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『『ドラマ「コールド・ロータス」 NG集』パート2』
柞原 典la3876

●シーズン1「終わりへの点火」より
「柞原やけど、今キャリアーの整備って誰かしとる? そう、後は出すだけだから誰もおらんと。りょーかい」
「典」
「ん」
 格納庫の方からやって来る、SALFの制服を着た男性。まるで、今着替えたばかりのようにぴしっとしている。この騒ぎなら、どんなにきちんと着ていても多少はよれていたりしそうなものだ。
「はぁい、兄さん。ちょっとええ?」
 柞原 典(la3876)が進路を阻むように、壁にとんと肩を付けて笑いかけた。相手は急ぐ旨を伝えると、彼を避けて行こうとするが、典の後ろから現れたヴァージル(lz0103)が更にその進路を阻んだ。典が相手のポケットから飛び出している細いものをつまみ上げる。

●NGシーン
「はぁい、兄さん。ちょっとええ?」
 典は進路を阻むように、壁にとんと肩を付け……ようとして滑った。ズコーッ! と音が立つ勢いで綺麗に横に滑り、側頭部で壁を擦って転ぶ。
「ギャーッ!」
 ヴァージルが飛び上がって叫んだ。本人は自分に何が起こったのかわかっていなかったが、相方に抱き起こされて状況を理解すると、腹を抱えてゲラゲラ笑い始めた。
「頭打ってないか!? 足は!? 折れてねぇよな!?」
 保安官代理の方は自分が転んだかのように取り乱している。それがますますおかしくて、典は余計に笑ってしまった。
「あっはっはっはっは! 多分大丈夫や……あー、おかしい。漫才みたいな転び方したわぁ」
 典は笑いすぎて涙が出たようで、目元を拭って立ち上がった。それを後から来たスタッフが「泣いてる!」と誤解してまた別の騒ぎになったのであった。

●シーズン2「アネモネの花嫁」より
「似合ってるぞ。グスターヴァスも喜んでたじゃねぇか」
「はんがいわぁ……」
 典はヒールを鳴らしてヴァージルに詰め寄った。衣装係が悪ノリして、足元まで完璧な花嫁だ。ヴァージルは目をぱちぱちと瞬かせている。典がどうして怒っているかわかっていないらしい。勢いに押されて後ずさり、ドアに背中をぶつける。その脇に、典は音を立てて手を突いた。
「つか──」

 ヒールを履いた典はヴァージルより背が高い。顔を近づけた。まだ少し、グロスの残る唇が、ヴァージルのそれに触れ──。

「するわけないやろ」

 ──なかった。

●NGシーン
 典はヒールを鳴らしてヴァージルに詰め寄った。衣装係(製作スタッフの方)が悪ノリして、足元まで完璧な花嫁だ。ヴァージルは後ずさり、ドアに背中をぶつける。その脇に、典は音を立てて手を突いた。
「つか──」

 ヒールを履いた典はヴァージルより背が高い。顔を近づけた。まだ少し、グロスの残る唇が、ヴァージルのそれに触れ──。

「するわけないや……え?」

 ──なかった。

 ヴァージルが間違えてドアに背を付けたため(なお、何回やっても壁を背にするはずの彼はドアに逃げた。生存本能かな)、詰め寄った典の勢いでドアが開いたのである。二人は外に倒れ込んだ。
「ぐえ!」
 一般的なウェディングドレスは三〜四kg程度。典の体重が六十八kg、合わせて七十二kg。それがヴァージルの上に掛かった。ぐえ、で済んだのは良い方だろう。
 いわゆる「事故ちゅー」と呼ばれることも起こらず、典のリップグロスはヴァージルが着ているシャツの胸を派手に汚した。
「……兄さん、間男みたいになったな。頭大丈夫?」
 起き上がりながら典は呟いた。
「俺が乱心したみたいに言うな。打ってない」
 ヴァージルは苦笑しながら相手を見上げた。それからふっと表情を和らげ、乱れた銀色の前髪を直してやりながら、
「やっぱり綺麗だよ」
 スタッフが悲鳴を上げた。

