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『吹き荒れた激情の先に』
霜月 愁la0034

 急行し現着すると、霜月 愁(la0034)はまず視界を広く持って状況を確認した。敵は機械と触手が融合したような化け物──インベーダーの残党か?──で、タコめいた姿の大きめの姿が一体と、機械の球体のあちこちから触手がはみ出しているといった様相の小ぶりの敵が数体。それから、大きめの敵の周囲で、苦悶の表情で倒れる人々!
 まだ息があるのを認めると、打ち合わせ通りに行動を開始する。仲間に救助を急いでもらう間、自分は敵を引き付ける。突進する愁に、敵が向き直ってくる。
 迎え撃つ触手の一撃に、愁は勢いを緩めぬまま構えた槍を合わせた。イメージによって形を変えるエネルギーの刃が、緩やかなカーブを描く幅広の形状となって打撃を受け流す。続く数本の触手が繰り出してくる振り下ろし、薙ぎ払い、突き。それぞれに、刃の形状を変えながら巻き落とし、弾き返し……詰めた距離、最短経路で放たれた突きはガントレットで払った。
 肉薄する。鋭い三又へと刃を変えた槍を突き入れる。間隔の短い三つの傷が齎す苦痛に、ナイトメアが耳障りな声を上げる。
 『親玉』の悲鳴を受けてか、周囲の小型たちが反応した。けたたましい音を上げ、モノアイを騒がしい色彩で瞬かせながら大型の右側を迂回して数体が纏めて迫ってくる。愁は槍から片手を離すと、掌をそれらに向けてイメージを収束させた。一条の光の尾を引いて、直進する熱衝撃波が向かい来る敵を纏めて貫いていく。それまでの戦い方から、この距離から迎撃されることを予想していなかったのだろう相手は次々に衝撃に飲み込まれていく──その様を、見届け切る前に愁は振り向いた。
 二体、大型の左側面を回ってきたそれと視線が合う。派手に動く右側は陽動。そこからの奇襲と挟撃を狙って別に動いているところまで彼はしっかり把握していた。とはいえ、流石にここから迎撃は間に合わない、一度は相手の攻撃を食らう覚悟を決めて、しっかりと身構える。異形の球体のモノアイが妖しく輝き、そして、
「もがっ……!?」
 ──次の瞬間、愁は暗い水底を沈んでいた。

 呼吸がままならない肺の苦しみ。肌に張り付く服から伝わる水の冷たさ。ゆっくりと沈んでいく感触。じわじわと死への恐怖を味わわせるそれらの感覚──
(……何が起きだ?)
 だからこそ。それに対する怖れが希薄である己を自覚したことで、愁はあっさり冷静さを取り戻した。
 長距離転移、というのがすぐ思い浮かぶが、やはりすぐにあまり可能性は高くないと思えた。あの程度の個体にそんな能力があるなら先の大規模作戦はもっとはるかに困難だったはずだ。ナイトメアの行動原理からも合致しない。あれらは基本、殺すことではなく捕食することが目的なのだから。
 次に考えられるのが……。
(幻術。精神系ナイトメアだったのか)
 幻の苦痛を与えて精神を捕食する。思い至れば、倒れていた人たちが、苦悶を浮かべながらも大きな外傷は見当たらなかったことを思いだす。こちらの仮説の方が蓋然性は高いと確信して、次にシールドの状態を意識した。
 ゆっくり、非常にゆっくり消耗している。適合者でなければ直接に損壊を受けるのだろう精神への攻撃を肩代わりしている状況を確かめつつ、その緩やかさから、現実の自分が動きを封じられた状態で攻撃を加えられているわけではないとも推察する。となると……
(体感時間も引き伸ばして、効率的に摂取、ってとこかな)
 おそらく現実では数瞬の事なのでは無いか。なら、焦ることは無い……落ち着いて、抵抗の意志を固め、ようとした、ところで。
 ゆらり。暗く水が広がるばかりだった景色が揺れ、一つの姿が現れる。
(……!)
 まったく何も感じないというわけにはいかなかった。死んだはずの母親。優しく腕を広げ招いてくる。水中にもかかわらず、耳の傍で響くように聞こえた──もういいから、よく頑張った。もう苦しいのを我慢しないでこちらへいらっしゃいと。
 ……怒りは、自覚する。それでも、これが敵の攻撃と分かっている以上動揺を抑えることは出来た。似たような事が、過去に無かったわけでもない。そうして、ただ静かに佇んでいると、母親の姿はやがて消えていく。
 すぐにまた別の姿が揺れながら現れた。ああそういえば二体いたっけ、などと思って、平静を保とうとは……した。
 ……ぎり、と、砕けるんじゃないかと思うほど噛み締めた奥歯が音を立てる。現れたのは、友人の姿だった。水の中で藻掻き、苦しみの顔を浮かべ、こちらに懇願の視線を向けてくる。もう無理だ、楽になりたい……
 ──もう諦めよう、と。
(何を、言って……)
 否。
(何を 言 わ せ  た──!?)
 瞬間。吹き上げて、思考を真っ白に染め上げた感情を。愁はしかし、爆発させるのではなく純化させた。ただ一点に目的を研ぎ澄ませる。こんな狼藉、一刻も早く終わらせてやる──その死を以て。
 全身に意識を張り巡らせて、現実の己の肉体の感覚を探る。踵から捉えた感触を広げていき、同時に幻覚に入る直前の景色を脳裏に再生する。方向。距離。それらからあたりを付けて。
 まだ水底にある意識の中から、イメージを紡ぎ、注ぐ。
 ……赤が、咲き乱れる。

