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『テンプレなのかそうでないのか』
桃李la3954

 その辺って、悩ましくなる事もあるよねぇ。
 ……ああ、SALFに寄せられた調査依頼の話だよ。
 何だか怪奇現象が起きてるって噂のある廃屋の“あれ”ね?
 興味持ったコたちが何人か不法侵入して行方不明になってるって話も聞いたよ。
 ……だからこそSALFに正式な依頼があったって事でもあるんだろうけど。
 今の時代、ナイトメアって言う――言わば“本物の怪異”みたいなのが当たり前に居るってはっきりしてる訳だからね。
 だから多分、ただ怪奇現象とかオカルト的に無邪気に騒いでた時代よりは、まぁ真面目に公で取り組める土壌はあると思うよ。うん。

 でもやっぱり、怪奇現象の噂がある廃屋に行方不明者って、まるっきりテンプレだよねぇ。
 ……まぁ、本当の所はテンプレなのかそうでもないのか、実際に行って確かめてみなきゃわかんないけどね?



 ――行方不明者の捜索。怪奇現象の究明。原因がナイトメアであった場合はそれの討伐。
 SALFに寄せられた調査依頼の内容としては、纏めてしまうとそんな感じになる。

 で、今回のこの調査依頼はライセンサー向けに結構広く募集されてた物みたいなんだけど……結果として正式に引き請けたのは俺だけになっちゃってた、らしい。
 何か事務的な方面で色々とすったもんだがあったみたいで、今回の調査、桃李(la3954)さんだけにお願いする事になっちゃうんですけどいいですか? って、すごーく申し訳なさそうにオペレーターさんに言われちゃったなら――まぁ、いいよって答えるしか無いもんね?
 ……ううん。一度興味を持って受けた依頼、後から断る気なんて元々無いけどね?
 俺が依頼を受ける基準はただ一つ。面白そうか、そうじゃないかだけだから。
 退屈しなさそうな依頼なら、俺は何でも歓迎だよ?

 で、今回のこの調査依頼は――ちょっと内容聞いてみた時点で、面白そうかなって思った訳。
 それだけが請けた理由で、ただの気まぐれ。

 ……他に理由はホントに無いのかって?
 そうだねぇ。じゃあ、SALFらしく“世界を救う為”とでも言っておこうかな。
 ナイトメアが関係する事件かそうじゃないのかわからない様な事件だって言うのなら……SALF的に可能性を潰しておくのは重要じゃない? もしナイトメアが原因だったら速やかに解決しておくのも勿論重要だし? 他の人達が誰も請けなかったって言うのなら、余計にね? ほら、誰かがやらなくちゃでしょ?

 ……なんてね。まぁ、その気になればそんな建前も語れるよってだけの話。

 さぁて。現場では一体何が待ち受けているのかな、っと。



 うーん。雰囲気満点だね。今時こんな場所もあるんだって逆に感心する位。

 現場の廃屋に到着するなりの感想としてはそんな感じ。庭の草木はどんより枯れてたり蔦だらけだったりとどれだけ放っておかれたんだろうって位に人の手が入ってなくて、建物自体も朽ち掛けてて文字通りの廃屋。それと、予想していた以上に意外と豪邸。……まぁ、あくまで“元”が付くけどね。
 これ、一人で調べるとなるとちょっと手間になるかもしれない。

 ……まぁ、ここまで広いとちょっとしたアトラクションみたいな感じではあるよね。うん。

 思い、廃屋の――元の豪邸の見取り図と実際の現場を照らし合わせつつ建物へと向かう。お邪魔するよー? と気が抜ける様な声を掛けつつ、中へと足を踏み入れた。
 屋内もまた、雰囲気満点。床とか場所によっては絶妙に軋むし、時々それっぽい穴が開いてたり壁が裂けてたりしてる。無造作に残されている調度品や什器色々も欠けてたり割れてたり壊れてる物が殆どだし、何か、部屋の全面に赤黒い様な染みがある部屋もあった。……うわー、血でもぶちまけた痕跡みたいでこわーい。

