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『ドラマ「狼狩りの犬」 ハイライト集』
桃李la3954

●第二話「ソクラテスの毒杯」(あらすじ)
軍事会社CEOの暗殺阻止の仕事が入った桃李(la3954)。グルメであるため毒殺を疑い、グスターヴァス(lz0124)とともレストランに張り込む。案の定それらしい動きがあったため妨害した。明日に備えて通信係のヴァージル(lz0103)も誘って中華を食べに行くが……。

●第二話ハイライト
 三人は穴場と言える中華料理店に来ていた。先ほどの店のような高級店ではないが、桃李によるととても美味しいのだと言う。かなり狭い割に繁盛していて、人で溢れていた。
「仕事中は味なんてわかりませんからね」
 グスターヴァスが顔を綻ばせる。桃李と彼はきちんとしたスーツで、ヴァージルだけいつもの作業着で来ている。スープが運ばれてきた。グスターヴァスとヴァージルは律儀にお祈りをしている。その時、近くで人と人がぶつかった。ああすみません、いえ大丈夫、というやりとりを耳に入れ、桃李はその声に聞き覚えがあるような気がした。ついさっき聞いた。
「では頂きましょう」
 二人がスープを飲み始めた。桃李もそれに続いて、一口。違和感が記憶を呼び覚ます。
(ああ、さっきの店で……)
 聞き覚えのある声は、さっきの店で怪しい動きをしていた男だ。そして、このスープの味……。
「今更なんだけど」
「何だよ」
「二人とも、毒への耐性ってあったりする?」
「俺たちはクマノミか?」
「クマノミも別に耐性じゃないですよ。特にそう言うことはありませんが……どうしました?」
「……いや、今食べてるこのスープ、麻痺毒が入ってるみたいだから……」
 隠し味を言い当てるような気軽さで告げられた言葉に、二人は固まった。
「……食事中に趣味の悪い冗談を言うな……」
 ヴァージルが言いかけるが、グスターヴァスは納得したように、
「ああ〜そうでしたか……道理で、スプーンが持ちづらいと……」
「歳じゃねぇのか……」
 と、言ったヴァージルの手からスプーンが滑り落ちた。顔を見れば、桃李の言ったことが彼の身に起こっていることがわかる。桃李はすぐに懐から解毒剤の薬包を出すと、二人に寄越し、
「飲んで」
 更に持参したペットボトルの水を渡す。グラスの水にも何が入っているかわかったものではない。
「お祈りが通じました……」
 それを飲みながらグスターヴァスが呟いた。

 その後、中華料理店で桃李が録音していた音声から暗殺者を特定、ターゲットが向かったフランス料理店に先回りし、暗殺は無事に阻止、相手は連行された。景気づけに、三人はイタリア料理店に来ている。三度目の正直で中華でも良かったが、ヴァージルが全力で拒否したのだ。ミネストローネを注文したヴァージルは桃李に一口飲ませ、
「大丈夫か?」
「大丈夫そうだよ」
「サンキュ」
 ヴァージルは安心して食べ始めた。桃李とグスターヴァスは顔を見合わせると、自分たちも運ばれた食事に手を付けた。
 桃李はそっと胸に手を当てる。

 三人分の解毒剤の薬包の厚みがそこにあった。

●第五話「厄日」(あらすじ)
桃李のオフの日を描いた日常回。
筋肉が付かないことをちょっと気にしている桃李は、このオフの日も筋トレに励んでいた。気分転換で散歩に出たところ、どうやら尾行されているらしいことに気付いた。桃李は相手を泳がせながら自分は散歩をする。

●第五話ハイライト
 桃李は体重計に乗って溜息を吐いた。
(全然増えない)
 筋肉量と体脂肪、身体年齢もわかるという触れ込みの体重計だ。目安として各種機能を使って身体作りに用立ててはいるのだが、増えないというのはこの筋肉量のことである。もっとも、筋肉は脂肪に比べて重たいので、筋肉が増えると言う事は体重が増えると言う事であり、筋肉が増えない、というぼやきは体重が増えない、という、世論の何割かを敵に回すような物言いではあるのだが、心の呟きなので怒る人間はいなかった。