●シーズン3「泥濘の蓮華」より
「足手纏いは不要です。ヴァージル・クラントン」
 そこでようやく、笑みを……冷ややかは微笑みを浮かべて告げた。その声は、彼が降らせる青蓮の花弁が如く温度を──マイナスの温度を──持つようで……ヴァージルは氷に触れたかのように身を竦める。
「さようなら」
 呼び止める声も聞こえないかのように、その場を去る。スタッフステーションから足早に出てくる看護師とすれ違った。忙しくて、誰も典を気に留めない。そう、これくらいの接触のなさが良い。

●NGシーン
「さようなら」
 典は立ち上がった。ヴァージルが呼び止めるが、聞こえていないかの様に立ち去る。筈であったが……。
(あ)
 さっきまで座っていたスツールに足を引っ掛けて蹴倒した。
(キャラならどないすんのやろ。このまま出る? え? とりあえず出よか)
 そのまま何事もなかったかのようにすたすたと病室を出たが……彼はすぐに戻って来た。
「やっぱあかんわ。ここでスツール倒すようなキャラちゃうねんな。テイクツー頼むわ。堪忍な」
 しかし、その後数テイクに渡って典はスツールを蹴倒した。しまいに、彼は倒れた小道具の前にしゃがみ込み、
「なぁ、腹割って話そうや。そーゆーお商売か自分。ん? 言い訳なら聞いたるから言うてみ」
 詰め寄る典に、ベッドの上でヴァージルが笑い転げていた。

 結局、小道具のスツールを変えたところ、一発でOKが出て、このシーンの撮影は無事に終了したのであった。

●シーズン3「WhenYouWant」より
 ヴァージルはグスターヴァス(lz0124)に向き直った。
「こいつ顔だけはいいけど、守銭奴ですぐたかるし、生活力無いし気まぐれだし、人の善意信じないし、すぐ人に嫌なこと言うし、人の失恋を見世物だと思ってるし……ちゃんと傷つく普通の人間だぜ。お前、美化し過ぎなんだよ」
「兄さん酷ない?」
「事実だろ!」
 並べ立てている内に腹が立ったのだろう。ヴァージルは声を荒げながら雨守の戒杖を放って寄越した。典は左手を開いて受け止める。ぱしっ、と小気味良い音が響いた。口角を上げる。その瞳は鋭く光っていた。

●NGシーン
「兄さん酷ない?」
「事実だろ!」
 ヴァージルは声を荒げながら傘を放り出した。悪口は半分くらいアドリブだが、言っている間に役柄へ感情移入してしまったのか、投げる手には力がこもってしまい……。
「ぶふっ」
 傘は典の鼻面に命中した。絶句するヴァージルと現場。
「いやぁ、受け損ねたわ、堪忍……」
 典がへらりと笑いながら傘を拾おうとすると……
「あーっ!」
 ヴァージルが悲鳴を上げてすっ飛んできた。典の顔をぺたぺた触り、
「ごめん! 顔は大丈夫か!?」
「顔の心配するんか兄さん……」
「ちょっと、痣になってない? とりあえずこれで冷やして。ねー! ぐっさん氷!」
 地蔵坂 千紘(lz0095)がまだ冷たい飲料のペットボトルを持って駆け寄ってきた。
「はいただいま!」
 グスターヴァスはどこに秘めているのか、兎並の瞬発力でその場を離れて行く。他のスタッフも獲物を見つけたゾンビの様にわらわらと集まる。
「余計怪我するわぁ。散れ散れ」
 典は腕を振って人を遠ざけたのであった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
典さん、なんかフィジカルなNG多そう、という謎の偏見でそういうのばっかなんですが、割と見てる方の心臓に悪いなって思いました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年10月08日

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