 でも、肝心の“怪異”が出て来ない。

 噂の怪奇現象自体の概要としては、昔この豪邸に済んでいて、惨殺された一家全員の幽霊が出るって話。で、ここに来て彼らの姿を見た者はこの廃屋に引き摺り込まれてしまう……とか何とか。
 まるで怪奇譚のテンプレにしか聞こえない話なんだけど、それで実際に行方不明者が出てるとなればそれなりの理由がある事だけは言えるよねぇ。うーん。どういう風に引き摺り込むのかなぁ……って、あ、今それっぽい人影が見えた。子供かな? ちょっと追い掛けてみよう――あー、確かに幽霊か何かっぽいぼんやりした感じだね? そう見える“何か”があるって事だけは間違いないか。誰かがその気で何か仕掛けてる可能性、目の錯覚、ナイトメアの仕業――さて、どれかな。って――……

 ……――うわびっくりした。驚いたなぁ。

 え、驚いてる様に見えないって? そんな事無いよ。驚いてる驚いてる。へー、そういう事かぁ。……ん? ああ、その辺はねぇ。イマジナリードライブで結構どうとでもなるんだよね、実は。
 そういう事だから。うんわかった。

 地下だね。



 見取り図に“無い”事を確かめて、地下に向かう。……それでも“聞いた”場所には地下に向かえる扉と梯子があった――表沙汰にされてない、隠し地下。

 ここかぁ。……確かに、嫌ぁな雰囲気が漂ってるねぇ。

 中は暗くて見えないし。でもまぁ、最後の始末、付けに行かなきゃね。
 ……「ここに巣食うナイトメアを倒してくれたなら、皆、成仏してくれる」らしいから。
 お仕事お仕事。頑張るよ?

 努めて静かにEXISを取り出し装備する。黒を基調にした装飾と黄色い飾り房が特徴的な鉄扇、双蝶【鳳】。開き掛ける形で両手にそれぞれ持ち、戦闘準備。うーん。暗い中だと着物汚れちゃいそうでちょっと気になるかな……ま、いっか。余計な心配してたらそれこそ却って汚れちゃうかもだしね。

 じゃあ、行こうかな。



 閃光弾って程じゃないけど、こんな事もあろうかと用意していたちょっと強めの光源を地下へと先に放り込む――それから、一気に躍り込む事をした。おー、居た居た。眩しがってて動けない、触手が複数絡まってるみたいな異形。その側に積まれてるのが行方不明者かな――ちゃんと生きてるといいけど。
 思いながらも動きの方では攻撃を優先。イマジナリードライブに働き掛けEXISを起動して、攻撃対象の異形――ナイトメアを一気に切り刻む。くるり舞う様にして躍動、狙いを定めず、ひたすらに全面を。対象が人型じゃないからまず動きを止めるとか遣り方わかんないし、そもそも話が出来る相手の気がしない。……と言うか、来る人を次々引き摺り込む“これ”を何とかしたくて“ここの人達”は色々知らせようとしてくれてたって事らしいから。倒すのに遠慮しなくていい相手。

 程無く、異形のナイトメアは鱗粉が微かに浮かび上がる斬撃の線に沿って細切れになる。こちらが動きを止めたのと、肉片が滴り落ちるのがほぼ同時。……いやぁ、危ない所だったよ。え、全然そんな風に見えない? そうかなぁ。なけなしの不意打ちが決まらなかったらどうなってたかわからない、って思わない? ……不意打ちじゃなくてもあっさり何とかしそう? でも今の場合こうするのが一番簡単で効果的だったかなーって……ほら全然余裕っぽい? 買い被りだよ買い被り。運が良かっただけだって。ね?

 あ、動いたね。

 傍で獲物よろしく積まれてる人達、一応まだ生きてそう。なら早い所、救急の人頼まないとね。

 やっとこれで一件落着した訳だから。
 そういう事で、宜しくね?

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 桃李様には二度目まして。
 先日のおまかせノベル、お気に召して頂いた様でほっとしております。
 今回はシングルノベルの発注有難う御座いました。そして大変お待たせしました。

 内容ですが、原因の方、折角なので両方っぽい感じを選んでみました。あとイマジナリードライブって拡大解釈出来そうな気がして、能力IF部分をこんな感じに流してもみました。
 そして前回と同じく一人称方面にもなっております。口調や人物像、考え方等に違和感や読み違えが無ければいいのですが……如何だったでしょうか。

 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。
 では、次はおまけノベルの方で。

 深海残月 拝
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グロリアスドライヴ
2020年07月20日

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