日のことである。
 いつものように端末を開き、宿敵に繋がる情報がないかとチェックしていると。
「――ん? これは……」
 数あるナイトメアの襲撃事件の記事のひとつに、ネムリアスは目を留めた。
 そこに書かれていること自体は、よくある『ナイトメアが町を襲って被害が出た』というものだったが、その襲って来た『あるナイトメア』の目撃情報、それが語る姿形に、ネムリアスは自らの記憶を探る。
「待てよ、そういえばこの前近隣で起きた事件の記事は……」
 と思い出してどんどん記事を芋づる式に見て行くと、いくつかの地域で目撃されたナイトメアの情報が、ネムリアスを確信させた。

 自分はこいつらを知っている。

 各地に現れたそいつらはどれも、元の世界で倒したかつての強敵達によく似ていたのだ。
 事件の地域から推測すると、奴らは衛星の残骸が落ちた場所から現れたに違いない。
 それはつまり――。
「まさか、衛星に居たとはな……」
 宿敵のことしか頭になかったとはいえ、気付かなかった己を悔やむようにネムリアスがつぶやく。
 まさに奴らがいたその近くで宿敵と戦っていたのだ。
 あの戦いの邪魔をされなかったことを感謝するべきか、それとも結果的に奴らを野に放ってしまったことを後悔するべきか。
 あの時奴らが出て来なかったのは、邪魔をしないように宿敵に命令でも受けていたのだろうか。それとも、奴らは衛星内ではまだ眠っていて、衛星が落ちたせいで目覚めてしまい解き放たれ、本能のまま行動するようになってしまったのか。
「……いや、違うな。もうそれはどうでもいいことだ」
 とネムリアスは仮面の顔を振った。
 考えるべきなのはそこじゃない。
 もうかつての強敵達は地球で自由になり事件を起こしているのだから、今更衛星にいた時の奴らがどうだったとしても、あの時ネムリアスがしたことを悔やんでも仕方がない。

 今考えるべきなのは『これからどうするか』だ。
「………」
 小さくため息をついて、ネムリアスは記事が出ている端末を見つめ続けた。
 ネムリアスの本当の目的は宿敵であって、知らず解き放ってしまった奴らではない。SALFにも奴らを倒せるライセンサーはいるだろうし、奴らが誰かに倒されてもそれはそれで構わない。無視を決め込める。
 問題は宿敵の方だ。奴とは必ず決着を付けなければならない。
 ただ、今のままではまだ宿敵に敵わない、とネムリアスは自覚していた。
 それ以前に、奴の居場所さえ分かっていない状況だ。
 だが一たび奴の居場所を知ったなら、敵わないと分かっていてもネムリアスは戦いに赴くだろう。

 それが、今ネムリアスの生きている意味だから。

 そうだとしても、現状のまま対峙するよりは、少しでも力を付けたいと思っているのは確かだ。
 奴に、何としても己の手を届かせるのだ。

(ならば、せめて。解き放ってしまった奴らを止めるために動くべきじゃないか?)
 結局ネムリアスの思考はそこに行きついた。
 自分にも責任の一端があるとか、奴らを知っているのに動かない罪悪感とか、そんな殊勝な考えではなく、単に自分が奴らと関わりがあるという一つの事実、それだけのことだ。
 最終的には宿敵を倒す、そのただ一つの目的のために。

「奴らが何か情報を握ってるかもしれないしな」
 強敵とは言えただのナイトメア共にあまり期待はしていないが、それくらいの望みは抱いても構わないはずだ。
 何も知らないならネムリアスの経験値となってもらうだけだし、知っていれば御の字。こちらに何のデメリットもない。

 心を決めふと時計を見る。
 気が付けば、夜が明けていた。
 そんなに熟考していたとは思わなかった。
 これ以上考えても、意味はないだろう。
 ネムリアスは重い腰を上げ立ち上がる。
 壁に掛かっている銃を物色し始めた。

 ネムリアスは愛用の散弾銃を片手に、新たな戦場への扉を蹴り開ける。
 眩しいほどの朝日がネムリアスを包んだ。
 それはまるでネムリアスの決断を後押ししてくれているようで。
「景気よくぶっ放しに行くか!」
 陰鬱な気分を吹き飛ばすかのごとく、ネムリアスは声を上げた。

 立ち止まっているより、マシさ。そうだろ?

 ネムリアスの無機質で無表情なはずの仮面がどことなく晴れやかに見え、彼自身の代わりにそう言っているようだった。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
いつもご依頼本当にありがとうございます! 感謝です!

今回は色々ネムリアスさんの思考を考えながら書かせていただきました。
ご満足いただけたら嬉しいです。

「そこはそうじゃないかな〜」とか解釈がズレている描写などありましたら、小さなことでも構いませんのでご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

また書かせていただけましたら幸いです。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年05月25日

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