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『鬼っ子達は、いつまでも』
鎬鬼ka5760)&アクタka5860)&マシロビka5721)&ユキトラka5846)&一青 蒼牙ka6105


「ご利用ありがとうございました、またどうぞお越しください」
 今シーズン最後の客が満足げな笑みと共に、手を振りながら帰って行く。
 その後ろ姿を、若女将のマシロビ(ka5721)と、気紛れな看板猫のようなアクタ(ka5860)が揃って見送る。
 鬼っ子達の住まいは今、料理上手な可愛い若女将のいる和風旅館として人気を博していた。
 だが旅館の魅力はそれだけではない。
「やっぱりボクの可愛さが目当てで来てくれる人って多いよねー」
 いやまあ多分、それもあるだろうけれど。
 実は若女将の話術も魅力のひとつになっていたのだ。

 この家を旅館にするという話が出た当初、マシロビには少し不安があった。
 旅館の女将など、自分に務まるだろうか……と。
 料理の腕には自信があるが、女将ともなれば前面に立ってお客様のおもてなしもしなければならない。
 物理的なことは問題ないとしても、お客様を楽しませるためには話術が必要不可欠。
(そんなこと、私に出来るのでしょうか……)

 しかし蓋を開けてみれば、それは杞憂だった。
 元々読書好きなマシロビは、本から得た得た雑学や薀蓄など話題には事欠かず、そればかりかどんな本にも書かれていない、誰も見たことがないような遠い異国の出来事までも、話して聞かせることが出来たのだ。
 ずっとこの旅館を守り続け、殆ど留守にすることのない彼女が、どうしてそんなことを知っているのか。
 それは――

「さーて、と」
 去りゆく客の後ろ姿が見えなくなると、アクタはうーんと猫のように背伸びをした。
「お迎えの準備しなくちゃねー」
 新たな客を、ではない。
 それぞれの場所でそれぞれの人生(鬼生?)を歩む仲間達が、久しぶりに帰って来るのだ。
 旅に出ていた鎬鬼(ka5760)とお目付役の一青 蒼牙(ka6105)、そして今もハンター業を続けているユキトラ(ka5846)。
(今度はどんな冒険をして来たのでしょう)
 マシロビはふと手の空いた時など、それぞれの今に思いを馳せることがある。
 どこでどうしているのか普段は想像もつかないけれど、今なら確実にわかった。
「いよいよ明日ですね」
 ここは、鬼っ子達の帰る家。
 彼らは今、それぞれに家路を急いでいる。

 そう、若女将の情報源は彼らだったのだ。


 一歩先を歩く鎬鬼の背中を見つめながら、蒼牙はしみじみと思う。
(鎬鬼様、本当に大きくなって……)
 まるで爺やの心境だが、それも仕方がない。
 蒼牙は鎬鬼の目線がずっと下にある頃からその成長を見守ってきたのだ。
 それが今や、同じどころか気持ち見上げるような位置にある。
 体を鍛えることに情熱を傾けまくっていたせいか、肩幅も広くがっちりとした体つきになっていた。
 ファナティックブラッドを巡る大戦が終結してから暫くは、近隣の街の復興の手伝いなど戦後処理に奔走していた彼らも、今では本来の目標に向かって歩み始めている。
 鎬鬼は長としての見聞を深めるため、そして「幻の地」ての手がかりを探るため、祖父や父の代から縁のある他の鬼種族の里を巡る旅を続けていた。
 蒼牙はそんな鎬鬼のお目付け役を自称し、一緒に旅をする日々を過ごして……もう何年になっただろう。
 気が付けば既に皆、酒が飲める歳になっていた。
(みなしごだった俺を拾って名を与えてくれた前族長への恩返しのつもりで、鎬鬼様の背を追いかけていたものの……)
 まさか逞しく成長したその背中に、前族長の面影を見るようになろうとは。
 これがしんみりせずにいられるか……

 などと感動する話で終わると思ったか!
 残念だったな! 鬼っ子はシリアス展開では終わらないのだ!!

