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『ドラマ「森の巫女 真珠の縁」ハイライト集』
マーガレットla2896

●登場人物
マーガレット(la2896)
真珠色の髪を持つエルフの女性。森が燃えて行くあてがないところを偶然、遠縁に出会って引き取られることになる。故郷では巫女で薬師。
人の幸せを願い、自分のことは後回しにしがち。

地蔵坂 千紘(lz0095)
マーガレットの遠縁で当主の甥。森が焼けた時にたまたま近くに滞在しており、彼女が遠縁であることに気付いて叔父に話を通した。
超常現象に興味があり、怪奇文学について学んでいるらしい。比較的面倒見は良い。
口が達者。

●シリーズあらすじ
あるところにあったエルフの森が焼けてしまい、そこを住処としていたマーガレットたちは行き場を失った。そこでたまたま様子を見に来た千紘と出会い、マーガレットは彼の家に引き取られることになる。昔、人間と結ばれたエルフの子孫だと言う。最初は人見知りしていた二人だが、徐々に距離が縮まっていく。

●第一話「燃える森」(あらすじ)
エルフの森が焼けた。時の政府が保護し、他の森への受け入れを打診、必要なら人里での受け入れも、という矢先、様子を見に来た一人の人間がマーガレットの引き取りを申し出た。話を聞けば、遠縁なのだという。マーガレットも異論はない。彼女は海を渡って新しい生活へ。

●第一話ハイライト
「真珠の髪……」
 聞き慣れない声での呟きが聞こえて、マーガレットは振り返った。見ると、黒い髪の男性が帽子を抱えて立っている。マーガレットをじっと見ていた。
「こんにちは」
 自分を知っている人だろうか。マーガレットにはとんと覚えがなかった。そう思って声を掛けると、向こうははっとして口を押さえた。ぺこん、と頭を下げて、
「不躾にごめんなさい。僕は地蔵坂千紘です。あの、失礼ですけど……昔のご親族に、海を渡って人間と結婚した方はいませんか?」
「どうしてそれを……?」
 マーガレットも話に聞いただけである。昔、人間とエルフが大恋愛の末に結ばれた。国に帰るその人間について、そのエルフも森を出て向こうの国に渡ったのだと言う。
「何て言えば良いんだろ……うちがその子孫で……」
「まあ、そうなんですね。こんなところでお会いするなんて……」
 と、マーガレットが言うと、千紘が目を丸くした。あっさり信じられるとは思っていなかったらしい。しかし、すぐに気を取り直して、
「あの、あなたさえ良かったら、うちにいらっしゃいませんか……? 叔父に確認しないといけないんですけど……」

 こうして、マーガレットは昔の親族の様に海を渡ることになった。森の皆は別れを惜しみながらも、重々気を付けるようにと言い含めた。人間なんだから何をされるかわからんぞと。
(でも、実際人と結ばれたエルフがいるわけですから……)
 大丈夫なんじゃないか、とマーガレットは思っている。楽観というか、人を疑うことを知らないのである。

 新しく暮らすことになった家には立派な書庫があった。ここの本は好きに読んでも良いという。千紘もしょっちゅう入り浸っていると聞いて、少しだけ彼に親近感を覚えたのであった。

●第五話「白い人影」(あらすじ)
徐々に親しくなっていく二人。家の中の誰よりもよく話す間柄になり、面白かった本を勧め合うまでに。
ある日、屋敷の中で幽霊騒ぎが起こる。マーガレットが疑われる。彼女には覚えがなく、マーガレットは嘘を吐かないと千紘が保証したが、どのみち不思議なので二人は真相究明に乗り出す。

