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『ドラマ「コールド・ロータス」シーズン3 第11話「傍らの空白」』
柞原 典la3876


『退院した』
 ヴァージル(lz0103)は柞原 典(la3876)の端末にメッセージを送信した。入院中から幾度となく連絡は取っているが、一切の反応がない。深い溜息を吐く。
 会計を済ませてから、SALF本部へ向かう。典と話さないといけない。
 気絶して病院に担ぎ込まれた入院初日。目を覚ますと、付き添っていた典に相方の解消を言い渡された。足手纏いはごめんだと冷たく言って去って行く典を見送るしかできず、悶々としながら入院生活を送っていた。前述の通り、その後メッセージで連絡を取ったが、なしのつぶてである。
(典がマジで嫌になって解消しようとするんだったら、あんなお仕着せの標準語で言うかよ。関西弁で罵倒してくるに決まってんだろ)

「せんど言うとるやろ。ええ加減にしてや。ほんま兄さん足手纏いやわあ。もう知らん、一人でなんとかせぇよ。いらん怪我するのもはんがいやし。俺より美人の相方見つけてな」
 ゴミを見るような視線まで想像できる。

 だから、あれには別の意図がある。ヴァージルはそう確信していた。


「典見なかったか?」
 馴染みのオペレーターに声を掛けると、戻って来て最初の一言がそれか、と呆れられた。
「久しぶりだな。典見なかったか? ていうか、あいつまだ来てる? どんな感じ?」
 オペレーターは眉間に皺を寄せた。今までと変わらない……けど、何か違うような、と奥歯に物が挟まったようなものの言い方だ。
「何かって?」
 微笑みは変わらねど、雰囲気が変わったというのだ。上手く説明できない違和感を覚える、と。
「わかった。ありがとう」
 その時、オペレーターが典の名を呼びながら視線を投げた。ヴァージルは振り返り、見慣れた銀髪を見つけてカウンターを離れた。
「典!」
 人混みを掻き分けて呼びかける。けれど、典は一切聞こえていないかのようで。聞こえている筈だ。いつもはこの距離で、この喧噪で返事をしているのだから。
(シカトしてんじゃねぇよ!)
 典が本気で他人を避けようとしたら、相手にそれを防ぐ手立てはない。あっという間に見失った。それがどう言う意味か察する一方で、言葉と手が届かない歯がゆさも感じる。
「……くそっ」
 壁を殴って拳を痛めた。


 典はヴァージルを振り切ったその足で、戦闘任務に参加していた。映画館に出現したナイトメアの討伐依頼だ。既に客の避難は済んでいる。散らばったポップコーンを踏みつぶして、ライセンサーたちは敵に打ちかかった。軽くて固い物を潰す感触が靴底から伝わってくる。
 神恵の雨雫で味方のシールドを回復。恩恵を受けた仲間たちがそのまま攻撃に転じた。しかし、後方のナイトメアが一体、前衛を抜けてこちらに向かってくる。
「兄さ……」
 援護頼む、ヴァージルにそう言おうとして、踏みとどまった。ヴァージルがアリーガードでこちらに戻り、典が鉢特摩、そこから彼のヘビィバッシュに繋げる、という手順を想定しかけていた。咄嗟に傘を開いて防御する。それから呼吸を整え、
「こっち、援護頼むわ!」
 同行者たちは典の動揺に気付かなかった。

 戦闘任務は無事に終わった。典は同行者たちから離れたところで、一人、息を吐いている。
「……くそっ」
 壁を殴った。深呼吸して気持ちを落ち着かせる。ヴァージルの存在が馴染んでしまったことが腹立たしい。
 前なら、特定の誰かを頼みにした立ち回りなどするはずもなく……出来るはずもないと言う方が正確か。SALFでも自分で無視したくせに、その行き先で彼の存在を前提にしてしまうだなんて、不覚にもほどがあった。

 その後ろから、黒い手袋をはめた手が伸びてきていることには、触れられるまでついぞ気付かなかった。

 同行者が彼を呼びに来た時、そこには放り出された傘が残っているだけだった。


 典は連れてこられた廃墟の中をちらりと一瞥した。それから傍らの男を見上げる。
「なんやぐっさん。人類抜けてこっち来いって、レヴェルやのうて食い物になれっちゅうことなん?」
「本当は、生きたままの方が良かったのですが……あなた方の言う『レヴェル』であってほしいと。私はそう思っていました。他は『殺しちゃえば?』と言っていましたけど」
 エルゴマンサー・グスターヴァス(lz0124)は困った様に笑った。それから少し厳しい顔つきになり。
「もう、あなたを尊び愛でることはできません。あまりにも、虫食いが多すぎて、なんと無残に変わり果ててしまったことか」
 頬に掌を添えられた。手袋をはめているのに、妙に生々しい感覚がある。気持ち悪い。けれど振り払う元気はなかった。グスターヴァスは悼むような顔つきになり、
「ですが、私はあなたを憐れみます。そんな風になってしまったあなたを見ているのは辛いので……私がここで終わらせましょう。ええ、糧にして差し上げます」
「……」
「ほら、そんな、しおれた花みたいな顔をして」
「……」

 自分がいなくても世界は変わらない。
 ヴァージルの周りには人がたくさんいる。先日の保安官事務所でのことを思い出した。彼には、あんな風に笑える友がいるじゃないか。
(俺がおっても害になるだけやん)
 誰かにとっての、自分の害など今まで考えたこともなかった。いつも他者からの害に神経を張り巡らせていて……自分が害になるなど想像もしたことがなくて。慣れない先の予想は確実に典を疲弊させていた。
 離れなければ守れないだろうと思う。
 そして典のいない日々を彼は受け入れるだろうとも。
 そう考えると、生き続ける理由が見えなくなる。

 自分が気に入らない死に方はしたくない。
 命の使いどころは自分が決める。
 そう思って生きてきたのだけれど。

(ここで仕舞いか)

 ここが命の使いどころなのかもしれない。

「……もう、ええかな。疲れたわ」


 季節に過ぎ去られる花のように笑った。


「……」
 典のその表情をとっくりと眺めてから、グスターヴァスはメイスを持ち直した。
「お祈りは?」
「いらん」
 どうせ、どこにも届かない。神も仏も信じていない。先のない祈りは霧散するだけだろう。
「そうですか」
 大きな武器が振り上げられる。典は目を閉じた。薄暗い廃墟でそうすると、瞼を通した光はほとんど目に入らない。
「では私が、あなたのために祈りましょう」

 空を切る音を聞く。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
動揺というかなんというか、こう言う状態の典さん書くの初めてなので「ヒエ……」って言いながら書いていましたがいかがだったでしょうか(震え声)。
この日のSNSも悲鳴が上がりそうだなと思います。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年09月28日

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