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『ドラマ「コールド・ロータス」 NG集』
柞原 典la3876

●シーズン1 第1話「神の助け」より 刑務所を逃げるシーン
「くそ! 囚人を避難させた時は何もいなかったじゃねぇか!」
「その後に誰かさんが来たっちゅうことやな」
「何でお前そんな冷静なんだよ!」
「よくあることやし」
 マンティスは脚が早い個体だった。どんどん距離を詰められる。すぐ後ろまで、固い爪の音が聞こえている。
「絶対手ぇ離すんじゃねぇぞ! 死ぬぞ!」
「逆や。手ぇ離さんと、兄さん、死ぬで」
 手を振り払われた。勢いでヴァージル(lz0103)は前に転びそうになる。振り向くと、刀身が光るナイフを持った柞原 典(la3876)の背中が見えた。マンティスと正面から向かい合っている。

●NGシーン
「くそ! 囚人を避難させた時は何もいなかったじゃねぇか!」
「その後に誰かさんが来たっちゅうことやな」
「何でお前そんな冷静なんだよ!」
「よくあることやし」
 マンティスは後で合成するので、その時はグスターヴァス(lz0124)が、
「ウフフ……典さん可愛いですよハァハァ……」
両手を前に出して(鎌の真似だったのだろうが、どちらかというとゾンビだった)追い掛けてきていた。気持ち悪さでヴァージルの必死の形相も、面白がっている典の表情も演技というか割とガチである。
「絶対手ぇ離すんじゃねぇぞ! 死ぬぞ!」
 心が。
「逆や。手ぇ離さんと、兄さん、死ぬで」
 手を振り払う典。
「あっ」
「えっ」
 タイルがたまたまめくれかかっていたところに、ヴァージルは爪先を引っ掛けた。
「アアアアアアアアア……」
 ズシャアアアアア! と、マンティス役とは別の意味で両手を前に出したヴァージルは胸から床に突っ込んだ。ワックスが掛かったその上を、するする〜っと滑って行く。美しいフォームだ。この時点で典は腹を抱えて大笑いしており、グスターヴァスが後ろからそっと抱きしめようとするのを裏拳でお断りした。
「兄さん……手ぇ離したらあかんことなった……え、これ採用したらあかんの? めっちゃおもろいやん。伝説なるで」
「こういうの、後から症状出るから気を付けるんですよ……」
 すぐにテイク2が撮られたのは言うまでもない。

●シーズン2 第4話「偽りの証言をするなかれ」』より 失恋ヴァージルを慰めるシーン
「泣くな、兄さん」
「嬉しそうだな」
「そお? 心外やなぁ。俺、薄情者に見える?」
「お前は他人の不幸が蜜の味だろ」
 涙の跡が残る目元を拭う。典はその隣に座ると、ヴァージルの頭をくしゃくしゃっと撫でて微笑んだ。
「俺から余所見するからやで?」

(ヴァージル、ぽーっと典の顔を見上げるが)

「……なぁんてな。ま、どのみち、これに懲りたらお利口さんにしとき」
 微笑みはそのまま、手を下ろす。魔法が解けたようだ。ヴァージルは、まだ漂ってくる魔性の気配を振り払うように首を横に振り、
「美味いもんでも食わないとやってらんねぇ……俺は行く」

●NGシーン
「俺から余所見するからやで?」
 典は画面映えする艶然とした微笑みを浮かべた。誑かされたい男ナンバーワン(CL現場調べ)の百二十パーセント本気の色気。ヴァージルはぽーっとその目を見つめて……。
「……なぁんてな。ま、どのみち、これに懲りたらお利口さんにしとき」
 典がふっと雰囲気ごと表情を変えるが、
「……」
「……兄さん?」
 ヴァージルはぽーっとしたまま口を半開きにして典の顔を眺めている。
「はぁ……」
「兄さん!」
 ぺち、と、掌を頬に軽く当てる。
「はっ! えっ!? あっ!?」
 そこでようやくヴァージルは我に返った。真っ赤にした顔を両手で覆い、典の膝に飛び込む。腹にぐりぐりと額を押しつけ、
「もう! もう! 典の馬鹿! 本気にしちゃうからやめろ!!!!」
「なんでやねん台本通りやろ! なあ?」
 ゲラゲラ笑っているのは典だけで、彼が同意を求めた他スタッフたちは、皆一様に顔を背けたのであった。
「えー、なんや、俺が悪いみたいな……兄さん、俺とどうなりたい?」
「飼われたい……」
「はっはっは。食費自分で出すならええで」
 ゾンビみたいな呻き声を上げて自分の腰にしがみつくヴァージルの頭を、典は笑いながら撫でていた。

 数時間後にヴァージルはようやく正気に戻ったという。

●シーズン3 第3話「病める時も健やかなる時も」より 個室内でのシーン
 典はヴァージルが思うより雑だった。夕食を済ませて、ひとっ風呂浴びると、濡れ髪のまま、部屋着を引っ掛けてノートパソコンを開いた。煙草をくわえながら今日の分の報告書をしたためる。
「典、風邪引くぞ」
「んー」
 適当に返事をしながらキーボードを叩く。煙草が短くなったところで、ヴァージルは見ていられなくなってドライヤーを持ち出した。一本目を灰皿で揉み消し、二本目を出そうとする手を掴む。
「ストップ。乾かすまで待て。灰が飛ぶ」
 典はされるがままだった。画面を見ながら、手探りで何か取ろうとしている。
「これ?」
「ああ、おおきに」
 ヴァージルがタブレットを渡してやると、典はさっさと受け取ってなにやら資料を呼び出している。

●NGシーン
 煙草をくわえながらパソコンを打っている典。ちなみに、モニタが映らないと言う事だったので、適当なことを入力している。
『今日の兄さんがやったこと。コーヒー買ったのを忘れてもう一本買ってくる。自分と俺の小道具指輪を逆にはめて自分の関節に引っかかって首を傾げる(「むくんだのかな?」とか言う。気付いて良かった)。「ヘルシーなんだ!」と言いながらサラダにかけたマヨネーズがカロリーオフじゃなくて普通のカロリーのやつだった』
 煙草を短くするためにすぱすぱ吸って、それを灰皿で揉み消して二本目に手を出した時点でヴァージルがその手を掴み、
「ストップ。乾かすまで待て。灰が飛ぶ」
 そう言ってドライヤーを持ち出し、乾かしてくれる、と言うのが台本の流れである。灰皿を押しやったところまでは良かった。
 かちっ。
 ぶおおおおおおおおお。
 ばさばさばさー……。
 机の上にわざと散らかしてあった小道具の書類が吹き飛んだ。
「……んっふっふっふっふ」
 じわじわ面白くなって典が笑い出すと、ドライヤーのスイッチを切ったヴァージルが典の肩口に額を埋めた。スタッフたちが笑いながら飛んだ書類を拾う。
「ちくしょおー!」
「耳元で叫ばんといてや。はい、やり直し」
「手伝って」
「えー?」
「ていうかお前、パソコンに何打ってんだよそれ」
「兄さんの迷場面集や」

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
NG集ということでしたので、S2最終話で嫌な殺意見せていたグスターヴァス含めてわちゃわちゃした感じでお送りしました。NGってこう言うわちゃわちゃ感が良いですよね……画面外から他スタッフさんの声入ったり。
役者さんの典さんも魔性気味なんだろうな〜と思って書かせていただいております。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年08月18日

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