●第五話ハイライト
「千紘さん……やっぱり幽霊がお好きなんですね?」
「僕は見たことないけどね! でも、生きているなら一度は見てみたいじゃない? なんかやべーやつ」
 青い目がきらきらしている。その様子に、マーガレットは表情を和らげた。
(とても楽しそう)
 どちらかと言うと、千紘は明るい方だと思うが、今は更に楽しそうにしていた。幽霊や怪奇などの話を好むようにはとても見えない。
「叔母様は、夜更けにここを通りかかって、白っぽい人影を見たんだよね?」
 手洗いの前だった。つい昨日まで、屋敷の別の場所で修復工事をしており、この廊下にも色々と物が置かれていた。工事関係者ではないかと思われていたが……そんな夜更けまで作業はしない。

「あら?」
 マーガレットは床の上にこぼれているものを、細い指先でつまみ上げた。
「これは……」
「どうしたの?」
「千紘さん、お願いがあります」
「何!? もしかして、降霊術とかやるの!?」
 千紘が勢い込んで尋ねる。窓からの光も相まって、尚更目が光って見えた。
「い、いえ、あの、連れて行って頂きたいところが……」
「降霊研究家!? ツテはないけど良いよ!」
「お屋敷の中なんですが……」

 数時間後、マーガレットと千紘は当主夫人の部屋を訪れていた。
「では叔母様、真相についてお話しします」
 千紘が胸を張ってマーガレットを見る。君から話してくれ、という事だ。
「は、はい。ええと……まず、あの日はまだ西の方が工事をしていました」
 マーガレットは順を追って話しはじめる。
「つまり、西のものがいくつかこちらの廊下に置かれていましたよね?」
 そうだ、と当主夫人は頷く。マーガレットは、折り畳んだ薬包紙を開いて見せた。そこには、彼女は廊下の床にこぼれていたのを拾った、土が包まれている。
「靴底についていたにしては、まとまった量です。調べたところ、鉢植えの土でした。今は西に戻されていますが、工事の方におたずねしたところ、鉢は一旦こちらに移動していた、ということです」
 中には背の高い……マーガレットほどの観葉植物もあった。あっちこっちに枝がぶつからないよう、薄い布を掛けていたという。白くて、薄い布を。すぐに戻すからとそのままにされていたらしい。
「それが、人影に見えたのではないでしょうか」
 窓を背にして、うなだれる人影。灯りを付けて駆けつければ、そこには人ではなくて明らかに観葉植物しかない。そこで観葉植物の布を見て気付いても良さそうなものだが、人の認識というのは面白い物で、「人影を見た」と思い込めば、観賞植物がいかに幽霊っぽくあろうとも除外してしまう。
「と、言うのが僕たち二人の結論なんですけど、叔母様いかがですか?」
 彼女はしばらく考え込み、そうかもしれない、と言ってマーガレットに謝罪した。

「いやー、良かった良かった」
 叔母の部屋を出ると、千紘は伸びをした。
「ありがとうございました」
「ううん、こちらこそ。なんか、マーガレットは嘘吐かないって言ったときに、『まあ森で暮らしていたようなお嬢さんだから』みたいに言われたの、ちょっと嫌だったんだよね」
 それを聞いて、マーガレットはきょとんとして千紘を見た。
「そんなことが……? 幽霊がお好きだからだと思ってましたが……」
「それもあるけど……あれ? 気付いてなかった? 他の森に帰っちゃうとか言わないよね?」
 突然心細そうな顔をする千紘に、くすりと笑い、
「千紘さんがいらっしゃるのですから、森に戻ったりなんか、しません」
 そう言ってから、何だか今自分がちょっと踏み込んだことを言ったような……と思ったが千紘が何も言わなかったので、彼女もそのまま言わなかった。

 言わなかったのではなく、彼は照れで何も言えなくなったのだと言う事には、ついぞ気付かなかった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注&企画ご参加ありがとうございました。
「身寄りがない」というワードから「森が燃える」は飛躍した感がありますがいかがでしょうか(震え声)。
時間を掛けてくっつくのかな〜と思いました。二人とも距離が縮まったら割とぽろっと好意的なことを口にして、でも自分の感情には無自覚で真っ赤になってもだもだしてそうだな……って思いました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年06月24日

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