「鎬鬼様、やっぱりそれ持って帰るの?」
 蒼牙が呆れ気味に尋ねた「それ」とは、鎬鬼が亀の甲羅のように背負った大きな石版のことだ。
 それを売っていた怪しげな店の主人曰く「遥か昔に一夜にして砂に没した、とある都の位置を示したもの」らしい。
 なるほどそこには何やら文字らしきものが彫られているが、すり減っていてよく見えない。
 はっきり見えたとしても読めないし、第一それは、もっと大きな石板の一部でしかないという。
 石板はあと3つ集めたら完成し、その時には不思議な魔法が働いて、書かれた言葉が理解出来るようになる……ということだったが。
「どう考えてもインチキでしょ、またマシロビに捨てられるよ?」
「そうかもしんねえけど、万が一ってこともあんだろ。その都ってやつ、もしかしたら幻の地と関係あるかもかもしんねえし」
 なるほど、流石に頭から信じているわけでもないらしい。
 昔なら「絶対本物だ!」と言い張っていただろうに、やはり成長したものだ。
「その言い分がマシロビに通じればいいけどね」
「そう言う蒼兄だってガラクタ背負ってるじゃねえか」
「これはガラクタじゃないよ、芸術品だ」
 とある海岸で拾った流木だが、そのフォルムが何とも魅力的で、蒼牙は一目で気に入ってしまったらしい。
「旅館の玄関に飾れば、きっと良い感じになるよ。花と一緒に飾っても良いかな」
「よし、じゃあどっちがマシロビ姐にガラクタ認定されるか勝負だ!」
「望むところだ、受けて立つ!」
 二人の行く手に懐かしい家が見えてくる。
 ただいまを言うまで、あと少しだ。


「強敵、難敵、相手にとって不足無し! 喧嘩は全力、それがオイラの流儀よォ!」
 ユキトラは今も現役のハンターだ。
 大きな戦いは終わっても、世界から歪虚が完全に消えたわけではない。
 歪虚ならざる脅威もある。
 今ユキトラの前にいる、この大きな獣のように。

 ユキトラは今、氷雪の吹き荒ぶ山の斜面に立っていた。
 この数年ですっかり背も伸び、体つきもがっしりと逞しくなった。
 それでも「父ちゃんより強くなる!」の願掛けをした髪は伸ばし続けている。
 どこまで伸ばせば父を超えられるのか、正直わからない。
 その目標がもう目の前にいない以上、確実に超えたと実感するのは難しい。
 いつかは切る時が来ると、切らねばならないとわかってはいるけれど……まだ、今ではない。

「オマエ、ユキヒョウって言うんだってな!」
 ユキトラは白い獣に声をかけた。
 名前に同じ雪をいただく同士、親近感を感じないでもない。だがこいつは人里に降りて家畜を襲ったりするらしい。
 その被害が人に及ぶ前に、ちょいと懲らしめて自分の居場所をわからせること――それが今回の仕事だ。
「オマエにもオマエの事情ってもんがあんだろーけどよ、あそこはオマエの居場所じゃねぇんだ」
 ユキトラは丸腰のまま拳を握る。
「だから……とっとと巣に帰りやがれ!」
 突き出される拳、だがユキヒョウは巧みにそれをかわし、岩棚の上に着地した。
 唸りを上げ、牙を剥き、体を低く伏せ――飛びかかる。
 鋭い爪がユキトラの肩口を切り裂き、赤い花が雪の上に散る。
 だが、それでもユキトラは怯まなかった。
 正面から真っ直ぐに突っ込み、頭の角を突き立てるように頭突きを食らわせる。
 ギャッと一声鳴いて、もんどりうって転がるユキヒョウ、だがすぐに体制を立て直し、再びユキトラに飛びかかる。
「上等だ! だったらコイツを受けてみやがれェ! うおぉぉぉぉッ!!」
 気合いと共に空を裂いた拳が、ユキヒョウの鼻面に炸裂した――


「女将さーん。ヒマだしお仕事手伝おっかー? これ運ぶー?」
 気ままな旅館猫アクタは、猫よりは役に立ってみせようと気紛れを起こした。
 夏は扇風機の前で溶け、冬は炬燵の中で溶けているアクタも、春と秋の気候の良い時だけは多少なりとも活動量が増える。
 気が向けば旅館内を闊歩しつつマシロビの手伝いをし、偶に余計な事をして叱られたり、気紛れに鎬鬼達と旅に出たり、仕事をしたりしなかったり……
 今日も仲間のお迎えはマシロビに任せ、気紛れに縁側でゴロゴロしたり、台所でつまみ食いをしたりとマイペースに過ごしていたのだが。
 勝手口の外に置きっぱなしになっていた野菜かごがふと気になって、中に取り込もうとしてみた。
 けれど――
「あ、重い無理」
 こういうのは力仕事が得意な人に任せよう。
 ほら、うちには大根をまな板ごとサクサク刻んじゃうような人もいるし?
「なんかもっと軽そうなのないかなー」
 それでも何か手伝った気分になりたいアクタは、楽そうな仕事を探して屋敷をうろうろ……
「あれ? この行李……しーのじゃない?」
 廊下に出されてるけど、なんで?
「今年もそろそろ大掃除の季節ですからね」
 通りかかったマシロビが答えた。
 年末は旅館の方が忙しいし、大掛かりな修繕をするには男手が必要だ。だからいつも、大掃除は皆が帰ってくるこの時期に済ませているのだ。
 なおアクタは男手にカウントされていないようだが、それはさておき――そのために、マシロビは少しずつ準備を進めていたのだ。
 そう、また断捨離の季節がやってくる。
 鎬鬼の行李はゴミ箱、いつの頃からかマシロビの中ではそんな認識が出来上がっていた。
「大丈夫です、本人に無断で捨てるようなことはしませんから」
「でも結局は捨てるんだよねー」
 しかも本人の目の前で。
「当然です、ゴミですから」

