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『熱帯雨林の激闘』
ネムリアス=レスティングスla1966

 仮面で顔を隠した男は、素早く鬱蒼とした茂みに身を潜め、樹に背中を預けた。
 湿気と汗で衣服が体に纏わりつく。
 自分の呼気が熱苦しくて、今まで体の一部となって気にすることもなかった仮面さえも、脱ぎ去りたい衝動に駆られる。

 そこは数多くの未知の生物が生息し、多彩な植物が繁茂するジャングルの奥地だった。
 それらの生命力が空気に溶け出しているかのような濃密な空気を大きく吸って、男は一度深呼吸をする。
(……なんとかこの状況を打開しなければ)
 仮面の男――ネムリアス=レスティングス(la1966)は、追い詰められていた。

 話は数時間前にさかのぼる。


 宿敵の情報を求めて、落ちた衛星から解放してしまった敵を追って、ネムリアスは熱帯雨林のジャングルまでやって来た。
 しかし思った以上にこの環境がこたえ、暑さに音を上げながらもどうにか進むこと二時間余り。
 途中いくつかのクレーターを発見して、己の進む道が正しいのだという確信を気力に変える。
 そしてとうとう衛星のサーバーらしき機械の塊を発見した。
 ダッと駆け寄り、あちこちを確かめるようにいじってみる。
「よし、まだ動く」
 この時ばかりは、己の世界の技術力に感謝した。
 さあこれで奴の情報を、と思った時。

「!!」
 ネムリアスは不意に殺気を察知したが、気付くのが一瞬遅かった。
 死角から何かに攻撃されたのだ。いきなり高速回転でのタックルを喰らい、10メートル程吹っ飛ばされる。
「ぐはッ!」
 イマジナリーシールドはまだ耐えられるが、その衝撃は半端じゃなかった。
 ネムリアスは咄嗟に両手に散弾銃を引き出し、反射的に体をひねり反撃する。
 が、銃弾は敵の装甲に弾かれてしまった。
「何ッ!?」
 ネムリアスの視線は、明らかに地球の生物ではない物を認めた。
「――ッ、『守護者』、か」
 衛星が落ちて解放されてしまった敵だった。
 丸くずんぐりした体躯に短い足、巨大な手、頭部には長い鼻のような武器が付いている。その見た目から想像されるのは『象』だ。
 全体の大きさはネムリアスの倍はある。
 そのナイトメア化した象型ロボットはこのサーバーを守っているのだ、とネムリアスにはすぐに見当が付いた。
 ならば自分が情報を得るのを大人しく見ているはずがない。
 状況を完全に把握したネムリアスは、象型ロボットの再度の高速回転タックルを傍の樹を蹴ってジャンプしてかわし、散弾銃を撃ち放つ。
 撃たれても象ロボには全く効いていないようで、今度は長い鼻を鞭のように振って攻撃して来た。
「チッ!」
 ネムリアスは左のブラストショットガンの銃身で鼻を弾き懐に入り込み、至近距離で右のバスターブリザードの引き金を引いた。
 全弾を命中させたがダメージを与えることができない。
「くそッ、これもダメか」
 一旦距離を取ると、象ロボは鼻の先から火炎を噴き出して来た。
「そんな攻撃もあったな!」
 ネムリアスはすぐさま射程から逃れ移動する。
 ドラマのように樹の陰から一瞬だけ顔を出して銃を撃ち、応戦した。

 樹の間を移動しつつ、ネムリアスはリロードを繰り返し根気よく象ロボに銃弾を浴びせ続けた。
 奴は回避する気がないのかその能力がないのか、ネムリアスの強力なスキル攻撃をも全て喰らっていたが、その装甲は無傷のままだ。
 象ロボはネムリアスとの距離が開くと鼻鞭や火炎放射を使い、こちらの攻撃の手が止まると高速回転タックルで接近、巨大な手で張り手をしてくる。
 ネムリアスは銃弾を弾かれつつも、攻撃を避けては反撃をする。
 敵が倒れるまで攻撃し続けるであろう象ロボの張り手を上体を反らして避けると、張り手の当たった樹が折れた。
「馬鹿力め!」
 その顔に散弾をお見舞いして一瞬奴の視界がふさがれた隙に、ネムリアスは急いで茂みに身を潜めた。