 桃李は元来太りにくい体質である。多少カロリーを取ったところで体重にも体脂肪にもあまり反映されない。それは筋肉にも同じ事で、一応、筋トレもしているし、タンパク質も気を遣って取ってはいるのだが……。BMIを算出したところ、やせすぎの数値が出たのは言うまでもない。
 溜息を吐きながら、食事にする。蒸し鶏のサラダだ。当然、鶏胸肉で作ったタンパク質摂取用である。
(まあ、今の仕事的には問題ないから良いんだけどね)
 鶏肉を噛みしめながら、桃李は頭の片隅で体格の良い今の仲間のことを考えた。

 一通り筋トレメニューを終えると、気分転換として散歩に出た。少し歩いてから、後ろで不穏な空気が漂っていることに気付く。
(尾行かな? 今の俺になんの用事だろう)
 もう暗殺者じゃないのにな……暗殺を止めるという極めて善良な仕事をしているのに……ほう、と溜息を吐きながら、桃李は歩き続けた。

 それからずっと、そんな具合で町中を歩き回る。途中でお腹が減って、キッチンカーで売られているパンをいくつか買って食べながら歩いた。やがて、日が沈み掛ける。桃李は人気のない川縁に下りた。川の中を覗き込む。背中に掌の気配を感じた。
「お腹空いていないかい?」
 桃李は川に視線を落としたまま尋ねた。相手がぴたりと止まる。振り返った。見覚えのない人間だ。桃李はパン屋の袋を差し出す。半日連れ回したのだ。桃李を見失えないから、自分は何か買うこともできなかっただろう。
「君の分も買っておいたんだけど」
 相手はその袋を振り払った。拳銃を抜く。桃李だって丸腰ではない。鉄扇を畳んだまま、その手首に刺突を繰り出した。そのままの動きでこめかみを強かに打ち据える。
 その時、応援が駆けつけた。グスターヴァスだ。相手にタックルを食らわせる。背は桃李より若干低いが、横幅と厚みがあるので結構な迫力がある。私服で、少し薄着だと余計体格の良さが目立った。
「桃李さんご無事ですか!」
「うん、この通り。いやあ、君までいたなんて、びっくりしたなぁ」
「桃李さんが狙われてたことは情報があったんですよ。連絡すると、却って釣り出しができないと思って……」
 相手を拘束する。ふう、と息を吐いたグスターヴァスに、桃李は落ちたパンの袋を渡した。
「食べない? その人の分を買ったんだけど、受け取ってもらえなくて。この人を見張ってたってことは、グスターヴァスくんも半日くらい歩き回ってたよね?」
「頂きます!」
 グスターヴァスは喜んで袋を受け取ると、中を覗いて、桃李の顔を見上げた。
「……桃李さん」
「何かな?」
「私も尾けてたの、気付いてました?」
「そんなことないよ?」
 桃李は薄く笑みを浮かべる。
「どうして?」
「……忘れてください」
 グスターヴァスは肩を竦めた。そして、どう見ても二人分用意されたパンの一つを開いて、囓り始めた。
「桃李さんも食べますか? たくさん食べて力つけてください」
「……」
 桃李は片目を細めた。
「なんです?」
「なんでもないよ。そうだね。じゃあ俺にも一個」
 パトカーが駆けつけるまで、二人は拘束した不審者の傍でパンを食べていた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
最初は一本書こうかなー、と思ってたんですが、ネタをたくさん頂いちゃったのでまたハイライトにさせて頂きました。
桃李さんって「待ち」が割と強そうだなって勝手に思ってます。
それにしても筋トレしている桃李さん、運動着に着替えて露出高くなるのかな……? と思うとドキドキしちゃいますね。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年06月22日

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