 もう断捨離なんて言わない?
 そんなこと言いましたっけ?


「へっくし!」
「鎬鬼様、風邪ひいた?」
「いや、これは……」
 誰かが噂している、しかも悪い噂だ。
 ムズムズする鼻を擦りながら、鎬鬼は「休業中」と書かれた札の下がった旅館の玄関をガラリと開ける。
「ただいま!」
「あっ、しーとそーだ!」
 廊下の奥からアクタが小走りに駆けて来る。
「しー、そー、おかえりー」
「おう、今帰ったぜアクタ」
「久しぶりだねアクタ、暫く見ないうちに……」
「なーに。もしかして成長したボクに見惚れちゃった?」
 ニマニマしながら見上げるアクタに、蒼牙は真顔で一言。
「いや、アクタお前……縮んだ?」
「縮んでないよ、ちゃんと伸びてるよ!」
 そりゃ頑張っても160cmちょいにしか伸びなかったし、相変わらず中性的だけど!
 寧ろそれがチャームポイントだし!
 その時、開けっ放しだった玄関から懐かしい声が飛び込んできた。
「おーう、帰ったぞー!」
「ユキトラ! 久しぶ……ぎゃっ!?」
 振り向いた鎬鬼の目の前にいたのは――
「でっかい猫っ!!?」
 光よりも速い勢いで廊下の突き当たりまで逃げる鎬鬼は、相変わらず猫が苦手らしい。
「猫じゃねえよ、ユキヒョウだ!」
 大きな猫科動物の後ろから、柴犬のサスケを従えた大きな鬼がぬうっと入って来る。
「なんか懐かれちまってな、帰ろうとしねえから連れてきた!」
 それを見ていたマシロビに「元いたところに返してきなさい」と言われるかと思ったけれど……
「とにかく、皆が無事で何よりです。さ、上がって。ご馳走たくさん用意しましたから、積もる話は食べながらでも」
「おう、宴会か! そう思って土産にこれ持ってきたぜ!」
 一升瓶を掲げて見せるユキトラ、だがアクタはその時の僅かな表情の変化を見逃さなかった。
「ゆー、まーたそんなにケガしちゃって」
 肩のところ、今痛かったよね?
「ケガばっかしてるとバカになっちゃうよー?」
「なんでだよ、怪我したの頭じゃねーし! つか治りかけだし!」
 まあその経緯も含めて、たっぷりと武勇伝を聞かせてやろうじゃないか。