 今ので弾を全て撃ち尽くしたのである。
 もう手持ちの銃全て、リロードできない。
 樹に背中を預けて、大きく深呼吸した。
(……なんとかこの状況を打開しなければ)


 そして今に至る訳である。

 象ロボはネムリアスの姿を見失って、サーバーの周りをうろうろしているようだ。
 この状態も長くは持たないだろう。
 このままでは宿敵の情報など手に入らないし、奴を倒せないようでは宿敵との決着など夢のまた夢だ。
(落ち着け、考えろ。奴の弱点を思い出せ)
 ネムリアスは仮面の下の両眼を閉じて、呼吸を整えながら異世界での記憶を掘り起こし――、カッと目を開いた。
(燃料タンク!)
 が、その弱点は象ロボの硬い装甲の真ん中、ずんぐりした胴体の中心だ。
 今の火力では装甲を抜けず、ダメージを与えられない。
「……仕方がない……」
 ネムリアスは小さくつぶやいて、自身の義手の片腕を操作する。
 その一部を開き、中から細長い三角形をした金属の物を取り出した。もう片方の義手も同様にして、同じ物を取り出す。
 これはかつての武器を参考に作ってもらった試作型EXIS、ビームブーメラン『フラッシュエッジ』だ。
 ネムリアスはフラッシュエッジを両手に一本ずつ持ち、IMDを作動させる。
 するといわゆる三角形の底辺部分から光の刃が展開し、ブーメランの形になった。
「よし」

「俺はここだポンコツ!」
 ネムリアスは意を決して象ロボの前に姿を現すと、両手のビームブーメランを同時に投擲した!
 象ロボがすかさず鼻鞭を伸ばす。
 光刃は光の軌跡を残しながら飛んで行き、奴の金属の鼻を何の抵抗もなくスライスした。
 そのまま目で追うのもやっとのスピードで交差し往復するフラッシュエッジは、上げた象ロボの腕を、頭を、胴体を、触れたそばから切り裂いてゆく。
 数回象ロボの周りを往復した光刃がネムリアスの方へ戻って来た。
 ネムリアスは自分も象ロボへと走り出してブーメランをキャッチし、勢いを付け跳躍する。
 燃料タンク目掛けて、切り裂かれた胴体の隙間に己の手で光刃を二本突き立てた!
 バチバチッとビームブーメランのエネルギーと燃料エネルギーが反応する。
「!!」
 即座にネムリアスは武器から手を離し、飛び退いて身を伏せた。
 直後、象ロボだった物は爆散したのだった。
 バラバラと奴の残骸が降って来る。
「どうにか勝てたな……」
 フラッシュエッジを持っていなかったらどうなっていたか分からない。しかし、その肝心の試作品は今の爆発で失ってしまった。
「試作品のわりに、使えたな……」
 残念そうに息をつきながらネムリアスは立ち上がり――、

「あッ!!」

 思わずサーバーに駆け寄る。
 サーバーは爆発に巻き込まれ壊れていたのだった……。
「ちくしょうッ……!」
 ガンッと拳をサーバーの残骸に打ち付ける。
 せっかく宿敵の情報を見つけられると思ったのに、ふりだしに戻ってしまった。
 ネムリアスはしばらく仮面の顔を俯けて悔しさに歯噛みしていたが、ぐ、と拳を握り直して顔を上げる。
 ふりだしならまたやり直せばいい。
 まだ衛星からの敵はいるし、そいつらを追っていれば何か分かるかもしれない。いや、もしかしたら向こうから出向いてくれる可能性もある。

 そうと決まればもうここに用はない。
 新たな敵を目指して、ネムリアスはうだるジャングルの中を歩き去って行った――。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
前回から間もなくのご依頼、ありがとうございました!

今回はジャングルでのガッツリな戦闘ということで、単調にならないよう気を付けて書かせていただきました。ハラハラ感が伝わってくれればいいなぁと思っております。
ご希望に添えているといいのですが。

どこかご不満な点や「この行動は違う」などイメージと違う箇所がありましたら、小さなことでも構いませんのでリテイクをお申し付けください。

またご注文いただけたら嬉しいです。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年06月09日

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