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『ぐろどらんど』
cloverla0874


 SALFのフリースペースで、難しい顔をしてスマートフォンを弄っているclover(la0874)。その画面には、最近リリースされたソーシャルゲーム「ぐろどらんど」のガチャ画面が映っていた。
「えいっ! 今度こそー!」
 何やら気合いを入れて「十連を回す」ボタンをタップする。出てきたのは、装備アイテムと既に入手しているキャラクター数体だった。cloverは額をテーブルにガンッ! と勢いよく叩き付けて泣き出した。
「何やってるんですか! そんな思い切り叩き付けたら痛いに決まってるでしょ」
 通りすがりのグスターヴァス(lz0124)が慌てて駆け寄った。相手の上体を起こし、うるうるした瞳を見て額をさする。
「おお、お可哀想に。よちよち。そんなに痛かったんですね」
「課金」
「は?」
「全然ガチャ当たらないーっ! なんでーっ!?」
「まあそりゃ運ですからね。何のガチャですか?」
「これっ!」
「ソシャゲのガチャ……あら、見知った顔が紹介されてますね」
「これねっ、実在するライセンサーをキャラクター化したゲームなんだけど……」
 ほんわかした平仮名タイトルで、可愛くSD化されたキャラ達が戦うが、ストーリー自体はわりとシリアス目で、そのギャップが良いと評判なのだそうだ。
 そして目玉が「ガチャ」と呼ばれるキャラクターランダム入手システム。ライセンサーはもちろん、討伐後ならエルゴマンサーも仲間に出来るそうだ。いわゆる「光落ち」ということらしいが、サイドストーリーを読むと「お前本当に改心したのか?」と聞きたくなるような台詞がバンバン出てくる。闇。
「ああ、なんか許可が欲しいって言われましたね。許可しましたけど。欲しいキャラが出ないんですか?」
「そうなんだよ、もうこの前の依頼報酬分全部使っちゃったのに……っ」
「痛いのは懐でしたか……そんなにお金をつぎ込んではいけませんよ」
「……おじさん」
 そこで突然冷静になるヴァルキュリア。
「無理のない課金は無課金なんだよ?」
 目に光がない。おそろいだね。
 という与太は置いておくとして、
「一番好きなキャラを引けてないんですか?」
「一番の推しはLVもスキルもカンストさせてるよ? この☆5のエルゴマンサーっ♪」
 画面を見せつつ、ぐれんのわんこをもふもふしている。
「あら、可愛い。素人目にも数値がやばいことはわかりますね」
「よしよしっ、今日も強いぞっ!」
「それにしても、推しが来てるんだったら別に他はこだわらなくても」
「そう言う問題じゃないのっ!」
「何のキャラが来ないんですか? 巨乳?」
 グスターヴァスが尋ねると、cloverは相手の両肩をがしっと掴み、
「……おじさんが出ないのっ! なんで俺のとこ来てくんないのーっ! 千紘おにーさん(☆4)はすぐ来てくれたのにっ!! おんなじ☆4なんだから来てよーっ!」
「呼んだ?」
 そこに、当の地蔵坂 千紘(lz0095)が通り掛かった。都合良く人が通り掛かる。それがグロリアスベースである。
「あっ、千紘おにーさん! 『ぐろどらんど』やってる?」
「チュートリアルまでやった。最初のガチャ引いたら自分が出て笑っちゃった」
「千紘さんとかクローバーさんを無限に甘やかせるならやろうかな……ゲームキャラなら不健康も何もありませんからね」
「SNS見てると、クローバーは固い上にHPも高くてヒーラーだからめちゃくちゃ重宝するって。タゲ取りもできるんでしょ? 僕も引きたいけど、ゼルク限定ガチャがこの前終わったばっかりだからしばらく来なさそうなんだよね。どうせなら確率高いときに引きたいし」
「千紘おにーさんはバフ、デバフと回復特化って感じだよね」
「そうなんだよ。支援系っていうか。だからクローバーとセットで編成して、バフ掛けて守ってもらいながら運用したいよね」
「うーん、ゲームでも味方を守っちゃう純情可憐な美少年……っ! 俺ってばなんて健気……!」
「健気というには防御力安定してるけどな。ところで、ぐっさんの性能どうなってんの? へぇ、アタッカー……自己回復もこなす。まあそうだよね」
「勇猛なる行軍とかありますからね」
「そっかー」
 そんなグスターヴァスとクローバーのやりとりに、「ん?」という顔をする千紘。
「それで、クローバーさんは今どこまでお話を進めたんですか?」
「とりあえずエルゴマンサーは何人か倒したかなっ。その内の一人が推し。ストーリーは結構辛かったけど、ガチャで引けた時はすごく嬉しかったっ!」
 その時の感動を思い出してにこにこしているクローバーである。膝に乗せたぐれんのわんこをぎゅうぎゅうに抱きしめた。画面を見た千紘が、
「うわあ、装備品もフル強化してあるじゃん。よくここまで素材集めたね? これってログボとかイベント報酬とか素材クエストじゃないと手に入らないでしょ?」
「頑張った!」
「えらい」
「でもこんなに頑張ってるのにおじさんが出てくれない……っ!」
「本物がいつもいるから良いじゃないですか。しかし、なんででしょうね……メインスピウォ、スナイパー、グラップラー限定ガチャですのに」
「ん?」
 引っ掛かりを感じて首を傾げるclover。
「あのさぁ……」
 千紘が口を挟んだ。
「ぐっさん、セイントだろ」
「……」
「……」
 顔を見合わせるcloverとグスターヴァス。
「おじさん、自分でも自分のことスピウォだと思ってたんだ……」
「狂化で良い気分になってるときはたまにどっちがメインか忘れますね」
 ウフフ……と少し浮ついたような笑みを浮かべるグスターヴァス。狂化にそんな作用はない。
「あぶないおじさんだ……また連行されてしまうかも」
「縁起でもないこと言わないでください。千紘さんは何のガチャで引いたんですか? 千紘さんもセイントでしょ」
「千紘おにーさんは、この前の二十代限定ガチャだったかも」
「ああ、やっぱりそこは二十代で扱われるんだ……」
 二人を見て、グスターヴァスも興味が湧いたのか、スマートフォンを取り出した。アプリストアにアクセスして検索する。
「ちょっとインストールしましょう。チュートリアルガチャでクローバーさん狙いますね」
「俺が美少年で健気なばっかりに、おじさんとおにーさんたちの心を惑わしてしまう……っ」
「顔より中身だよ」
 千紘が肩を竦める。
 その後、グスターヴァスが十連ガチャを回したところ、自分を五体ほど引いてしまい、「なんでなんでーっ!?」と悔しがるclover、腹を抱えて机に突っ伏す千紘、唖然とした本人が目撃されることとなったのであった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
性能とか色々考えるの楽しかったです。
同じレアリティの他のキャラは強化に使えるくらい引けるのに、目当てのキャラだけ何回ガチャ回してもこないってソシャゲあるあるですね……(虚ろな目)。課金は計画的に。
cloverさんは、グスターヴァスのメインがスピウォだと思ってるかどうかは定かではないんですけど、今回はうっかり勘違いしていたということで。
またご縁があったらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年08月20日

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