 衝撃と熱風を感じてから、愁の意識は現実へと帰還した。次々に生まれる火球が、蕾が開くように爆散しそこにいた敵を飲み込んでいく。球体がボトボトと地面に落ちて、動かなくなる。
 そのまま、愁は再び目の前の大型に向けて槍を振り上げた。その形状は今、針をそのまま巨大化させたかのように、一本に細く伸びでいる。深く、鋭く貫く。脆弱にも見えるその形はしかし、今の愁の強固な意志をすべて凝縮している。
 上がる苦悶は先ほどの比ではなく、巨体が激しくのたうつ。愁は身体を揺さぶられながらもしっかりと槍を握り続け、更にねじ込む。ナイトメアも抵抗し、愁の腕に胴体に触手を絡ませ、締め上げてくる──その膂力は巨体に相応しいもので、今度こそシールドが急速に消耗していく。どちらの生命が先に尽きるか、我慢比べの形となって……、
(……え?)
 この時になって。
 今更のように愁は、今の自分の在り様に驚いていた。今、自分は本気でキレてる? 見境を無くしたわけじゃないとはいえ、完全に怒りに添って、その為に行動を起こした? それで……。
 驚きは、そればかりでは無かった。今この状況は、下手をすれば相打ちかそれより悪い結果も有り得る、……けど。
 少し前までなら。それならそれで、受け入れたはずだ。何かこの命が、人々の為に使えたならそれで、と。
 だけど今ははっきりと思う。それじゃあ駄目だ。このままで妥協するな、更にできることを探せ──だって。だって。
(『諦めよう』だって? そんなことを、きみの顔で、きみの声で、よくも、よくも……!)
 ──きみとの日々で、僕は漸くまた未来への希望を持てたのに。
 その変化に戸惑いながら、それでも……腑に落ちた。ああ、そうか。僕にとってきみはいつの間にか、そんなに大切な存在になっていたのか。
 なら……驚いたけど、これは、きっと、悪い変化じゃないんだろう。
 激しい振動を伝える槍をしっかり握りしめて、必死で感触を探る。まだだ。もっと深く、より致命な部位となる位置を探りあてろ。

 やがて。
 巨体が、その命を尽き果てさせ、崩れていく。
 夢を──未来を飾る彩を、その内から吹き上げながら。









━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
凪池です。この度はご発注有難うございます。
なんか敵が凄い事してるようにも見えますがルール的にはただの知覚攻撃で、実際にはそのままで現実時間では数秒で戻ってきて相応に生命減ってるとかそんなんです。きっと(
やー、がっつり戦闘描写楽しかったです。てかシナリオ参加いただいたときから思ってましたが「フォルモーント」これ良い武器ですよね! こういうギミック武器はつい色々やりたくなります……やりすぎだったらごめんなさい。その他諸々含め。
改めまして、ご発注有難うございました。
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凪池 シリル クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年09月04日

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