 お膳の上には、マシロビが昨日から腕によりをかけて作った自慢の料理が所狭しと並んでいた。
 お客さんにも評判のいい、いかにも和の旅館といった手の込んだ和食は勿論、季節の料理や、まかないで作る素朴な手料理、そして勿論皆の好物も。
「やっぱりマシロビ姐のメシは美味いな! なんかお袋の味って感じだ!」
 鎬鬼は部屋の隅で寝そべっているユキヒョウをちらちら気にしながらも、胃に流し込む勢いで料理を頬張る。
 あれは猫じゃない、ユキトラがそう言うのだから大丈夫、猫じゃない怖くない。
 でも半径5メートル以内には近寄らせないように頼んでおいたけど。
 そのユキトラは、ユキヒョウとの出会いの経緯を大袈裟な身振り手振りを交えながら披露していた。
「そんでさ、オイラこいつの鼻っ面をガツンと一発殴りつけてやったんだ」
 そうしたら何故か懐いて喉をゴロゴロ鳴らし始めた、というわけだ。
「ああ、互いの力を認め合った的な?」
「男の友情あるあるだねー」
「こいつメスだけどな」
「ゆー、遂に禁断の世界に……」
「いや待て早まるなユキトラ、確かにトラとヒョウは近縁だけど――」
「そんなんじゃねぇっての!」
 それに、まだ話は終わっていない。
「でさ、なんでこいつが人里に降りてくのかと思ったら、棲家にしてる山に歪虚が居座ってやがったんだ」
 勿論それも軽く退治して一件落着。
 想定外のこととして歪虚の分の報酬は出なかったけれど、ユキトラは気にしない。
「こいつも助かって集落も平和になったんだから、それでいいさ」
 土産の酒を買うには充分だし、他にこれといって使う宛てもない。
「で、シノとソウガはどんな旅だったんだ?」
「俺はいつも通り、鎬鬼様のお目付役をこなしながら一族の再興や地位改善に努め――」
「よくぞ聞いてくれました!」
 蒼牙の声を遮るように、鎬鬼が例の石板をドンと床に置いた。
「これ見てくれよ、遂に見付けたんだ、幻の地の手がかり!」
 あれ、さっきは「かもしれない」とか「万が一」とか控えめなことを言ってませんでしたっけ。
 どうやら酒が入ったのと、久しぶりに皆と会ったことで理性のタガが外れたらしい。
 しかしマシロビは――
「ゴミですね」
 ばっさり。
 ついでに鎬鬼が持ち帰った他の「宝物」も、行李に入っていた魔除けの仮面も幸運を呼ぶミイラの手も、ドラゴンの卵の化石や半分しかない宝の地図(いずれも「〜とされるもの」)までも全てゴミ判定。
「使わないものは全てゴミです」
「使う! 使うから! せめて宝の地図だけでも……箪笥の下敷きにしていいから!」
 残りの半分を手に入れるまで、どうか!
「使い途があるなら仕方ありませんね」
 鎬鬼のなりふり構わぬ決死の説得の末、辛うじて全滅だけは免れた模様。
(他のお宝は後でこっそりゴミ捨て場から回収しよう)
 そんなことを企む族長様だった。
「ねーねーゆー、ボクにはどうしてたって聞いてくれないのー?」
「アクタはどうせのんびりダラダラしてただけだろ?」
「ひどいなー」
 図星だけど。
「今日だってちゃんとマシロビの手伝いもしたんだよー?」
「味見とかだろ?」
「ひどいなー」
 図星だけど。
「そんなアクタにもちゃんとお土産を持って帰る、俺って優しいよね」
 蒼牙が差し出したのは、リアルブルー由来の逸品という触れ込みの、音に反応して動く花のオブジェ。
「アクタ女子力高いし、花とか好きだよね?」
「好きだけどこれなんか違うー、なんでヒマワリがサングラスかけてるのさー?」
 蒼牙のアクタへのお土産って、なんか変なのばっかりだよね。
「まーにはちゃんとしたものくれるのにー」
「そりゃ、マシロビは怖……ほら、いつも帰る場所を守ってもらってるし!」
 慌てて言い直したけど、多分聞こえてたよね。その証拠に笑顔が怖い……
 けれど、例の流木は気に入ってもらえたようで、早速季節の花と共に玄関脇に飾られていた。
「俺の勝ちだね、鎬鬼様」
「むう……」
 勝ち誇る蒼牙に、鎬鬼の闘争心がボーボー燃え上がる。
「だったらもう一度勝負だ!」
「何で?」
「えーと、えーと……」
 しまった、酒のせいで頭が回らない!
 そこにユキトラが乱入した!
「あれやろうぜ、懐かしの雑巾掛け競争!」
「おっ、いいな!」
「いや、それはやめた方が良いんじゃないかな……」
 蒼牙は一応止めてみたが、それで止まる筈もないのはこれまでの経験から120%の確信がある。
「俺は遠慮しておくよ」
 肝心の蒼牙がこっそり抜けたことにも気付かずに盛り上がる、ヨッパライ二人。
 廊下の端に並んでスタンバイ、アクタの合図でよーいどん!
「うおぉぉぉぉ!」
「なんの負けるかぁぁぁ!」
 床板を踏み抜く勢いで雑巾を滑らせる鎬鬼とユキトラ!
 しかし廊下はガタイの良い兄ちゃんが並んで走るには狭すぎた。ぶつかる肩、弾かれてよろめき、なんのと押し返せば倍の力で押し戻される。
 おまけに面白がったサスケとユキヒョウが追いかけてきて――

 ごろズダーンめりめりバキッ!!

