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『姿偽る悪意2』
ネムリアス=レスティングスla1966

 ネムリアス=レスティングス(la1966)は今、沈んでいた。
 霞んでいく視界の中、幻想的にすら見える海の深淵へ。意識も暗闇へと沈み、何も聞こえない――……はずだった。
 が。
 意識を手放す寸前、不意に誰かの声が頭の中に響いたのだ。

「まさか、この程度で逃げ出すつもりか?」

 俺はこの声を知っている。これは俺の声だ。
 夢の中の自分。
 それは若干俺を責めているようにも聞こえる。
 暗闇の中、その声だけの俺は続けた。

「散々殺めておいて今更、ビビってるのかよ?」

 ビビる? 何にだ?
 しかし俺は声が出せず、何も言葉を返せない。
 夢の俺の声は俺を無視して、決定的な一言を放った。

「あの人は死んだ。【お前/俺】がその手で灰にしたんだ。分かってるだろ?」

 ――!!!

 瞬間、ネムリアスは目が覚めた。
 すぐに自分の状況を把握し水中で身を起こす。機械の義手に搭載した試作ブースターを展開、噴射した。
 ざばっとミサイルのように海から飛び出したネムリアスは、そのまま呼吸を整えながら飛翔する。
(そうだ、俺に『そんな資格は無い』)
 ネムリアスは意識の片隅で聞いた自分の声に応えていた。

(あの人は俺が殺した)

 なのに今更、どんな顔をして同じ姿だから倒せないなんて言うつもりなのか。
 甘えていた自分自身の感情に、ネムリアスは仮面の下の口元を苦笑で歪める。
 一度殺しているくせに今度は手を出せないなんていうのは、罪悪感による自己を正当化するだけの傲慢な偽善でしかない。
 ネムリアスには許しを請う相手も己を正当化するどんな弁明も手段も存在せず、今対峙しているのは姿を真似ただけの、あの人の偽物ですらないのだから、そんな感情は無意味だ。

 ネムリアスは全身に蒼炎を纏った。
 心を鋼鉄へと変え、感情を抹殺し殺戮機械へと変わる。
(もう奴の姿に迷わない)

 上空を飛行するネムリアスに、『彼女』の姿をしたナイトメアが海際に立ち指の刃を伸ばして来た。
「もうそんなモンには中らねえ!」
 上手く旋回して指を回避したネムリアスは、GG『ケルベロス』を発動する。
 装備していたショットガンが巨大なガトリング砲に変化した。ナイトメアに向けて容赦なく一気に全弾を撃ち尽くし、ナイトメアどころかその周囲さえも掃射する。
 猛烈な攻撃で蜂の巣にされたナイトメアは体を飛び散らせ、その銀色の内部を露わにした。
「あれは!」
 極小だが光を反射して輝くものを、ネムリアスは見逃さなかった。
「そうだ、アレが奴の弱点だ、思い出したぜ!」
 あの小さな光るものはコアだ。
 液体金属を操る核となるもの。それを破壊すれば奴を倒すことができる。
 ネムリアスはコアの位置を見失わないよう、銀色の液体金属が閉じる前にGPS付きの弾を素早くリロードし、撃ち込んだ。

 もはやネムリアスの心を読んだ姿をしていても無駄だと悟った銀色のナイトメアは、再び形を崩して変形しだす。
「どうするつもりだ?」
 すると奴は巷の漁師に恐れられている海の化け物、シーサーペントの姿になった。
「!!」
 全身を青い鱗が覆い、長い尻尾、棘に皮膜が張られたトサカや翼のようなものまで生えている。
 シーサーペントはドボンと自ら海に飛び込み海中に潜った。
 さっき撃ったGPSでナイトメアの位置を把握しつつ、注意深く海面を見つめるネムリアス。
 突如海竜は水面から勢い良く飛び上がり、上空のネムリアスに向かって全身から液体金属の水圧カッターを放って来る。
「何ッ!!」
 さっきまでの攻撃よりも鋭く、攻撃範囲も広い。
 ネムリアスは義手のブースターを駆使して懸命にそれらを避けながら、体勢を立て直して銃を撃つ。
 シーサーペントはまた海中に身を潜めた。
 コアを破壊しない限り奴を倒せない。
 ならば。
 ネムリアスは意を決した。

「次に奴が姿を見せたら決着をつけるッ!」

 シーサーペントが海上に飛び上がり、再び水圧カッターを繰り出す。
 ネムリアスはあえてその中に突っ込んで行った!
 ブースターを限界まで加速させ、致命傷になり得る攻撃だけを最小限の動きで避ける。
 カッターが仮面をかすめ、左の二の腕を切り裂き、脚を、胸元を傷付けて行くが、ネムリアスはそれらには一切構わず奴に向かって急降下した。
 GPS情報からするとコアは奴の頭にあるようだ。
 ネムリアスの接近に、海竜は一飲みにしてやるとばかりに大きく口を開けた。
「そっちから口を開けてくれるとはおあつらえ向きだぜ!」
 コアの位置を正確に見定め、
「喰らえぇえーーーッ!!!」
 全身全霊を込めた拳を突き出した!

 シーサーペントの口から入った拳が脳天を突き抜ける。
 コアが砕け散ったのが分かった。

 ギャアアアアーーー……!!

 ナイトメアは断末魔の悲鳴を上げて、その形が崩れ始める。コアがなくなり形を保てなくなったのだ。
 まるでアイスが溶けるかのようにシーサーペントの形を失い、銀色のどろどろになった元の液体金属がそのまま海に溶けて行った……。

「は、ハハッ、ザマァみやがれ!」
 空中で振り返ったネムリアスは崩れていくシーサーペントを見て、自分が見事やってのけたことを知った。
 だけどネムリアス自身も限界で。
 ブースターが切れ、なす術もなく真っ逆さまに海に墜落する――。


 あちこちに怪我をしてボロボロになったネムリアスは、地元の漁師に救助されていた。
 何人かの男達のネムリアスを気遣う声――大丈夫かとかしっかりしろという――が彼の周囲で飛び交う。
 応える気力も動く体力もなく、ネムリアスは救命士にされるがまま救急車で運ばれて行く。
(どうにか、まだ生きてるらしいな……)
 皮肉っぽく胸の内で独り言ちた。
 それでも、誰も見ることのない仮面の下のネムリアスの顔は、どこか晴れ晴れとしていたのだった――。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
早速前回の続きのご注文ありがとうございました!

今回はドラマチックな展開の後編ですね!
強敵を倒すシーンは特に、胸アツになるよう書かせていただきましたが、ご満足いただけると嬉しいです。

一点だけ、タイトルにある『2』ですが、発注文ではローマ数字でしたが、それは機種依存文字となっておりまして、反映時にご希望通りに表記されないことがありますので、普通の『2』とさせていただきました。ご容赦ください。
その他のことでこちらの受け取り方が違う所やご不満な部分がありましたら、些細なことでもかまいませんのでご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

またのご縁がありますことを願っております。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年08月13日

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