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『歩んできたその道に』
鞍馬 真ka5819

「あっ! 真先生!!」
「真先生! 今日は何して遊ぶ?」
「ダメよ! 真先生は私達と遊ぶんだから!」
「やあ、こんにちは、皆。遊ぶのは院長に挨拶してからね……って、だからちょっと待ってって」
 挨拶もそこそこに腰や足にすがりついて来た子供達をあしらいながら歩みを進める鞍馬 真(ka5819)。

 ここは以前、真がなりゆきで手伝いにやって来た孤児院だ。
 休暇を過ごそうとして、ふらりと寄った酒場で『急遽、子供達の世話ができる人材を求めている』という話を持ち込まれたのだ。
 元々、義務感だけで休暇を取っていた真は渡りに船でその話を引き受けた。

 ――そして仕事を恙なく終えて、その日あったことを院長に報告しに行った真は、その孤児院が本当にギリギリの状態で運営を続けていることを知った。
 資金がない為に、壊れた施設の修理も出来ず、雇える人員も最低限で……その日担当だった職員も、酷い風邪だと聞いていたのだが、蓋を開けてみれば過労による発熱だった。
 院長の説明を聞けば聞く程、経営について専門的な知識がない真でも、このまま行ったら待ち受けているのは破綻だと分かるような状態で――。
 孤児院がなくなったら、ここに住む子供達は一体どうなるのか。
 彼らの行く末を考えただけで背筋に冷たいものが走った。
 本人はこういうと恐らく否定するのだろうが――困っている者を見ると放っておけない性分の彼が、孤児院の惨状を放っておけるはずもなく……。

 真はまず、孤児院に運営資金として莫大な寄付を行った。
 凄腕のハンターである彼は、もう遊んで暮らせるほど十分な貯蓄があったのだ。
 ちなみに、仕事中毒の真は相変わらずバリバリと仕事を引き受けている為、貯蓄が減ることもなく現在進行形で増え続けている。
 その為、孤児院に寄付した額くらいまたすぐに取り戻すだろうと思われる。

 話を戻すが……件の孤児院は、その資金で改修を行い、職員も十分な数を雇うことが出来るようになった、子供達の世話も行き届き、職員が無理して働く必要もなくなった。
 資産が出て行くばかりではいずれまた破綻するので、収入を得る方法も考えなければいけないけれど……ひとまずこれで暫くは凌げるだろう。
 別に恩を売るつもりなど更々なかった真は、やることをやったらそれで終わりにするつもりだったのだが、孤児院の子供達に懐かれていたことと、院長や職員達に懇願されたこともあり、特別顧問という形でこの孤児院に関わっている。
 ――本当は、莫大な出資をした真への感謝の気持ちとして、孤児院に『鞍馬』の名を冠したいと言われたのだが、それは丁寧に固辞した。
 なりゆきでこうなっただけだというのに、自分の名など残されたらたまったものではない。

 さて、その当の特別顧問は今日何をしに来たかというと、子供達の相手をしに来たのだ。
 顧問になったからには何もしないのもどうかと思うし。遊び盛りの子供達の相手は、何人いたって足りないくらいだし。
 何より、『何もしないこと』が苦手な真にとって、無邪気な子供達と遊ぶ時間は、忙しい日常のちょっとした癒しにもなっていた。
「真先生! 今日もお姫様遊びしましょ!」
「ん? んー。まあいいけど……」
 にこにこ笑顔で寄って来た女の子たちに曖昧な笑みを返す真。
 少女たちの言う『お姫様遊び』は具体的に言うと、自分達だけでなく、色々なものを飾り付けたりドレスアップして遊ぶというものだ。
 その中には当然、真も含まれる。
 一度髪結いがしたいという彼女達に任せたら、真の長い質の良い黒髪が甚くお気に召したらしい。
 それ以来、ここに来る度に髪を結われていたのだが、どんどんエスカレートしている気がする……。
 それもこれも、女装が似合ってしまう真がいけないのだろうか。
 美しさは罪である。
 そこに身体の大きな男の子が、満面の笑みで割って入った。
「それだと皆で真先生と遊べないじゃん! それより、皆でチャンバラしようぜ!!」
「チャンバラ! 私もやりたい!!」
「わたしも!!」
 男の子の発言に笑顔で挙手した少女達。
 思わぬ反応に、真は目を丸くする。
「女の子達までチャンバラをしたがるなんて珍しいね。どうしたの? チャンバラが皆の間で流行してるのかい?」
「あのね、私達、先生から聞いたの!」
「真先生は凄腕のハンターなんだろ? 強い敵を倒して、皆を守ってくれてるって」
「だから最近皆でチャンバラして、戦う特訓してるんだ!」
「なるほど、そういうことか……。でも、歪虚は大分減って来ているよ。君達が戦う術を得る必要はないんじゃないかな」
 苦笑しつつ、順番に子供達の頭を撫でる真。
 そう。邪神戦争が終結し、歪虚の数は減少の一途をたどっている。
 こんな小さな子達が、戦いに赴かなくて済むはずなのだ。
 ……否、そうしなければならない。
 子供達はそれでも真に縋りつきながら食い下がる。
「でもさ、減っただけで完全に消えた訳じゃないんだろ? 俺達も先生達や、皆を守れるようになりたいんだ!」
「わたし、大きくなったら真先生みたいになりたい!」
「ボクも! ねえねえ、どうしたら真先生みたいになれるの?」
「そ、れは……」
 目を輝かせて、こちらを見上げる子供達。
 真はガツンと頭を殴られたような気分になる。
 ――自分は、こんな子供達に尊敬の眼差しを向けられるような存在ではない。
 ここに来ているのだって、本当は自分の為だ。
 こんなちっぽけな自分でも誰かの役に立てると、分かり易く実感できるから。
 それに……私は、この子達と同じくらいの年頃の、年端も行かぬ少年少女を手にかけたことがある。
 事情があった。あの時は仕方がなかった。
 皆がそう口にする。
 だからと言って、自分の過去の行いは消すことができない。
 ……消してしまったら、許してしまったら。
 一体誰が彼らの命を背負うというのだろう。
「……真先生? どうしたの?」
 少女に顔を覗き込まれて、ハッと我に返る真。
 人の好さそうな笑みを張り付けて、子供達を見つめる。
「……私みたいな人間になって欲しいとはあまり思わないけど……そうだな。皆には自分に恥じぬ行いをして欲しいかな」
「自分に恥じぬ行い?」
「それってどうすればいいの??」
「ちょっと難しかったかな。心の片隅に覚えておいて。大人になったらきっとわかるから」
 子供達の目線を笑顔のまま受け止める真。
 自分は、こんな偉そうなことを言えるような存在ではないけれど。
 それでも……この、目の前で瞳をキラキラと輝かせている子供達の道が。
 自分のように暗がりを這いずるように生きて来た自分とは違い、明るいものであるように願ってやまない。
「……じゃあ、皆。今日はかけっこをしようか」
「えー。真先生、かけっこって戦いの役に立つの?」
「勿論役に立つさ。逃げるにも戦うにも足の強さは必要だよ」
「それならやる!!」
 立ち上がって、子供達を促す真。
 走り出す子供達が、太陽の光を浴びて輝いて……彼は眩し気に目を細めた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
お世話になっております。猫又です。

お届けまでお時間頂戴してしまい、申し訳ありませんでした。
真さんのノベル、いかがでしたでしょうか。前回のおまかせノベルの続きみたいな感じになりました。
真さんはきっと、邪神戦争締結後も、自罰的なところは変わらないのかなーとか思っております。ハイ。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
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2020年07月10日

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