「いっててて……」
「おもっ、重いぞユキヒョウ! 潰れる!」
 襖を突き破って客間に転がり込む二人と二匹。
「あーあー、またまーに叱られるよー」
「俺は止めたからね?」
 他人事のように見下ろすアクタと蒼牙、だがマシロビのカミナリは彼らを避けて通ってはくれなかった。
 庭に正座を命じられる鎬鬼とユキトラ、そしてサスケとユキヒョウ。
「アクタさん、蒼牙さん。あなた達もです」
「あ、やっぱり? ……ってアクタは?」
 いない。逃げたな?
「普段マイペースにのんびりしてるくせに、こういう時だけは逃げ足速いよね」
 大人しくお縄につき、お白州に並ぶが如き三人と二匹。
「スイマセンっした……」
 ユキトラにとって、それは昔からの習慣である。刷り込みである。条件反射である。
 マシロビには逆らえないと本能が告げている。
 他の二人やサスケにとっても、それは同じだろう。新入りの猛獣でさえ大人しく三つ指ついて項垂れている。
 蒼牙とサスケはともかく、ガタイの良い鎬鬼ともっとガタイの良いユキトラ、それに大きな猛獣が一列に並んでしゅんと縮こまっている姿は、なんとも微笑ましい。
 その前に仁王立ちしたマシロビは、ほんのりと頬を染めていた。
 どうやら酔っているらしい。それも、かなり。
「やべーぞシノ、こうなったマシロビは……」
 ひそひそ。
「ああ、話が長いなんてもんじゃねえ……」
 こそこそ。
「いいですか、そもそも掃除は遊びではないと何度言えば――」
 話がクドい上に同じ内容を無限ループでエンドレスマシーンと化すマシロビ。
「この光景、何年経っても変わらないよねー」
 物陰からこっそり見ていたアクタは、嬉しそうにそう呟くのだった。


 そうして楽しく賑やかに、飲んだり食べたり遊んだり、掃除に精を出したり、たまに叱られてみたりで数日が過ぎる。
 そろそろ次の旅が始まる頃かと皆が思い始めた時、アクタが言った。
「しー、今度は何処行くのー? ボクにも行けそうなとこ? 面白いとこがいいなー」
「何処だっていいさ。皆がいる場所なら何処だって面白ぇに決まってるんだからな!」
 渾身の台詞を決めた鎬鬼を、親衛隊長にしてファンクラブ会員1号の蒼牙が褒めちぎる。
「さすが族長、鎬鬼様カッコイイ!」
 しかしアクタは瞳からハイライトを消した顔で首を振る。
「しーはしーのくせに、なにカッコつけちゃってるのさー」
「いや別にカッコつけてるわけじゃ」
「ボクが聞きたいのはそういうふわっとしたのじゃなくてさー」
 アクタとしても皆と一緒にならそれで良し、ではあるけれど、それはそれ。
「具体的にどことか決めてないの?」
「ない!」
 彼らの旅は基本、行き当たりばったりなのだ!
「じゃあさ、温泉とかどうだ!」
 そう言ったのはユキトラだ。
「近場ならマシロビも一緒に行けんだろ! いっつも留守番だし、たまには皆で一緒に行こうぜ!」
「でも旅館もありますし……」
 二の足を踏むマシロビに蒼牙が言った。
「温泉で羽根を伸ばすのも勿論だけどさ、他の旅館のサービスとか体験するのも良い勉強になるんじゃないかな?」
「行きます」
 勉強と聞いて即答するマシロビに、鎬鬼は「真面目か!」と笑う。
「けどだからこそ、こうして俺達の帰る家がきっちり守られてるワケだけどな!」
「本当に、マシロビには感謝しかないよね」
「じゃあ早速計画立てようぜ!」

 どこの温泉が良い?
 宿はどこにする?
 鬼っ子達は夜遅くまで、家族旅行のプラン作りに没頭する。

 月日が経っても、やっぱり鬼っ子達は鬼っ子達だった。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
いつもありがとうございます、STANZAです。
今回も楽しく書かせていただきました。これが最後かと思うと名残は尽きませんが、鬼っ子さん達の冒険はこれからも、楽しくわちゃわちゃと続いていくのでしょう。
皆様の前途に幸多からんことを、陰ながらお祈りしています。
それではまた、どこか別の世界でお会い出来ることを楽しみに……
ご依頼、まことにありがとうございました!
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ファナティックブラッド
2020年09月28日

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